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わたくし悪役でしてよ  作者: しぶぬきかき
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対策会議でしてよ

  

 プリンと水羊羹と玉露を満喫したわたくしたちは、サリエさんに対するいわれなき誹謗中傷への対策を練ることにしましてよ。


「そんなにしょっちゅう耳に入るわけじゃないんだけど……先週の終わりくらいから誰かが……」


 春さんが言いずらそうにしながらも話してくださいます。


「その「誰か」が分かれば、わたくしが直談判しますのに!」


 憎き「誰か」! 誰ですの!? 出ていらっしゃいな!


「もしや、殿下やエミリオ先輩が……」


「いや。それはないと思うよ?」


 いつの間にか復活した中島先輩が、再びあのお二人の肩を持つような発言をなさいます。きっぱりとした口調で。


「そんな幼稚な事をするような人じゃないしね。それに彼らに利益なんかないだろう?」


 それは、確かにそうですわね。

 第一、そのような馬鹿らしい噂を流して喜ぶような人ではないと思いましてよ……。サリエさんの乙女心を弄んだとは言え……。


「では、サリエさんを妬んでの犯行だとすると、今まで成績が一番だった人、とかかしら?」 


「ないとは言えないね。中等部で一番だったのは誰か知ってる?」


 もうしわけありませんが、わたくしは存じませんのよ。


「あ、あの……僕」


「はい?」


「僕が、一番でした……二番とか三番のときもあったけど……」


「……では……あなたが犯人ですのね!? 灯台下暗しでしたわ!」


「いやいや、それはないでしょう」


 ……ですわね。春さんはおっとりして優しい方ですから。

 ご本人も首を横に振って否定しております。中島先輩も苦笑しておりましてよ。


「なら、庶民が特待生で気に入らない……貴族の仕業とか?」


「いまだに、そのような偏見に満ち満ちた生徒がいますのね? どなたですの!?」


 わたくしの詰問に、春さんが目を逸らしながら口を開きました。


「え、と? 中等部の頃は……マツリバヤシさんが、その代表みたいな……?」


「で、でしたら……わたくしの犯行でしたのね!?」


 いつの間にわたくし、そのような卑劣な真似を……!?


「いや、だからちょっと落ち着こうね。桜子ちゃん」


 春さんも、今は違うって知ってる、とおっしゃってくださってますわ。


「サリエちゃん。心当たりある?」


 春さんの問いかけに、サリエさんは悲しそうなお顔をしましてよ。


「ここにいる皆じゃないって分かってるから。大丈夫だよ?」


 首を傾げてにっこりと笑うサリエさん。そんな、無理なさらないで。


「そうだね。マヒロさんなら大丈夫だよね」 


「冷たいですわ、中島先輩! そんなに先輩のスイーツを頂いたことを根に持っていますの!?」


「桜子ちゃん……。マヒロさんを見ていれば、そういう子じゃないっていうのは分かるよ。そんなので喜ぶなんて「偏見に満ち満ちた」一部の生徒だけだろうしね」


「はい!」


 サリエさんは元気にお返事なさいましたけれど、わたくし納得がいきませんことよ!

 なのにサリエさんは笑顔で頷いております。

 

「あ! 桜子ちゃん、今日は一緒に夕ご飯たべようよ!」


「え、ええ! そうしましょう」


********


 さて、サリエさんと二人でミミちゃんをフワフワナデナデして癒されてから寮へ戻ります。その頃には雨も止んでいて、ゲームの話などをしながら歩いて行きます。


「あ、紫ちゃんだ!」


 寮に入ると屋敷さんと、彼女のご友人がいました。せっかくなので4人で夕食を頂くことになりましてよ。


「ところで、生徒会の手伝いはどう?」


 屋敷さん、それはあまり宜しくない話題でしてよ。


「うん……。私は問題ないよ」


「そう? ちょっと変な噂が流れてるって噂を小耳に挟んだり挟まなかったり……」


 まあ、屋敷さんもご存知でしたのね? でも、屋敷さんはそのような噂に左右される方ではありませんもの。本当にどちらのどなたの仕業なのかしら?


