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ジェットコースターに三回乗った。後悔はない。
最後に観覧車になった。グループ決めはグーパーで決めることになったので、パーだした。パーだからパー?……よし、その喧嘩買った!嘘です。ごめんなさい!
ひゃっほー。ココさんとセラ様と同じだぜ。こらこら、男性諸君。何、また絶叫系に行こうとしてる。ーーセラ様が二人の頭押さえてる。
ついにそこまで。
まあ、仕方ないよ。男二人で観覧車は……当人同士の気持ち次第だね!
「終わったら、連絡する」
セラ様、気分は引率の先生だろう。……保育園の。
ガッタンゴットン。と不吉な音ともに空に。
「セラ様ーっ、ほら、空だよ!」
「わかってる」
なんだか、心なしかセラ様の目がきらきらしている気がする。
「……帰りたいの?」
「ーー当たり前だ」
愚問だった。ココさんの前だからと失言だって叱られもしなかった。……無実の罪で陥れられたって言ってたなー。じゃあ、いつか、無実が証明されたり、刑期が明けたりするんだろうか。
それなら、やっぱり、セラ様が消えないようにしないと。……悪魔の力の供給方法があるなら、天使だってある筈だ。
セラ様自身は知らないのかな?私が協力できる事じゃないのか?訊いて答えなかった場合として、うーん。詳しそうなのって、………藤咲さんだよね。アディーを迎えに行ったら、さらっと訊いてみよう。深刻ぶって訊いたらニヤニヤしながら変な取引されたらどうしよう。
「ね、ねえ」
「なんだ」
「どうして、様付けなの?」
「………」
セラ様に睨まれた。朝に注意されてたことだもんね。うん。……少し、考え…うん。
「美貌に惚れて」
無言で頭を掴まないでください。しかし、ココさんは納得したらしい。
「確かに敗けを認めざる得ない美しさだわ」
「……礼は言わんぞ」
心底、可哀想なものを見る目で私とココさんを見ないでください。
「……ところで、ルー」
ココさんは私を光原さんと同じようにルー呼びになった。大柴も付けて!と言うべきだったか悩みどころだったが、今後も考え一発ネタには走らなかった。
耐えたよ!ボケの誘惑に耐えた!!
「好きな人っているの?聞いてあげなくもないわよ」
一瞬、ココさんが何を言ってるのかちょっとわかりませんでした。え?
「………いないの?」
不安と安堵が入り交じった表情をされた。スキナヒト…?ああ、うんなるほど。
「お姉ちゃん!」
「ーー異性でって意味よ!!」
おおっ、怒られた。え?えーと、じゃあ…。
「リン」
「リン?女の子じゃなくて?」
そう、鈴と書いてリン。……言うと、ちょっとお怒りになる。
「好きなの?」
「大好きです!」
なにせ、将来のお義兄様だ。セラ様が渋い顔をしている。
「……何故だか、話がずれてるように聞こえるのはわざとか?」
好きな異性だもん。リンで問題ないじゃん。ぶー。
「このヘアピンくれたのもリンです」
「趣味が悪い男なのね」
私の趣味に合わせたリンがボロカスに言われてるーっ!
何、そんなに似合わないの!?
で、でも、褒めてくれた人もいた。もしかして、見る人の目によって変わるヘアピンなのか!?
なにそれ、怖い。
「……じゃあ、月夜とは付き合ってないのね」
「はい。でも、ひばりんは今のところ恋より友情だと思いますよ」
ーー睨まれている。
いやだって、ひばりんがココさんを怖い理由の一つって、いきなり向けられる好意が恋に変わったせいじゃないか。幼なじみ同士だったら、好かれてた訳だから。……ひばりんって、とんでもなく忍耐力があるよね。光原さんは恋は盲目だしね!
「好き嫌い以前に怯えられていることを気にしろ。親に頼って拘束しようが恨まれるだけで、好意とは程遠くなる」
セラ様、どこで何を学んでいるんですか。そんな人間関係に詳しいなら『天使の祝福』いらないよ。あれ、ある意味卑怯。強制恋愛イベントだもん。ラブハプニング!!
あ、ごめん。生前プラスαだから。え?センスのなさが輝いてた。やだ、誉めてないよね!!
ーー誰かこの頭をどうにかしてください。
「だって、ママが」
「ママではなく、お前の考えを答えろ。だいたい、何故、ひばりんなんだ。光原の方がお前に合っているように見える」
セラ様、そこまで深く訊いていいの?……あ、私に視線を送ってきてる。訊いておけってこと?
