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わたくし悪役でしてよ  作者: しぶぬきかき
31/35

新入生歓迎会でしてよ1

 

 あの日相談してから、特に何事もなく日々は進み新入生歓迎会の日をむかえましてよ。

 

 新入生歓迎会は、ちいちゃんの願望通り立食パーティーだそうです。そして、午前中は新生徒会役員の挨拶とゲームをやるそうですのよ。

 結局、生徒会役員は生徒会長と先生方の推薦、本人の立候補などにより円滑に決まったそうですわ。


 そして、ゲーム! 人探しゲームですのよ!

 新入生は2人から4人のチームを組んで、各チームお題に沿った先輩や先生を探すそうですわ。探される方は目印にウィッグを被るそうです。間違えてしまったら、同じようなウイッグを被らなければならないそうですわ。

 そうです、間違えれば間違うほど同じようなウィッグを被る人が増えるため、探すのが大変になるゲームのようですわ。

 一年生はA、B、C、Sの4クラス。120人ですから、大体、24から30チームできますわね。

 ゲームの時間は、9時から11時の2時間。

 その後、着替えなどを済ませたら表彰式を兼ねての立食パーティー。早く見つけたチームから10位まで景品が頂けるそうですのよ。

 

 わたくしは屋敷さんと千里さんのチームに入れて頂きましたの。

 朝8時30分。三人で体育館へと向かいます。


「どんな鬘被るのかな?」


「あら、あちらがそうなのではなくて? あの華やかな天使のような捲き毛のウィッグ!」


 体育館への道すがら、華やかな頭の方たちがみえましてよ。七色の細やかな巻き毛のウイッグは見ているだけで楽しい気分になれますわね。


「あ? レインボー、アフロ? 今どきレインボーアフロ……だと?」


 ちいちゃんが何かぶつぶつ呟いておりましてよ。


「あ、桜子ちゃん! 紫ちゃんにちいちゃん!」


 まあ、サリエさんだわ。

 聞きまして皆さん。わたくしの名前が一番最初に呼ばれましてよ!

 サリエさんはSクラスのお友達と二人で来たようです。

 

 体育館へ集合して、きちんと整列して会が始まるのを静かに待ちます。……卒業式や始業式のことを思い出しますわね。

 まるで昨日のことのようでしてよ、ほほほ。

 

 壇上に生徒会長、副会長と役員の方達が並んでおります。

 会長であるリオウ殿下から順にご挨拶。皆さんの温かい拍手が体育館に響きましてよ。


「ではこれよりゲームを開始致します。あらかじめ説明してある通り、校舎内は立ち入り禁止ですのでご注意ください。地図とターゲットのヒントが書かれた用紙は今から配ります。地図上で青く塗りつぶされた範囲内で行動するように。では、新入生の皆さん、頑張って探してくださいね!」


 生徒会庶務の女子の先輩から説明があり、ゲーム開始ですわ。


 わたくしたちは、まずゲーム用に渡された地図を広げ行動できる範囲を確認します。

 かなり広いですわ……日頃のウォーキングの成果を発揮するときでしてよ。


「ターゲットは?」


「あー……メガネ、学園指定体操着、数字の11、しか書いてないんだけど?」


「全員、体操服を着てましたわよね?」


 屋敷さんもちいちゃんも無言です。

 とあえず、わたくしたちは外へ出ることにしまてよ。他のチームの方達は全員移動したようですし。


「あれ、あそこ……あのパンジー畑にレインボーアフロの人がいるわよ!」


 体育館を出てすぐのパンジーの植えられた花壇のところにターゲットらしき人物がいるのを、屋敷さんが早速発見しましたわ。

 眼鏡も掛けてらっしゃるからきっと、あの方がターゲットでしてよ!


「行きましょう! お二人とも!」


「なんか、あっさりし過ぎ、って言うか……あきらかに罠だよね?」

 

「うん、そう思う……だが、あたしはアフロを被ったマツリバヤシさんを見たい」


「……私も、見たいかも……」


 お二人は何やらお話をして、ついてきてくださいません。もう、わたくし一人で先に行きますからね!


「ほほほほほ! 見つけましてよ、先輩! あなたですわね!」


「え? 嘘! 引っ掛かる子がいると思わなかったわ!?」


 メガネを掛けて華やかなウィッグの女性の先輩が驚いた顔をした後に笑い出しましてよ。


「あら? どういうことですの?」


「ふふふ! 私と、あそこにいる人はダミーなのよ。引っ掛かる子がいると思わなかったから、つまらない役割だと思っていたけれど! 嬉しいわ、あなたみたいな子がいて……ハイ……これでオッケー! うん、なかなか似合うわよ!」


 先輩は笑いながらわたくしの頭に華やかなるウィッグを被せましてよ?

