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「すみませんでした!」
私が一歩歩くたびに響く謝罪の言葉。
なんだ、なんだと通行客の目がー…っ。
「女王、ごめん!」
「ごめんなさい、女王ちゃん!」
「女王、あの時は…っ」
サーっと血の気が引いていく。やめて、女王連呼しながら謝らないで!
ほら、周りの皆様と特に連れ回しているサメッちの目が白い。
同級生が挙って私に頭を下げている。わざわざ探しに来たのか、息を乱し半泣きな人もいる。恐怖!
「……謝罪してもらえて良かったな、悪党」
「グハッ」
どうやら、太田くんが速攻でクラスメイト達にメールしたようだ。
……私が一切なあなあに流していない事を。
傷付いては一応居るし、謝罪も無しなのは良くないとは思うけど、いちいち「謝ってくれ」と言って回るには人数が多いし、早々謝りに来た子もいるし、……労力に対する対価が低いんだよね。
売りの噂が流れなくなったのである程度満足してしまっているのも悪い状況だったのかも知れない。
「むぅ、全員にあの時、謝れと猛々しく言えば良かったのだろうか」
「……それが出来る人間がそもそもターゲットにされる状況ってなんだよ」
「色々やった結果さ」
主に無関心と好奇心のままに動いた結果、学校の三割は敵になった筈だ。やはり、少なく見積もり過ぎだろうか。
「おい、風紀の女王が風紀を乱してるぞ」
「しかも、後ろの奴に悪党呼ばわり」
「ついに彼女を悪の女王と呼ぶべきか」
「なるほど。略して悪女」
風紀委員の知り合いだったので突進して止めた。
やめてーっ!『悪女』は止めて!まさか、泉さんの狙いはこれか!?
だ、大ダメージが。
『秋月ルカ』からどんどん離れて行っている筈なのにどこで間違って『悪女』のレッテルを。
己、サメッちが私を悪党呼ばわりした結果だぞ。
睨み上げると心底呆れ返った目付きだ。
「珍獣ぶりがレベルアップしたな悪党」
「便利だよ?」
「あの土田って女、すげえな」
副会長のお姉様は、太田くんをある程度締め上げて、財布の中身は嘘だと認めさせた後、会長と顧問に説明してくると去った雅さんの代わり生徒会室に入ってくるなり、
『女王ちゃんに何か足りないと思ってたのよ!これよ!!』
と、どこから調達したのか私にリュックを背負わせた。
怪獣パジャマを着、リュックを背負い、看板を持った珍獣(完成型)に落ち込んでいた筈の太田くんと土井先輩が爆笑した。
ひどい。
そして、『文化祭のマスコットをこの後もよろしくねー』と手を振って生徒会室から追い出された。…高度な話し合いの場では私は邪魔なのだろう。うん。泣かないし、別なことを考えよう。
「私の仮装は可愛い筈さ。皆、私に携帯やカメラを向けているのだよ。可愛くないわけがない」
そうでなければやっていられない。
「……巻き込まれないように離れていいか?」
「生け贄を逃がす訳がなかろう」
ガシッとしっかりとサメッちの腕をつかむ。
にーがーさーんーぞー!
しかし、便利な事は確かなので小物類を入れさせて貰っている。あと、お菓子も貰ったのでモグモグとお行儀は悪いが食べながら歩く。ちょっとお昼過ぎたのでお腹空いた。
「お腹空いたね」
「奢らないからな」
「誰がタカッた!?」
気持ちを賛同して貰おうとしただけなのに。
む、着信音が……メールが着たようだ。リュックの中だ。……携帯は、お腹ポケットにしよう。
「結果か?」
「うん……文化祭中止にはならないって。……剣道部の催しは見張りの先生がいる状況で続行だって」
「ふぅん…良かったな。で良いのか?」
「うん…」
雅さんのメールにはミユミユ含む悪事を働いていた人の事は一切ない。
雅さんが説明下手なのか私が余計な事まで知りたがっているのか……わざわざ問い返すのもなー。もやもや。
と、思っていたら会長からメールが着て、ミユミユ達は保護者に迎えにきて貰い自宅待機させる方向らしい。
……知ったら知ったでヘコんだ。
「……はあ」
アディーを抑えなかった結果だろうか?
