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 会長と雅さんは言葉がきつすぎると生徒会の書記の一人ーー土井先輩に私か副会長と一緒に戻ってこない限り来るなと厳命されてしまったらしい。ので仕方なく、ついていく。会長は、顧問と一緒に剣道部の対応を考えるらしい。

 黙って歩くのも気まずいので生徒会室に行くまでに雅さんが太田くんを信用してない理由を聞いてみたら意外と多かった件について。



「まず口臭が酒臭くない。まっすぐ歩いている。痛みの有無を聞けば、首を傾げた。昏倒するくらいに飲み起きたならば、頭痛くらいはするはずだ。吐き気もなさそうだからな。……剣道部に薬がないのなら、狂言の可能性を視野に入れてもおかしくないだろ」



 飲みすぎた前世の記憶があるだろう?と問われたが、……今世の記憶でもあった。うん、まっすぐ歩けなかった。




「最近は口当たりの良くジュースと間違う酒もあるらしいが、基本的に酒臭さは誤魔化せない。と思う。エチケットガムも持っていないようだったから、な。後、その額なら真っ青になっていてもおかしくないのに飄々としていてな」



 雅さんが前世でお酒がものすごく好きだったのだろうことと物凄く太田くんを疑っている事はよくわかった。……うん、泉さんと組んでたら剣道部のやろうとしている事を逆手に取って、さらに大きな問題に出来るよね。



「太田くんは人間ですよね?」

「……狐様の力で不具合を起こしたのならば、どちらかの子孫かもしれない。限りなく人間寄りだが」



 たまに特殊能力や加護が人間としては多すぎるくらいの力が残る人もいるらしい。……あれ、そうだとしたらマナルンの弟の美草って。ーーマナルンの家で見た美少女の姿が脳裏に思い浮かぶがこれの確認は後でもいいか。



「雅さんは、セラ様の『真名』も知っていますか?」

「……君は知っているのか?」

「はい」

「……どのルートだ」

「メインヒロイン様で。ヒーロー様でもわかるらしいですよ?」



 無表情を止めて、憎々しげな表情をする雅さん。どうしたの?



「ーー思い出せないな」

「教えませんよ」



 間を置かずにセラ様の『真名』を教えるのを拒否しておく。

 雅さんは一瞬眉間に皺を寄せたが、頷いてくれた。良かった良かった。



「……アディーの『真名』を覚えていて良かった」

「そうですか?」

「教えてくれと頼んでも拒否しただろ」

「もちろんです」



 『契約』しているのは私なのだ。勝手にセラ様とアディーに害を与えられては困る。



「……もしかして怒っているのか?」

「いいえ、そこまでは」



 アディーが迷惑だったのは確かなので、頭を横に振っておく。

 しかし、『この土地』よ。雅さんにもなにかしらのペナルティがあるんだろうな。私だけなら泣くぞ。

 ちょっと、もっさりした不幸をー…っ。

 あれ、天使の加護の範囲だったっけ?



