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 私の幼少期の呼び方をお父さんとお母さんに訊いて回った件についてー。

 なんでか視線を逸らされた。……ルカはルカだよ。の一言でも良かったのにどうしたんだろ。

 お姉ちゃんに訊いたら、ルカはルカだよって返ってきた。この反応が欲しかっただけだよ!

 しかし、天使ちゃんをルカって呼ぶわけにはいかない。ナルシストになってしまう。

 説明書をきちんと取ってあったので、読んでみたら、呼び名がなかった場合でも親に決めて貰ってください。とも書いている。

 そもそもヌイグルミに説明書ってとり扱い方だよね。洗濯してもいいとか陰干しとか、蛍なんたらはアウトとか、大概色落ちとか手触りが変わってがっかりした気分になるから気をつけて的な注意なのだけど。天使ちゃんはおまじない的な子だったらしい。なんか『もうひとりの自分』的な?

 お父さんとお母さんが、そう説明して名づけをお願いしたら複雑な顔をして、やんわり拒否した。ど、どうして?

 ただ、お父さんがその後に苦々しい顔を必死に隠しながら、「『るぅ』って、つけなさい」……お父さんの不機嫌の理由がわかんなくて怖いよ!

 そんな訳で天使ちゃんは『るぅ』って名前になった。名前をつけたら、お姉ちゃんが物凄く気に入って部屋に持っていこうとするのをリンが必死に止めてくれている。私から物を取り上げようとしたことがないお姉ちゃんが!!か、貸し出しくらいはいいよ。さすがに片倉さんがくれた物をお姉ちゃんにもあげれないから。

 いや、それより私の方を可愛がってよ。お姉ちゃん!

 私のベッドを美少女姿で占領するようになったアディーに「悪魔ってどう生まれるの?」ってようやく訊いたら、首を傾げて、


「わかんない」


 たまたま、アディーの様子を確認に来たセラ様にも訊いたけど、


「一匹みたら大量にいる」


 そんなGから始まるアレじゃないんだから。藤咲さんも知らないんじゃお手上げだね!




 藤咲さんと言えば、額からスライディング事件の次の日に廊下で遭遇したら無言で空いていた教室に放り込まれ、いきなり頭を掴まれた。……痛いね!


「秋月は、人の忠告を1日も守れない脳の容量の少なさを誇っているんだ」


 頭だけではなく、心まで痛い。

 なんだか、藤咲さんも日に日に顔色が悪くなってる気がする。


「どうしたんですか?企みすぎて頭痛いとか?」


 心配したら、ギロッて見下されて、チッて舌打ちまで、機嫌が大変底辺らしい。気まずくなって、だんまりしていたら、藤咲さんが先に口を開いた。


「……そういえば、今後の参考に天使との契約方法を教えてくれないか?」


 訊かれたくない質問がきたー。

 ジーッと、私が喋りだすのを待っている様子の藤咲さんに私は、口をパクパクと必死に言葉にしたくないアピールをしているのに待っている。


「……人にさんざん頼っておいて、その態度はなに」


 あ、だんだん焦れてお怒りになったご様子。

 覚悟を決めなくちゃいけないんだろうか。


「き、…………です」

「なに、」


 聞こえなかったらしい。え、そ、そんなに小さな声で言ったかな?

 でも、どう伝えればいいんだ。察してもらえないだろうか。せめて、レモンティーだったら、………生前プラスαは、ミルクティーのお味でしたとしか言えない。


「秋月」


 苛々した様子で畳み掛けてくる藤咲さん。確かにお世話になっているのに何ひとつ返せてない。うん、覚悟を決めよう。


「じ……」

「今度は『じ』なの?」


 さっきは『き』だよねって、呆れる藤咲さん。心を折るなー。よし、行くぞ。


「人工呼吸…っぽいもの」




 ーー表現の自由をお許しください。



 シィン…と、空気が重たくなった気がする。

 藤咲さんの顔は見れないが、腕を組んで何かを思案しているのはわかるー…、


「そう、ありがとう」


 あっさりと、言い捨ててじゃあね。と背中を向けて行ってしまった。あ、藤咲さんにとって、その程度のことなんだ。うんうん……ケッ。

 私にとって一大事だって言うのに。




 廊下に出るとまた、雑用を頼まれる。うん、君たち、本当に私の手伝いが必要なのか。

 ただ単に私に話しかけたいんだろう。ふ、人気者はつらいね。………すまん。ちょっと忙しくて現実から逃避を。やさぐれはじめたぞ。こっちとら。



 途中で案の定捕まった。ハチマキとか重いんですけど。二箱分の段ボールに詰まったハチマキを持ってってねって悪意を感じるよ。先輩かな?これ、一個ずつじゃ駄目なのか。己、私の腕力をなめているな。ふらふらしてやる!!



「秋月、大丈夫か?」

「あ、ひばりん」



 本当にふらふらしていたらひばりんが遠くに居たのに駆け寄ってきてくれた。



「ほら、持つから」


 ひょいっと軽々二箱持たれてしまった。わ、私があんなにふらふらしていたのに。これではか弱いアピールしてたみた……いや、前に殿にか弱いアピールしてみろっていわれたんだった。これが、か弱い女の特権か。やだ、癖になりそう!!

 しかし、人の好意に胡坐をかくなと脳内会議に常に言われている。

 そして、ひばりんは、まだまだ守ってあげなきゃいけない存在だ。威厳を保たねば、



「ひばりん、持ってくれてありがとう。でも、私も運びたいの」

「え、でも、あんなにふらふらしてたし」

「うん、だから。半分持って一緒に運んでってお願いしていいかな?」

「……」



 あれ、ひばりんが固まった。ど、どうしたの?