でも、あの子も魔界に帰してあげたいと思っている。考えてみたら私と契約を切ったら、セラ様との縁も切れるかもしれない。
そうしたら、また『この土地』で一人ぼっちになってしまう。
……嬉しそうに出来る事が増えたと報告してくるアディーは、努力家だと思う。
ただ、努力の結果、誰かを不幸にしている悪魔なんだよねー。
わたしだけでは賄えないんだろうか?
「むぅ、難しい問題だ」
「おーい、悪党」
サメッちがなにか呼んでいる。
「なに?」
「華藤、もう来てるって」
「なんだと!?」
私は怒りのあまり、看板を持ち上げた。
「何故、早く報告しないんだ!さあ、追い出すぞ」
「わざわざ来た他校生を追い出すなよ!楽しませて気分良く帰せ!そして、なにさりげにオレを戦力に入れてるんだよ!?」
「君ごと追い出せば面倒がないからだよ」
「室内楽部の演奏聴いてくって言ったよな!?」
「私が代わりに聴いててあげるから諦めたまえ」
最終的に頭を絞めやがった。
何度も言うが会長より痛くないからな!
「チッ、雅さんが忙しい時に……やはり、看板が火を吹くのだな。がおー」
それとも、今からゴン様にお守りを貰ってくるべきか。
ハッ、お姉ちゃん!
「奴とお姉ちゃんを引き離さねば!」
「……もう、華藤にはお前の姉に近づくなって説得するから。……解放してくれ」
サメッちの服を握り、「おねえちゃーん!」と叫ぶと、うちの学校の皆様が「綺麗な子供と二階に行った」と教えてくれた。
うむ、わかってらっしゃる。
後、サメッちが本当に死んだ目をし始めているが気にしてはいけない。
ーー二階に行った早々、サメッちのせいで絡まれた。
「あー、ゆずちゃんの旦那だー」
嫌みったらしくからかう声音にサメッちがぴくり、と肩を揺らす。ゆず?……ああ、女主人公様か。
声のした方に振り返るとなんだろう?小者っぽいのが二人いる。
「ホントだ。なんだよ。休みの日も一緒なんてラブラブだな」
……どうやら、私が女主人公様と勘違いされたようだ。彼女も黒髪で低身長の筈だ。よく見ていないようで区別ができていないようだ。
しかし、失礼な。私が大好きなのはお姉ちゃんだ。サメッちではない。
「いやー、口ではなに言っても、結局一緒なんだな。その電波と」
「気色悪いオタクとよくいれるよな。ああ、なんちゃって不良だもんなーお似合いか」
次々とよく人を貶める内容を言えたものだと、サメッちが足を止め体を震わせ始めたので、私も立ち止まる。
さて、私は女主人公様ではないと反論すべきか。
「おい、なんとか言えよ!」
反撃しないのが不思議でサメッちを盗み見るとサメッちは、ぎゅっと唇を噛みしめている。……ああ、うさちゃんがいる学校で喧嘩する訳にはいかないか。
仕方ない。
「ハル先輩、この人達誰ですか?」
「「へ?」」
にっこりと怪獣フードを脱ぎ、二人に対して無邪気を装い笑いかける。
「どうもー、天匙風紀委員、秋月ルカです。で、誰がオタクで電波なんでしょうかー」
にこにこと愛想よく微笑みながら、この腕章が目に入らぬかー!と見せつける。やめなさい、サメッち。助けてあげてるんだ。
その胡散臭げな目は止めなさい。
「あ、あれ……ゆずじゃない?」
一人が私を目を瞬かせながら見つめた。
むぅ、この反応はまさかーー恋か!
ピコーンっと私の中で野次馬根性の音がなる。なるほど……、それはサメッちを責めたくなる理由になるな。
……あれ、『私』から呆れを感じる。どうしたの?
の、のうない…っ
「ーー相変わらず、ハルに下らない言い掛かりをつけてるんだ」
会議ー!!と叫ぼうとした瞬間、聞こえた声にぞわぞわっと背筋に悪寒が走る。
……『秋月ルカ』の記憶が少しだけ懐かしく、そして、黒い感情をわき起こし、ーー私は、威嚇する気満々で怒りのウリ坊を背負う。
ここで会ったが百年目!
「貴様にお姉ちゃんはやらんからな!!」
「いや、お前も十分電波だよな!?」
サメッちが煩い。
ビシッと『華藤林之助』に指をさして、ポーズを決めた私に対して怒鳴るくらいなら絡んできた奴等に反撃したまえ。
まったくー…、
「え、えーと……久しぶり、り」
「ガオーっ!」
奴を『リン』と呼ぼうとした気配に私の看板が火を噴こうと持ち上げた瞬間、サメッちに取り上げられた。ーーなんだと!?
