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 片倉さんに微妙な顔をされた。


「本当にリンが選んだの?もの凄く子供っぽいよ」


 片倉さん、凄く失礼だ。


 朝は家の前で、リンがご両親と空港に行くのを見送ったのだが、……休ませてよ。お父さん。せめて、お姉ちゃんだけでも!!空港まで行きたかった。

 しかし、久々に見たリンの両親って兄弟って言われても違和感がないくらいに若かった。

 お母さんに至ってはリンの妹で通じる。……不老だろうか。


 学校に寂しい気分でお姉ちゃんと登校し、途中でお姉ちゃんは友達と二階の教室へ、私は一人で、そうおひとり様で教室に向かい、リンの出立について訊きたかったらしく私を待っていた片倉さんに教室の前で遭遇した。そして昨日買ってもらったヘアピンに気づいて、暴言を吐きやがった。

 片倉さんの評価が下がった。


「かわいいじゃないですか!リンが私の好みを把握した上で選んだんですよ!?」


私の頭をなでながら、うーんと唸っていた片倉さんが、目を見開いた。教室に入っていく女子たちに睨まれた。いや、これは片倉さんが勝手に。


「えっ?……ちみっこって。もしかして、ヌイグルミと一緒に寝るタイプなの?」


 何故意外そうなんだ。いや、ヌイグルミと一緒には寝ないが選ぶ小物とかは、かわいい系なんだけど。

 ふんわりとおかしそうにその様子でも想像したのか片倉さんがくすくすと笑う。


「少し意外だな。でも、そうだよね。まだ中学生に成り立てだしね」


 ぽんっぽんっと頭を叩かれる。……私、精神年齢が生前プラスαな筈だから、あれだな。ファンシー趣味のおばさんになるのかな…?

 いや、見た目は、若い。大丈夫だ。

 片倉さんが私に生前の記憶が有るとか知ってるわけないし。私が、むむっと眉間に皺を寄せたら、片倉さんが慌てる。


「似合うよ。可愛いんだけどね。……リンの趣味には思えなくて、うん。リンがくれたなら、下手な御守りより後利益がある筈だから大事にすると良いよ」


 すみません。雑貨屋のファンシーなグッズにどんな後利益が。あの『おしゃべり』のカードも持ち歩けってことですか。


「ほら、可愛いんだから。笑って」


 にっこり、軽い男を自称してるだけあり、クスクス笑いながら私の頬をぷにぷに押す片倉さん。うむ、ーー恥ずかしいからやめて。片倉さんの友人とかなのか口笛吹いていく。わお、悪目立ち。


「普段は見た目が少し、大人っぽいけど。……うん、年相応なんだな。この方が中身に合ってるのかもね」


 え、私、もしかしたら精神年齢だけなら、片倉さんの親より年上かもよ!?それなのにこのひまわりヘアピンが似合う中身って、どうなの?やばくない?


「片倉」

「あ、俊平。一階になんか用事か?」


 軽くショックを受けていたら、会長様が不機嫌さをにじみ出した声で、片倉さんに近寄ってきた。

 ちょうど、片倉さんの影になっていた私にも気づかずに近寄ってきたようで、私にも気づいた瞬間、思いっきり顔をしかめた。

 チッ、て言ったよ!この人。


「お前には関係ない。早く教室に行け。遅刻になるぞ」

「あー、ほら。リンが留学にいっちゃっただろ?ちみっこがさみしい気分なら、デートにでも誘おうかなって」


「勝手に保護者もどき離れさせておけ」


 ごもっともな内容を吐き捨てる会長様だ。


「……アオがいないのにキツくないか?」

「俺は相手が誰か、だからと態度を変えているつもりはないが?」

「……キツくなるか、普通に厳しいだけかの差か」


 がっくり肩を落とす片倉さん。うむ、私は喋らんよ。からかわないって約束してるから。

 ジーッと会長様を観察する。ふむふむ。黒ぶち眼鏡が似合うなんてなかなか分かってらっしゃる。爪もきっちり、切ってるし。なんか、私を見てるし。……ん?見つめられてる?


「………」

「……………」


 これって、目を逸らしたら敗けだ。の、メンチだろうか。


「俊平。睨まない」

「睨んでなどいない。売春の噂がたっている馬鹿の観察をしている最中だ」


 ーーなんですと!?

 片倉さんに視線を向ければ、顔を覆っている。…本当なんだ。ものすげえ、不愉快なんですが!

