懺悔しつつの決意表明
懺悔していいでしょうか。
実は、私、とある十八禁パソゲーを生前、プレイしてました。
あれは、生前の『私』が確か高校入りたての話で。爽やかに大学でサークル活動をしていた兄がB級エロゲーが大好きで中古屋で買う癖にプレイしないまま積み上げたやつの中から、本気でクソゲーの部類を引き当てたあの日。
『私』は、ゲーム内のキャラカプに心奪われた。
『天使と悪魔の楽園』とベタベタなネーミングセンスタイトルの十八禁パソゲーを誰が知っているのか。
真面目な話、メインのヒーロー・ヒロインが人気が無かったらしい。というか、スチル量が多いだけの雑魚だ。
このゲームは、『ボーイズラブ』という言葉が一般人の耳に入る頃に流行り神に乗ろうとしたが、それだけで売れないだろうと戦々恐々した馬鹿な会社がノーマルから、百合有り、薔薇有り、友情有り、主人公の性別を選べるという新しい試みの中で造られた闇ゲーだったりする。
ただ、たんに迷走しただけだろ。と今ならハガキにしたためてやろう。しかし、あの当時、『私』は十八歳未満だった。なのにプレイしたのは、特集記事を読み『天使と悪魔の楽園』のとある恋人たちの『Happy』エンディングが見たかったからだ。クソゲーの分際で特集されたのだ!キャラ愛故に。しかし、結局はたどりつけなかったが。
主人公の攻略キャラは十四人。
これは主人公の性別が選べるからで、ノーマル・グッド・バッドから分かりやすくするため、口悪くいえば、ホモ・レズとEndが多種多様なのだ。
そのせいで通常キャラですらスチルが少なかったのだが、隠し攻略キャラなのに異常なスチル登場率を誇ったキャラがいるのだ。それが、ユーザーコメント欄では『お前が主人公だろ!』『女性キャラ大半がお前惚れてるって…』『制作、キャラ愛全部ツッコんだ?』と賛辞と嫉妬を巻き起こした藤堂鈴と『かわいい』『憂いのおめめがたまらん!』『萌える』などど圧倒的人気を誇った秋月丸代のカップル。
このカプは、ゲームプレイ時からエンディングまで、主人公が全く関係ない場所から『純愛王道ストーリー』がモブキャラから話だけは、主人公の耳に漏れ聞こえてくるのだ。モブキャラに話しかけたり、主人公の周りが勝手に情報をくれたり、『やれやれご馳走さま』と言いたくなるストーリーで持ってくっついている。
そんな二人をどうやって恋人から別れさせて、男の方だろうと女の方だろうと『天使ルート』で攻略するのか言えば、攻略しない側をいきなりフェードアウトするという魔術を使うことになる。
ええ、この気持ち悪さを何度も体験しました。その恋人たちのイベントが見れるようになるのは、きっと彼らが関わるendをすべて消費することだろうと。もくもくとゲームをプレイしたことを覚えている。二人を出すまで80パー運も必要。昔のゲームだからセーブポイントも制限され、失敗するたびにリロードをくり返し、フラグをたてた結果。
いきなり、ラブカプたちの恋人の存在がなかったことになるルートが出来上がります。
萎えました。
『悪魔』ルートで、(男でも女でも)エンディングの病みだろうと監禁でも、殺されようとも、『妹『もしくは幼なじみ』と共用』だろうとラブラブだったカプが、『天使』ルートだけ。記憶喪失とか、エンディング前にいきなり、互いにいなかった存在にされたり。まあ、十年後の『私』ならゲームだからつじつまを合わせる為に仕方なかったのだと、あの当時の私に大人のふりで語るくらいはできたかもね。
ーーうん、『生まれ変わってなければね』。
「今日のご飯は何にしようか。ルカ」
「マル姉様の好きなオムライスが良いにゃ」
さて、問題です。私はどちら?
………うん、ごめんなさい。にゃ!って言った方です。こういうとお姉ちゃんがふるふる震えて喜ぶのです。ほら。
「きゃーっ!もうかわいい!!」
十歳になる妹に抱きつき、頭に顎を乗せグリグリ。……ハゲソウだよ。お姉ちゃん。
お買い物に行く途中なんだよ。ほら、玄関前なんだし。隣の家から出てきた奴が固まってるよ。
「……おはよう?」
いやいや、もう昼だから。
「こんにちわ。リン兄」
「あ、リンくん。こんにちわ」
パッと花が誇らんだように笑う姉にニコッと控えめに笑い返す隣人にクラッとなる。ーーコイツ、2歳年上なだけで、どんな色気だ。
「こんにちは。ルカ、マル。仲良しですね」
皮肉か。
しかし、姉は全力肯定。
「うん、ルカがあんまりかわいくて!」
にこっ!て。可愛いのはあなた様です。
「好きです。姉様。結婚しないで!」
「ルカがするまでしないよ!」
「じゃあ、ずっと一緒だね!あ、でも、やっぱりリンと結婚してください。甥か姪の面倒見させてください」
前世で三十路近かったが恋人の一人も出来ませんでした。……あ、涙が……強がれない。
「十歳で結婚を諦めないでください」
いえ、体験談だし。
「ホントよ。ルカはかわいいし可愛いし、可愛くてーー可愛いよ?」
お姉ちゃんがシスコンで困ります。
「可愛いだけじゃ、モテません」
「真理ですね」
私の言葉に頷くリン。
空気読めたり、絶妙な鈍感力を持たないとモテない。私はそれを知っている。
しかし、この二人はいつくっつくんだろ?
首をかしげつつ、二人をまじまじと見つめると、なーに?と姉。リンは微笑むだけだ。
この二人が『天使と悪魔の楽園』で最強のユーザー愛を手に入れた恋人たちなのだが、まだ、恋愛のレの気配もない。
あれー?確か、リンが隣に引っ越してきた三年前に一目惚れだったとかってモブキャラ言ってなかった?
あ、まだ『天使の祝福』がないのか。
うんうん頷いていたら、姉に突然、手を引かれる。
「はにゃ?」
「リンくんが荷物持ちしてくれるらしいよ。ルカ、さ、行こうね」
「昼をお相伴させて頂けるらしいので」
いつ、そんな展開になったのだろうか。
まあ、いいや。早く、この二人をくっつけて『妹』という特等席でニマニマしてみせる。
そして、絶対主人公どもを近づけさせないぞ!
私は、幸福な未来の為に誓いを立てるのだ。