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 豊満保険医がいなかった。……残念とは思っていないが、タオルを借りて洗い物はカゴの中へと書いているのでポイッ。お礼メモも残しておこう。


 さて、帰るか。


 帰り道をとことこと、二人並んで帰る。

 荷物がいつの間にか片倉さんの手の中にある。……恐怖。

 そういうば、買ったときも「何買ったの?見せて」と言った感じで、今は「タオル、カゴに入れてきて」と言った隙に荷物が片倉さんの手に………くそ、この隙のなさがモテ男かッ!…それとも、私がボーッとしすぎなのか?

 ちょっとー、誰か教えてくださーい。………ふんふん。……モテる奴の行動を知ってたら、実践してるって?え、真似してみろ?ーー私が片倉さんの真似をしろと……?


「……秋月さん、なんでひきつけ起こしたような顔してるの?」


 ーー爽やかな笑顔のつもりだったよー。ひきつけってなにさー。

 ハッ、リンの真似なら出来そう……あ、なんか殺気を感じる。しかし、モテ男を実践しなければならないという使命が。


「秋月さん?」

「なんですか。片倉さん」


 にっこり、あの時々薄ら笑いを浮かべて、毒舌を放つリンの真似か。



「……」

「……」



 特に毒を放つ瞬間がない。っていうか、これでモテるのか?

 藤咲さんの真似は本格的にアウトな気がする。会長は特殊な系統だし。あとは、……ひばりん?


「秋月さん、またボーッとしてる?」

「いえ、モテについて誰を参考にしようかと、リンが難しくて」

「ああ……、『お兄ちゃん』が恋しくなったのか」

「はい?」


 片倉さんが多大な勘違いをなさってる。荷物で塞がってない方の手で頭を撫でてくる。……この人、頭撫でるの好きだな。


「リンの代わりにならないかもしれないけど、甘えてくれて良いよ」


 ーーよし、脳内会議をおこな……っ何故、お前らは茹で上がってるんだ!?え?笑顔が凶悪すぎる?……あ、間違った。強力すぎる。破壊力が抜群?バカな。我々は、美形のーーそうリンの笑顔に慣れてるじゃないか。

 ーーあ、慣れてない時もあるね。じゃあ、この異常な心臓の爆発するんじゃないかっていうくらいの動きは仕方ないよねー。おおう、鎮める方法にお姉ちゃんのマングース様!!

 え、召喚主が違うと力がでない?そんなー。

 アワアワしていたら、片倉さんが何故か頭を撫でるの手を止めた。な、何故?


「あー、ごめん。こういう言い方、気持ち悪かったか」


 あれ、なんで傷ついたような顔をするんだろ。私のせいか?罪悪感でチクチクと心臓が痛いのですが。


「オレが言われた事じゃないけど…」

「はい」


 少し、自嘲気味に微笑む片倉さんに首を傾げる。自分が言われた事じゃないなら、気にしなければいいのに。


「真剣に相手を怒ったり、心配すると気持ち悪かったり、うざい(・・・)んだって。で、言い方ひとつで変わるってわかった瞬間、楽だなーって思って…」


 ジーッと片倉さんを眺めていたら、眦を下げていた顔を無理矢理に笑顔に取り繕った。


「うん。だからね。リンの代わりでいいから『お兄ちゃん』と思って慕ってくれてもいいよ。みたいなーー弟か妹がずっと欲しかったから。秋月さんがそうなら、嬉しい」

「………私が『妹だと嬉しい』?」


 あれ、どこかで聞いた言葉だ。どこだっけ?リン?……違うな。リンは、もう少しまともになってくれって頼んでくるから。じゃあ、どこだろ。誰が、私に『妹』になれって?