 私は不愉快だとばかりに会長様に噛みつく。


「アホなの!?私のどこを見て…いや、人間見た目じゃない!そーなると、否定すればするほど、ドツボに嵌まりそうなので、会長。パパッと私の名誉を回復してください」

「無理だ」


 予想通りの拒否にダメージはなかった。まあ、言ってみただけだから。この人が私の為に骨を折るわけがない。片倉さんがシーっと、あ、からかわない約束でしたね。

 それより、何で私をガン見するんだろ。会長。


「片倉」

「なにかな」

「これは、美人か馬鹿どっちだと思う」


 これって私か。指を指すな。見下すな。

 この人の中で、私はどんな位置なんだろ。俄然気になる。


「……どっちかで、選ぶなら美人だな。選ばなくていいなら可愛い」


 片倉さん、ありがとう。私の中で貴方は親しい部類だ。お世辞は六割な親しいお店のお兄ちゃん的位置だ。片倉さんが店開いたら私、いい常連客になるから。商売が怪しくなかったら。


「噂は噂だ。一昨日、ロールスロイスなんか乗れる親戚の方が迎えにきたせいで誤解が生まれただけだと思うけどな」


 なるほど、神取のせいか。あいつ、覚えてろ。そして、片倉さん情報通。

 それに納得したように頷く会長。


「異常な親戚だな。何かあくどい商売でもしているんじゃないか」


 会長、するどい。正解!

 だが、ロールスロイスに乗れるまともな商売をしている人に謝れ。


「俊平、ちみっこが嫌いなら絡むなよ」


 呆れたように嗜める片倉さんに私は思わず反論した。え、うん。私が反論したよ。


「えー、嫌いだから絡むんですよね。会長」


 私の思わず口から出た本音に同意を求めた会長と否定された片倉さんがギョッとしたような表情する。

 ん?なにか、間違ったかな。


「……どういう意味だ」


 あ、地を這うような低い声で訊かれた。私は、こてん、と首をかしげる。んー?


「好きとか嫌いとかって、何をしても良いって『免罪符』だと考えてる人もいるって話ですよ。もちろん、私もしてますが」


 お姉ちゃんとリンの事をいえば、私は、人に説教できる立場ではないので、こんな考えもありますよー的な話だ。別段、目新しい話でもないし。


「話して見ろ」


からかうわけじゃないからいいのか?

 会長の命令だし。そうですねーと、


「よく、『嫌いなら無視しろ』って言うじゃないですか。でも、無視する労力と無視しないで、一時的にもすっきりする方法が有ったら、どちらを選ぶひとが多いかと言う話です」

「無視が普通だろ」


 何故、偉そうなんだ。会長。


「いえ、不快な対象が目の前に居なくても、誰かに『あいつ嫌いなんだよねー』くらいいますよね?それ、無視してるって言えますか?」

「そこまで、制限は難しいんじゃ…」


 眉間に皺を寄せる片倉さん。

 教室内からも私たちのやりとりに聞き耳をたてている生徒もいるようだ。


「ああ、違います。それを言い始めると論点からずれます。私は、『嫌いなら、絡むな・無視しろは無理。恋をしている人に浮かれるな。っていうくらい無理。倫理とか常識じゃないよね。だって、嫌い(好き)なのに視界にはいるから構っちゃう。そして、この気持ち広がれ、みんなに!こんな強い気持ちだからいいよね。免罪符!』的な話です。上手くまとめられたか不安ですがご感想お待ちしております。おふたりに」


沈黙された。


「……推奨してるとかじゃないよね?」


心配そうに訊いてくる片倉さん。む、失礼な。そんなこと推奨できる訳ないだろう。ただの意見だ。


「当たり前じゃないですか。本音と建て前を取っ払って、生きてけるほど世の中甘くないです。ただ、会長様があんまり、人を馬鹿にするので、『お前だって、感情制限の下手な原始的な人間だ。ボケが!』と話を聞いてくれる姿勢だったので、嫌味を交えて返してみました。あ、……そろそろ、ホームルームです。自分の教室にお戻りを」


 私の怒りに目をみはらせ、フリーズしている会長を連れて行ってと私がちらちらと、片倉さんに助けを求めてみる。ひどい噂があるなら、サボるのは得策じゃないよね。

 ね!片倉さん。と目で合図したら、にっこり、満面の笑顔を魅せられた。……やばい、ときめきそうだ!!

 しかし、何故このタイミング?


「生徒会室なら、誰にも邪魔されないんじゃないかな。俊平」


 ん?


「ああ、…殿に証明書を三つ分書くように頼みのメールをいれとく。行くぞ。秋月」


 んん??

 あ、殿って、保建室の先生。女性なのに男前だから、殿ってあだ名が……ってそうじゃないよ!


「私、ホームルームに出るんですよ?」

「知るか」


 会長、横暴です。

 腕を引かないでください。


「んー、ちょっと興味深くて」


 何がだろ?

 片倉さんがちょっと、付き合えというなら。悪いことじゃないんだろうけど。

 しかし、これって、私の教室前でのやりとりだから。昨日から、私を不気味に考えてる同級生とか……だいじょうぶだよー。関わんなきゃ無害だよ。

特に射殺さんばかりに私を睨んでいる未攻略キャラの妹。関わんないで、ーーね?




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