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 あー、最近、珈琲の美味しい店が多すぎる。うん、濃いと美味しいと私は感じる。香りとか豆の品質とかわかんないよ。薄い珈琲は眠気覚ましになんないよね的な。

緊張感が一気に無くなったのは、目の前の美形のせいだ。

やだやだ。気分が滅入るよ。


「『天使』様。私、甘い食べ物にはストレートな飲み物を推奨します」


 いい加減、テーブルいっぱいに並べられた甘味と注文した紅茶に角砂糖をめいいっぱい入れる美形にぐぇっとなる。


「ふん、珈琲など、砂糖がジャリジャリするくらい入れねば味などわかるものか」

「病院に行け」


 味覚障害だろうか。むしろ、お湯でも良いんじゃないのかコイツ。

 いやまて、糖尿病になれば私たちに構う余裕もなくなるかもしれない。……ああ、ダメだ。コイツ、病気にならないかもしんない。

 ん?あれ、そんなイベントなかったか?

 いきなり、熱を出して寝込む天使を看病する主人公…、あ、ダメだ。思い出せない。でも、確かそこで『真名』がわかるんだ。確か…


「『セフィートラ』様、」


 あ、珈琲をジャリジャリさせていたスプーンを止めて、私を凝視してる。ちっ、しまった。情報を小出しにすれば良かった。


「……その馬鹿も『真名』を掴まれたのか」


 馬鹿とはこの悪魔ですか。

 さっきからブツブツ煩いんですが、なんで並んで座らなきゃいけないんですか。嫌がらせですか。


「弱っているところで『真名』まで握られれば狂いもする」


 あら、私。目的達成?

 これでお姉ちゃんとリンを不幸にする『悪魔ルート』編が無くなるのかっ!

 よし、万歳三唱。ばんざーっ


「とり憑かれるな。お前」

「い゛!?」


 こともなげに死刑宣告を放つ天使様。いま、なんと?

 鳥疲れる?

