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 さて、主役をいたぶる悪役は私なのだが、覇気がたりないな。

 よし、いますぐ開花せよ『秋月ルカ』の悪女スキル!あ、エロい方向はまだいりません。

 そう、後ろにお姉ちゃんみたいにマングースを背負ってみたり……ゴゴゴゴゴゴ………召喚、ポメラニアン!!…うん。



 ーー秋月ルカは、悪女を一時、諦めた!



 誰だ。厨二病乙!とか言ってる奴は。

 とりあえず、休憩コーナーの腰掛けに座り直してもらう。立っていると、身長差で見下されてしまう。うん、座った光原さんの前に胸を張って仁王立ち。

 そして、ツンとアゴをあげてみる。どうだろうか。少しは、悪役っぽくなっただろうか。……三流には見えるか。よし、私は小者!


「いいですか。光原さん。手伝うので心美さんの行動を冷静に思い返してみましょうか。あの方、私を殴った後なんて言ったか覚えてますか」


 あ、黙んな。目が前髪で見えないから、表情を読むことができない。………ふ、仕方ねえな。人の追い詰め方の模範を示そうとしている人間の行動をナメるなよ。

私は、ひまわりヘアピンを外した。そして、そそっと光原さんににじりよる。


「あ、じゃなくて、ルー。なんでヘアピンを持ってオレの顔に寄ってくるのかな?」

「いえ、前髪が邪魔なので寄せようかと。可愛くなりましょうか。光原さん。可愛いは無敵ですよ。そして、その前髪はうざいです」


 あ、やべ。うっかり、主人公様の禁止ワードを。

 しかし、まだヒロイン様に言われてないから大丈夫だよね。


「前髪、うざい?」


 ほら、気にしてない。……だ、大丈夫だよね?


「眼の動きが見えないと弱味が……げふん。握れないじゃないですか」

「……何にも誤魔化せてないと思うよ」


 バカな。特に言い訳が思い付かなかったからそのまま喋っちまっただけだ。


「でも、オレの左側の…傷を心美が気にしてるから」


 光原さんがそういって、前髪を右側に流して見せた左側の眉間の小さな切り傷に私は、あ!となった。あーぁ。だ。そういえば、あの『誰得ヒロイン』が嫌いになった数ある理由の中のひとつだ。

 あの女、言いやがったんだ。主人公様が、自分に執着する事になった事件を、自分が、光原さんに大怪我させたくせに。


『そんな事、気にしてたの?』って。


 あの女から光原さんをやっぱり、引き離そう。


「光原さん、とりあえず、前髪をこれで押さえておいてください。そして、美容院でも床屋でも自宅でもいいので、速攻で髪を切ってください。うざいです。うざすぎます。っていうか、何、一人のために前髪のウザさを我慢してるんですか。貴方のカッコ良さは万人受けですよ。きちんと皆様の、特に女性陣の目の保養になるべきです。可愛いは正義ですが、カッコいいは、法です。多少の理不尽はネジ曲がります。頑張れ。光原さん。ハーレムも夢じゃない」

「ハーレムなんて、一人をずっと大切にしたいから。……それが、心美なら良いと思ってるんだ」


 私のここまでの押しにそんな寝言をほざくのか。…どこまでも、甘い。あ、今の思考悪役的に満点だね。そういえば、Endにハーレムルートはなかったな。共有か三角関係はあったけど。

 私が差し出したヘアピンでオープン・ザ・デコになった光原さん。………ぷ。

どうしよう。自分でやっといてなんだが、思春期の男の子にひまわりヘアピンは、心の傷にならないだろうか。

 しかし、灰色の憂い瞳が見えてまじ、イケメンが現れた。……ひまわりヘアピン挿してるけどね。


「いいですか。光原さん。髪を切るまでは、そのひまわりヘアピンを外してはいけませんよ。これは呪いです。私の後ろには天使と悪魔が憑いてるんですから。下手なお守りより強烈ですよ」

「えーと、…女の子だね。ルー」


 何故、目を反らす。バカな。本当は貴様に憑くんだぞ。私がいまの犠牲者なだけだぞ。


「良いですか。私はこれから、貴方の心美さんへの気持ちを全否定します!キツいことをいいますから、心を強く持って泣かないでください。ダメだと思ったら右手をあげてください。わかりましたね。じゃあ、いきますよ」


 何故、顔を下に向けてもう右手をあげている。体が若干震えているのも気になる。これから厳しいこというのに怒られる前にギブアップとは、最近の若者はなんて惰弱なんだ!



