2
※彼女の言い分の続きです。
一体いつから待っていたのか。近くの喫茶店に連行された。……奢りだそうで勝手に紅茶とデザートが並んでいく。
「相談させなさい」
え?何、させなさいって何?私、意味がわかんないよ?
「なんで、月夜はあたしから離れるの?」
「怖いからです」
あ、反射的に答えちゃった。やだ。睨まないで。美人が台無しだよ。
「怖いってどこが」
「怒りっぽいところ?」
「あたしのどこがよ!」
「そこです」
ビシッと指摘したら、ググッ押し黙った。
デザートだ。食べたいなー。でも、奢られたくな……
「貴女が食べなきゃ廃棄処分でしょうね」
あー、最近、紅茶もいいかなーって思い始めたよ。
「カロリーが一番高いヤツよ」
ボソッとなんだ。その呪いは!ハッ、だから、貴様のはゼリーなのか。ふざけるな!私は、夏頑張って、五百グラム痩せたんだぞ!
………あんなに頑張ったのにどうして、その程度なんだろ。ーー食べる量だと!?おいしくご飯は食べたいじゃないか。いや、……それ以外にもパーティーの時に立食だったから、細々たべ……げふん。……キャビア初めて食べたけど、美味しくなかった。味覚が子供のせいかな?
は、まさか、安物!?
「……あと、なんか言ってなかった」
ほら、アーン。とゼリーまで食べさせられた。
「私の感想ですが」
「訊いてないわ」
「……メール、気持ち悪かった」
もぐもぐとケーキも頬張る。情報料か。何か、ヒロイン様が愕然としていらっしゃる。え、あれ気持ち悪い量だよ?
「て、テルは普通に」
「光原さん、愛が重たい方ですから」
あ、私に向かって水の入ったコップをどうするつもりですか。とってー、……置いた。
「………で」
ガタガタ、身体を震わせながら何か耐えていらっしゃる。が、頑張ってる…っ。ヒロイン様がかなり頑張って自分を抑えている。
「で、とは?」
「他にあるでしょ!」
他に……ありすぎて全部語っていいのかな?ーーいや駄目だ。逆上したら目も当てられない。
「そうですねー。こっちには昨日みたいになった理由はわかりかねますが葛西さんは心当たりは?」
「……ッ、ーーあるわ」
苛立たしげに私を睨み付ける葛西さん。私に説明したくないのかな?しかし、背に腹はかえられないのか、不満げに。
「塾を辞めるって言うから。最近、成績を落とし始めてる事を理由におば様に何か他に浮わついているんじゃないかって進言して差し上げたの。今までどおりならあたし達がちゃんと見ててあげれるって」
雲雀母ーッ!
なんもわかってなかったの?ひばりんのあの日の涙より成績なの?
私はテーブルに突っ伏したい衝動と必死に戦う。
「そしたら、おば様と大喧嘩したらしくて、あたしにまで…っ。だから、誕生日を祝ってあげて。また昔みたいに仲良くなりたいの。……うぅん、それ以上に」
ポッと、頬を赤くする葛西さんにさすが美少女。見た目は可愛らしいのに何故、中身が伴わないんだ。……私に言われたくないね。ふふん。美少女設定だぜ!
……あ、不審者じゃないのでカラーボールは勘弁してください。
「貴女、本当に月夜とデートするの」
上目遣いに訊かれ、さて、どうしよう。……この様子だと雲雀母にとって、私はあまり良くない相手に映っている可能性がある。
しかし、あんなに会長様にスパルタ教育を受けたのにどうして成績が下がったんだろ。……私のレベルだったせいかな。うーん…。
「デートじゃなくて、遊びに行く方向で」
「それをデートっていうんでしょ!」
バンッとテーブルを叩かれた。うん、情緒不安定だな。
「月夜にプレゼントだってしたんでしょ。何よ。あの趣味の悪い靴下」
チッ。あの可愛らしさがわからないとは残念だ。……いや、それより、どうやってわかったんだ。靴下の柄。
「おば様がママにメールしてきたの。『流行ってるのかしら』って」
私、唖然となった。え、……こわっ。なにそれ、息子へのプレゼントを写メして友人に流すの?うわー。
「もちろん、貴女の趣味の悪さは伝えておいたわ。……本当にお粗末ね。貴女って」
勝ち誇った笑みにムカッとしたが。うーん。なんだろ。問題なのって、ヒロイン様じゃなく、ひばりんたちの母親たちの友情なのかな?光原さんのお母さんも葛西さんを大事にしろって教えてるらしいし。ヒエラルキーのトップが葛西ママになってるのかな?