「ほら、華藤を怒らせたら女子にハブられんぞ。行けよ」
シッシッと絡んできた男達をサメッちが追い払う。
「?良いの」
きょとんとサメッちに問いかけたら「華藤モテるから、これだけでも脅しになる」と返されたので、思わず舌打ちしてしまう。
己、裏主人公健在か。
「ハル、大丈夫?」
「フーッ!」
「威嚇するな!華藤、とりあえず二メートル離れろ!罵られるぞ」
サメッちがなんて的確なアドバイスを!
己、看板が届かない距離か。ーーハッ、投げれば。
「貴様、我が姉に何用だ!?返答次第ではこの学校に居づらくしてやる!」
「もう、オレは大分居づらい…」
サメッちの悲壮など気にしてはいられない。ぎりぎりと睨み付ければ、くすくすと何が面白いんだ。
「ハル、別にボクと彼女は喧嘩してる訳じゃないから心配しなくていいよ。ただの行き違いだから」
「話すことなどないわ!さあ、サメッちとともに帰ると良い」
「……さりげにオレまで帰そうとするな」
さあさあとぐいぐいサメッちを華藤に押し付ける。しかし、力の差でサメッちが動かない。
己、サメッちの癖に。
「なあ、本当華藤は見張るから。ナンパしなければ良いんだろ?」
「ナンパなんかしないよ。ただ、運命の出会いを探してるだけだから」
………私は、無言でサメッちから看板を奪おうとしてー…、
「こら、ルカ。何しているんですか」
何故来たリン!
「げ!」
「『げ!』とは何事ですか」
リンが魔王のごとく、サメッちを睨み付ける。
「……で、看板を凶器使用は禁止された筈ですよね。ルカ」
リンの追及に私は、そーっと視線を落とす。
ど、どうしよう。
華藤を追い出せず悠長に話していたせいで、リンと出会わせてしまった。
「さ、サメッち、友人ともう行きたまえ」
リンの手を握り、シッシッと華藤とサメッちを追い払う。
華藤が何か面白いものを見ている表情になったのが気になる。
ドクドクと心臓が煩い。
「……『華藤林之助』に用はないんですか?」
「ふえ?」
リンの声に思わず顔をあげると、リンが私の頭をひと撫でした後に。
「桜田が写メを流してきました」
雅さん!
あっさりとした裏切りに半泣きだ。やだー、関わらせたくないのわかってる癖に。
私にも情報ないとか……雅さん的には、めんどくさい気遣いなんですね。多分、正解です。
あの人、バッサバッサ無駄を切っていく。ぐすん。
「なんですか。その絶望した目は」
「……会わせたくなかったんだもん」
不貞腐れた私にリンがチョップを!
「そんな威嚇して回っていれば、いずれ僕かマルの耳に入るのですから無駄な抵抗です」
ーー確かに。
しかし、サメッちがリンの姿に青ざめている。
もうトラウマを埋めつけられたのか可哀想に。
「鮫島、ルカは僕が保護するので友人と気兼ねなく回ってきなさい」
「へっ?」
リンの言葉に私が目を見開き、サメッちが変な声をあげた。
「なんで追い出さないのー?」
「追い出す理由はないです」
私には多大にあるのに。
「泉さんと手を組んでたら?」
「泉って、泉水穂の事?」
思わぬ所から、疑問が届いたので、やはり睨み付けると、端正な表情を歪め、華藤が不愉快そうだ。
「……室内楽部の楽器置き場が空いてるので話し合いをしませんか」
リンの提案にサメッちだけが話の展開についていけずに困惑していた。
ーー華藤林之助の顔立ちは整っている。黒髪が青みがかっており、目の色は茶黒。
……うん、リンに似てる感じで少し儚げだ。不愉快。
ゲームスチルと『秋月ルカ』の記憶にピタッと当てはまってしまった事に憂鬱になる。
室内楽部で練習中だったらしい三年のお姉様にリンが挨拶と楽器保管の場所を少し借りると説明し、四人で入る。私は、何故かサメッちの隣にされた。「ルカが暴れたら止めなさい」と、リンの言葉にサメっちが青褪めた。
「で、泉さんが君に何か迷惑でも?」
「ここの文化祭に来いと勧誘された事と彼女にしつこくされるたびに変な『夢』を見るようになったんだけど。なに、あの子、電波?」
否定できない事なので、私は黙り、リンはニッコリ微笑んだ。
「一度、うちの学校に来たらしいですね?」
「『夢』で会った子の名前をあの子の前で漏らした結果、うちの学校にいるから来いって『運命』だって」
私の機嫌がどんどん降下していくたびにサメッちがビクビクし始めた。なんねん?
