表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/153

3


 アディーに話を聞こうとしたら、今日は疲れたーと私のベッドに潜り勝手に寝てしまった。……前から気になってたけど、悪魔って睡眠いるの?


 二人三脚の練習を盗撮くんは一切しない。一応、誘ってはみるが、鼻で笑って去っていく。まったく、意味がわからない。こけて笑いものになっても知らないぞ。


 天匙学校は白と青組。全体カラーは白。

 深託学校は赤と黄色組に別れている。全体カラーは赤。

 私、白組のオブジェ班だったのに目の前にあるのは、見事なおにぎり。完成品を一応見たまえと誘われたので、見に来たのだが。うん、何にもしてないから文句は言えないんだけど。


「我が校は、おにぎりと深い繋がりが」

「いや、最初はパンダだった。ただ耳も鼻ももげてな。」


 やだ、ホラーチック。


「やり直す時間もなく、顔の部分を黒く塗った。ふむ、突貫工事も上手くいくものだ。」


 エコですね。無駄にやり直しもしない先輩を尊敬します。

 そして、青組が作った猫の雪だるまっぽいものがとても気になる。……まっしろにゃんこ。


「ペンキが乾ききっていない。もし、抱きつくならば、君は第三の被害者だ」


 え、もう被害者が発生していた事態に私は戦慄した。……だ、誰だ。私のボケを奪ったのはー…っ。


「君の姉が第一の被害者で次は、リンだ。さすがに三人ともになるとかばいたくなくなる」


 お姉ちゃんはともかく、リンは何をしているんだ。


「リンの時は台詞付きだった。『抱きしめてにゃ~』という看板がついていたのだから仕方ないといえば、仕方ない。ただ、ペンキ塗り立ての紙には気づいてほしかったが」


 ……どっちも猫大好きだからね!

 しかし、マッシロにゃんこ。には悪意を感じるぜ。

 桜田ーって呼ばれて体育館から出ていく先輩。うむ。オブジェ班として呼ばれてきたが、おにぎりとにゃんこ。この後校舎に戻ったら雑用の嵐か。……普通に班として動くより忙しいんじゃ。


「あ、ルカ」

「おねえちゃーんっ!!」


 やだ。今日も我が家の女神は輝いている。ハッ、お荷物が。リンよ。どうして、お姉ちゃんが重い荷物を持ち歩いているのにその場にいないんだ!?おのれ。役たたずめ。


「ルカ、そこに置くだけだから」


 手伝おうとしたらやんわり断られた。くすん。

 荷物を置いたお姉ちゃんの視線がどこかに凝視されている。は、マッシロにゃんこ。


「ぺ、ペンキ塗り立てだよ!?」

「うん……塗り直させたからって注意されたの」


 しょんぼりするお姉ちゃんも可愛い!なんだろ。久しぶりに学校でもほのぼのー…、




「どうして、真面目に取り組まないんだ!!」




 聞き覚えのある声の怒鳴り声にびくーってなった。お姉ちゃんが慌てて体育館出入口に行き、運動場をのぞきこむ。私もそれに続くと、30メートルくらい離れた場所で片倉さんと二人の男子が言い争っている。それを遠巻きに眺める二十人くらいのグループ。


「白組の応援パフォーマンスの人たち…」

「片倉さんも?」

「え……?んっと……達也先輩は、青組だったような…」


 リンくんと一緒に100メートル走る筈だからって。そんな覚え方なんだ……うん。リンーっ、お姉ちゃん、絶対脈ありだよ。振られた事なんか忘れて、どんどんアタックしてくれ。


「白組のパフォーマンスは確か、男女混合でチアの制服を着たコスプレショーの筈なの。……空中でバク転するって大技申請があって、却下されてたような気がするの」


 それで、やる気を無くしたとかも聞いてるけど…って、お姉ちゃんがしょんぼりしている。お、お姉ちゃんのせいじゃないのに。

 片倉さんと二人が言い争って、誰かが仲裁に入った。……片倉さんが引いて、踵を返し校舎に戻ろうとするが、まだ何かいい足りないらしい男子が、



「お前、ウザいんだよ!」



 片倉さんが、ピタッと立ち止まる。ーーあ、なんかヤバイかも。

 本能的な何かで、私は上靴のまま片倉さんの方に走る。


「ルカ!」


 お姉ちゃんが、驚いた声をあげる。しかし、すまん。緊急事態だ。

 片倉さんが、ウザイと宣った男の方に振り返り、無言で近づく姿が見える。男がその片倉さんの様子にひいっと悲鳴をあげ身を引いた。えーい。鈍足!もっと、早く走れーっ。よし、走るのが無理なら、大声だ!!


「かたくらさー………ひゃうっ!」


 走るのと大声を同時に出来なかった不器用代表、秋月ルカは盛大にスッ転んだ。ーー顔面から。

 ズジャーッと地面とオデコと膝が擦る音がした。


「~~~っ」


 デコと膝が痛い!