「……ルー、怒っているなら怒っていると言ってくれないだろうか」


 雅さんが情けない声で下手に出てきた。



「何故です?」

「……私の前世の死因理由と『桜田雅』の性格的欠陥だ。人の感情の機微に鈍い……のに感情を読みづらい相手ばかり寄ってくる。いや、ある意味わかりやすいのだが」



 私が思わず雅さんを見上げると無表情な中でも不安げだ。



「アディーの事は怒ってはいませんよ?ただ、タンスに小指をぶつけるくらいの不幸を希望しているだけで」

「………」



 だから安心してくださいと伝えたのに雅さんが微妙な表情をした。何故だ。




 生徒会室前にサメっちがいた。



「どうしたんだい?迷子は、職員室だよ」

「こんなでかい迷子がいるか!?スマホ落としたんだよ。探し物!!」

「どんなに大きくても迷子センターは対応してくれるよ?そして、スマホは君の生命線なのに落とすとは何事だ。呪うぞ」

「………」



 サメっちが力尽きたように項垂れた。



「リンさんって怖いのな」

「そんな当たり前の報告は要らないよ?」

「当たり前!?」

「藤咲さんの親友だよ?」

「……先に言えよ」



 ぷるぷると涙目だ。中身子兎ちゃんめ。



「こわいよー、天匙は人外魔境だよー」



 ある意味正解だがある意味間違っている。

 人外魔境は『この土地』だ。君のとなりに天使が、後ろから悪魔が狙っているはずだ。



「幼なじみが可愛くなってきた。ちょっとオカルト趣味なだけの普通な奴なんだ……うん、シスコンよりマシだ」



 ぶつぶつとこれから優しくしよう。と呟いている。良いことだ。

 雅さんが私に耳を貸せと言っている。



「何故メインヒーローが」

「奴の友人で、悪魔に後ろから刺されない為です。あと、ココさんに一目惚れしたようです」

「……見た目的には似合いかもな」

「やりません。絶対にあげません」



 雅さんの「なんの権利が?」という言葉など聞こえぬ。子兎サメっちなどにやれぬのだよ。



 見張りをしていた土井先輩が雅さんを見た瞬間、頭を横に振った。

 ……太田くんに視線を送れば、ふてぶてしくソファに座っている。

 うん、役作りが下手じゃないのか。怪しまれても仕方ない。

 サメっちがスマホ確認をして有ったらしくほっとしている。有ったならさっさと出て行きたまえ。



「あれー、秋月どうしたの?」

「やあ、太田くん。いつもは私を女王と呼んでくれるのに珍しいね。……ところで、君こそどうしたんだい?」

「……財布を探しに」



 一瞬だけグッと詰まったが、すぐ返事したな。



「そうかい。ちょうど良かった。私、剣道部から預かってきた物があるんだけど、君のかもね。見てみるかい?」

「……なんで秋月が……」



 あれ?太田くんが困惑しているようなので、後ろの雅さんに視線を向けると首を傾げた。

 ……もしかして、太田くんも泉さんに利用された?



「おい、財布ってなんだよ」



 突然、室内から出るタイミングを逃したらしいサメっちが私に問いかけてきたので、太田くんがビクーッと肩を震わせた。どうしたよ。


「あ、秋月何その怖そうな人」



 ……精神子兎なサメっちだよ?



「あ゛?なんだよ」



 眼光鋭く、周りを威嚇するサメっちに彼の性格を知らない太田くんがビクビクしている。確かに見た目はワイルド系で粗野に見えるが休みの日に姉の婚約祝いを探すシスコンだよー。暴君にコロコロ転がされる三下だよー。さっきも魔王にシメられた子兎ちゃんだよー。

 太田くんがサメっちに怯える理由がわからず、説明できずに首を傾げていたら雅さんと土井先輩が、



「他校生だ」

「さっき、女王ちゃんに看板で威嚇されてた奴」


 なるほど、そのくらいの説明でいいのか。



「悪い仲間が出来る予定の二年生だよ」

「シスコン!」



 頭を絞められた。

 そして、そんな様子に太田くんがすごく怯えている。……半泣きと言ってもいい。

 いや、確かに顔は怖いし、声もドスが利いていると言えば利いてるけど。



「で、財布がどうしたんだよ」

「太田くんが学校に持ってきた財布の中身がとんでもない額でね。雅さんが確認したんだけど入ってなかったの」

「へえ、幾らくらいだ」

「あのね」

「女王!」



 真っ青な顔で私を止めに入る太田くん。



「あ、あのさ…、俺、生徒会の人や先生に話すから……」

「何を?」



 きょとん、と太田くんに疑問を返したら、太田くんが明らかにきょどり始めた。



「さ、財布を落としたこと…」

「それだけ?」


 私が状況を知っている事を察したらしく、太田くんは口を開いた。



「……剣道部で酒を飲まされたかもってことも」


 それに頷き、ついで私は疑問を口に出す。うんだって、君次第なんだよ。



「ふぅん、それで目的は?」

「は?目的?」



 何故目を白黒させているんだろう。



「文化祭を中止にさせたいのかな?と思って」

「はあ!?」



 すっとんきょうな声が上がった。どうしたんだい、太田くん。サメっちまで驚いた表情はやめたまえ。私は、畳みかけることにした。土井先輩がGOサインを出しているので。



「何を驚いているんだい?学生の催しで酒が出て、自分の財布がない窃盗かと疑う人間がいるんだ。当たり前だろ。それに君の言う額は財布にはないよ。……で、落としどころは?」

「お、落とし処って?」

「落としどころは落としどころさ。君がどんな形なら納得して文化祭を続けられるか。それとも、文化祭を中止させるかどちらかで話し合いの内容は全然変わってくるよ」

「お、俺、被害者ですよね!?」



 辺りを見回して助けを求める太田くん。だが、土井先輩は明後日の方向を雅さんは無表情に動かない。サメっちが太田くんに視線を送っているが、……サメっち、睨んでるみたいに見えるよ。



「何を言ってるんだい?私はちゃんと君の話を聞いてるじゃないか。どうしたいのか言わないのは君だよ」

「……さ、財布さえ戻ってくればいい」

「それではダメだよ」

「は?」

「そうだな。ダメだ」

「ダメなんだよなー」



 私の言葉を雅さんと土井先輩は肯定してくれる。む、もしかして任されているのだろうか?