「ルカに邪魔をされて……その後、来ませんでしたね?」
「ーーこの子がねぇ」
私の顔をじろじろ見るんじゃない。睨むぞ!
「……その顔を向ける相手はボクじゃなかったのにね」
そう言ってリンに視線を戻す。なんだか他人事だ。
「泉水穂のいう『夢』は幸せで恋い焦がれるものだって焦点の合わない恍惚した表情で語られたけど、ボクには悪夢だよ。でも、あんまり彼女がしつこいから来ただけ。ああ、秋月丸代には会ったよ。目が合った瞬間、凄く綺麗な子供に『悪縁だ。去れ』って言われたんだけれど?」
ゴン様ですね。わかります。
「マルの近くにいる子供はわかります。ルカのせいなので代わって謝りますね」
「……保護者みたい」
リンの姿に苦笑する華藤。……何か苦々しいものを咬み込めないものをなんとか噛み砕こうとするようにリンに視線を向けている。
「彼女から聞いたのだけれどーー藤堂鈴さん」
華藤の探るような視線。『私』が罪悪感を感じているのはわかった。でもそれが何故かは私にはわからない。
だって、リンは、私の……私の、……あれ、なんだか、胸がいたい気がする。
どうしたんだろう?
「貴方にとって、誰もが羨む美少女でタイプの違う姉妹からの好意を受けていて……、たった一人だけでいいの?」
華藤の言葉にリンが私に視線を送った。
む、心配されてるけど。私には関係ない人だもんと、華藤を睨み付ける。
それにリンがホッとしたように華藤に向き直る。
「何を勘違いしているのかわかりかねますが、僕はまだ、たった一人も手にいれてませんよ」
「泉水穂は」
「彼女の言葉は、彼女の都合が良いように意訳されているだけです。ーールカの反応を見て、来なくなった貴方はそれを理解している筈です。逆に聞きますが、貴方こそその『夢』は、本当に幸せなものでしたか?」
苦虫を噛んだ表情になる華藤。
「……甘い、夢だと思う」
「溺れたいのですか?」
ちらり、と華藤が私に視線が来たので思わずサメッちの後ろに隠れる。
なんねん。
「……色気がない」
んだとーっ!?
「『夢』の彼女は常に愛情に飢えていて、飢えれば飢えるだけ美しかった……のに」
何故、どこまでも残念な目を私に向ける。やる気か。
「少なくとも、こんな格好しなかった」
がっくりと肩を落とす。ふ、可愛かろう。がおー。
サメッちが今まで話についていけなかったようだが、私の姿に関しては、うんうん頷いて同意している。
「……どこで間違ってそんな格好になったのですか?」
リンも白い目だ。
「可愛い筈だ」
「それ、答えとして零点ですよ」
……可愛くなければやってられないのに!
「なあ、悪党」
「なにー?」
「華藤とリンさんの話についてけてるのか?」
「うん」
「……」
サメッちは空気になる事を選んだようだ。
ただ、暇にかまけて楽器に触れてみようとした瞬間、リンから「高いですよ」と呟かれた結果、動かない石像と化した。私もなりたい。
「それで、ルカに敵意がないと信じても良いのでしょうか」
リンが華藤を何かを探るような視線を向けている。
「……恨みごとくらいは聞いてくれる?」
華藤の言葉に『私』が少しだけ動揺した。
でも、リンはただ頷いた。
「どうぞ」
「そう。まあ、ただの唆されて、『夢』と現実の区別が曖昧だった人間の言葉ですが」
華藤は、リンをまっすぐ見つめている。
「お前が居なければ、ボクのものだったんだろう?」
その位置は、と続いた言葉にリンは、微笑んだ。
それはそれは綺麗で慈愛に満ちた、ーー作り笑顔を浮かべて、
毒を吐いた。
「僕が居なくても、君がこの位置になる事はあり得ませんよ。マルだけを、ルカだけを一途に想えないのなら消えろ。ーー潰すぞ」
魔王様の本気を威圧を真っ向から受けた華藤は、顔色を悪くしながらも、なにか考えているようだ。
「そんな都合の良い人間…」
「少なくとも、僕はそうです」
きっぱりはっきりと答えたリンに頼もしさとともに何故か胸が痛い。
『私』が少し焦っているのを感じる。どうしたの?