 似合いますの? まあ、嬉しいですこと!


「よし、じゃあ親切な先輩がヒントをあげましょう!」


「まあ、ちょっとお待ちになってくださいませ。今、仲間に来ていただきますから! 屋敷さん、ちいちゃん、こちらへいらして! 先輩がヒントをくださるそうよ」


 お二人を呼ぶと、顔を見合わせて笑いながらやってきましてよ。


「どうかしら? 似合いまして?」


「ヤベェ……ちょーヤベェ。思った以上だわ……」


 ちいちゃんは、やべーやべー、と繰り返しております。何かの呪文かしら?

 屋敷さんはデジタルカメラ、かしら? で、記念撮影をしております。まだ、早いのではないかしら? ターゲットを見付けたらぜひ、皆さんで取りたいわ。


「あなたたちの、ヒントの紙を見せて」


「はい。お願いします!」


 屋敷さんがカメラをしまうと、先輩へ紙を出しました。


「あ、これは……。私よりも年上ね」


「あの、先輩は何年生なんですか?」


「私は2年生よ!」


 先輩は仁王立ちになってVサインを出しました。


「じゃあ、3年生か、もしくは女性教師の誰かってことか……」


「ふふふ、頑張ってね! 応援してるからね!」


 先輩は意味ありげにわらっております。

 わたくしたち3人は先輩にお礼を申し上げてゲームを再開しました。



*******


「ねえ、思ったんだけど……誰が2年生で誰が3年生か分からないよね? 先生はさすがに分かるけど」


 そうなのです。

 ヒントを得たわたくしたちは意気揚々と探し始めましたのよ。

 それから、30分後。わたくしたちはターゲットを見付けたのですが、学年が分からないことに気が付いたのですわ。

 そうして、屋敷さんがウィッグを被ることになりましたのよ。


「マツリバヤシさんて、内部進学なんでしょ? 分からないの?」


 困ったことにさっぱり分からないのです。


「仕方ありませんことよ……。ちいちゃん、あなたも華やかなるウィッグを……」


 ちいちゃんだけ仲間外れですのよ。わたくし仲間外れは好きではありませんもの。あのターゲットが間違いでしたらちいちゃんも被れましてよ。


「いや、別に被るのは良いんだけどね!」


 また、1人ターゲットを見付けたわたくしたちは相談しております。ターゲットの方達は巧妙に隠れてなかなか見つけられないのです。

 そうして、やっと見つけたターゲットですが……。

 わたくしたちが、ヒソヒソと話し合いをしているとピンポンと校内放送の軽快な音が鳴りました。


『1-B チーム「バスケ部」が一番になりました!』


「なんということかしら!? 先を越されましてよ!」


「分かった、分かったから……言ってみるよ!」


 ちいちゃんも、屋敷さんも景品を楽しみにしておりましたから。わたくしもですけれど。ともかく、ちいちゃんは走ってターゲットの元へ向かいました。

 わたくしたちも後に続きます。


「あの、すみません。ターゲットの人ですか?」


「うん? 君たちのヒントの紙を見せてくれるかい? って、千里ちゃんじゃない?」


「……って、中島先輩!」


「まあ、中島先輩ですの?」


「あれ、桜子ちゃん。……っぷ、似合ってるよ」


 中島先輩が華麗なるウィッグでさらに美麗になっておりましてよ。


「あ、これがヒントの紙です」


「ああ……残念。これは僕じゃないなぁ……ふふふ。じゃあ、千里ちゃんもこれ被ってね」


 中島先輩がウィッグを被せるとちいちゃんは赤くなってしまいましてよ。普段のちいちゃんからは想像もつかないほど乙女な表情で……


 ……あら? まあ……もしかして……。


 いえ、分かってましてよ? でも、間違いなさそうでしてよ? まあ、早くサリエさんの件の誤解を解かなければ。


「どれ、では可愛い後輩たちに僕からヒントをあげよう。ずばり、女性で先生だよ」


 まあ、女性の先生ですのね? どなたかしら?


「あ、ありがとうございます、先輩……」


 ちいちゃんが真っ赤なお顔でお礼を言っておりましてよ。

 そうですわ!