「光原さん、本番はここからですよ!」

「ご、ごめん…もう駄目そう」


 ぷるぷる震えるな。何故、私を見上げてきた眼が涙目なんだ。私は、まだ何もやってない。


「えーと、夏だし恋をしようって話でいいよね」

「何、勝手に纏めてるんですか!私、まだ心美さんへのダメ出ししてない。光原さんに試練も与えてない!」

「腹筋の限界に挑戦させられそうで、断っていいですか?」


 腹筋が限界になるくらいの大声で泣くつもりか。この人、情緒不安定なのか。しかし、なんとか陥れなければ、私はやるやる詐欺師になってしまう。よし、一言くらい…、


 ーーん?


 私の後ろから誰かが肩を叩いている。振り向いたら、にこっと笑顔の私服姿の藤咲さんがいた。………あれ、少し身長伸びた?成長期だもんね。


「こんにちは。秋月さん、少し声が大きいよ」


 あ、周りが睨んでる。ヒートアップし過ぎて周りに気が回らなかった。

悪役気取りの熱が冷めた。うーん。これは一回引くか。光原さんも目をパチクリさせて、藤咲さんと私を交互に眺めている。そんな光原さんにニコッと笑顔を向ける。藤咲さん。


「こんにちは。光原君、天久がそろそろ、退屈し始めてるよ。戻ったら?」

「あ、…そうだね。じゃあ、心美のことは、また今度」


 そう言って、急いで天久兄のいる方へ急ぐ光原さん。に、逃げられた!

せっかくのチャンスを邪魔され私が、キッと藤咲さんを睨むと藤咲さんが、笑み何かを差し出してきた。


「はい。なくしたら困るでしょ」


 差し出されたアマリリスのカードに私は、驚いた。


「あれ?」

「小説に挟まっていたよ。秋月さんのでしょ?」


 藤咲さんの手には、私がさっきまで読んでいた推理小説がある。ああ、確かに本に挟んだ気がする。


「ありがとうございます。藤咲さん」


 いそいそとバッグに入れなおす。まったく、失くしたらリンに何を言われるか。


「あ、身長伸びましたね。」

「うん、食事が良かったおかげかな」

「いいな。私ももう少し伸びたいです。」

「そう?小さいほうがかわいいよ。ふみつぶしやすくて」



 ………ん?

 思わず、見上げなくてはいけなくなった身長の藤咲さんを見上げたら何にも読めない笑みで返された。………リンの親友。この人は、リンの親友。

 私、この微妙になった空気を念仏で乗り切るよ。


「……君の周りは美味しいんだけどね。」


 何がでしょうか。ため息交じりに呟かれましたが、私聞かないふりしていい?


「心美ちゃんは、二番煎じでも『美味しくなる』予定だからな。う~ん」


 私の壊れていると思われていた危機管理能力センサーがピコーンピコーンと間抜けな音で鳴り響く。


「ふ、藤咲さん。私、かえります!」


 ぺこっと頭をさげて、ダッシュで帰ろうとした私の腕をがしっと藤咲さんが掴む。ひいぃ!!こわい。


「送るよ。もしかしたらまた何かに関わるかもしれないから。近くで、見学したいな」


 なんの予言だ。アディー、セラ様。近くにいるんだから助けろ!!

 ん?

 甘い声が響く。



『がんばる』



 それ言って、どんな堕落の道がひらかれんだ。一瞬、口走りそうになったぞ。素晴らしい。勉強家だね。アディー。


「さ、帰ろうか」


 セラ様、マジで助けて。





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