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「……で?」


 自宅に帰った早々なら、お怒りですかー。ははん。で、済むのに、リンは素晴らしい。

 きっちり、夕飯を普通にうちで食べて、お風呂にまで入った私を捕まえて、お父さんに許可まで貰って、私の部屋に居座った。

 私のベッドに座って足を組むリン。

 ………私、部屋の主なのに地面に座ってますよ。えへっ。ーー最近、何言ってのか。さっぱりって。誰よ。そのツッコミ!

 ………え?脳内会議、諦めて、苦行に耐えよって使令を出すな。後ろに携えるオーラ、うり坊に進化の兆しはない。

 立派なイノシシを育てたいのに。


「ルカ」


 あれーっ?どうして、リンが私を心配そうに頭を撫ではじめたんだろ。ハッ、確かにまたボーッとしていた。

 うーん。別に気にする程度じゃないし。……気にする程度じゃないって、どうして、私が判断してるんだろ。ーー生前の経験があるのに?

 あれ?経験?えーと、明日から、マナルンを見張って…見張る?

 見張るじゃなくて、そう、……そう、……なんだっけ?

 あれー?

 違うことを考えよう。……苛められていた泉さんは、今、キャラチェンジしたから、私が話しかけても普通に返してくれた。

 うん、それから、片倉さんが……片倉さんがいつの間にか泉さんと仲良くなってた。それ私、関係ない。妹に欲しいって言われただけだ。うん、傷つかないよ。私には、お姉ちゃんとリンがいて。

 お姉ちゃんのために、光原さんがフラれなきゃいいと、……ココさんって本当に、ひばりんが好きなのかな?光原さんを異性として意識してないならともかく、えーと……。

 あれ?だんだん、わかんなくなってきた。どれが正しいの?何がしたいの?私はー………、


「ーールカッ!」


 切羽詰まったようなリンの声に私は、ビクリッと肩を震わせた。

 ……あれ?また、ぼーっとしてたのかな?


「体育祭の話をしましょうか?」

「……えーと、」

 

 そうだ。合同って、どうしてだろう。そんな話………私のクラス、全然話題に上がってなかったな。競技決めとかいつからだろう?


「神光高校への媚ですよ。ーー自分達の経営する学校の進学率を上げるために市の中で優秀な学校だとアピールする一貫に体育祭が選ばれたらしいです」


 リンの言い分に私、一瞬納得しかかってーーすぐにそれは、無理矢理過ぎないかと混乱する。

 一つの高校の為に二つの中学がそんな方法で媚を売るとか。そんな生徒の負担も考えずに?リンはおかしいって感じないの?否定の言葉はたくさん出るのに。でも、……あれ、でも、



 ーーでも、『神光』は特別だから仕方ないのかな?



 リンが私を撫でている。んー、おかしい。私、大丈夫だよ?


「頼れる人はいないんですか?」

「なにが?」


 聞き返してから、考える。んーと、ココさんの事はどうしよう?

 いきなり、お母さんに会いたいもおかしいし。もう少し精神的に落ち着くまで光原さん以外も側にいてあげれたら…。

 マナルン。ーーマナルン、今日、あんなに楽しそうだった。なんで、私は、自分から話しかけなかったんだろ。盗撮くんの件、そんなに気に病んでなかったような………。

 泉さん………泉さんは、あれ、メール、いつもしてたよ?話しかけなかったけど、だってそういうキャラをしていたんだもの。尊重すべきたよね。

 おかしいな。間違ってないよ。私、間違ってない筈なのに。間違ってる気がするんだろう。


「留学前に僕が言った言葉を覚えてますか?」


 ベッドに座っていたリンが私を隣に座らせた。……肩に抱き寄せてくるリンに私は、ほう…と安堵している。

 ドキドキはするけれど。本当に安心する。ので、冷静に考えれる。


「んーと、『腐った魚でも、』って奴?」


 なんだっけ?ちゃんと覚えてないけど、女は皆揃ってかわいいって言えば、腐ってる魚でも、かわいくなるって解釈した奴だっけ?ーーさすがにないよ。私だって。


「ええ。ルカには比喩過ぎたようですね。……僕が言いたかったのは、頭と耳が腐りそうな言い分でも、友人やら家族、誰か自分に同調する奴が一人でもいれば、いくら正論で諭されようとも、『私、悪くないの』一言で済ます神経の図太い方々が最近増えてますねーって、皮肉でしたが。ルカ、君もですか」


 リンの呆れきった顔に、私はーー私は、顔一点に血が昇るのを感じた。

 え?

