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「天久と片倉を同じ組にするとか青組め、そこまでして勝ちたいか」


 チッ、て、リン負けず嫌いだね。

 そして、さっきの事も質問しづらいから、セラ様に聞こう。うん、そうしよう……運動場に視線を向けるとアンカーなのか藤咲さん、軽くストレッチしてるけどあんまりやる気なさそう。

 うーん、どうにかやる気にさせる事って出来ないのかな?


「藤咲さんって、足速いの?」

「やる気になれば僕より速いですね」


 なんだと!?


「本気出さないと、友人辞めるって言ってようやく本気出したので、……何かで釣るしかないんでしょうか」

「何かって、何?」

「さあ?ルカ、デートでもしたらどうです?」

「リン……適当な事言わないで」


 大体誰得なんだよ。それは。


「るか、デート?」


 あおいと?って、なんでだよ。アディーの疑問に苦笑で返す。


「そんな1位になったらデートするなんて、ハレンチな事を叫ぶわけないでしょ。」

「わかった。『囁く』」


 大きく頷くアディーに一瞬、頭がついて行かず、は?ってなる。え、今、この子何て言った?

 さっき、あおいもダメって言った先に私と藤咲さんがデートしなきゃいけない状況を作り出すと?

 いや、それ以上にリンの前でなに言っちゃってんの!?

 アディーの空気が一瞬変わる。……そういえば、能力を扱ってるとこ初めてみた、気が…っ。あれ、……きがとおく…、


「ふわっ」


 なんでかリンが自分の背中に私を隠す。


「アディーさん」


 リンが咎めるようなアディーを呼んだら、ふぅっとアッサリ空気がもとに戻る。


「………うん、『囁いた』」


 満足そうに大きく頷くアディー。………なにやってくれてんだーっ!!


「待て!こら、何してんの!?」

「こら、ルカ。アディーさんをいじめない」


 慌ててアディーの襟首を掴んで、がっくんがっくんさせた所、リンが私の肩を抑える。


「まったく…」

「だって、アディーが!」

「あれ、藤咲がこっち見てますね。……あんなに悪質な笑顔は久々に見ますね」


 ひぃーっ!違うんです!!アディーが勝手に。私、関係……ハッ、片倉さん、片倉さんがアンカーだ。


「かたく…っ」

「こら、最後ぐらいは白組を応援しなさい」


 そんな無慈悲な!


「私の精神が削げる事態なんだよ!?」

「ああ、良かった。少しはおとなしくなりますね」

「リン、酷い!」

「はいはい。藤咲ーっ、頑張ってください。ルカの事は責任持ちますので」

「なんの話!?」

「え、デートするんですよね?」


 なんで、そこで全部わかってますからって笑顔なの!?ねえ、リン。私たち、色々探りあって見なかったふりしながら生きてるんじゃないの。


「……リン、私、藤咲さんと何にも約束してないよ」

「はい。わかってますよ」


 なんで、私が怒りのウリ坊を背負いながらの主張に笑顔で、はいはいって…、適当に流してやがる!


「ルカ、勘違いはいけません」

「何が?」

「僕は、マルとの時間確保で最大のライバルはルカだと常々考えています」


 ん、リンったら、不思議なことを言う。

 別に3人一緒に入れば、いいだけの話じゃん。私もお姉ちゃんもリンも一緒なんだから、別に問題ないじゃん。私、2人が熱く抱擁する所までは頑張って見るんだ。き、キスシーンはちょっと刺激的だけど、頑張れると思う!

 告白が実る瞬間も、私の脳に焼き付けたいんだよ!

 頑張る。

 私、2人に張り付いて頑張って、心のイベント回収をせっせとするつもりだよ。

 なのに、どうして、アディーもリンも呆れ顔なの!?


「るか、恋は、雰囲気」


 ……メッ。って、この子はどこで何を学んでいるんだろう。

 リンも頷きつつ、目線はレースだ。


「藤咲には悪いですが、……勝ったら一日、ルカを押し付けます」


 どんな罰ゲームだ!?

 リンがボソッて、呟いた。性格悪い。やだ、藤咲さんと類友なんだ。じゃあ、片倉さんも悪いの!?

 ち、違うもん。片倉さんは優しいひとだもん。


「ふ、藤咲さん、め、迷惑じゃ…」

「たのしそー」


 アディーが余計な事を!

 ストレッチが念入りになった。貴様、午前の具合悪さはどこいった!?今からでも『ふじさき』を念入りにシバいたら、元気がなくなったりと、……リンったら、前の方で見学するつもりか席から離れていく。


「よし、アディー。藤咲さんに呪いを!」

「おれ、そんな能力、ない」


 きっぱり断りやがった。『破滅』と『堕落』は呪いじゃなかったのか!?