 心臓が痛いのは、私かな?じゃあ、悲鳴をあげてるのは誰だ。あー、また、引っ張られたくない。


『……ッ!!』


 ーーうるさいっ、片倉さんを傷つけようとするな。『お兄ちゃん』じゃないって泣くな。いま、なんだか。泣きたいのがお前だけだと思うな。


「ーー秋月さん?」


 ハッ、として顔をあげる。口をパクパクさせてみる。……うん、余計なことを言わないようだ。なんだろ。生前の記憶に引っ張られたようだ。

 まったく。ーー見上げた私を心配そうに見つめる片倉さんにニィッと微笑むと面をくらったように瞬きされた。


「片倉さん、私を妹にしたかったら、お姉ちゃんと結婚しなきゃいけませんので。お断りさせて頂きます。だって、リンが大好きなのでお義兄様は、リンです」


 そこまで言ったら、何故か微妙な顔をされた。


「あー…姫の旦那はね」


 姫?って誰だ。


「姫?」

「マルさん。一部で姫って呼ばれてるけど…知らなかった?」


 初耳だ。私がその異名の理由をわくわくと期待すると片倉さんが凄く嫌そうな顔をした。


「リンに訊いて…この件については断固黙秘権を行使する」

「ほえ?」

「秋月さんの耳にいれたのがバレたら……、」


 ブルッと肩を震わせる片倉さんに私は、困惑する。


「お姉ちゃんは女神ですよ?」

「え?戦乙女(ヴァルキリー)


 なんかとんでもない例えが出たー。お、お姉ちゃん。何してるの?私が、知らないところで何してるの?

 タオルで拭いたおかげか服は多少乾いた気がする。しかし、六時近いのにまだ明るい。

 そういえば、私の家の方向に歩いているが、確か片倉さんの家って別方向だよね。

 甘えていいって言ったけど。すでに私を甘やかしきってるような気がする。ーー妹にしたかったからか。ケッ。いいさ。別に。傷ついたりしないもん。将来『秋月ルカ』のようにモテモテに……あのモテ方は嫌だった。


「どうしたの。元気ないけど」

「いえ、悪女の道は遠いなーって」

「…十分、悪女だと思うけど?」


 バカな。こんな品行方正に育っているというのに。ーーはい、どの口が言うとかのツッコミは受け付けません。わ、わかってるうんだから。思考の自由を!!


「秋月さんの家ってどっち?」

「右に曲がりまーす」

「そう、雲雀の家に近いのかな」

「ひばりんちの方が遠いです」


 そう思うと、やっぱりヒロイン様達と一緒の塾って無謀だったんじゃ。あ、そういえば、


「片倉さんも塾通ってますよね。高校はどこへ?」

「え、神光」


 ですよねーとしか言いようがない。


「他の選択肢は?」

「あそこが一番学費が安いし、市の中で一番の進学校だよ。行けるならやっぱり、神光だと思うよ」


 うあ、そこはやはり変えられないか。

 いや、学校が悪いわけじゃなく地道に主人公である光原さんをヒロイン様から離して、それから私の今の一番の強みはアディーとセラ様が近くにいて、アディーの『契約者』が私だということか。女主人公は私と同い年のはずだ。うん。

 大丈夫、まだ時間的余裕はあるな。


「秋月さん、次は?」

「?あ、通り過ぎてた」

「あのね」


 ぼんやり企んでいたら、片倉さんが呆れた顔をした。リンの家も合わせて五件くらい過ぎていた。なんてことだ。


「あ、そういえば、リンの家に遊びに来たことないんですか?」

「ないよ。いつも、『隣の面白生物がいつ邪魔しに来るかわかんないから』って」


 片倉さんがじーっと私を見ているような気がする。ふっ、どこにそんな珍獣がいるんだか。


「もっと、早く出会ってたら、『お兄ちゃん』って呼ばれていたかな」

「そしたら、きっと片倉さんは私をルカって呼んで、片倉さんを私は達也ってー…」


 …あれ?ーーだって、リンをそう呼んでいるから。きっと、そうなるよね。

 うん、おかしくない。

 でも、たとえ話でも年上を呼び捨てにしたから私の頬が熱いんだろうか。そうかな。うん、きっとそうだ。会議をー…なんで、貴様らこういう大事な時な熱を出すんだ!?え、突然の発熱により脳が働きません!?本体が現実と戦っているんだぞ。ほら、なんか熱を冷ますよな妙案を!!