 リンには、私もそう見えるの?

 ーーいつから?


「それは、女の子だけじゃないんじゃないかな」

「目に見えて女子のほうが多かったんですよ。まあ、他の意味も込めましたがーールカ、君の最近の考えの自信を裏付けるものが理解できないから、マルが不安になってるってわかってますか」

「ふあん?」


 あれ、『秋月ルカ』のせいじゃないの?

 私自身のせい?


「何があったのかまでは、言いませんでした。でも、僕をフッた理由は『ルカが私を好きだと言ってるの。それを大切にしたいの。これ以上は求めちゃダメなの』だそうです。」

「マナルンは『幸せすぎて怖い』んじゃないかって」


 苦笑された。


「……鋭いですけど、半分です。ーールカ、自分が今一番大事にしないといけないものは何ですか」

「お姉ちゃん!」

「違います」


 間違いないだろうと胸を張って答えたのにリンが、あっさり否定した。ひどい。


「ルカ自身です。あれもこれも詰め込みすぎです。愛川さんが心配なら、クラスメイトの僕が見ててあげますから」

「好きにならない?」


 リン殿。心底不愉快ですか。だって、マナルン、攻略キャラらしくかわいいんだぞ!


「……言っておきますけど、僕、君のせいでモテなくなりましたよ」


 何故か渋面をつくるリンに私は首を傾げる。えー、きゃーきゃー言われてるじゃん。


「毎日毎日、『お姉ちゃんと結婚してー』って騒ぎながら僕についてくる君を煩く思う人もいたんですけどね。マルが…『私のルカをいじめたら許しません』って笑顔で」


 なんで視線を反らすの。リン。


「…それ以来、三人セットみたいな扱いですよ」

「初めて知った」


 おおっ、二、三年生が私を威圧しないのは、お姉ちゃんとリンのおかげだったのか。なんか、毎日、リンとお姉ちゃんを付け回してもあんまり怒られないなーとは感じてたけど。


「だから、ーーちゃんと、ルカを守れる所があるんですよ。一人でコソコソ何かしないで。頼るべき所は頼って。きちんと自分を保ちなさい。」

「……頼っていいの?」


 本当に不快そうに私を睨み付けるリン。


「当たり前の事を聞くんじゃない」


 あ、目から鱗だ。


「……何度もいいますけど、ルカが僕に気を使わないでいいんですからね。いつも通り、『お姉ちゃんと~』って言ってくれないと、僕も戦意がなくなりそうですから」


 なんでか、ティッシュで顔を拭かれてる。目から鱗が流れているからですね。わかります。


「戦意?」


 何故か二人できょとんとしてしまった。


「ーー僕言ったじゃないですか」

「腐った?」

「違います。ーー好きな相手は絶対逃がさないって」


 リンがにっこり微笑んだ。


 その時、なんと言いましょうか。魔王様の眼が確かに獲物を狩る肉食獣の輝きを放っていらっしゃるのをわたくしは確かに見届けました。マングース様は勝てるのか。


 おねーちゃーんっ、ごめん。それでも私は、リンを応援するーっ!



「いつか、きっとマルに『これ以上』を望ませてみせますから。心配せずに頼りなさい。僕がルカのお義兄様なんでしょ」

「………うん!!」


 リンが、自分の家に戻って行くのを二階から見届けて、目から鱗が落ちた私はアディーを喚んでみる。


「どうした」

「るか」


 何故か半泣きで私に抱きついてきたアディーと、偉そうなセラ様にちょっと相談が。と私が言えば、何故か目を丸くする二人(?)

 いや、結構頼ってるんだけど。何、その反応。

 相談躊躇っちゃうぞ。



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