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「ひばりーん、がんばれーっ!」


 大きな声で応援したのに何故か少し気まずげなひばりん。ハッ、ひばりん母は来てるんだった。自粛しないと。


「るかー」


 アディーが戻ってきた。手には濡れタオルだとー…っ。いつから気配りが出来るように!?


「『女王』にってくらすめいと、いちどう?」


 クラスメイト達よ。気配りは嬉しいけどどうして遠巻きなんだ。

 それにしても、得点をよく眺めてみる。


「白組、1位取ってもう1つ得点圏内に入んないと優勝はないですねー」

「ふーん」


 リンの説明にアディーは、興味なさそうだ。


「白組が1位取って、赤組が2位を取って、3、4のどれかに白組が入ればいいんですけど」


 8レーン使って組代表が2人ずつだもんね。


「勝てばいい」


 ……アディーから名言頂きましたー。

 しかし、……リンがいないと厳しくないのかな?主人公様であった光原さんは万能だ………光原さん?

 目に映った光原さんの様子がおかしい。両頬が腫れてないか?


「リン、光原さんの両頬にくっきり平手打ちの後が」

「雲雀とセラです。僕は頭に拳骨を落としたので」

「………なんで?」

「ルカのバッグを勝手に持っていった罰です。ああ、ルカも軽く許さないように。躾は大事です」


 心なしかしょんぼりしている。……お母さんがおおらかで忙しい人だから、あんまり叱られた事ないって、設定だったからな。うん、ちゃんと叱ろう。


「ルカも同じ組を応援しなさい」


 釘を刺された。片倉さん青組だしね。あ、会長も出るんだ。


「天久兄は出ないんだ。………なんでだろ。」

「それは、簡単だ。真剣に走るのがタルいから」


 うひゃーっとなりかけた。

 おおう、片手にジュースを持って歩く男、天久兄が後ろから現れやがった。


「き、貴様、お狐様かっ」

「チビ、うち(天久)の秘密を軽々しく口にするな。……ほら、なんかセラがお前に冷やすもん持ってけって言うから、持ってきたぞ」


 ……あ、珈琲だ。わーい。受け取ってお礼を言ってしまった。


「ありがとうございます」

「おっ、珍しく礼をいったじゃないか。偉いなー」


 何故か頭を撫でられてるのにムカつく。こいつ、もっとこう丁寧に撫でられないのか。私が不服そうに睨みつけたら、視線がもう、リンだった。


「あー…藤堂鈴だっけ。うちの生徒が悪かったな」


 む、リンに興味があったのか。ふむ、恋が生まれないなら私は寛大だ。



 だが、頭を掻きながら謝った天久兄。誠意がないぞ!口だけだろう。


「いえ、……ひとつの解釈だとは思います」


 リンも不愉快を隠そうとしていない。そして、何故、それを面白がってるの天久兄。


「……物分かりがいいな。」

「いいえ、腸は煮えくり返ってますよ」


 二人の間にバチバチって火花が散ったー!……ような気がする。天久兄は、どうして、に対してもこうなんだろ。そもそも、リンと喧嘩する必要ないでしょ。


「なんでケガしたー?」


 アディーが空気読まずにいったーっ!偉い!!私的には偉い。けど、……リンがにっこりと私を見ている。黙らせろって事?


「ああ、モテない奴のやっかみだ。なんだっけ。うちの女子にアドレス聞かれて、断ったお前に対して『好きな相手に一途アピール気持ち悪っ』だっけか?」

「ーーよし、その喧嘩買った!!」



 私の戦闘意欲にリンが呆れた。


「ルカが買ってどうするんですか。そもそも…ー僕が負けるとでも」


 スゥーッと目を細める魔王様(リン)。わー、頼もしい。


「アドレスくらい教えて、適当に好みのタイプ見繕って遊べば?」


 固くても軽くても文句言われるんだしって。天久兄め。私のお義兄様に何てこと言うんだ。


「否定はしませんが、同意もしません。……僕は、好きな相手に誠心誠意で尽くしたいので。人の恋愛観を否定する暇もありません」


 リンー、よし、言ったれーっ。は、私も『祝福』を願ったのはお狐様相手だった。改めて、天久兄よ。恋愛面で本命できたら死ぬほど苦労しろー。なむなむ。生前プラスαから祈りを込めて。