「君は今のところお酒を出された唯一の被害者だよ」

「う、うん……で、でも、泉が……」

「飲まされた。と説明したな」


 雅さんの感情のこもらない声に太田くんは目に見えて怯えている。



「……そ、それは」


 太田くんの態度に雅さんが焦れているのがわかるので、ちょっと様子見をしてみる。



「はっきり答えられないなら、それはそれで、別な問題が出てくる。酒を出した剣道部の罪は消えないわけだからな」


 雅さん、怖いです。むう、雅さん、会長より厳しい人間なのかもしれない。



「主犯と共犯の財布とバッグ、服も改めたが君の言った額は、所持金を足しても届かなかった。ーーそれで、君が本当にそんな大金を持ってきたのか親に連絡したいと顧問が言っている」

「え?雅さん。それはかわいそうです。私、学校に大金を持ってきたなんて、……親次第だと殴られる案件ですよ?」



 急に前世の親を思い出して、私は慌てて止める。ちらっと見た太田くんから血の気が引いている。

 何度も聞くが、どうしたよ。

 ……サーッと血の気がどんどん引いていく太田くんの様子にサメっちがため息を吐いて、私を見た。どうしたの?



「シスコンは、こいつに恨みがあるのか?」

「ないよ」

「じゃあ、嫌いとかか?」



「嫌いなのは太田くんの方で、私は特に?」



 ………太田くん、なんで泣きそうな顔なの?



「ああ、ルーをいじめてたグループの一人だったな」

「イジメ!?どんなことされたんだ」



 サメっちが心配したように私の頭を撫でてきた。

 うむ、もっと撫でてもいいのだぞ。



「そういえば、どんなイジメだったの?」



 私の疑問の言葉に皆様が絶句なさった。み、味方まで何故だ。

 だって、特に……そうだ、特に疑問に思わなかったのってなんでだろう?

 いつもなら見逃さない些細な前兆も見逃したような……『私』が一瞬だけ、震えた気がする。


 なんとなく、お姉ちゃんとリンに関係なければいいと考えたら、自分の身体の血の気が引いた気がする。……どうしたよ。自分。


「……太田、参考までに」

「……机に花瓶置いたり」



 雅さんの言葉に渋々答え出す太田くん。……水替えまめだなーと思ってた奴だ。



「花瓶の花を菊にしたり」

「知ってるかい、太田くん」

「?何を」

「菊の花がよく教室に飾られてるのって、リンに話したら『菊の花言葉は芸術ですね』と」

「……リンを後で叱っておく」



 リン、雅さんに叱られるよ。ガクブル。



「待って、女王ちゃん。教室に飾られてるって言ったんだよね?リン先輩、机に有ったとは聞いてないんでしょ?」

「あ、はい」

「桜田さん!叱らないで!!」



 書記の先輩が超必死だ。



「……まあ、それはとりあえず置いて。太田、他には」



 雅さん、叱るのを止める気はないらしい。



「あとは体操服や上靴を隠したり」

「ルー」

「上靴はお姉ちゃんが予備を……帰りになると戻っていたので特に。体操服は、お姉ちゃんの体操服着れて嬉しい!とお姉ちゃんに借りてました」



 皆、うわーって表情をドン引き?ドン引きしてるの?



「い、移動教室を教えなかったりプリント渡さなかったり…」

「休み時間のたびにお姉ちゃんとリンの所に行くと『次はここで授業でしょ、もう行きなさい』って。あと、プリントはいつの間にかリンやお姉ちゃんが私の分を持って帰ってたりして確認されます」



