天使の祝福。 1
「相談があると言うわりに企んだ顔をしていないからな」
「び、びっくり」
二人が目を丸くした理由は、私が純粋な相談をしようとしているせいらしい。
………うり坊準備を。
セラ様にベッドに座っていただき、私とアディーは正座。
格の違いって奴さ。
「で、なんだ」
「あの、私、ちょっと自分の容量をオーバーしてるみたいです」
「………だろうな」
わかってるなら、指摘してください。なんで、今さら気づいたのかって顔するの?
「アディーの力がある程度戻っている。私が下げたお前の運は戻っている筈だが、……まあ、人間の運などたかが知れている」
なにそれ。初耳。
「だ、から、新しい事もできるようになった!」
「へえ、例えば?」
「るかの思考のベクトルをちょっと、邪魔できるようになった」
ーー私が、思わずアディーの『真名』を呟こうとしても許してくれ。
セラ様、なんでビックリしてるの。知らなかったの!?
「るか、小賢しいけどイノシシだから、思考。ちょっと直感の方向、変えるだけで突っ込んで失敗するって。あおいが」
ーー藤咲っ!!
あれ、悪魔嫌いだったんじゃないの。なに、しっかり指導してるんだ。そして、勉強家だね。アディー。
くそっ、あの預けた時か!
「じゃあ、今日の嫌な感じは!」
「たぶん、おれ」
誇らしげにドヤ顔する。………リン。凄いよ。私が最近、図に乗ってたって見抜いたんだね。自分じゃ気づかなかったのに。アディーの頭を思わず撫でてしまった。じゃあ、マナルンは、弟の盗撮くんが私の写真を勝手に撮ってたせいで気に病んでただけ?
うーん。でも、はっきりしないから、リンに様子を見てて貰うのは止めないでおこう。
「………すまん」
「いえ、アディーのスタイルですから」
気まずげなセラ様に私は、お茶でもどうですか。と聞いてみたら、いらないらしい。苦いからだな。
「最近、私がボーッとするのは?」
「使いなれてないから。ちょっと能力、準備がたいへん」
理由が有ったようだ。なんとなく訊いたのに。
「私と契約切ろうよ」
「やだ」
ーー早く離れたいって言ったじゃん。
まあ、私も離れるべきではないとは思ってるけどさ。
「るか、以外からも供給できるようになった」
えっへん。と胸を張るアディーにセラ様が頭を抱えている。あ、知らなかったんだ。しかし、よく喋るなー。
そうだ。ダメもとでもセラ様から訊いてみれば良いのか。
「セラ様、天使の力の供給方法ってないんですか?」
何故、私を凝視するんですか。別にいいじゃないか。抹殺の方法とかじゃないんだし。……あれ。セラ様、苦々しい顔をしないでください。やだ。私、わ、わるくないもん。
腐った言い分でもないよ。
「セラ、こわがって、るよ?」
アディーが間に入ったー。藤咲か。藤咲が教育したの?あそこまでボロボロ言っておいて、教育してたの!?空気、読める子になってる。
わ、私、感動した。
「何故、アディーの頭を撫でる」
「感激で」
「お前、色々されているのだぞ?」
「悪魔、だから」
また、胸を張ったアディー。でも、ゲームだと『悪魔の囁き』しかなかったけど。……思考のベクトルを変えるのも、『堕落』のひとつなのかな?それとも『破滅』?
しかし、セラ様が殺気だったせいで、空気が重いな。なにか持ってこようかな。
「ーー『感謝』だ」
ボソッと、私が立ち上がって部屋から出ようとしたら、セラ様がボソッと呟いた。え?『感謝』?
「え、っと……私、こんなんですけど。セラ様に凄く感謝してますよ?」
何故、睨むんですか。本当だよ。え、全然供給されてないの?マジでか。
「違う」
自分の不信心ぶりを嘆いていたのにセラ様ったら、目をさ迷わせて言い淀んでいる。
「ーー私自身だ」
「はい?」
「私自身が『感謝』で心を満たさねばならんのだ」
吐き捨てなさったセラ様が、ちょっと、何?
思わずアディーを見たら、へらへら楽しげだ。
「アディー。知ってた?」
「ううん。ただ、セラ、ときどき、かっとう?してたから」
まさか、こいつ、セラ様からも供給してんのか。
「今まで、どうしてたんですか?」
「主に『感謝』していた。ーーそれだけで、我が身が満たされていたのだが、……『この土地』では、我が主に感謝が届かん」
苦渋に満ちた表情をし、黙るセラ様。うん。
「アディー。説明」
「え?……あ、あの、セラの神じゃない、神がいるよ?」
「遣えてる神様じゃなきゃダメなの?」
「わ、わかんない」
確かに悪魔に訊くことじゃないか。でも、アディーは神とかじゃなくて、と続けた。
「せ、セラが『感謝』できる存在、なら、問題ない?んじゃない」
ハキハキ喋れるようになって、ちゃんと自分の考えも言えるようになってーー。ちょっと、ドモるけど。うんうん問題ない。ーー問題なのはセラ様かっ!
「セラ様、ちょっと早く『感謝』しましょうか」
「する対象がない」
きっぱり、お断りしやがった。いやいや待て。
「自然の恵みとか!」
「る、るか。多分してるよ?」
人間相手は確かに難しい性格だけど。アディーが止めに入ってきた。え、もうしてるの?なら問題はないんじゃ。
「おれも、枯らしたりしてたけど……ほとんど、力、もどらない」
アディー、ネクラに頑張ってたんだ。
「た、たぶん、おれと同じで、ランクがあって…そのランクに対する『感謝』によって戻る力が、変わる。神、相手だと神の方が、ランクが上だから、たくさん、力がてに入る。」
私は自分にがっかりした。アディーがすんごい説明してる。今までセラ様ばっかり頼ってごめん。
「あ、あおいに情報を、出すタイミング間違わない、と、たよられるって」
………素直に感謝したくなくなった。何してるの。ねえ、藤咲。貴方、本当に何してるのかな。
「私の事はいい。相談とはなんだ」
「良くないから訊いてるんですよ」
射殺すような目で睨まないで!
「お前に何がわかる」
そう言われてもねー。うーん。
「私的に理解が必要な話だとは思いませんけど?」
「そうか。なら、やめろ。関わるな」
そう言ったきりセラ様が黙ってしまった。あれ?おかしい。言い方が悪かったのかな?
「話、する?」
「んー。するよ。でも、一応、セラ様、聞いてください」
目だけ、私に向けてくる。だって、帰りたいっていったじゃんか。それに私に感謝しろって言ってんじゃないんだから。
「セラ様が、最初に私に関わってきたんですよ。止めときゃいいのに見捨てればいいのに偉そうに。ーー面倒な私、秋月ルカに関わったんですから、この件は諦めておせっかいされるべきだと私は主張します。」
エッヘンと胸を張ったら、セラ様が、……どうしたの?
「ーー本当に救いたくない」
顔を背けていたけれど、……セラ様のいつも通りのその言葉に私は安心できたよ。