 は、まさか、いちいち面倒な女だなって思われたのか!?黙って頼れというのか。ひばりんめ。男前な子になって。生前プラスαとして心がほっこりするが、それでも若人にはまだ負けぬとなんか張り合ってみる。

 たっぷり時間がかかったが、ようやく、ひばりんの中で何か納得できる結論が出たのか。



「うん、…一緒に運ぼう」



 ほんのり頬が赤いけど、まだ気温が高いせいかな?



 ハチマキが詰まった段ボールを体育館に運びながら、…これ、洗ったときも繕うときもよくよく考えたら私が関わっているな。少し不格好なのは目をつむって貰うとして。



「ひばりんは、なんの競技に出るの?」

「ああ、障害物と中距離とリレーと…」



 やだ。スポーツ得意なタイプだった。チッ。一緒の白組だということもわかった。



「光原さんは?」

「テル兄だけ?」

「うん。ココさんから、黄色組で短距離と中距離、借り物に出るから応援しなさいって、メールが来たよ」

「……心美」



 ただ、借り物以外がお姉ちゃんとかぶっている。お姉ちゃんと同じになったら、お姉ちゃん優先と返信しておいた。全ての競技でセラ様だけはココさんの味方だとも書いておいたが。



「えーと、二人三脚とリレー競技……花形系は全部押し付けられたんだって。心美が我を通した分、負担がテル兄に」



 あ、そう言えば夏休み明けすぐ決めたって。セラ様が転校する前か。



「二人三脚か、1位通過すると誘われた人はキスしなきゃいけないらしいけど」

「え?」



 ひばりんも知らなかったらしい。よ、良かった。私だけじゃなかった。ん、じゃあ、盗撮くんも知らないのかも。なんだ、もし、何かの間違いで1位通過しても知らなかったふりしよっと。



「そ、それって」

「ココさんのお母さんってくるのかな?」



 あ、ひばりんの言葉と重なちゃったよ。



「あ、ごめん」



 慌てて謝って、ひばりんの言葉を待ったけど、ひばりんが苦笑して、私の質問を優先してくれる。



「心美のとこのお母さんなら来ると思うけど。…ちょっと、気難しい人だから、絶対おばさんって呼んじゃ駄目だから。俺達にも『万葉さん』って呼ばせてる人だから。秋月、あんまり近寄んない方がいいんじゃないか?」



 失言の女、秋月ルカは近づかない方が良い存在ですか。



「綺麗な人なの?」

「うん、ものすごく…?秋月、なんで、心美のお母さんに興味があるんだ」

「え、………ココさんの話で良く出るから」

「…ああ」


 ひばりん、嫌そうな顔しないで。

 藤咲さんの実母でココさんの継母か…。ものすごく気になるし…ココさんと光原さんの為に………あれー、なにすればいいんだろう?

 悪魔の祓い方なんて知らないぞ。

 『真名』か。『真名』を握れってことか。



 バカな。どうやってだ。アディーとセラ様はゲーム知識からだぞ。



 うーん?

 会ってから考えよう。なんか繋がるかもしれないし。



 結論が出たので、ふふ~んと、呑気に鼻歌を歌ってみると、ひばりんが微妙な顔で私を見ている。は、お、音痴だからか!?音痴だから、そんな冷たい目を。



「秋月、たまにそういう顔するよな」

「え?」

「どっかに突進しに行く気だって顔」



 ひばりんが呆れている。私は、今どんな顔をしているんだろう?



「あ、るかちゃん」

「マナルン」



 きゃるるんって、現れたマナルンにどうしたの?って、話しかけたら眉間に皺を寄せて、みーくんがって。あ、盗撮くんか。美草だもんね。



「あの子、同級生にお金をばらまいてるみたいなの!!それでね。怒ったんだけど、『ねーちゃんにだって悪い話じゃないって』いうの。でも、どういう意味かわかんないし、お金をつかって人にものを頼むようなこと覚えちゃダメって。おじい様に言われてるのに。お父様もお母様もみーくんに甘くて」



 かなり、お怒りの様子だ。しかし、盗撮くんはいったい何をしたいんだろう。同級生にお金をばら撒いて、って。



「何か頼み事してるならばら撒いちゃ駄目だよね。成功報酬にしないと」

「秋月、そう言う問題じゃないと思うぞ」



 どういう問題だろうか。ひばりんの言葉に私は首を傾げる。

 だって、私的にむかっとした。どうして、マナルンが気を使わなきゃいけないんだって。



「マナルン。そういう場合は、あっさりお爺様に言っちゃった方が良いよ。マナルンがどの立ち位置かはっきりさせて、ご両親よりお爺様に気にいられて、発言権を強めようよ」

「るかちゃん、黒いよ!?」



 マナルンがびっくりしている。だって、盗撮くん、絶対碌なことしてないし。



「だって、マナルンより弟くんが大切にされてるみたいで、イラっとしたんだもん」

「あ、それは確かに」


 やだ。ひばりんも同意してくれた。


「ツキくん、るかちゃん」


 あ、あれ、マナルンが涙ぐんでいる。そ、そんな感動する内容だったろうか。ええっと、話題をかえよ…、ひばりんも同じ気分だったのか、慌てて、話題にしたのは、


「そういえば、白組の応援パフォーマンスのグループが昨日からやる気を起こしてるみたいなんだけど。なんか、『マングース様』とか『戦乙女(ヴァルキリー)』とか呟きながら、青い顔してたって」


 私、何にも聞いてません。お姉ちゃん、関係ない筈だよ。


 まあ、そんなことも有りつつ、つつがなく衣替えも終了して、来る体育祭当日。

 秋月ルカはその日をテンション高く迎えることが出来ました。


 

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