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冴えない気持ち



 お姉ちゃんの様子がおかしい。




 はい、お前よりはおかしくないってツッコミましたね。ザ・変を私と張り合おうとか思っているなら……変にも色々種類があるが、私が精神的追い詰められない自信があるなら勝負しようじゃないか。--なに、こっちが追い込まれるだと。ふ、争いは何も生まないとは本当だったらしい。


 ……は、お姉ちゃんの事だった。


 土下座を行ったあの日、お父さんは神取と飲みに出て私は太刀川さんにお姉ちゃんと一緒に自宅に送られ、そのままお母さんと一緒にお風呂に入り化粧を落とされ、お風呂から出ればお姉ちゃんはとっくに寝て居た。

 九時過ぎだったし眠かったんだろうと判断。

 お母さんに今日は一緒に寝ようと誘われ、美女に誘われてお断りなんて贅沢が許されるのか。否かを脳内採決を行った所、断るのは万死に値するという判決が下された。

 ーー正直に言おう。

 いつか、巨乳に包まれ圧死したいと願っている身として大変おいしゅうございました。いつもは、お父さんのせいで堪能できない巨乳に包まれ眠る極楽を途中で酔っぱらって帰ってきた酒臭いお父さんに布団からひっぺがされ邪魔された。

 憤慨しようとしたら、「お父さんの子だから」とぎゅうぎゅう抱きしめられた。



 次の日、朝早くみんなに謝ったら、にこにこと反抗期かな?とか家にはちゃんと帰ってきなさいとか。お買い物に一緒に行こうかとか、お盆は海外旅行する?とか……お盆は、お母さんの実家に帰省予定でしょうが。正直、お姉ちゃんに一回雷を落とされただけだし、 気持ちが晴れない。お姉ちゃんもいつも通りに図書館通いをしようとする私を引き留めて、手を繋いだまま学校に連れてくる始末だった。


「まあ、ホメはしないわな」


 お姉ちゃんが文化祭の会議中の為、避難先に保健室を選んだ。だって、どこに身を隠してもアウトなのだから、どうせなら好きなとこにいたいじゃんとの心理です。

 あいかわらず、白衣でオタクっぽくけだるそうな保険医にこれまでの事を濁せる場所は濁して、ほとんど素直に喋りお姉ちゃん達がおかしいことを相談するとげーっだのめんどくせえとか言いたい放題だ。

 しかし、そこは聖職者。きちんとひーふーみー、と指を折りながら何かを考えてくれて、


「お前の態度はよくない」

「?どこがでしょうか」


 かったるいなと、煙草を吸うぞと言われ、彼女のオアシスにお邪魔している身としては断れず、どうぞと答える。ライターではなくマッチ箱を取り出した殿は手慣れたように火を煙草につけた。ふはーっと至福そうに息を吐き、そのまま咥え煙草をし、


「未成年、夜遊び、父親的には何かあるたびに血の繋がった方に頼りに行く娘の行動は複雑だな。親が買ってやってない物が増える。異性の友人の方が多い。暴言に対する謝罪の後回し……どうした。まだあるが、聞かないのか?」

「ーーご慈悲を」

「そんなもんがあったら、お前等みたいなガキを相手にできるか」


 ご尤も過ぎて泣ける。私はその場で膝を抱えてみた。床って意外と冷たくて気持ちいい。夏場は仲よくしたいかもしれない。


「私が勘違いされる。やめろ」


 地面と仲良しになろうか本当に悩んだが失うものがないと堕落したくなるよね。地面の冷たさに身を任せようとしたら止められた。


「残りの休みは家族サービスに徹しろ。媚に媚びおいて浮気男が妻や恋人に行うくらいの気の使いようで、乗り越えろ」

「花束をいきなり買って帰るくらいの気構えでしょうか?」

「変な知識ばっか」


 殿の怒鳴り声を遮り失礼します。とか細い声で女の子が保健室に入ってきた。


「なんだ。泉か」


 ツインテールの黒髪、泣きぼくろの…あ、女主人公のサポートキャラの泉水穂、通称いずみんか。実は同じクラスだが、一度も喋ったことがない。何せ、私は教室内で孤高の立場だ。

 そして、いずみんも別な意味で孤高だ。何せ彼女は、


「あ、あきつきにゅわん!?」


 あ、噛んだ。


「や、やだ、こ、こんな所でアキアキにあえるにゃんて。いずみん、こまっちゃうん!もしかして、一緒に世界を救えっていうの!?ティンカー、どうかにゃ、彼女にもわたしの使命を」