「ルカ!」

「秋月さん!!」


 前後から私を心配して走り寄ってくる姿が。


「ルカ、大丈夫。血、……血が、きゅ、救急車を」


 お姉ちゃんが顔面蒼白になり、パニックなっているとしか思えない発言を。


「いや、マルさん。落ち着いて。保健室で十分だから、ほら、秋月さん」


 立ち上がらせようとしてくれる片倉さんの手をとり、顔を覗きこむと私を心配している以外の感情はなかった。……うん、結果的に良かったかな。なんかさっき、変な感じがしたんだけど。気のせいならいいか。


「歩ける?」

「あ、はい」

「達也先輩、おぶってください」


 お姉ちゃん!?


 片倉さんは、リンじゃないのにとんでもないことを頼むお姉ちゃんを思わず、見つめると、あれ………背中のマングース様が戦闘体勢に入っている気がする。


「ちょっと…、ルカが怪我をする理由をつくってくださった皆様にお話があるので……、当然、後から達也先輩にも、ですから」

「あ…、はい」


 にっこり(・・・・)と、ドスを利かせた微笑みに片倉さんの顔色が悪くなる。

 え、お姉ちゃん。私、結構自爆な気がするけど。白組のパフォーマンスグループの方へと歩いていくお姉ちゃん。

 ど、どうする気だろ。見ていたい気もするけど、片倉さんが私を気遣わしに見つめているので仕方ない。


「片倉さん、よろしくお願いします」





 バツゲームだ。

 傷口を洗ったあと、背負うと膝を曲げなきゃいけないから、痛むだろうと判断された瞬間に姫抱っこに変更された。

 途中で荷物を運んでいたリンと遭遇してしまった。


「……代わりましょうか?」

「いや、軽いし」


 嘘だ。私、ちょっと、ふと…………違うんだ。慰謝料に貰ったチョコレートスィーツを全部食べたりしてないもん。ちゃんと、リンに二つ渡したもん。甘党だから。そういえば、リンって太んないね!ひとつをお姉ちゃんと半分こしたもん。


「ああ、そういえばルカ。二人三脚に出るんでしたね。あれで一位取ると誘った相手にキスしなきゃいけないって知ってました?」


 なんで知ってるの!?そして、初耳なんですが!!


「だから、ほら……確認中」


 自分で撒いた種だからって、片倉さんが。話がまったく繋がりません。


「ああ、では、その時はお願いしますね」


 保健室までついて来て後は自分の仕事に戻るリンと保健室に入ったは良いけれど、殿が居なかった。まあ、体育祭の準備だと保険医って忙しいだろうね。


 簡単な手当ならと椅子に座るように促され、自分は膝をつく体勢で片倉さんが私の膝を手当てする。包帯も綺麗に巻かれ、額には大きな絆創膏を貼られた。……これ、体育祭までには治んないか。


「秋月さん…」

「はい」


 手当を終えて、道具を片付ける片倉さんに話しかけられて返事をすると、片倉さんは私の方を向く。


「もしかして、オレがアイツを殴ると思った」

「はい」


 あ、やべ。ついうっかり。片倉さんが目を丸くした。次いで笑い始めた。一通り、お腹を抱えて笑った片倉さんは、うんって、


「否定しないって言うか、思ったこと隠せないよね。…うん、オレも殴らなかったよって否定できなくなったけど」


 それだけ言って、黙ってしまった。え、っと…、私はどうすればいいのか。泉さんに近寄らないでくださいって?それは、片倉さんを否定する言葉になりそうで言えない。っていうか、なんの権利があって、私がそう言えるんだろう。


 よし、脳内会議よ。なんか話題を………、え?天使?意味が分からん。具体的に!うんうん、天使の名前?…セラ様だよ?は?ばーか!?


「ちょっと、暴言が過ぎないか!!」

「え?」


 思わず、脳内会議を現実でツッコんでしまった。おお、失態!!いつもだって?ふ、……しばらく頼らんぞ。貴様ら!!


「秋月さん?」


 わお、また会議に浸っていたら、片倉さんに心配された。は、そうだ。名前って、


「か、片倉さんに頂いた天使ちゃんの名前が決まってないので、何か候補を!!」


 キョトンとした顔をされた。ああ、どうせ、ヌイグルミに名前を付けるお子様って、


「幼少期にお父さんやお母さんだけが呼んでいた名前を付けると喜ぶって書いてたよ。あの子の説明書で。」


 読まなかったの?って、すみません。ヌイグルミにヤッホーしてました。あ、またお笑いになるんですか。そうですか。


「いや、本当に身を削るなって。うん、秋月さんに本当に元気を貰える」


 お気遣いの言葉に泣きそうです。私に近づいて頭をなでなでする片倉さんにもう気が済むまでどうぞって気がする。目を細め、うんうん、優しい手つきだ。なでなでを甘受していたら突然、その手が止まったのでどうしたのって見上げたら苦笑された。


「守ってあげたいのに…」


 頭を撫でる手は止めて今度は髪を梳く、あれ、これは意外と恥ずかしい気がする。


「どうして、守られてばかりになるんだろう」


 私の髪の毛を丁寧に手で梳きあげて、私が真っ赤になって困惑していることにようやく気づいてくれた片倉さんは、苦笑し、


「本当にあの子(・・・)と違うんだよね」

「え?」


 首を傾げたら、なんでもないって、頭を撫でられた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