「……話は、これだけですよね?もし『夢』をもう見たくないというのならお勧めの場所が」
「……『記憶消去』」
華藤の呟いた言葉にリンが目を見開き、私と『私』は動揺する。なんで知ってるの?
「ーー『秋月ルカの中にいる邪魔な存在を消して、アキアキを取り戻すから、協力しろ』って。そしたら、姉の方はくれるって」
邪魔な存在って、私と『私』だよね。
あとは……うん、脳内会議もか。
『『『ひどい!』』』
結構消すものが多いけど、……天使が誰か泉さんに協力している?
なんで?
それにしても泉さん『秋月ルカ』は封印されてるって本気で思い込んでいるのか。
リンが警戒心を強めたらしく華藤に対する視線がきつくなった。
「その提案に魅力を感じたのですか?」
「……天使」
サメッちが華藤の言葉に眉を潜めた。確かに知らない人では電波だ。
「ゆずと……ハルの側に居なかった。だからー…光原かなって」
ぞわぞわとどんどん下がっていく華藤の声音に殺意を感じる。狂気?
「白銀の子供なんだけど知らない?」
ーーセラ様!
と、喉元まででかかった悲鳴だったけどリンが先に言葉を発したおかげでなんとか踏みとどまる。
「さあ?白銀の子供なんて知りませんね」
「……ふぅん」
「見かけたら教えましょうか?」
リン、セラ様だよ!
と、私がリンに視線を向けたのにシレッと無視された。
「どうする気ですか?」
「……アイツ、ゆずと光原は救ったのにー…っ」
「それも『夢』ですか?」
ふっ、と暗い笑みを浮かべる華藤に寒気がするので、サメッちの後ろにどんどん隠れてみる。
サメッちは、茫然とした様子で華藤を見ている。
「……どうする気かは、会ってみなければわからないよ」
にこり、と人好きそうな笑みで話を終えるように促す華藤。
その場は、そこで解散した。
……リンの隣を歩くと歩きながらリンが私のフードを直してくれた。
「……華藤はルカとマルにまったく興味がない訳ではないようですが」
ぴくり、と肩を揺らすと、頭をなでなでされた。
「それより、白銀の子供の天使に対して暗い影を落としていました。……何か心当たりは?」
「……セラ様じゃないならわかんない」
「セラ、ですか?」
リンが首を傾げた。だって、白銀の美しい子供って、ゲーム設定のセラ様しか思いつかない。
『私』は沈黙を選んでいる。私的にはゲームにも『秋月ルカ』の記憶にもないのかと必死に当てはまる項目を探すが、……そういえば、『秋月ルカ』の記憶を思い出した時、記憶に関して何か重要なことを……。
思い出そうと考えた瞬間、渡仲の顔が脳裏に浮かび、体中の血液が一気に下がった気がする。
「桜田にも聞いてみましょうね」
青白い顔の私にリンが問いかけてくる。
「うん」
「……叩き潰したかったのですか?」
「うん」
「……ルカは、なにもされていないのですよね?」
「……うん」
されたのは、『秋月ルカ』だ。私じゃー…、
「……すみません」
「ん?」
「無理に切り離さなくても良いんですよ」
リンの頭を撫でる手つきが優しい。
それに私が嬉しくなって見上げたらリンが目を細めて優しく、ふんわりと微笑んだ。
なんだか胸が暖かくなったり、キシキシ痛んだり、ほっと安堵したり……『私』の
『ごめんなさい』
声が耳に響いた気がする。
なんで、謝るんだろう。
不思議。
お姉ちゃんから“お昼ご飯食べよう”とメールが着たので、リンを誘ったら、「和臣が来てるので迎えにいきます」の無情な言葉が。
己、佐伯さん!
リンと別れ、ぷりぷりと佐伯さんへの恨み節を唱えながら看板を振り回しながら歩いていたら、片倉さんに遭遇した。
なんだかわからないけど、涙が流れたので片倉さんがハンカチで拭いてくれた。
いつも意味もなく泣いていて、すみません。