「もしかして、猪俣ユリアが流してる噂じゃない?」


 サリエさんが言い淀みながら返事をすると、屋敷さんのお友達が尋ねてきましてよ。牧野千里さんとおっしゃる艶やかな黒髪の清楚な美人さんです。一見話しかけずらい雰囲気の美人さんですが……。


「あたしの友達が1-Sにいるんだけどさぁ、しょっちゅうそのユリアって子に絡まれてんだよねぇ……。大人しい子だから黙ってるんだけどさぁ」

 

 牧野さん、お話するとイメージがガラリと変わりましてよ。あの、物騒と申しますか、お、男らしい話し方? ですわね。


「で、ユリアってのが特待生の庶民がどーのって言ってんの聞いたんだけど、アンタのことだったんだ?」


「あー。私のことだねぇ、それ……」


「妬まれてるだけでしょ。気にすることないと思うけどね」


「うん、気にしてないよ?」


「なら、なぜあのように疲れたお顔をなさっていたの?」


 ほら、言っちまいな、と牧野さんが凄んでいます。

 サリエさんも観念したらしく話始めましてよ。


「んー……。なんか、猪俣さんのお手伝いが大変なんだよねぇ」


「あら、お手伝いのお手伝いですの?」


「今、新入生歓迎会とか、各部の予算のこととか年間スケジュール決めたりとかで忙しいの。それで、猪俣さん仕事に慣れてないんだよねぇ。今までのデータ消しちゃったりとか、書類間違ってシュレッダーにかけたりとか……。使えないんだよねぇ……」


「……それって、猪俣ってのが生徒会の手伝いする意味あるの?」


「うん、全くない」


 誰もが思うことを牧野さんが聞くと、サリエさんははっきりきっぱりおっしゃいましてよ。


「それで、会長も副会長も私にお仕事を持ってくるんだよねぇ……。たぶん、それで取り入ってるとかって思われっちゃったのかなぁ」


「早急に書記さんや会計さん、庶務さんを選出するべきではなくて?」


「そもそも、なんでその猪俣は生徒会の手伝いやってるの?」

 

 そ、それは……。屋敷さんとサリエさんが不自然にわたくしから視線を逸らしましてよ。ええ、わたくしの責任ですわね。牧野さんにも事情をお話しておくべきかしら? 牧野さんのような方がいれば心強いですものね。誤解のないようにわたくしの口から話すべきですわ。


「わたくし、子供のころにつまらない事で腹を立てて、彼女を階段から突き落としたことがありますの……」


 言うたびに後悔に苛まれて心が痛みましてよ。一生この痛みと付き合わなくてはなりませんのね。


「何それ? 喧嘩の延長線の事故だったんでしょ?」


「え? いいえ、わたくし悪意を持って突き落としたと、思います」


「あのね、ちいちゃん。マツリバヤシさん、彼女に酷いこと色々言われてたの」


「ふぅん……」


 牧野さんはつまらなさそうにサラダをフォークで突いてます。確かに楽しい話ではありませんものね。


「それで、殿下とエミリオ先輩は彼女をわたくしから守るために生徒会に入れたのですわ」


「ばかばかしいー……。会長とか副会長が余計なことしなけりゃ良かっただけじゃないの? なんでそんなに複雑にするんだ? 意味が分からんね」


「……そうですわね」


「マツリバヤシさんもマヒロさんも、そいつらに関わらなけりゃ良いんじゃないの?」


「それが、私、生徒会の庶務としてどうかな、って打診だれてるんだよねぇ」


「断われば? 優秀な生徒なんて大勢いるんだし、絶対アンタじゃなきゃダメってもんでもないでしょう。まぁ……やりたいなら別だけど」


「そうだよねぇ……部活もあるし、勉強もしなきゃだし」


「え? な、なに? マツリバヤシさん」


 当事者ではない牧野さんならではでしてよ。わたくしも、親しみを込めて……。


「「ちいちゃん」さんとお呼びしても……ぜひ、そう呼ばせて下さいませ!」


「……「さん」はいらねー」







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