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 コソッて、お昼を食べてしまおうとしたら、日々谷さんに席を用意したから来いと言われたので、日々谷さんに肩を借り藤咲さんに一緒に行くと、陣地の後ろにシートが敷かれ、お弁当が並べられていた。


「……これは?」

「深託のピンク頭が、『ルーが来たら、食べさせなさい!』って、置いてったんだよ」


 ココさん…っ。

 そして、数名男子生徒が座ってる。


「藤咲、待ってた」

「つーか、リンと片倉が酷いんだぞ。食べ盛りに『もう暇だろ。待て』って!」

「まあ、別に良いけどさ。顔色良くなったけど、無理すんなよ」


 ほら、座れよと促された藤咲さんが、微苦笑する。…友達多いんだ。意外だ。あんまり、関わらないようにしてるのかと思ってた。ーーしかし、この中に入って食べろと?


「秋月の為の席なのに」

「リンは、構わないって。あ、女王ちゃんのお弁当コレね」


 やだ。うちの分まであるんだ。食べきれるかしら。そして、女王ちゃんって普通に浸透していて怖い。


「あれ、その重箱は?」

「あ、そこの唐揚げ美味しいよね」


 どうやら3年の先輩方に食べさせて!と、お願いされる。別に構わんが…、女一人かー。潤いが欲しい。マナルンはー…、綱引きに行くんだ。アディーは、短距離?

 あ、短距離もう始まるんだ。午後は競技少ないな。日々谷さんも私を置いたら、さっさと短距離に行ってしまった。

 セラ様が、こっちに来た。


「あれ?短距離は?」

「あとはリレーだけだと言った筈だ」


 そういえばそうだった。やだ、勿体ない!!セラ様なら2位は確定だぜ。


「ご飯食べました?」

「……ああ、光原にパンを貰った」


 お弁当を用意しなかったらしいので、光原さんがコンビニで買いに行ったパンを分けてくれたらしい。あれ、でも…、


「ココさんにお昼誘われなかったの?」

「あの、禍々しい空間に行けと?ーーひばりんが気の毒だった」


 ひばりん母とココさんの継母さんのいるプレッシャー席にココさんは普通に居たらしいが、ひばりんは早々食事を切り上げ、光原さんにパンを貰っていたらしい。そういえば、アディーはお昼ご飯どうしたんだろ?

 セラ様に隣に座ってもらい、お弁当と重箱を広げる。

 拡げたのに誰も手を出してこない。藤咲さんは不機嫌にセラ様を睨み付けてるけど、どうしたの?


「唐揚げ、どうぞーっ?」

「え、……ああ」


 藤咲さん以外の先輩方がチラチラとセラ様を見ている。

 ……は!これは、皆様、セラ様の美しさに一目惚れですか!?どうしよう。美しいって罪を素で行くんだね。セラ様。

 しかし、手伝う気はないので黙認だけはしよう。ふむ、皆様、自力で頑張ってくれ。


「あ、セラ様、私、卵焼きを焼いたんですけど食べます?セラ様が甘いの好きなので砂糖要りにしました」

「ん、ああ…どれだ」


 はいって、箸で掴んで差し出したら苦笑された。

 ん?前にもしたじゃん。あれ、拒否されたっけ?ーー拒否したの、ココさんじゃん。


「あーん」


 どうぞーって、セラ様に卵焼きを差し出したらセラ様が食べてくれようとした瞬間に藤咲さんが、ぼそり。



「間接キス」



 ぼとりって、私が卵焼きを落としたのは言うまでもない。ーーなんたるタイミングの良さ!!

 藤咲さんの嫌がらせが名人芸になりつつあるが、どうしてだろう。周りが唖然としている。


「藤咲くん、どうしたの?」

「後輩苛めるなんてらしくないぞ?」


 いっつも、苛められてるよー。藤咲さんも少しバツの悪い顔をし、私が落とした卵焼きを未練がましく見つめた事に気づいたのか、手で拾いあげ、ーー食べた!!


「…あまっ」


 顔を顰めたが、いや、そこまでして欲しかった訳じゃないよ。シートの上だけど。


「ふ、藤咲さん」

「砂糖の卵焼きは、俺には合わないな」

「ふむ。私には甘さが足りない」


 いつの間にか卵焼きを咀嚼していたセラ様。これ以上って、かなりジャリジャリするよ!?


