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わたくし悪役でしてよ  作者: しぶぬきかき
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いつになったら帰れますの?

 

 

 明日、明後日が休みで良かったですわ。寮を出たのが午後二時でしたのに、戻ってきたら午後四時でしてよ。実に有意義な時間でしたわ……ほほほほほ。

 汗まみれですし、お食事前にお風呂に入って汗を流しましょうね。


 ええ、分かっていましたとも。本当に分かっていましてよ。ただ、忘れていただけですのよ。明日からは浴槽のお湯の量を少なめに張りますわ。


 さて、お夕食までなにをしましょう。お部屋を見渡すとテレビが目に入りましてよ。でも、テレビはあっても、ゲーム機が無ければどうしようもなくてよ。お父様にお願いしてゲーム機を買っていただこうかしら? ゲームの時間は、一日三十分だけ、とお約束したら買ってくださらないかしら?

 

 懐かしいですわ……忘れもしない、初通学の日にわたくしと万祐子ちゃんは出会いましたのよ。


 わたくしたちが仲良しになって、万祐子ちゃんのお宅にて初めてお泊りをしたとき、彼女は溢れんばかりの少女らしい笑顔で、わたくしにゲームを勧めてくれましたの。

 テレビゲームとパソコンゲームでしてよ。

 あのときは、パソコンゲームに夢中になっていると満面の笑みで教えてくれましてよ。


 可愛らしい主人公の少女が、ある学園で男子生徒たちと恋愛劇を繰り広げる、というゲームでしたの。

 もちろんストーリーは一筋縄でいかなくてよ。主人公の恋愛を邪魔をする、恋の敵役が出てきますの。主人公は様々な困難と課題を乗り越えて、お目当ての男性と結ばれる、というものでしてよ。

 主人公の可愛らしさいじらしさもさることながら、恋敵役の憎たらしいことと言ったら。出てくるたびに、万祐子ちゃんは泣きそうなお顔になっていましたわね。


「そうでしたわ。確か、「聖マローネ坂上学園」という全寮制の学園が舞台でしたわ。ええ、「サリエ」さんというヒロインを取り巻く男子生徒たち。そして恋敵の「桜子・フォン・マツリバヤシ」侯爵家の令嬢というなんとも不可思議な世界観で繰り広げられる恋愛ストーリーでしたわ」


 わたくしも一緒にプレイしましたけれど、選択を誤ると大変なエンディングが待ち構えているのでしてよ。わたくしがプレイしたのは、確か、聖マローネ騎士隊長――要は風紀委員長のストーリーでしてよ。


「ほほほほ……懐かしいですこと。それにしても、わたくしの今の状況がそのまま当てはまりましてよ」


 わけの分からぬままこちらの学園の入学式に臨み、今日を過ごしましたけれど。

 サリエさんも存在するようですし。

 ほんとうに、奇遇ですこと。


 ……いえ、まさかそんな。

 いえ、でも世の中には説明のつかないことは多数ありましてよ。現に万祐子ちゃんは、別世界へ行って活躍した少女のお話をたくさんしてくれてよ? ええ、フィクションであることは分かっていてよ。でも、万祐子ちゃんはキラキラとした笑みで、絶対ないなんて言いきれない、と言っていたわ。


 ええ、分かりましてよ。わたくし。

 わたくしのすべきこと。

 それは――サリエさんの恋を具に見守って、全てを万祐子ちゃんにお話ししてあげることですのね!


「でも、桜子。ここは学校よ。まず勉強をしに来ているのではなくて? そうよ、学園初日の準備をしなくてはね」


 きっと課題などの提出物があるはずでしてよ。

 ええ、勉強をしつつ初めての寮生活を堪能しながら、サリエさんの恋を見守ればよいことでしてよ!


 ほほほほほ、わたくしもやればできますのよ!


 それにしても、いつになったら帰れるのかしら?




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