「先輩、お二人ともわたくしの大事なおともだちですのよ?」


「ああ、そうなんだ」


「ですので、苺摘みにはお二人にもぜひ参加していただきたいのですけれど」


「ああ! もちろん! おいで、二人とも。大歓迎だよ」


「え? でも……マヒロさんが先輩のことす「なんでもありませんわ! あれは間違いでしたのよ!」き……?」


 申し訳ありませんが、途中で口を挟みましてよ。ちいちゃんは首を傾げながら、何かを言いたそうにしておりますわ。


「わたくしの早とちりでしてよ。ちいちゃん、ごめんなさい」


「う、うん……分かった。苺摘み楽しみにしてる。よろしくお願いします、先輩」


 ちいちゃんは嬉しそうにはにかみながら、先輩に再びお礼を言いました。

 それから、先輩に見送られながら探索開始ですわ。


 そして――。


「アフロのズラ被った女の先生って、あの人しかいなくね?」


 根気よく探しつつ、見つけたターゲット。そのお方とは……。


「嫌ではありません。このゲームの規則ですから、きちんとお被りなさい」


 華麗なるアフロのズラ……ウィッグを手に持ち、女子生徒に詰め寄る我らが担任、ミネット・ジャダン先生でしてよ。


「で、でも。そんなの、笑いモノだわ」


「笑い者がなんです! ほら、ご覧なさい。あそこの生徒もきちんと被っているでしょう? ゲームなんだから、これくらいなんてことありません。私も嫌でしたけど、こういうときくらい楽しまなくては! ほら、グズグズしない!」


 ジャダン先生はわたくしたちを指しながら、女子生徒にウィッグを被せましたわ。


「馬鹿みたいよ! こんなの!」


 女子生徒は叫びながらこちらへ走ってきました。その後をウィッグを被った二人の男子生徒が追い掛けてきます。


「あなたたちも、馬鹿みたい!」


 その女子生徒――猪俣ユリアさんは通り過ぎざまに、そのようなことを叫んでおりました。ウィッグは被ったままで。

 廊下は走ってはいけませんのに。屋敷さんもちいちゃんもあ然としています。


「小さな子供でもあるまいに……。まったく……アフロごときで」


「あ、あのー先生……?」


 ぶつぶつ仰る先生に声を掛けたのは屋敷さんです。


「何です!? あなたたちもコレを被りたくないなどと……あら、屋敷さん? 牧野さんにマツリバヤシさんじゃないの? とても似合ってるわね」


 先生の厳しいお顔が少し綻びましたわ。ええ、先生も楽しんでくださっているようでしてよ。


「先生もお似合いです!」


「ありがとう。でも、嬉しくないわね」


「すみません……。先生がターゲットではないかと思うのですけれど」


「では、ヒントの書かれた紙をお見せなさい」


 はい、と屋敷さんが渡した紙をご覧になると、大きく頷いた後に学園内用の携帯電話でどちらかに連絡をしましてよ。


「こちらターゲット11番のミネット・ジャダンです。チーム「あんみつ」に見付けられました」


 チームを作った日の昼食のデザートに3人で「あんみつ」をいただいたのですわ。


『1-C、チーム「あんみつ」が6位です』


 そして、校内放送が入りましてよ。


「あなたたち、惜しかったわね。でも、10位までは景品が出るはずよ。さあ、体育館に戻るわよ」


 ジャダン先生の号令で、わたくしたちアフロ4人組は体育館へと移動を始めました。


「それにしても……あなたたち、いつまで被っているつもりなのですか?」


 ウィッグを被ったままの先生に尋ねられましてよ。


「え? せっかくですから、歓迎会が終わるまで被っていたいですわ? ね、屋敷さん、ちいちゃん?」


「ええー……まあ、うん、そうだね」


 ちいちゃんも、心ここに在らず、と言った感じで頷いておりますし。むしろ、ずっと被ってたい、だそうですわ。


「そう、良い心がけだわ。3人とも、学園生活には慣れましたか?」


 はい、と3人揃って良いお返事です。

 教師と生徒の会話を楽しみながらでしたので、すぐに体育館に着きましてよ。


 体育館には数十人の生徒たちがすでにおります。中には、ウィッグを被った生徒もおりましてよ。

 わたくしたちが着いた時間は10時10分頃で、実行委員と思しき先輩方が飲み物をくださいましたの。


 そうして3人でお話――主に中島先輩とちいちゃんのことですけれど――をしていると、すぐに11時になりましてよ。

 それから、全員集合してから一時解散です。この後、12時から校舎内の食堂で立食パーティですわ!



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