「秋月さん、自宅ここ?」

「へい!」


 表札チェックをして確認したらしい片倉さんに確認された。よし、いつも通りな返事が出来た。やばい、片倉さんの顔が見れない。片倉さんがチャイム鳴らした。いや、私いるから、ただいまーって。


「ああ、ルカ。お帰り。あら貴方が片倉君?」


 お母さんが出てきた。


「はい。このたびは……」


 お母さんと片倉さんのやり取りをぼんやり来ていたら熱が下がってきた。

 ふう、危ない危ない。お母さんに私の買い物の品を渡し、また、買ってもらったのと信用度の下がった私に訊くお母さんに友達の誕生日プレゼントだということを説明して、片倉さんは帰っていった。

 外までお見送りしたら「今日は、ありがとう」と、何故かお礼を言われたので、私の方がお世話になったのになーと、お礼を返したら頭をまた撫でられた。



 家に戻るとお母さんが私の額に手を当てるので、どうしたの?って聞いたら


「だって、貴方たち二人とも、最初凄く真っ赤だったのよ。熱か日焼けかしらって、心配に……ルカ?」


 私、貝になりたい。……あ、だめだ。貝って、熱したら開くんだ。

 大丈夫。おかあさん、 風邪じゃないから。体温計いらないから!!






 後日、この日が何の日だったのか知ったのは夏休みが終わった始業式。

 リンは、ようやくあと二週間は帰らないと連絡してきた。メールで。電話ーっと騒いだが、メンドイ。との返信。あの野郎…。

 前日にそんなことがあり殺気に溢れた私に話しかけてくる無謀な男、藤咲葵は、にっこりとあの日は行けなくて、ごめんねって。あいもかわらず胡散臭い笑顔だ。


「これから、呼び捨てにすんぞ。藤咲」


 がるーっと威嚇しても堪えた様子がない。


「やだ。皆が俺たちの間を誤解するからやめなよ。ふふ、でも、俺は親友に誕生日プレゼントをあげたつもりだから許してよ」


 きょとんと、首を傾げたら察しが悪い子は好きじゃないよって。お前には好かれたくない。と吐き捨てようとしたら、ちょいちょいと…耳かせって?


「……秋月さんって、楽な子だよねー」


 素直に耳貸したのになんで呆れるんだろ。

 耳元に顔を近づけてくる藤咲。


「あのね。あの日は片倉の誕生日だったんだよ」


 ーーはい?


「だから、プレゼントとして」

「チャーシューラーメン・餃子・ライス付きタダ券?」


 だから、あんな豪華な券を。私は納得した。しかし、それだと、藤咲がきて私が居たら邪魔になるんじゃ。二枚しかなかったぞ。


「……ごめん。聡明って言葉取り消していい?」


 何故か、憎々しげに私を睨みつける藤咲にあれ、なんか一個やり返せた?え、でも、どこが??


「あ、じゃあ、片倉さんに誕生日プレゼントを」

「いまさら?」


 なんだか、藤咲さんが冷たい。なぜ?


「ええと…」

「はあ…、止めたほうがいいよ。達也は無理に用意したものは好きじゃないから」


 そっかー、でも本当にあの日は私がお世話になっただけなのに。


「こっち方面はもう少し時間が必要か。ちっ、面倒な」


 なんだか、失礼なことを呟かれている。この人、何がしたいんだろう?

 あ、マナルンだ。お~~い。あれ?無視された。…泉さんだ。あ、今は侍キャラなんだ。…硬派なんだね。うん、ちゃらちゃら話しかけてごめん。あ、お姉ちゃんだ。


「おねーちゃーん!一緒に」

「ごめん。ルカ。今日から体育祭の話し合いも始まるの」


 げふん。

 あれー?女難?女難の相が私にあるのかしら?


 うんうん。だから、ひばりんに詫びの品を渡しついでに一緒に帰ろうと誘われたので一緒に帰った結果、主人公様とヒロイン様に遭遇とか決しておかしくない。

 よし、今ひばりんの手元にあるのはなんだ。靴下だ。アウトだと思う人、手を挙げて。だから、普通にハンカチ買えよってあの時思った人はそっと涙をぬぐいたまえ。はっはっはっ……はぁ。がっくり。


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