「あ、そういえば、光原さん。どうしてます?」
いつも、葛西さんが現れると後ろにいる筈なのに何故かいない。ーー何故、睨むヒロイン様。
「何よ。貴女もテルのファンなの」
「いえ、いつも一緒のイメージなので」
どちらかというと葛西さんがオマケのイメージだが。
「テルも最近、浮わついてるのよ!こんな大事な時期にあんなイメチェンしなくても…っ。女がまとわりついて邪魔で仕方ないわ!今日だって。アイツが捕まって」
ぶちぶち文句を連ねるヒロイン様に私は内心小躍りだ。ーーひゃっほー。距離を置かせる作戦順調だぜ!
「カッコいいですからね。光原さん」
「ウザいわ。ママが言うから、一緒にいるけど」
ーームカッ。
「そうですかー。じゃあ、誰かとくっついても構いませんよね。私、本気で綺麗な子知ってるんで紹介しますよー」
「へえ、女が褒めるって大概自分より下か。心が綺麗ってオチよねー」
バチバチと火花がヒロイン様と私の間に飛んだ気がする。……くくっ。ナメんなよ。私の交遊関係。
残暑に始まる恋。よし、ぎりぎりセーフだな。
「ぜひ、紹介しますよ。光原さんに」
「いいわー。是非、見てあげたいから、どう?今度の日曜、月夜も誘って遊びに行きましょう」
「わかりました。問題ございません」
…………ん?問題ある気がする。どこだ?
そして、葛西さんがガッツポーズしているのが見える。
あ、ひばりんの許可貰ってない。
それに気づいたのは次の日、顔色悪く私に謝ってきたひばりんを見た後で、その件で平謝りする私に力なく、
「秋月を無理やり巻き込んだの俺だから」
……あれ、なんだかとても悪いことをした気がしてくらくらしてきた。
「あ、あのね。ひばりん」
「ん?」
「誕生日も遊びに行こうか?」
……あれ、ひばりんが私の頭を撫でてる。どうして?
「無理しなくていいから」
ーー無理って、なんだろ?
しかし、約束してしまったことは仕方ない。私は光原さん攻略の為に動き出さないと。そして、ひばりんに少しでも楽しくしてもらわないと。
「と、言うわけでお願いがあるんです。セラ様」
久しぶりに会いに来いと念じたら意気揚々と部屋に現れたアディー疲れた顔をしたセラ様。アディーをじろじろ眺め傷口がなかったので、とりあえず、口の中にケース3の特製調味料(味塩コショウ・タバスコ・からし・珈琲・他少々)を放り込み、ぐえーっと喉を押さえて暴れるのを確認し、次は塗りこみ型だな…と呟いておく。必死に頷くアディー。
さて、さっそく頼みごとを口にしてみる。
「セラ様、男を一人たぶらかした………いたっ」
最後まで言わせず、私の頭を掴むのは止めてください。
「敬虔なる神の使徒に何をやらせる気だ」
「神の威光を借りた恋愛を」
「ほう…貴様の相手か?」
興味深そうに手を離すセラ様に私は満面の笑みだ。
「いいえ、セラ様にたぶらかして貰おうと」
あ、今度は念入りに頭から潰そうとするのは止めてください。
「貴様は…っ」
「へい、セラ様」
「どうして、そこまで愚かなのだ。」
「わかりません!!」
あ、脱力してる。
「神よ。この度し難い愚者にすら救いをと申すのでしょうか」
「セラ様、大丈夫。明日は雨らしいです」
「?それがなんだ」
「雨といったらアメージング!!」
セラ様、止めてください。
そのケース2の奴はまじりっけのないタバスコです。私の口に入れようとしないでください。あ、ため息ですか。そして、私をじーっと青年姿で見下さないで。
「本当に救いたくない……っ」
それ、何度目ですか。セラ様。




