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呼び出されたのは仕方ないので、一応、黙って訊いてます。
それから、ただ黙ってついてきたわけではないので、ご安心を。ちゃんと携帯にメールをとある方にしたためて置きましたから。……大丈夫だよね。届けSOS!
「あんたさー、ちょっと調子に乗ってない?」
「藤堂君や達也だって、迷惑してるの。優しいから相手にしてるだけで」
「だいたい、あんたの姉もいっつも笑顔でキモいわ」
「あ~、でもさっ。姉妹で男好きそうな顔してるよね。血筋ってやつ?」
キャハッ!と何が楽しいのか笑う取り巻き二人の真ん中で私を睨み付けてるミユミユ。いや、怖いって。剣道小町と名高いスポーツ少女で宝塚の男役が似合いそうな水色の短髪と緑目の美人。まだ、中学生だから可愛いとも言えるが、お姉ちゃんを敵視している面倒な人だ。去年の体育祭で運動部じゃない姉に短距離で負けたのがよっぽど悔しかったのかな。……スポーツに青春傾けてるひとって意外とねちっこいと思うのは偏見だろうか。だってそうじゃなきゃ、あんなに自分を痛め付けられないって。ついでに私の同級生に会長ファンの妹がいる。なかなかの見所のあるマゾだ。
まだまだ罵詈雑言は続きます。私は、『かよわいふり』を身につける為に殿に習った俯いて、顔を隠すというテクを実施しています。震えたりするといいらしいです。………えー、私の性格知ってる人が見たら、笑いで震えてるって勘違いされるよ。
しかし、私は体育館が日陰になってくれてる位置にいるけど、べらべら夕方だけど夏の陽射しがまだきつい中、日陰にも入らずよく喋るものだ。
飽きないのかな?
私は、意外とよくそこまでの妄想を延々語れるなーと逆に感心する。妄想って、オタクとか腐女子とか関係なく、一般教養なんじゃないかな?そうじゃなきゃ、こんな思春期の子が『ふしだら姉妹』だの『ママもあんたのママが、売春してるって言ってた』とか。面白いなー。『女子中学生の妄言記』ってブログでも書いてみようかな?
コイツ等の実名入りで。ーーとか考えるくらい心が病んでいる。
なんで、お姉ちゃんとお母さんまで悪く言われなきゃなんないんだろう。今日は、殿の顔を立てるのと別な策で動いてるから黙るが、次の機会があったら覚えてろ。
「黙ってないで、なんかないのアンタは」
ミユミユの鋭い問いに私は黙って俯く。
殿と会長に黙れ。喋るな。喋るなら一拍考えろと、さすがに今日さんざん、念押しされました。さすがに今日くらいは守ろうと思い、俯いて黙る方向で、頑張ってます。それに私、別にみんな仲良くしましょうね!的な博愛主義でもないし。
ミユミユに下手に敵視されたくない。過激な行動も目立つし、リンに仄かな恋心もあるらしいから。関わんないほうが得だよね?
お姉ちゃんと接点少なくしてあげたいし。私だって我慢できる子だよ。多分。
黙ってプルプルしていたら、ミユミユがふう、と息を吐いた。
「ハッ、随分バカにされたものだね。アタシも」
ん?なんだ。
ミユミユが鋭い眼光で私を睨み据えた。
「アンタの性格なんざお見通しなんだよ。そうやって、何にも喋んないで、大人しくして。嵐が過ぎ去るの待ってるような柔な性格してないだろ」
そういうふりなんだ。放っておいてくれ。
こっちとら、さんざん、説教された後なんだぞ。
「なんとか言いな!」
最近、流行ってるんですか。暴力。肩を平手で押し出されました。決まり手は押し出し。ーー痛いよ。普通に。
私は、よろけてしまったが、俯き黙るのは実行。
しかし、どうやら火に油だったご様子。
「へえ…我慢比べがしたいのかい…」
声が物騒な響きを持ち始めた。なんだろ、なんにも喋ってないのに悪い方向に行くってもう、才能だよ。私、天才!
まじ、要らねえ!!
「もうさー、学校にこれないように撮影会しちゃおうよ」
一人が、なんか言ってる。ん?撮影会?バラをくわえてあげようか?
「ああ、ちょうど、体育館も期末休みで誰もいないしね…」
……うん、私、わかってる。そんな初心じゃないもん。この世界、前世の私が未成年の時に発売された物だから、世界観もそれと同じかと言えば違う。ブログやLANなんか普通にある。 だから、……撮影会の意味はわかってるんだよ。
「どうせ、いろんな男に見せてるんだろうし、今さらハズカシがんじゃねえよ」
髪の毛を引っ張られた。痛い。でも、声は出さない。矜持とかじゃない。ただ、ーー信頼してるとあの人に見せたい。『かよわいふり』をするなら、あの人に私は依存できない存在なんだと、すぐ潰れてしまうかもしれない人間なんだと。それでも、ちょっと怖いなとは、覚悟しながら、髪を引っ張られるままついて行こうとしたら、気分的に気合いの入った痛め付けかたを感じ取り辟易はした。
「ひんむいてさー。どっかに写真売ったら、金になんないかなー」
「バカ。アタシたちは、ただ、この女が静かになればいいんだろ。その辺をきちんと」
「ーー私の妹に何をしているのかしら、日比谷さん?」
あれ?予想外の声に私、びっくりした。
思わず、頭をあげたら、にこにこと笑みを讃えた女神が君臨していた。
ーー絶対零度とともに。
それを感じ取ったのは、私だけではなく、ミユミユとその取り巻きも一緒だったらしい。ヒイッて聞こえた。
お姉ちゃんは今まで見たことのない綺麗な笑みで、くふふ…と笑う。それはそれは綺麗な造り笑顔だ。
淑女のようにちょこんとスカートの裾をあげ、お辞儀する徹底した芝居のしぐさに私は引いた。ドン引いた。お姉ちゃんが怖い。怖すぎる!
「ごきげんよう。皆様。私の大事な妹の髪を引っ張るほど仲が宜しいなんて初めて知りましたわ。……それで、どのような対応を私に求めているのですか。ええ、私、全てにおいて不許可を与える心づもりですが、どうしますか?先生を呼びましょうか。それとも警察ですか。私、ルカをいじめる人たちが一番、だいっ嫌いなので、拒否された先から行動しますよ。うふふ………どうしました?何かなさるつもりでしたのなら、お付き合いしますよ。黙ったりすると思わないでくださいね。破滅するなら道連れにしますから」
お姉ちゃんのにっこりお綺麗な微笑みに正直、怖い。…言えない。あれ?助けを求めた方いずこに?




