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 片倉さんに手を引かれ、二階にある図書室まで連れてこられた。……昼休み、あと十分ですよ。私はこのまま階段を降りれば、すぐの教室だからいいけど。一緒に来た愛川センパイはどうなのだろうか?

 片倉さんは、遠くても私のほうに気を使うよねー。


「ごめんね。ちみっこ。俊平とアオの喧嘩に巻き込んで」


 人のいない生物コーナーまで連れてこられ、頭を下げられる。……待て、片倉さん。貴方は何をしているんだ?


「これは、オレのけじめだから。……本当にごめん」

「あ、……はい」


 謝ってもらう理由がないが、けじめなら仕方ないのかな?

 うーん。難しい。

 会長も藤咲さんも友達にそこまでして貰いたいだろうか。……なんだろ。モヤモヤする。なんか、納得できないと眉間にしわが、うーんと、唸ったら、ぷっと片倉さんが吹いた。


「って、オレがここまでやると大概の女の子はいいよいいよって、曖昧にしてくれるものだよ。ちみっこ」


 は?

 ニヤーッと質の悪い笑みを浮かべ、片倉さんが殊勝な態度を一変させる。


「駄目だよー。せっかく可愛いんだから、かわいい女の子の対応の仕方ってものも覚えなきゃ」


 ニヤニヤと、ああ、なんだろ。これって、からかわれてるのか?


「んー、そうだねー。るかちゃん、ちょっとあの場で俯くくらいしたら、あおちゃんはあそこまで利用しなかったろうし、天ちゃんもるかちゃんを無視して喧嘩してたかもー」


 愛川センパイまで、なに!?

 そして、喧嘩はやめないんですね。わかります。


「しばらく見てたけどさ。」

「また、見てたんですか!?」

「声が大きいよ。だって、ちみっこが面白いし。俊平にキッツイ事言われても、なんか面白く返そうとしてるだろ?真面目な奴だからからかわないであげてね。後、人間観察は趣味だからその辺も許して欲しいな」


 にこっと人の良さそうな笑顔を全開にし、私に向ける片倉さん。でも、言ってること黒いよー。

 こ、この人、生前プラスαな人生経験の私を軽く凌駕する社交性の持ち主だ。長く生きてても絶対身に付かない。は、まさかこれが天然物なのか!?


「るかちゃん、たっくんに手を合わせたら失礼だよー?」

「すみません。あやかりたくて」


 ぜひ、私もこうなりたい。テンション高く、暴走する脳内をどうにか落ち着かせたいものだ。ーー無理か。無理なのか。


「あー…、拝まれるくらいの人格はしてないけど。少し、ちみっこ、人の弱い部分を抉るの得意そうだから。……雲雀に助言したのって、秋月さんでしょ?」


 抉るの得意かな?自覚ないよ。

 しかし、雲雀も口が軽いな。……うん、否定しておこう。


「違います」

「秋月さんと帰ってから、テルと葛西との距離を少しずつ取るようになってるんだから、どう考えても秋月さんしかいないでしょ」


 素晴らしい推理だ。ワトソンくん。第二のシャーロックは君だ。そして、ひばりん。失礼なことを思った私を許してくれ。


「葛西は、今の所気づいてないけど。テルは、気づいてるよ。……普段は過激な事をする奴じゃないけど、葛西がからむとなると、怪しいんだ。何か有ったらオレに連絡くれない?これ、オレの携帯のアドレスが書いてあるから」


 すごい。片倉さん大正解だ。そして、味方になってくれるのか。わーい。


「今、携帯を持っているので赤外線しますか?」

「え、……あ、いいの?」


 メモを手渡そうとした片倉さんを遮り、携帯を差し出せば、驚いた顔をした後すぐに破顔した。

 いそいそと三人で携帯を出して、アドレス交換をする。愛川センパイまで、なんで携帯出すんですか。流れ的に断れなかった!ちくしょう。

 空メールを送るほど、確認に余念のない愛川センパイが怖い。そんな誤魔化しの機能付いてたら、真っ先に使ってやったのにと、呆れながら、愛川センパイを眺めていたら、クスクス笑い出す片倉さん。


「どうしました?」

「いや、秋月さんって。オレみたいなタイプをすぐに信用すると思わなかったから。軽いでしょ。オレって」



 あ、ご自覚がありましたか。

 


「端々の誠意は感じ取ってますよ?」


 なので、本音をぶちまけてみる。軽いだけじゃないとはわかってる的な?

 あ、意外でしたか。ちょっと恥ずかしいので嬉しそうな顔しないで。


「アハハッ!やばい。面白すぎて好きになりそう」


 なんてかわいい笑顔で強烈な冗談をいう人なんだ。私の頭をポンポンする。


「やっぱり、人の心を抉るのが得意そうだよね。ちみっこは」


 えぐるって。私をそんな恐ろしい凶器かなんかだと思っているのか。


「でも、かわいい後輩の気持ちを潰すくらいの感情じゃないんだ。安心してね」


 んん?私に何を安心しろと?

 話は終わったとばかりににこっと、また軽い笑みを浮かべる片倉さん。愛川センパイも満足げに携帯を仕舞い始める。


「あ~、そういえば」


 間延びした声で何かを思い出したように愛川センパイが私に向く。


「リンくんが、短期留学するらしいけど。るかちゃん、知ってたー?」


 まさかの爆弾に私は、愛川センパイをガン見してしまった。

 あ、どっかで鐘がなってる。え?違うよ。『天使の祝福』じゃなくて、ただのお昼休み終了の合図だよ。


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