 そうだね。鳥もあんなに飛び回ってたら疲れるよね。

 ………いいじゃんか。現実逃避くらい。


「だ、誰にとり憑かれるんですか!」


思わず助けてくれるのかとまで訊きそうになった。が、待て、私。わざわざ、関わり合いになる方向に持っていっては駄目だ。

ここは、落ち着こう。ほら、珈琲でも飲んで。


「それの眷属だ」

「げぇ」


落ち着けなかった。

 タイミングが悪いことに珈琲を一口含んだところでだ。思いっきり顔をしかめる。あ、珈琲が不味い訳じゃないよ。店員さん。気にしないで。

 私は、ちらっと悪魔を見た。

 まだ、ぶつぶつ言ってる。


「な、なんで」


どもってしまうのは仕方なくないか。天使様は、ため息。


「仇になるからだろ」


 何を当然だろ。みたいな顔で言うんだよ。だいたい、名前、言っただけだぞ。

 天使様は、私の困惑した態度にため息を落とした。


「その様子ではエクソシストではないようだな」

「香水?」

「あるのか?」


 あ、天使様にツッコミ属性求めちゃダメか。


「ならば契約者でもない限り、軽々しく魔に属した者の『真名』を呼ぶな。『真名』は悪魔の心臓だと思え。穢れれば死ぬ」


 ………それ、私にとってグッドなのでは。

 あ、私が名前を呼んだから穢れたー?失礼な。

 しかし、天使様。眉間の皺すごいよ。どうしたの。


「お前、人の身に過ぎた事をしている自覚があるのか」


 ため息だね。ああ、幸せにげるよ。珈琲美味しい。


「天使と悪魔の『真名』を握るなど、大それた事だ。伴侶でもない限り知る事すら憚られる」


 ああ、『悪魔ルート』の主人公が唯一ハッピーエンドになるのって、確か悪魔とくっつくエンドだったな。おお、私の脳細胞がようやく働きだしたか。


「……おい。何をキラキラしている」


 え?キラキラ?あ、そういえば天使様は人の前向きな気持ちが見えるんだった。それで主人公にアドバイスしながら、恋を応援とー…、あ、思い出したらムカムカしてきた。

 お姉ちゃんとリンの記憶を消したのコイツだったな。殴りてえ。

私の態度に不快なものでも感じ取ったのか、眉間に皺つくり、


「危機感を持て馬鹿者!」


 怒鳴らなくてもいいじゃんかよ。あー、悪魔も煩い。

しかし、いっちゃあなんだが、天使に対して良い感情が無いのになんで一緒に珈琲飲んでるんだろう。なんか、やだな。

歩き疲れてやさぐれている私は、だんだん天使の言葉を適当に流していく。


「殺されて、魂すら魔国に連れていかれるかもしれないのだぞ」


 延々とどんなひどい目にあうかを説明されるが、馬の耳に念仏。


「転生も望めぬ」


 はいはい。今してますよ。


「魂は擦りきれ、永遠に業火に焼かれる」


 こわいよー。


「お前の身内も狙われ」

「んだとゴラッ!?」


 思わず悪魔に掴みかかる。隣の席だから楽だよ。


「私のお姉様になんかすんのか!貴様、ぶつぶつ言わずにはっきり言いやがれ!!」


 目の焦点が合わない悪魔に無理難題。

お姉ちゃんにまで、害が行くだと!?

ああ、今日の私、苦労は無駄どころか危険極まりない。ハチの巣を突っつく行為だったなんて。はあ。


「お、おい。少し落ち着け。そうならないようにしてやるから。な、言うことを訊きなさい」


 天使様が私の後ろに回って、悪魔から手をゆっくり離させます。まあ、紳士だね!

 ただ普通の紳士は、人の記憶を消したりしませんが。


「……見た目と違って……いや狂暴な女だな」

「やだ。褒めないでください。何も出ませんよ」


軽口でもたたかんとやってられないぜ。けっ。


「誉めてない」


 席をチェンジされた。私と悪魔の隣同士に危機感を覚えたらしい。眉間の皺凄いね。嫌なんだね。悪魔の隣。だって天使様だから。


「私の眷属もだがこれの眷属もプライドが高い。只人に同属が害されたとなれば、お前の血筋全てを報復の対象にしかねん。」

「え~」


 悪魔や天使はやりたい放題なのにやり返すくらいいいじゃん。護身していいじゃん。

 天使様、頭を押さえないでください。いまだけ、頼ります。あとは、もとの仏教徒に戻ります。


「お前と話していると、救いたくなくなる」


 ……主人公たちの非モテぶりを憐れに思って救済してあげていた慈悲深い貴方様いずこに?

 いまの私は憐れな子羊ですよ?


「バカな。こんなにぷるぷる震えてるんですよ!?」

「まず黙れ」


 最終通告来ましたー。はい。

 しぶしぶ黙って、目の前の珈琲を飲んだ。……吹きそうになった。

 げほっ、あまっ。これ、天使の珈琲か。……天使の珈琲ってなんか飲むとあの世行きな感じがするな。この甘さは毒物ゆえか?


「……もの凄くくだらない事を考えてないか」


 半眼で睨むな。あ、目の色紫ですね。お綺麗ですよ。

 へらへらしていたら、天使様がまたため息。幸せ削ってますね。


「何故だろうな。本当に救いたくない」


 本気で首を傾げるな天使様。


「好き嫌いは行けませんよ。天使様。さあ、私の姉と将来の義兄の為にさくさくご慈悲を分け与えてください。ほらほら、いまだけ天使教」

「…………救済したくない」


 なんだと。この『最低天使』め。


「しかし、主はそれを望んでおられぬ…」


 ふかーい、本当に深いため息ありがとうございます!

 そして、付き合いはこれだけにしたいですね。お互いのために。

 ……………うん、無理だって知ってるよ。



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