「う、運を…」

「あれ、『加護』の範囲、狭めるだけ、天使、領分。それに…」


 ジーッと、アディーが私を見つめている。なに、どうしたの?


「るかとおれ、契約、仮。……あおい、今日、るかをまもってたから、おれ、疲れた」

「どういう…」

「いずみ、企み、たくさん。もうひとり、力つかう悪魔いた。るかの弱み、抑える。封印?」


 ………封印されてたって、……脳内会議が音信不通になったくらいでーーまさか、脳内会議が、私の弱みだと!?

 ちょっと、どう思う?ーーはい、ボッチっぽくて良いんじゃないでしょうか?…うん、答えになってない!!


「セラとの契約、悪かった。天使、加護……あおい、るかの中の『るか』見失って、大変。力消費、たくさん。ーー同情した」


 アディーが藤咲さんを見て、同情って……。知らなかった。言ってくれれば良かったのに……私の弱み……じゃあ、さっきの競技で、サイレンの音が怖いのが復活したのは、抑えなくて良くなったから?

 ……片倉さんを平気で『お兄ちゃん』って呼べたのも…、じゃあ、私の弱みって『生前の私』?

 あ、話があるってそれ?いや、ルカの中の『ルカ』って、『秋月ルカ』だよね。それかな?


「アディー」

「だから、おれとも本契約!あおい、楽になる」


 教えてくれてありがとうって言おうとしたのに満面の笑顔で、頑張って私を『堕落』させるって微笑むので、ついうっかり頬を摘まんでしまった。……痛い痛いって貴様の存在が痛いわ。


「ルカ、最終ですよ」


 あ、リンが戻ってきて、私の事を抱き上げた。わあ、物凄く楽しそうだ。人垣を掻き分けて、前の方に私を足が痛くないようにと気を使いながら押し出してくれる。

 本人ですらうっかりするのにここまで気を使わなくても、……リン自体も怪我人じゃん。なにしてんの!?


「藤咲さんは?」

「テルと片倉と並んで、他をぶっちぎってますよ!ほら、ルカ」


 本当に誰が勝ってもおかしくないくらいに接戦してる。……片倉さんと目があった。応援したい。


 でもー…、



「ふじさきさーん、がんばれーっ!!」



 私は、大声で通りすぎていく藤咲さんに今日の感謝を込めて声援をあげる。

 私の応援が本当に予想外だったのか、藤咲さんが私を振り返った。

 ハッ、目を真ん丸くして、そ、そんな顔しなくても。そして、そんな事したから光原さんと片倉さんに置いてかれ……てない。あれ?さっきより、速いような。


「あー、やっぱり、全力じゃなかったか」


 まあ、具合悪かったひとですもんねーっ。てリンがそんな感想をぽつりと呟いている間に頭一個分出し抜いて藤咲さんが光原さんと片倉さんを抜いて、白いゴールテープを切った。

 あ、やべ。

 異様に盛り上がる白組陣地。いや、2位が片倉さんだから、うちの優勝無くなったよ。4位も青組だし。

 やだ、私だけテンションが低いのは、これからの展開のせいかな。


「……チッ、やっぱり出たかったですね。殿が止めさえしなかったら……」


 リンもどんだけ闘争心の塊なんだよ。

 藤咲さんが、1位の旗を持って、こっちにさっさと戻ってきた。や、やばい。どっかに逃げないと……、


「秋月」

「ひゃうっ!!」


 セラ様の方に逃げようとしたら、がっつり、藤咲さんに腕を掴まれました。やだ。私とそんなにおデートしたいの?てへ。

 ………ごめんなさい。


「いつ」


 どうして、そんな殺気だった目で問いかけてくるの。

 えーと、確かお狐様でしょ?神取と旅行?お出かけかな。歌う牧師のとこに『欠落者』の事聞きに行かないと……。あ、テストが近いよね。


「え、えーと……色々、用があるので、1ヶ月くらい先に……飽きちゃいますね。秋と秋月だけに!」


 やだ、どうして聞き耳たててた奴等は白けてくれたのに藤咲さんだけ、ふぅーん…って頷きながら、


「あとで、アドレスも教えて。逃げられると面倒だから」


 あれー、今までなあなあにしてたことを今、ここで言いますか。はっはっはっ。


「返事は?」

「……ひゃい」


 とてもじゃないが、私、約束してませんと言える雰囲気ではなかった……がっくり。


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