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 セラ様が説明責任を放棄した。調べることができたとアディーを置いて行ってしまった。え、私になんかないのか。そうですか。

 私、キレていいですか。むしろ、お母さんに叱られています。


「こういうものはお母さんに相談でしょ!こんなブランド品…ま、まさか神取じゃないわよね!?か、んどりの子になりたいの!!お、お母さんを捨てるの…ね、ねぇルカちゃん。ママの事、きらいになっちゃったの…」


 語尾が段々小さくなっていきます。泣かないでください。お母さん。

 私のウザさは確実にお母さん似ですね。え、違いますか。申し訳ない。

 家に最初に帰ってきたと思って、油断して貰った物を振り回していたのがいけなかった。お帰りなさいと出てきたお母さんに見つかった。

 しかも、ブランドなのか。自分で買ったというには無理がある量だ。開けてみたら十セットとか、ナイト用とか。どうしよう。そろそろ変態と詰っていいかな。藤咲さん。あ、急に寒気が。


「額に血まで…ッ。うちのこが…、ルカが汚れたちゃったーッ」

「お母さん、確かに汚れてはいるけど。ちょっと外聞悪いから、そんな叫ばんといて」


 藤咲さんにたぶん、デコに口を置かれた時に付いたのだろう。うん、口を置かれただけ。口が回っていたからどこかで骨休めしたかったんだ……彼にはきっと、異国の文化をこよなく愛しているのだろう。そうじゃなきゃあの手口は鮮やかすぎておかしい。

 よし、脳内会議。本日の結論を申せ。ーーうむ、下着は慰謝料。よろしい。明日からもつつがなく暮らせるね!


「ちょっと、デコに血がつく事態にあっただけだから大丈夫だよ。」

「その、ちょっとが怖いのよ!どうしたの。血だらけ人に遭遇したの!?」


 それはホラーだよ。お母さん。発想力も血筋を感じる。


「えーとね、それをくれた人がね、」


 一生懸命お母さんが興奮しないように内容を考える。は、今のギャ……ちょっと私がスルーします。


「口の端切ってね。そのまま私のデコに箸休めしたの」

「………?」


 私の高度な説明に首を傾げる母。いや、そのまま解釈されない方がいいのか?


「疲れたから、夕飯まで休んでいい?お菓子もらってくね」

「う、うん」


 女神なお姉ちゃんのお母さんだけあって、美人このうえない母だが、ちょっと思い込みが激し…げふん。青くなったり、あらあらと赤くなったり、……最終的な結論がどうなるのかはお父さんとお姉ちゃん次第か。……リンがいないとストッパーが不在だ。

 私は二階の自室のドアを開き、すぐに窓を開けアディーを招き入れる。人間の身体能力じゃなく軽々二階まで飛び込んできた。


「きょ、うは一緒にいる」

「はいはい」


 すぐさま抱きつかれそうになったが、ポイッと身を翻えして避ける。うん、傷ついた顔をされた。だって、お前。今、青年姿じゃないか。私は、エキゾチック美少女を所望した筈だ。それ以外には厳しいぞ。


「この、姿が一番楽!」

「バカな。私は私の欲望に生きる。さあ、目に楽しい美少女カモン!」

「う゛~~…」


 唸られてもね。

 しぶしぶ、私と同年代の少女になるアディー。うむ。大変よろしい。

 だいたい、私の部屋に見知らぬ男がいるとしよう。今の精神状態のお母さんが部屋に入ってきた場合、泣き崩れて慰めるのがめんどい状況になりそうだ。

 ちゃんと趣味と実益は兼ねている。問題ない。


「るか、はおれの契約者だもん。あんなのに誘惑されないでよ!」

「はあ、誘惑?」


 された気がしない。


「だいたい、なんで、あんなに簡単に引っかかってんの。あんなのよりいいのいる!あの、ひばりとか、天久とか、簡単に『堕ちそう』でいい。あれは、だめ!!」


 語るに落ちるという言葉をこんなに身近に感じることがかつて有っただろうか。いいやない。


「なに、私の周りから犠牲者増やす算段しているのかね。アディー。仕置きは『真名』にすんぞ。ああ、いきなり殴った件はごめん。今度から宣言するから」

「いまさら!?な、なぐるのも『真名』もやだ」


 頭を守るアディーに用意したお菓子とジュースを手渡す。


「藤咲さんについて、なんかわかる?」

「う、うん……でも、まだなんにも確証がないからいうなって。セラが。でも、おれの力が通じない相手なのはたしか」


 制作会社に物申す。そんな深い設定があるなら、攻略本に載せろ。それとも、攻略していれば自然とわかったことだろうか。ああ、『天使ルート』しか攻略できないとはあった気が。


「ともかく、あ、あいつなんか無視してよ!おれだけの、契約者なんだよ!!」

「ハキハキ喋れるようになってきてお別れも近いのかな?」

「やだやだやだ~~~~~!!」


 おかしい。確か昼頃まで私から離れたい発言していたような。


「だって、るか。おれが離れたしゅんかん、復讐するつもりなんだ!」


 ん?


「薪を背負わせて、やけどさせて…」


 どんどん顔色が悪くなるアディー。なんか訊いた話だな。え、情操教育もう実を結んだの?


「ごってりやけどにからしみそをぬるきなんだ!!」


 ツッコミが追いつきません。えーと、こういうときはエマージェンシーだっけ?

 お客様の中にツッコミに長けた方はいらっしゃいませんか。好みの芸風はノン〇タイルのような感じです。けっして、好みの異性ではありません。


「ご、ごめん。そんな状況になっても塗るとしたら一味と醤油と塩を混ぜた奴になると思うから」

「やけどはさせる気なんだ!!」


 悲痛な顔をするアディーに鬼!悪魔!!(お前だ)人でなし!!!(それもお前だ)と詰られ、疲れたから寝ると(私もなんだが)ベッドを占拠されたので、そろそろ夕飯のお手伝いをしようと下に降りてリビングに行けば、いつの間にか帰ってきていたお父さんと目が合った。

 嫌な予感に身を引くとがっしりと後ろからお姉ちゃんに捕まる。


「お、おかえりなさい。ふたりとも…」

「うん、ただいま。ルカにお父さんが話があるらしいよ。お姉ちゃんがお母さんのお手伝いするから、ゆっくり(・・・・)話し合ってね」


 にこにこ、マングースまで黒い笑みを浮かべております。いえ、イメージですが。お父さん、背負っているのは、ヒョウですか。黒豹ですね。お似合いです。


「ただいま、ルカ。ちょっと、お父さんと話そうか」

「ひゃい……」



 秋月ルカ。夏休み一週間目。

 三日間の外出禁止を言い渡される。

 温情だった。




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