「へー、それ、軽く非難してないか?」

「嫌ですね。疚しいことしてる自覚があるからじゃないですか?」


 かろうじて、リンが敬語ぶってるけど完璧にいつ殴り合いが始まってもおかしくない雰囲気に。なにをワクワクしているんだ。アディー。



「一途って聞こえは良いが、ストーカーって言葉もあるんだぜ。藤堂」

「遊んでばかりいると、本当に好きな相手には逃げられますよ。天久君」



 ふははははっと、何故か笑顔で笑い合うが空気が大変澱み目が笑っていません。何故でしょう。少なくともわかった事は、リンと天久兄は合わないようです。



「天久兄」

「チビ、変な呼び方すんな。遵さんでいいぞ」

「は、ルカ。口利かなくていいですよ」


 リンが、物凄い早さでツッコんだー。ああ、うん、……ダメだ。引き離さないといけない。


「えーと……遵先輩?」

「なんで疑問系だ」

「ルカ、天久が移るから離れなさい」


 リンがマジでお怒りだーっ。沸点低いよ。しかも、その暴言はダメだよ。


「それだと会長にまで近づけないよ!」

「ああ、失礼。遵とは半径10㎞離れて歩きなさい」


 言ってることが無茶苦茶だよ!?それ、もう天久兄を認識すらしちゃダメって事じゃん。


「えーと…藤堂」

「不愉快ですが、リンって呼ぶことを許します」


 ケッ、て言った。そして、偉そうだ。凄い偉そうだ。魔王様モードだ。


「遵?なにしにきたの。謝罪?」


 アディーが、マトモだ。今ここで一番まともな事言ってる。ホッとしてしまった。


「ん……?ああ、悪かったよ。危うく本題から逸れる所だった。それで、ソイツ等知らないか」


 棒付き飴の包装を取りながら、棒倒しが終わってから居ないんだよ。って…、そんな呑気な。

 リンが渋面を作りながら、


「知りません。顔も見たく………いえ、わかりました。探してきます」


 怒りに任せて喋っているうちに何かに気づいたらしく、あっさり、手のひらを返したリンに遵先輩?も、面を食らったようだ。


「……ヨロシク」

「いえ、すみません」


 立ち上がりながら、謝るリン。なんで、謝るんだろ。

 そして、校舎の方に行ってしまった。……なんで、隣の隣に座るんだ。あま……遵先輩?


「なんで、首を傾げてる」

「先輩ってタイプじゃないなーって」

「敬えよ。少しは」

「遵、変な気配する。神?」

「藤咲が言ってた『泣き虫』か。……ふぅん……別段、悪くないのに。なんで独りぼっちだったんだ」


 アディーが、遵……駄目だ。あーたんにしよう。の品定めにグッと詰まる。アディーを庇ってあげないと。


「あーたん、人には都合が」

「待て。なんだ、その変なあだ名は」



 あれ、どうして、そんな嫌そうな顔するの?


「?可愛いよ」

「俺は、可愛くない方がいい」

「あだ名って、慣れと諦めだと思うんだ」

「……質悪っ」


 ゲーッという顔をされた。でも、あーたんだと会長まで巻き込んでしまう。仕方ない。


「遵だから、ジュンジュン、ジュンタン、ジュンリン…あ、ジュルンは?」

「わかった。あーたんで良い」


 私が頑張って候補を上げ募ると言うのにまだ、俊平のあだ名だって誤魔化せるって、会長巻き込む気か!?言わんぞ。怒られるから!!

 あ、リレーから戻ってきた日比谷さんが私たちを睨んでいる。わー、ごめんね。今一番不愉快なツーショットだね。アディーはいるけど。


「るか、センス、皆無?」


 む、アディーが失礼なことを。

 私がアディーの頭にチョップを落とした所で、あーたんが、はーぁって……あーたんは可愛すぎたろうか。


「あーたん」

「はいはい。そういえば、お前、天使側の仲間意識で気をつけなきゃいけないこととか知ってるか?」



 思わずアディーに助けを求めたら、天使しつこいって。アディー。過去になんかあったのか?



「まあ、個人はしつこいな。ああ、面白い話があって恋愛面で、恋が実らなかったり、諦めなければならなかったり、ーー上が認めなかったりした場合、当人が狂ったりしないように救済処置が取られるって、知ってるか?」

「へ?」



 ほらっと、飴玉をアディーの分まで渡される。それを受け取り、アディーにも渡す。



「俺も、詳しくは知らないけど、狐様が退屈しのぎに教えてくれた話でさ。『記憶消去』って能力を同族同士で使うことがあるんだとよ」



 アディーが包装紙を取ってと頼んできたので、取って上げると、あーたんに同意するように頷く。

 ………あーたんも何か違うな。馴染むまでの我慢か?なんか良い呼び方無いかな?いや、恥をかかせるって意味では間違ってないのか?



「えーと」



 なんで、そんな話を私にと見上げたら、面白くなさそうに藤咲は知ってそうなんだけど訊いてないのかって。



「と……、リンの奴がある日突然手のひらを返しても責めんなよって話。それは、『認めてもらえなかったのは相手が悪い』って理屈だからな。………レースが始まったな。じゃ、俺は、陣地に戻るから、リンが戻ってきたらよろしく」


 不吉なことだけ言い残して去っていくあーたんに私は、そのまま硬直していると、あっさり戻ってきたリンにどうしましたって聞かれ、あーたんがって、言ったら「変なあだ名を量産するな」とチョップを頂いた。


 本人は可愛くないけど、あだ名は可愛かったはずだ。あ、ひばりん、1位でバトン渡してる。


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