 ………わかって頂けたろうか。彼女も私とは別な意味でこじらせている。いわゆる厨二病を平気で口に出しちゃうせいで浮いてる仲間なんだ。ほろり。一度果敢にも話しかけたが、無視された。どうもその時は寡黙キャラにハマっていたらしい。今は、魔女っ娘か。


「泉、なんか用なら秋月を追い出すが」

「はにゃん。アキアキと仲よくなりたいの!ね、アキアキもわたしと仲よくなる運命だからここに居たんだよね!!ねえ…ーー違うなら呪うわ」


 後ろの響きが物騒だ。わーい。友達が増えたぞー……強制的に。


「じゃ、じゃあほら、通信魔具にアキアキの情報を登録しないと」


 わー、ジャラジャラとデコッたスマホに大きなぬいぐるみがついてる。自分でやったのかな。器用だ。


「秋月、キャラがチェンジするまでの我慢だぞ」


 殿。我慢とか言っちゃった。いや、別に私は構わない。彼女、基本的にヤンデレでもなんでもなく、ただのコミュニケーションが極端に下手な子で、何か話のきっかけが欲しくていろんなアニメに手を出している基本ライトなオタクのはずだ。私は携帯を取り出し、赤外線通信を行う。


「こ、これでわたしたち仲間だね。アキアキ」


 満面の笑顔だが、あきあきか。……まあいっか。


「じゃ、じゃあ、さっそく世界を救う活動を」

「落ちつけ。泉。こいつはしばらく親の都合で活動休止だ」


 殿。私はどこのアイドルなんだ。


「そ、そうなの?じゃ、じゃあ、一日一回は必ず無事を伝える交信を行ってね。わたし、待ってるから」

「え、泉さんからはないの?」


 思わず聞き返してしまった。そうしたら、何故か半分泣きそうな顔をされ、そこで、殿に追い出された。

 お姉ちゃんも三日くらいは私を拘束したが、後はいつも通り図書館通いを許してくれた。その後は会長とひばりんと普通に勉強をしたが、何故かマナルンが一度も図書館に現れないことが気になり、メールしたが返事はなかった。




 というような事以外、つつがなくお盆を迎えたが、結論から言うとお母さんの実家に行けなかった。なんとなく予想はしていたが、電車に乗ろうとした瞬間に私が高熱を出してしまったからだ。たぶん、アディーと契約していたせいだろう。契約者まで外に出れないのか。へー。

 その為、私はお父さんとお留守番になってしまった。

 孫の到着を心待ちにしている祖父母にどちらもいかないとは言えず、お姉ちゃんとお母さんだけ帰省し、二日目。


「ルカ、そんなに調味料を混ぜて楽しい?」

「うん、どれが一番ベストな配合かを調べてるの。くくっ」


 体調も良くなりちょっとした自分オリジナル調味料を配合してみる。アディーよ。私は報復はしないとは言っていない。

 調味料は混ぜたが、お昼を作り忘れたので、お父さんが外に食べに行く?と訊いてきた。お盆に外に行くとか恐ろしいが、せっかくの休みにどこにもいかなかったというのも外聞が悪いのかもしれない。

 一番のお気に入りの薄ピンクのシフォンワンピに着替えるとお父さんが何故か嬉しそうに微笑んだ。


「うんうん、お父さんが一番好きだよね」


 違うよ。お姉ちゃんが一番だよ。しかし、私はいま家族サービス中なので否定はしない。ここまで、特に問題なく私とお父さんは玄関から出たはずだった。そう、ポスト前に私の知り合いさえ居なかったら、お父さんは上機嫌のままだった。


「……何してるんですか。藤咲さん」

「やあ、久しぶり」


 彼の姿を確認し固まる私ににこっと、微笑む今一番会いたくない男堂々のナンバーワンは、うちのポストに何かを投入しようとしていた。やだ。不幸の手紙だったらどうしよう。


「ちょうど良かった。秋月さんのアドレス知らなかったから。ふふ、ラブレター書いてみたんだけど。受け取ってくれる?」


 いえ、これは確実に不幸の手紙です。さっきまでニコニコしていたお父さんが殺気立っている。どうしたの。恋人出来ることは推奨していたよね。

 有無を問わずに私に不幸の手紙を手渡し、「それじゃあ、お父さん。失礼しました」と頭を下げて待たせて居た車に乗って去っていった藤咲さんに呆然とする私から、手紙を取り上げ、破ろうとするな。お父さん!


「なんか、神取に似てて嫌い」


 だからって、それ破かれたら私が不幸になりそうだから!!


 結局藤咲さんの手紙を返してもらうため、私が必死にその日一日お父さんの機嫌を取ることになった。己、藤咲さんの行動一つ一つが私の不幸に繋がっていると疑いたくなるぜ。


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