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「ーーなにか言うことはないのか」


 ひばりんと光原さんを連れ戻し、特大な雷を落とすセラ様。あ、本格的な奴じゃないよー。どこかの勇者しか使えない雷撃的な奴じゃなくて。…私はいったい何を言ってるんだろう。ともかくーー自分じゃなく、他の人が怒られてるっ姿を新鮮な気持ちで見ている自分が怖い。

 光原さんとひばりんがしょんぼりしている。いや、言い分はわかった。目の前に大好きなアトラクションだからね。ワクワクしちゃったんだもんね。私達をすっかり忘れるとかーー。

 セラ様、もっと言ってやれー。そういえば、ひばりんには動物園の時も忘れられたな。私。



「「ごめん」」



「今日は、婦女子も一緒なのだから、彼女達を優先するべきだろう」



 そこで、がっかりした顔しちゃダメだよ。ひばりん、光原さん。


「ひ…、葛西と私はスカートだからな。お前達が絶叫系に乗る間は他に居よう。携帯と地図があるのだ。最大限利用すべきだと思う。それなら、互いに無理なく遊べる。そうだな」



 名奉行!?

 やだ。セラ様が、やはり、リア充みたいだ!そして、うっかりが私から移ってるね!ヒロイン様って言おうとした!!


「秋月、絶叫系好きなん?」

「うん。高い所好き」


 ………今の発言で皆が言いたいことはわかっている。え?かわいそうだから言わないでおくって?な、なんだ。ちょっとあんし…ふ、フェイントをかけるつもりだな!……え、本当にいうつもりなかったのに?……疑って悪かった。はん。ばーか?言ってるじゃないか!


 あ、ヒロイン様、不機嫌な顔してる。……まあ、その程度で良かった。さっき見たいに人目も憚らず泣かれるよりは。

 しかし、光原さんも、うっかり、葛西さんを忘れる事があるんだな。


「心美、どこに行く?」


 ツーンッと無視する葛西さん。まあ、仕方ない。私も呆然としたからね。


「お化け屋敷とかいいんじゃないかな。皆で入れるし」

「お前にしてはまともだな」

「ふふん。セラ様を見てたら思い付きました」


 あ、無言でチョップはやめてください。しかも、ひばりんの目がないところでですね。ひどっ。

 あれー、どうして私の腕とセラ様の腕を引くんですか。ヒロイン様。



「行くわよ」


 お化け屋敷かー、いや、お化けは怖くないんだよ。だって、私がそうじゃん。似たようなもんだ。……え、違うのかな?ただ、びっくりさせてやろうって気合いで出来てるからなー。

