苦手と同族嫌悪と。1
只今、片倉さんと藤咲さんの好感度が急降下中です。
「ほら、秋月さん。これなんてどう?」
皆さん、彼氏でも伴侶でもない男に下着を選ばれたご経験はございますでしょうか。私、絶賛体験中です。助けて。
藤咲さんが強者すぎるっ。
「谷間メイクって欲しい?チラ見せとか逆に萎えるなー俺は。素材はサテンが結構男に受けいいよ。すべすべして触り心地がいい。逆にフリルたっぷりは気合いを感じて引く。ああ、フロントホックとか盛り上がるよ。どう?」
そう言いながら、下着を吟味しないでください。私にはあわせないでください。
「わ、私にはまだはやいでゴンス!」
何故、訛った。くそ、負けた気になる。
「あははっ、さっき店員さんに計って貰ったらギリギリB有ったじゃないか。駄目だよー。油断してスポブラすらしてなかったとか。だから、片倉に愚痴られるんだよ。『言った方がいいのかな?』って。ネタにされてるかもよ。片倉も思春期だし」
やだ。片倉さん。この人に愚痴らず、私に直接注意して!しかも、ネタって何!?
「ネタの意味がわかんないなら説明するよ?」
にーっこり。笑顔の藤咲さんが怖い。
「…エンリョシマス」
「そう、残念」
何故でしょうか。屈託なく笑う美少年をこんなに怖いと感じる瞬間が来るなんて。
前世では考えられません。
助けて、……お姉ちゃんだと耳が汚れてしまうし、リンは親友だし。うーんと、セラ様!
片倉さんも嫌いだ。私を慰めててくれた時にそんな不純な事を考えてたなんて、嫌いだ。なんか、なんか……がっかり?
藤咲さんと図書館から出たら、やっぱり暑くって、近くのコンビニに避難したら、別なところで買いたい物があるから付き合う?と聞かれ、じゃあここで解散ですね!とにこやかにさよなら宣言したのに。
藤咲さんをリムジンが迎えに来たかと思えば、私も一緒にリムジンに押し込まれるとか。
なに、私、一般家庭の子供ですよ。いらない経験が増えてきた気がする。いつか、役にたつだと!?………確かに精神修行にはなるね。うん。頑張る。がんばれー私。……そろそろ、脳内会議に異議を申し立てたい。
しかし、そこまでは良くはないが良かった。だって、まだキャパを越えてなかったからだが、駅前ショッピングモールの中のランジェリーショップに連れて来られた瞬間、私は戦慄した。
母さん、事件です。
中学生がランジェリーショップに来るんですか?
よしんば、来ても、お母さんと一緒。の筈なのに。私は、二つ年上の美男子とです。どんな罰ゲームでしょうか。 生前プラスαな精神力の私でなかったら心の傷です。
しかし、がっつり、精神は削られている。絶対わざとだ。
「買ってあげるよ。好きなの、選んでいいから」
……すみません。私、これを言われて心が揺れない人間じゃないです。
はっはっはっ。両親にどう頼もうかと思案していたことに解決策がいきなり、出てしまった。うん、だって、…ゲーム内設定でも、お姉ちゃんより、私の胸が育つんだよ。言いにくいじゃないか!どうしろと!?
巨乳になるんだよ。高一で。
私は、半泣きだ。
スチル見た以上、どんどこ育つんだって。ははっ、下着って意外と高いよね。うん。お姉ちゃんの私服のお下がりがキツくなってきたとか、どう考えても不経済だ。どうしよう。だから買って貰えるなら、心が揺れる。だって、うちっていつか私のせいで経済がひっ迫するかもしれないんだよ。なるべく、貯金とかさせたい。
私は、計算してみる。
羞恥心と常識と生前年齢プラスαとしての矜持。そして、セクハラに対する精神的苦痛についての慰謝料を。
お姉ちゃんをどう傷つけず、下着を手に入れるべきか。答え求む。お姉ちゃん、将来、貧乳。
リンの趣味も貧乳。だって、この前に部屋を探って…もごもご。な、何か、今、殺気を感じた。なんだ。どこからだ。むしろ、どっちからだ!?マングースか。マングースが殺気を放っているのか!