 皆、静まり返った。



「桜田さん、リン先輩とお姉さんがダメな甘やかし方してませんか?」

「……独立させる気がないな」



 生徒会のふたりが呆れてる。姉夫婦と同居する予定だから大丈夫なのに。解せぬ。



「……」



 サメっちが私の頭を撫でている。何かかわいそうなものを見る目をしている。ただ、見ているのは肩を落として唖然としている太田くんの方だけど。



「それで、リンがイジメに気付かない訳はないからな。わかってて放置したな」

「多分、自力でどうにか出来そうだと判断したからだと思います」

「……出来てるな」

「優しく纏めました」



 ビシッと敬礼する。



「やさしく……」



 太田くんが絶望したような表情を向けてきた。



「あれで?」

「うん」

「……俺には?」

「優しく尋問してるじゃないか。きちんと話を聞いている。状況説明もばっちり。何が問題なのか、今後の不具合についてもこれから説明するよ。逆に聞こう。何が足りないんだね?」



 何故半泣きなんだ。



「およそ最悪なケースは文化祭の中止と剣道部の廃止かな?ああ、君のお金の件があるからけ、……国家権力か……」

「変に濁さずに警察と言いなさい。事情聴取に親ももちろん来てもらわねばならないな……天匙が新聞の一面を飾るかもな。やったー、と言えばいいのか?」



 雅さん、やったーの部分に感情が籠ってません。そして、本気で目にも表情にも感情がありません。



「な、なかった事には…」

「何度も言うけど出来ないよ」

「させる訳ないだろ?」

「君は何を聞いていたんだ」



 意地悪で言っている訳ではないので、サメっち、そんな責めるようなぶしつけな視線は止めなさい。



「剣道部から酒と君の財布が出てきた事は確かだ。剣道部にそれなりの処罰が施される事は決定事項だ。当事者である君が、もう何もなかった事には出来ない」



 ……雅さんがそんな無表情に追い詰めないで。

 土井先輩も困ったように太田くんを見ている。まあ、仕方ないんだけど。



「なあ、財布が無事に戻ってきた事も喜ばせてやれないのか?」



 サメっちが、太田くん側に回った!あ、嬉しそうに視線を向けるな。まだ、早い。



「太田の話を聞く限り無事ではない」

「は?」

「財布の中身があわない」

「……」



 雅さんの言葉にサメっちが、私を見た。



「主犯も共犯も財布にはまだ手をつけてないんだよ?」

「それで?」

「太田くんの話が本当で差額を支払うにしても、やっぱり、保護者の介入はして貰わないといけないの。言い方が悪いけど……それが文化祭の後でもいいのか、すぐにするべきかって状況なんだよ。秘密裏にするには、額が大きすぎるんだって」



 サメっちが、大きくため息を吐いた。



「バカらし」

「同意する」



 雅さんの言葉にサメっちが不快げな顔をした。なに?



「おい」

「……」



 サメっちが太田くんの方に歩いていく、あ、びくびくされてる。見た目は怖いけど、子兎だよ。



「なあ」

「は、はい!」



 半泣きでソファに座って縮こまった太田くんの頭にサメっちが乱暴に手を置いて、わしわしと頭を撫でた。……どうしたよ。



「追い詰められてるのか?」

「……っ」



 太田くんがサメっちを見上げた。



「味方してやるから」



 なんだと!?

 私は、そそっと雅さんの後ろに隠れる。だ、だってサメっち、見た目はワイルド系だし。



「第三者で、よくわかんないオレで悪いけど、ーー味方して欲しいならする」



 ーーサメっちが男前過ぎて、殴ろうかと一瞬脳裏に過った。


 そういえば、ある意味本気で屑だと書き込みに前世で納得するものが有ったのだ。女主人公様にさんざん自分を頼らせておいて最終的に裏切るのが『悪魔ルート』なのだと、サメっちではなく、ヒーロー様成分に敵意を持ってしまった。……潰そう。責任のない優しさは屑だ。

 太田くんの頬が紅潮したのを確認し、私は、サメっちに地のそこから響く声で「……場合によっては暴君」と呟いておく。

 私は、サメっちにカッコ良さを求めていない。暴君のワードに肩を震わせたのを確認し、満足したので頷く。



「一連の流れを聞いて、よく味方をしようと思うな」

「あんた等全員、味方じゃないんだろ。一人くらい味方してやっても」

「間違いを正さないのが味方なのか?」



 雅さんがイラッとしたようだ。不快げな視線をサメっちに向け始めている。

 土井先輩が苦笑しながら私を見ている。ふむ、雅さんに必要なのは緩和剤になってあげられる相手かな?