 それより、バンビのようにぶるぶる震えている葛西さんをどうしよう。


「心美、怖いならオレに」

「怖くないわ!」


 涙目だよ。


「安心しろ。私がついている」


 え?憑くの?ごめん。ジョークだから、セラ様。睨まないで。しかし、男前すぎて普通なら惚れるよ。ーー女が。

 そして、そっと私の手を握るひばりん。……怖いのかな?顔色、悪いよ。

 やだ。この中で女子力高いのヒロイン様とひばりんじゃん。私、悪魔すら恐れなかった女だ。任せろ。

 お化け屋敷の中って寒いねー。あー、先に行った客の悲鳴が聞こえる。薄暗い。

 そして、振動が……、


「大丈夫か。葛西」

「だ、大丈夫よ」


 生まれたての子牛もびっくりな震えようだよ。ひばりん、私の手は逃げないから、そんな強く握らないで。


「あ、秋月は俺が守るから」

「いや…、うん」


 男の子の見栄を否定しちゃだめだ。


「光原、怖いなら手を握ってやる」


 セラ様が積極的ーッじゃなかった。どうも、私以外のキョドりっぷりに皆怖がってると判断したらしく、空いてるほうの手を差し出している。やだ。仲良しグループみたい。


「じゃあ」


 別に怖がってる雰囲気でもない光原さんがセラ様と手を繋いでいる。

 うーん……恋が生まれそうにないな。


「葛西さん、ほら、目を開けないと歩けませんよ。……あ、ろくろッ首」

「ひぃっ!」

「あれは、落武者ですねー。ああ、なんで、ミイラと吸血鬼が和洋折衷か。節操がなさすぎる」

「「………っ!!」」


 私が行く先々で指す物に悲鳴にならない悲鳴をあげる葛西さんとひばりん。


「……ルーは平気なんだ。意外」


 光原さんが苦笑している。いやいや、お互い様だよ。


「クオリティが低いと思うのですが」

「うーん。確かに国はどれかに片寄らせたほうが良かったかも」

「井戸から出てくる吸血鬼って斬新ですよね」

「お前達は言いたい放題だな」


 正直、このお化け屋敷酷い出来だよ。


「心美。もう少しだから頑張って」

「……っわか、ってるわ」

「月夜も」

「…………うん」


 ひゅーどろーん的な音もそろそろ終わりか。しかし、葛西さんが、何故か私のほうの腕にしっかりしがみつき始めたのは、私側にひばりんがいるからだろうか。

 

 よし、ゴール。と外の光が眩しい。ひばりんがまだ手を繋いでいるが、葛西さんはへなへなと地面に座り込んだので、セラ様が身体を持ち上げている。


「どうする。次は」

「近くにバンジーがあるよ」


 あ、光原さん行きたいんだ。


「わかった。ひばりんと葛西は私が預かるから一緒に行ってこい」


 ーーマジですか。セラ様。もう一度確認しますが、マジですか。


「セラ様、マジですか!」

「大丈夫だ。行ってこい。お前は高い所が好きだからな」


 うん。言ったけどさー。光原さんがニコニコしてる。なんか、大型わんこみたいに嬉しくて仕方ないのが伝わる笑顔だよ。尻尾があったら振ってる?


「行こう。ルー。月夜も回復したら来い」

「んー…」


 ひばりん、お化け屋敷ショックが抜けてないんだ。ごめんよ。

 はい。バンジーって跳べる人間の気持ちがわからない。いたけど。目の前に。


「楽しかった!もう一回」

「もう、ほら。葛西さんから電話着ましたよー」


 子供だ。完璧に子供がいる。私、保護者の気分!


「次、何すると思う?」

「コーヒーカップ回しましょう。全力で」


 それには女子は乗せずにひばりんと光原さんだけのグループにしよう。駄目だ。場所が悪い。そして、光原さんのテンションもおかしい。

 夏だから、改めて残暑に恋をしよう!が全然出来ない。…っくそ。帰ったら緊急脳内会議だ!!


「そうだ。ルー」

「なんですかー。もう一回とかダメですからね」

「違うから。こっち向いて」


 クスクス笑う光原さんにむき直すと、右耳の方の髪を掬われ、なにかをパチッと留められる。


「ん?」

「はい。返すよ。今までありがとう」

「ああ、ひまわりヘアピン!」


 わーい。リンが帰ってくる前に返ってきたー。


「なんだか、お守りのような気がしてきて返すのが惜しい気がしてきたんだけど。やっぱり、ルーによく似合うよ」


 やだ。褒め上手。

 綺麗な目をした光原さんに見つめられると、……うん。罪悪感が。

 藤咲さんと『秋月ルカ』のせいとはいえ、私、あの時おかしい態度だったもんね。……いつも通りとか聞かんぞ。


「あの、光原さん」

「そういえば、ルー」

「はい」


 謝ろうとしたら腰を折られた。これが、主人公様ペースなのかと憤慨しかかったが、


「あの、『夏だから、恋をしよう』の相手って」

「?はい」


 何だろう。もう候補いるのかな。葛西さんでいいとかは許さん、


「……ううん、やっぱり、いいよ。オレが決めることだから」


 にこーっと微笑まれた。確かにその通りなので、頷き返す。私の都合だしね。うまく行かなくても仕方ない。そしたら、他の作戦を考えるだけだ。


「あ、でも、光原さん。私、絶対光原さんの恋の相手に許さない相手がいますよ」

「?だれ」


 これだけは、と釘を刺す。


「私のお姉ちゃんと将来のお義兄様です」

「……全然、知らない人なんだけど」


 なんだとーー!!

 私が、その後、二人がどれだけすばらしいカップルかを延々と光原さんと迎えに来たひばりんに熱く語ったことか。何故だ。ひばりん。困った妹って名高いとか説明するんじゃない。




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