「秋月さん、リンの部屋に勝手に入るのは止めてあげて」
なぜ、脳内会議の内容がバレている。藤咲さんがまじ怖い。
「…私、藤咲さんに下着買って貰ってもお礼が、」
「着て見せてくれたらいいよ」
……セラ様ーっ。この人、一発殴るから、その記憶消去お願いします。うん、楽な能力あると使いたくなるね!
「冗談だよ」
じょーだんいいながら、紐状の何かを渡さないでください。これは強度のない綺麗な色した紐です。決して下着ではありません。
「ほら、男のロマンと女の熱意を感じられる空間だよー。男連れなんか、睨まれるよね」
ええ、女性陣からさっきから殺気を感じます。はい、この高度なギャグに気づいた方ー。え、いつも通りスルーですか。そうですか。そろそろ、私との友情について語り合いませんか?
ふ、友情を語る友人などいないくせにって?………そろそろ、現実に戻ります。なんにも聞こえませーん。な、泣かないもん!
「ありがとうございましたー」
はいはい。こちらこそって…………え゛?
「はい。秋月さん。買い物終わったから、どっかで休んでかない?」
店員さんに店の外まで着いてこられ、頭を下げられるともの凄い申し訳ない気持ちになる。このシステムはやり過ぎな感じがする。そして、藤咲さんがお持ちの荷物は、なんでしょうか。先程まで、私たちが居たのは女性下着売り場……ま、まさか。
「藤咲さん、適度な締め付けは、体に良いそうですよ!?」
「うん。じゃあ、あげるから」
外で待っていた運転手さんに荷物を預ける藤咲さん。て、手慣れてらっしゃる。
「藤咲さんの、ですよね…」
現実が認められないので、確認したら、藤咲さんはお笑いになった。ええ、本能が逆らってはいけないと警鐘を鳴らしています。目が、一切笑っていないことに気付いたからです。こわい。私は、目線をそっとそらしながら言い訳してみる。
「だ、男性もブラをつける時代だと」
「へえ、初めて聞いたよ。そんな時代」
男性ブラは発売してなかったらしい。じゃあ、私、時代感覚的に変態になることを薦めたんだね。そりゃ、怒るわ。
「試着なんかしたら、断りそうだから勝手に包んでもらったよ。好きでしょ、獣柄」
にっこり。
待て、ヒョウかゼブラか。なんの獣やねん。みんな、私に対する偏見が半端ないよ。私、無地がいい。
「お、親のお金で、そんな」
「初期投資は確かに父の金だったけど、そこから増やしたモノは俺のでしょ。秋月さん。ああ、なんで増やしたかしりたい?」
「……イイエ」
勝てないよー。駄目だ。苦手だ。天敵だ。口がきっと、私より回る。
先々からやろうとすることを潰されてる気がする。ちらちら、藤咲さんを盗み見るとにこやかに微笑まれた。駄目だ、美形というのも私の戦闘力を削ぐよ。
「デートみたいだね」
「ソウデスネ」
はいはい。周りの皆さま、こんな美形のお隣に並ぶのが私のような小物で申し訳ない。いますぐ代われというなら代わるぞ。ケッ。
「……あ」
「はい?」
何かを見たのか声をあげる藤咲さんの視線を追うと、二階の方のゲームセンター前で私の担任であるうさちゃん先生が私たちと同い年くらいの男の子に抱きしめられている。え?修羅場??
「あれ、うさちゃんの弟だね」
「はい?」
弟とこんな人目がある場所で、抱き合う?
「確か、ご両親がだいぶ前に離婚していて、会う機会が減った弟を大事にしすぎたらシスコンになっちゃったんだって。殿が一回ストーカーのごとく付け回す弟君に説教したらしいから。俺たちにも、うさちゃんの前にこんなガキが現れたら速やかに連絡しろって。……夏休みを利用して、こっちに遊びに来てたのか」
ほら、と差し出されたスマートホンの画面に写る少年に思わず、吐血しかけそうなる。
え……まじですか。うさちゃん。貴女の弟が、ヒーロー様ですか。
あの、『女の敵』『下衆』『メインが両方おかしい』『不能になれ』『キエロ×100』と数々の暴言を一身に受けたヒーロー様のお姉さまでらしたか。はっはー。
うんうん、チェーンバッグで、そいつを滅多打ちくらい許されます。そして、藤咲さん、イイ笑顔。
「面倒ごとになりそうだね」
帰りたいですす。