「次は、もっと甘い方がいい」

「はあ、次が有れば」


 うむ。と大仰に頷くセラ様。

 しかし、藤咲さん、まだ、具合が悪いんだろうか。こんなことするタイプじゃないよね。熱でうなされ……、あ、話ってなんだろ。聞くタイミングずれちゃった。


「俺のはサンドイッチだけど、食べる?」


 確実にどっかで買ってきたやつだ。高そうなそれにどれが良いか必死に悩む。む、もしかして、これって言ったら、「これはダメ」って言われるパターンだろうか。くそ、藤咲さん相手だと罠が多すぎて、どう自分が食べたいものにたどり着けばいいのか。


「……そのおにぎりと交換してくれたら、どれでもいいから」


 なんですと!?物々交換を求められた。これは、どんな罠だ。ちらちらと藤咲さんの顔色を確認しながら、卵サンドを求めると遅いって口に放り込まれた。ぐはっ。これが罠だったのか。


「……確か、藤咲だったな」


 セラ様が、そんな私たちのやり取りに呆れたような顔をしながら、藤咲さんに話し掛ける。


「何でしょう。美人なお姉さん」

「この阿呆にここまで警戒されるとは、ーー尊敬する」


 嫌味!?え、私?それとも藤咲さんに?

 藤咲さんが、ぐっと詰まった。……ふむ。やはり、悪魔っぽいひとでも、天使には弱いのか。ときどき競技を眺めるが、アディーがちゃんと2位狙いで頑張っている。

 あれ?あの子、膝に絆創膏貼ってる。


「アディー、怪我したんですか?」

「ああ、後で、説教しておけ。クラスメイトの悪ふざけに便乗し、そういう悪ふざけを増長させて巻き込まれて怪我をした」


 ん、…悪い事をしようとしている気持ちを増長させたってことかな?で、高見の見物をしなかったせいで怪我をしたということか……何してんの。あの子。


「泣きながら、それを愚痴られた瞬間の私の気持ちがわかるか」


 悪魔に愚痴られる天使…。

 本格的にセラ様が保育士に見える。それとも、ダメな同僚を世話する面倒見のいいお姉さん?…セラ様、涙が流れそうです。ほろり。

 アディーが何も食べてない場合も考慮して、せっせとお弁当を仕分けする。ココさんの卵焼きとから揚げうまっ。お姉ちゃんのきんぴらも美味しかった。お母さんのポテトサラダもうま。

 …アディーも気に入ればいいなー。そして、仕置きはきっちりしよう。


 しかし、何をしたかわからないけど競技に出ている人たちがちょっと殺気立ってるのって、そのせい?


「口汚く罵り合って、最終的に女子たちで髪のつかみ合いだったな」

「女子が!?」


 アディー、なんて恐ろしい子。私は戦慄した。こんな親や先生や他校生がいる中で女子につかみ合いをさせるなんて。ーーなんて、優秀な悪魔なんだ。


「アディー、立派になって」

「そこは、感動するところじゃないよ」

「変な所で感動しているが、そのせいで不穏な空気になってるんだぞ」


 確かに。藤咲さんが呆れながら、構ってられないって同級生との話に夢中になってしまった。うん、最初からそうすればいいのに。

 私より、友達との時間を大切にすべきだよ。だって、藤咲さんは『外』に出たいって。私に構うって、諦めているって言ってるようなもんだと思うから。同類憐れむとからしくないぞ。ガンバっ!



 病院に行く前は天匙と深託の交流が上手くいっていた筈なのに互いに睨みあっている。あ、競技者の中に泉さんがいる。なんか、ひそひそと深託の生徒に耳打ちしてるな。あれー?


 ……日比谷さんの様子がおかしい。


 なんだか、背中が丸くなっている。いつも変に自信に満ちているのに。そういえば、さっき、私を迎えに一人で来たよね。ーー取り巻きは?


 きょろきょろと、辺りを見回す。ーーうん、ミユミユも取り巻きもいる。じゃあ、大丈夫かな?


「どうした。」

「なんか、おかしいのにセンサーにひっかからなくて」


 どうしましょうって、セラ様に訊ねてみたがセラ様も困惑している。


「うーん、なんだろ。」


 気になる。けど、わからない。


「……私の力を使うか?」


 ぼそりと、訊いてくるセラ様に私は首を横に振る。ーーなんとなく、勘だが、泉さんの前でセラ様に頼るべきじゃない。のか、このタイミングじゃないのか。わからないな。うん。


「ちょっと、私。出る競技がないので校舎とか歩いてきます」

「は?」

「一時間たっても戻らなかったら、全能力使って探してください」


 ちょうど、足もあまり痛まないようにテーピングして貰ったところだ。うん、取り巻きも、姉もいるんだけど、取り巻きに関しては『現』がつくんだよね。


 私が、日比谷さんから引き離してしまった『元』日比谷さんの取り巻きの水沢さん。どこ行ったんだろ。今、仲よくなった子たちも探しているようだし、大人に相談するには問題が大きくなりそうで怖いよね。うん、私は、しっかり、起爆スイッチ押しての行動だから。


 あ、歌う牧師と『神光』の理事だっけ、なんで、そんなに嬉しそうに私に向かって笑うかな。怖いよ。普通に。

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