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※病み


「まずは、それと契約しろ」

「ヤです。断ります」


 天使様の冗談を笑顔でもって回避したところ、天使様……誰を射殺そうとしてるんですか。眼力だけでニンゲンが死ぬよ。

 ……どう考えても、視線の先は私か。

  ああん!?精神年齢が生前+αな私をなめんなよ。

 速攻で土下座だ。


「申し訳ありません。でも、嫌なんです。関わりたくない。つーか、それを島流しにしたいくらい嫌悪してます」


 悪魔を指差して、真顔で訴えたら天使様。お腹を擦って--お腹が痛いですか。人間の薬なら用意できるよ?


「……他の土地ならば、肯定してやれたのだがな」


 思案げな天使様。なにか真新しい情報をくださるのなら、拝聴させていただきますよ。


「我々の『真名』を知るお前にならば、どこで耳にしたかも知れぬが。この土地は魔に属する者と天に属する者の罪人が罰を昇華される為に創られた聖域だーー墓場とも言われることが多いが」


 …………………ん?

『天使と悪魔の楽園』ってそんな設定だっけ?

プライドの高い『天使』と魔界にどうしても帰りたい『悪魔』が幼なじみにふられて、自堕落な生活をする主人公を救済するかさらに陥れていくかくらいで、土地の話なんかシナリオにあったかな?


「人の身には余る話だろうが、私自身、同族によりいわれなき罪で陥れられた存在だ。しかし、この場に置いて我が身の不幸を嘆き、ただ、無為に時を過ごすより、救済を望む弱き者たちの支えになることはやぶさかではないのだ。……お前が身に余る不幸で途方にくれた様子に私の存在が必要だろうと近づいた。無知は罪だ。まさか、お前はそれが罪人と知りながら『外』へ出そうとする愚かな存在ではなかろう」


 ……えーと?

 あ、チョコレートケーキって美味しいよね。

 駄目だ。頭がパンクする。一気に頭に詰め込めない。


「この清浄ならざる存在の事は知ってはいた。だが、何度様子を見ようとも泣いてばかりでたいした悪事もしなかった。だから、見過ごしていたのだが…、人間とは時にお前のように後先も考えず愚かな事をする。何故、この聖域から『悪魔』を連れ出そうとしたのだ。これはここから離れられない。むしろ、生きていてもらわねば困る。……しかし、自力で力を補うことはこの段階では無理だ。なので、お前にこれと契約して貰い力の供給に協力してやってほしい。あくまで仮だ。責任は持つ」


 悪魔を心配してあげてたのか天使。あー、最初っから一緒に主人公に憑いてたけど、会話しなかったよね。お互い空気だったよね。

 ……うーん。

 天使は、私みたいにお姉様とリンのカプが好きな人たちから見れば、『最低天使』と罵られているが、実を言えば、メインヒーロー・ヒロイン攻略時に置いて、このメインが霞む存在感を放つ。『最も貞淑な妻』、略して『最貞』。天使ファンはこの略仕方を愛していたが、声高にはしなかった。

 なぜなら、クソゲーファンの大半がお姉様とリンのファンが圧倒的だったのと、この『最貞』な天使イベントはあの、お蔵にすればいいメイン攻略対象ルートでしか見れない。

 なにあの……頭の悪いヒーローとヒロイン。運営、まじ恋愛ゲームを勘違いしてる。それともエロスチル入れればバカな購入者が出るとでも!?

 ………前世での兄よ。貴方は、悪くない。playしたのは私だ。

 確か、お姉様の攻略に飽きてきた時に……え?今はないよ。ほんとだよ。なんで姉への愛を疑われなきゃいけないの!? ………うん、大丈夫。いま、私、お姉様ゾッコンラブだから。ーーで、解決したところで、やりたくなるじゃん。メインルート。

 やったよー。はっきり言って、どうしてコイツらがメインやねん!と突っ込みたかった。

 制作スタッフがモテる奴の基準を勘違いしていた。薄っぺらだったよね。まじで。いいえ、薄いだけならよかった。人として終わっている。なのに主人公の幼馴染みで初恋の相手なんだよー。オープニングから主人公を入学式の校門でふるとか可哀想だよね。そりゃ『悪魔ルート』で主人公歪むわ。

 ……まさか、それ狙いか。深いストーリーだな。制作会社。

 私が、制作会社を誉めて称えるべきか悩んでいると何を勘違いした天使。


「魔の者との契約が不安なのはわかる。しかし、それは、お前のためだ。約束しよう。何が有ろうとも私はお前を護る」


 真摯に紫の瞳に優しさをたずさえ、私に微笑みかける天使様。

 ……悪魔の攻略ができて、何故か天使攻略はできなかった。

 それは、何度か攻略できないのかと何年もネットで調べたが、彼だけ、主人公を丸ごと受け入れてしまった存在だったからだ。ーー主人公を憐れみ、大切にし、自身が歪み始めたことに気づき、メインルートだと、主人公を幸せにしてほしいとメインのバカどもの罪を『無かったことにする』。本当に最低なシナリオだった。メインの『悪魔ルート』のほうはやったことがないが、あいつらは主人公共々最悪だった。playしていた私が言うのもなんだが、『天使ルート』はあのまま裁かれれば良かったと罵りたい。彼ら、あるいは彼女らはあれで幸せになれたのだろうか。ゲームだから、仕方ないのだろうか。

 でも、いま、私はここにいる。

 誰かの存在が根こそぎなかったことになるなんてーー同じことがあれば、絶対、ーー絶対許すものか。

 私が返事を躊躇っていると感じたのか、天使様は、私の分だった珈琲を口にし、驚いたように目を見開いた。……きっと苦かったのだろう。

 指摘しなかった自分の意地の悪さが笑える。

 自分の滑稽さは知っている。でも、それでもこの世界で生きている。

 姉が大事だ。彼女がいなければ、『秋月ルカ』として生きたくなかった。

 ほんと、最低なんだよ。

 ぴくり、と悪魔が私に視線を向けた。虚ろではない。正気の目だ。うん、私だって病んでるよ。契約者として合格かな。……絶対、お前を幸せにはしないがな。

 だってさー、わかんないかな。前世の記憶があるってことはさ。

 私、ーー前世で死んでるんだよね?

 にこにこと、天使様に微笑む。ああ、好意の感情がわかる天使様に負の感情が悟れるのかな。ゲームじゃわかんないんだよね。


「どうした」


 あ、きっと、わかんないんだ。じゃあ助かるね。私は、ニコッと微笑む。


「悪魔と契約します。それで、天使様。私を護らなくていいよ。だって、自己犠牲とかするバカ嫌いなんで関わるのやめてくださるだけで結構です」


 顎が外れそうなくらい、呆気にとられるのはやめてよ。

 愕然?

 そうだね。私、いいこと思い付いた。天使はお姉ちゃんとリンの周りをうろちょろしないってことを頼んで、悪魔は、私が管理しよう。うん、いい考えだ。

 私、絶対お姉ちゃんとリンだけは幸せにするんだ。

 さて、天使様と条件を詰めていこうかな.





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