「だって、ママが『片親だけの相手は心美に似合わない』って」
なにその理屈!セラ様は冷たい目をしただけだ。やつぎに質問を続ける。
「ひばりんは?」
なんだか、聞きたいことだったのに責める相手が違うと感じる。……それになんとなく、この手口は覚えがある。
「『心美の相手に年下の子がいいわ』って。『女の方が長生きだから 』『月夜君みたいな子がママは好きよ』『月夜君と心美が結婚したら、ママと月夜君のママは親戚なのね』って……ママが言うんだもん」
セラ様がふうっと溜息を吐いた。
「お前の意見はないのか」
「だって…っ」
目じりに涙を溜めるココさんに二枚目のハンカチを渡す。
「セラ様、きつい」
「そうじゃないだろ。お前の本音はなんだ」
「ママ、怖い」
きっぱり、言いきったらココさんが、私を睨んで手を振り上げてきた。あ~、打たれるのかなって思ったけれど、……耐えてる。ーーうん、耐えれるんだ。
「……ママは、後妻なの」
私の隣にすとんっと腰を下ろすココさんにうん、と頷く。
「六歳までママがいなくて、友達もいなくて……誕生日に合わせたようにパパがママを連れてきたの。緊張していたあたしに優しく『心美ちゃんが望むものは全部用意してあげる』って。その後からテルや月夜って友達が出来たの。ママは恩人なの。だから、あたしも『ママが望むものを用意してあげないといけない』って」
「それはー…」
「ねえ、ココさん。参考までに訊くけど」
セラ様の追及を黙らせ、私はにっこりと微笑む。
「たまーに甘い声やらなんでも訊いてしまいそうになる声が頭に響いたりしない?」
なんで、そんなことを訊くんだとセラ様が咎めてくるが、いやいや、なんとなく可能性の話だから。藤咲さんの事を考えたおかげか。げ、有り難くない。
まあ、ココさんとママの関係みたいなのはないことはないが、それより、天使が消えなければならないくらいの奇跡の代償が気になる。甦れゲーム脳。
セラ様が熱を出すのはメインだけだったから可能性として知りたい。
そして、私の考えている線が関係なくても、ココさんが頑張れば改善できるところがあるから、まずそこから協力しよう。
セラ様が積極的っぽいし。
「え、……そ、それは……確かに自分でも信じられない様なことで怒鳴ったり、人を殴っていたり… …たまにその事実すら忘れて、ひんしゅくを買ったり…そんな子の側に誰も居てくれるわけが」
なんだろ。とても、心えぐられます。え、似たようなとこがあるからだろ?………耳も痛い。
そういえば、私がココさんに殴られた時、光原さんはココさんを妄信していたのに今は、なんだか一歩引いて周りが見えている様な?気のせい?
『悪魔ルート』だと互いに依存しすぎて家族に見捨てられ…『天使ルート』は、想い人、つまりひばりんを殺して天使様が、消える。
でも、ヒロインが『殺して、じゃないと幸せになれない!』って、言葉が本当は、殺してほしかった相手が想い人じゃなく、母親だった可能性は?
……あ、係員さんこんにちわー。観覧車終わってしまった……考え事に向かない場所だった。
私は、返ってきたばかりのひまわりヘアピンを外し、ココさんの手に置く。
「な、なによ」
「怒りそうになったら、これを見て一拍置きましょう」
「え?」
「リンの有り難いお守りだそうです。片倉さんがご利益を保証してくれました。ついでに私からは、呪いを」
「呪うな」
「セラ様から、『祝福』を」
セラ様が頭を抱えた。いいじゃないですか。
観覧車から降りると、ココさんが大事そうにヘアピンを眺めている。
「怒りそうになったら、ヘアピンを見てくださいね」
「わかってるわよ。こんな子供っぽいの。見てるだけでーー笑っちゃうわ」
本当に笑っちゃうのか、さっきからずーっと笑っている。……泣くぞ。そんなに趣味が悪いの?
「ひばりんの事、少し冷静に考えて見ろ」
「……うん」
おお、素直だ。祝福効果かな?ーーラブハプニングじゃないけど。
「あたしから、メールしてあげるから。貴女からもしなさいよ」
ココさんを迎えに来た車で(リムジンだった)共通の帰り道まで乗せて貰い、帰り際の捨て台詞にあんまり多いと着信拒否しますと言っておく。あ、怒鳴りかけて…深呼吸。
「あ、あたしが貴女程度に時間を浪費するわけないでしょ」
皆様、苦笑は止めてあげてください。あ、失笑ですか。失礼しました。
「月夜も、携帯買い直したら教えな、……てね」
どうした、男性諸君。目を丸くして。君たちが絶叫系にうつつを抜かしている間に女子(?)達の友情は磨かれたような気がする。
今のところ、気がするだけだよー。
ひばりんがうちまで送ってくれた。セラ様は途中でアディーを迎えに行くと去って行った。心配だったんだ。あんなにそわそわさせてごめんね。なにか藤咲さんに聞きたかったら改めてにしろと。……菓子折りの準備だーっ!
そして、私は、思うところがあるんだ。
「ひばりん、私が今年のひばりんの誕生日を一緒に過ごすのは好ましくないんだって思ったの。プレゼントも、形に残るものはやめるね」
理解していた事なのかひばりんは頷いてくれた。……私、生前プラスαなのにひばりんのほうが大人だと思うよ。本当に。
と、いう風に安心していたのに次の日に留学先から心底具合の悪そうな顔でリンが帰ってきた…え、なんで、こんなに早く帰ってきたの?なんで私を睨むの?
深夜に帰ってきたお隣さんにお父さんとお母さんは歓迎し、お姉ちゃんは寝てしまった。
いきなりだけど……帰るって連絡は有ったのに少し頑張れば顔が見れたのに。会うのを拒否するようなお姉ちゃんを疑問に思いながら私が頑張って起きていた。なのにリンは私を機嫌悪く睨んだ。
「ルカ、僕が渡した物をどうしました」
え、どうもしてないよ?カードは手元にあるよ?ヘアピンは……許してくれ。
「いえ、いいです。おかげで、マルの様子がわかりましたから」
そう言いながらも顔色の悪いリンに私は不安になった。なんで、こんなこと聞いたんだろうってことだ。
「消えない?」
あ、心底、気分が悪いこと訊かれた時の反応をされた。
「バカな事言う前に何かいうことは?」
なんだろ?頭を捕まれながら考える。うーん?あ、帰ってきたら言うことか。
「おかえりなさい」
不服そうに私を睨んだまま、あれ、間違ったかなと不安になったけど、
「最初に言いなさい。………ただいま、ルカ。」
頭をなでなでしてくれるリンに私がその日、甘えすぎたせいか次の日から、リンは三日三晩高熱を出して寝込んでしまった。