「雅さん、太田くんは被害者です」



 あ、口を真一文字にした。不満なんだ。



「でも、私も太田くんの話で信用できないところが」

「なんでだよ」



 雅さんではなく私が表に出るべきかと思って、口に出したら低くうめくように不満を口にした太田くんにちょっと、納得は出来なかったが話は聞こうと太田くんに視線を向ける。


 うん、ちゃんと視線をあわせての会話は初めてだね。



「秋月が俺をそんなに疑うのは、あっちに日比谷がいるからだろ!なんでアイツだって、お前を率先していじめてたのに……急に仲良くなって」



 最初は怒鳴りつけるように最後の方は小さくなっていく声に私は首をこてんと傾ける。何をいってるの?



「仲良くしてないよ。頼まれ事をしていただけだよ」

「挨拶してたじゃんか!」



 興奮気味の太田くんの背中を擦るサメっち。思わず雅さんを見上げたら、げんなりした様子だ。



「ルーが君を疑うのは現実的な問題だ。間違っていれば、か……会長にも噛みつく人間だぞ」



 いま、神って言おうとしましたね。確かにゴン様にも噛みつきましたが。

 でも、会長に噛みつくと聞いた瞬間、太田くんはびくりと肩を揺らす。

 雅さんもようやく相手が自分基準で注意しても理解してもらえない事を感じ取ってくれたのかちょっと、優しく声音にも気を使い始めたようだ。うん、チラチラと私を見ても正解はわかんないよ。



「いい加減に気づいてほしいのだが、君が言う財布の中身が真実でなければ恐喝だ。しかも、学校中の何も知らない生徒を共犯にするかもしれないという悪質なものになるな」


 先程、何も知らない生徒を見張り役にしようとした身として雅さんの言葉が心に突き刺さる。

 私は反省した。



「……ミンナヲマキコンジャイケナイヨ」

「ルー、説得力がない」



 しかし、雅さんには通じなかった。



「ルーのようにそれを自覚し冗談でいう場合ならともかく」



 ……私、両得だと思ってたの。

 サメっちが悟りきった表情を一瞬し、私を軽蔑の目で見ている。君が正しい。さすが三下の同志。

 雅さんの私への評価が俄然気に……ならない!

 怖いよー。高すぎたら泣く。

 そして、太田くんの血の気が引いている。「そこまで…」と呟き、真っ青だ。



「真実を話す気になったか?」

「……」



 雅さんがスパルタだ。でも、そこまで脅すと次は、逆ギレの心配が出てくる。

 どうしよう?



「なあ、これ以上、追い詰める必要性ってなんだ?」



 あ、サメっちが疑問を私に向けてきた。ふむ、今回ばかりはナイスだね。

 なので、私の日比谷さんへの態度に不満を持っているらしい太田くんにちゃんと私のスタンスを教えてあげる事にした。そう、


 なあなあにしていたところに踏み込んできた強者に敬意を示してあげよう。



「太田くん、あのね、私、あの件について基本的に誰も許してないよ?」

「え?」

「えーと…女王ちゃん?」

「……だろうな」



 目を白黒させる土井先輩と太田くんとーー雅さんは納得したようだ。



「だって、謝罪もない事なのになんで許すの?」



 声が低くなる。私は太田くんに出来るだけ頑張って作った笑みをーー戦闘体勢に燃え上がった怒りのウリ坊を背負いながら浮かべる。



「悪いことをしたら、ごめんなさいだよね?クラス全体が関わってたのに一部を除いて謝って貰ってないんだよ。日比谷さんとの関係に口を出す前に……」



 蓋をしていた不満がだんだん表に出てくる。

 すぅ…と、目を鋭くさせ、声音も低くなる。

 会話が成立しているから許されてると勘違いされては困る。

 私は、謝罪もなく誰かを許すほどの聖人ではないので、悪人面で問いかけたのは確定だろう。……この辺は、やはり不信心なのだろうか。




「ーー君は、私に何か言うべきだろ?」






 ……ぷるぷる震えた太田くんから謝罪の言葉が出てきた。

 そして、震えながら自白した。やはり、財布の中身は嘘だった。泉さんにミユミユ達の企みを聞いてそれを逆に利用して大金を手に入れる方法を示唆されたらしい。

 ……冷静に考えれば穴だらけなのに、アディーの力も乗ったせいだろうか。

 『手順』の流れとしては大胆過ぎるなと考える。ふむ……、どうしてだろう?と考えると『私』が呆れているのを感じた。

 何かわかってるなら、教えてよー。

 『私』と私の頭の出来が違うのかと、むぅ、と考えてみる。……何かヒントをと考えていたら、



「おい、悪党」



 サメっちに関してはシスコンから悪党にクラスチェンジしてしまった。なんでだ。





 



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