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 あーたんのふりをした会長と共に敵地に!

 ……まあ、会長が私を囮にする気だからだけど。

 暗たんたる気持ちでため息を吐きつつ、注文した品が届くまで、日比谷さんの冷たい目が私の後頭部に突き刺すのを黙認する。

 ……違うんだよー。あーたんじゃないよ。会長だよー。

 恋する乙女は遠くから相手を眺めすぎて気づけないらしい。

 藤咲さんとあーたんは、別な場所で待機中だ。



「暇なのか、お前」



 会長があーたんのふりをしつつ、日比谷さんにあっちに行けと追い払う。

 ギロッと私たちを睨みつつ、日比谷さんが去っていくが、暇なんだろう。なんだか、お客さんが少ない。

 というより、どうも身内客しか来てないようだ。

 執事な店員は談笑ばかりしているけど、売り上げ大丈夫?

 会長、「……ゴン様……」って頭を押さえながら、ーーゴン様のせいだと!?

 私の困惑に気づいた会長がはーっと大きく息を吐き、




「俺が生徒会長なのもあるし、良くない商売をしているからだろうな」



 ……天久血筋の管轄内の不正な商売許すまじ!ですか。ゴン様。



「悪いな…本当は一人でどうにかするつもりだったのだが…」

「いえ」



 会長とあーたんは、迷子なのどかちゃんを職員室に連れて行き、戻ろうとした所で我がクラスのお調子者で名高い太田くんに捕まったらしい。

 なんでも、何時の間にか保健室で寝ていた。財布がない。落とし物になかったか?という質問をされ、生徒会室に顧問と共に待機していた雅さんに問い合わせた所、“無い”とのお返事があり、あーたんが太田くんに最後に行った催しを聞いたところ、この執事喫茶以降の記憶がないらしいので、会長が自ら調べにきて……警戒されて終わったらしい。


 会長、それはそうだと思う。


 そして、肩を落とした会長を待っていたあーたんと、私たちは遭遇し、今度は剣道部に並々ならぬ恨みを買っているらしい私を餌にし、素行の悪さで有名なあーたんのふりをして、会長はリベンジに来たという……。

 藤咲さんから「アディーは文化祭を中止にしたいんだって。『手順』の流れらしい」と不穏なことを……藤咲さんが青筋をたてていたから後から叱られるのだろう。かばわないからね。アディー。




「俺が来た瞬間、異常に警戒されてな…あの女子、さっきも俺の周りをうろうろして、見張り役か?」



 違うよ。さっきは恋する乙女で、今は、あーたんへの恨みだよ。



「?何を考えている」



 日比谷さんの気持ちについて。しかし、ご本人である会長には言えない。誤魔化そう。



「友達百人作る方法を」

「無理だ。諦めろ。一人でも大変だぞ」



 実感の籠ったため息だ。

 ハッ、薔薇の布教をしなければ…、




『そんなことよりーっ!』




 言い出しっぺの脳内会議がそんな事だと!?



『どうして、リンをサメっちの所に!』

『大変!会っちゃうかも!!』

『ーーん?会っても別に構わないんじゃ?』

『んん?そうだっけ?』

『……でも、なんかやだーっ』

『『『そうだねー』』』



 脳内会議が自分達だけ納得して渋茶を飲みはじめてほっこりしている。


 ……注文、まだー?


 周りを見回したら、泉さんがいつの間にかいない。



「日比谷さん!」


 給仕に戻っていた日比谷さんを呼ぶと迷惑そうに近寄ってきた。ふ、賄賂が効いてるな。



「なに」

「泉さんは?」

「水穂?……居ないわね。あの子、暇そうだったし、ちょうど執事服着てたから手伝わせてただけだし」



 剣道部じゃないのに執事服着てて、怪しいなーとは思ってたけど、ここに誘導したかったのか。

 罠に引っ掛かったのを確認したから出ていったのかな?



「あと、注文は?」

「……アンタ、凄い神経だよね」



 呆れ返って、見てくると簡易厨房に去っていく日比谷さん。

 さっさと証拠なり、なんなり握らないといけないのだ。仕方ないのだよ。

 会長も呆れないで。


 なんだか揉めている声が聞こえるけれど、無視して出てきた相手に視線を向け、次に会長に視線を向けたら頭を抱えている。

 仕方ないのだよ。関わらない方が良い相手認識にする前に藤咲さんがなあなあにしちゃったんだもの。



 さあ、帝王。やっちゃってください。



 相変わらず姉御的雰囲気で執事服を着たら男装の麗人な日比谷美憂(ミユミユ)が、乱暴に二つのグラスをテーブルに置くのを確認する。

 アイスティー?おかしいなー。お腹冷えちゃうよ。



「秋も深まってきたこの時期にアイスティーとは、とんだサービスだな」



 はん、と、あーたんみたいに悪どい笑みを浮かべ、ミユミユを睨み付ける会長。

 私は、その間黙ってグラスの匂いを確認する。……んー?うっすらお酒臭いかな?

 温めたらもっとわかるかな?

 話のわかる大人カモン!……大問題を文化祭中の間、揉み消すために!!

 会長にアディーの件を相談したら生徒会の顧問には、文化祭の中止にまでならないようにうまく立ち回れるなら、文化祭後は任せろとお約束してくれたらしい。

 ……一部のおかげで耐性が出来て腹をくくるのが早いらしい。その一部に私も含まれているらしいので胃薬と菓子折りが必要なようだ。お父さんに相談しよう。


「……ご注文の紅茶セットだろ?」

「だから?」

「小さい事に拘る男だね」



 チッと舌打ちに会長は、目付きを鋭くする。



「ーー本当に小さい事か?」



 その間に私は、ポチポチとお腹ポケットに入れていた携帯を打つ。ハンカチはお腹がふくれると断念したが、携帯とカードと金券はあるのだ。……ん?藤咲さんから、〝アディーの力が突然切れたけど、どうしたの〟って。なんだろ?改心したの?

 日比谷さんが出てこない。誰かに押さえつけられてるのか。姉に出てくるなと言われたのか……メールに“お酒がそちらにあるなら見えないバッグに入れておいて。回収するから。それから、太田くんの財布がないか確認よろしくー。あ、下手に隠蔽したら神罰が下るよ?ここにいるの会長だから”とメール送信。



 恋する乙女の悲鳴が聞こえた気がする。……利用する形ですまない。

 しかし、神罰の下りはマジだ。脅しではなく、ゴン様が意外とアバウトなのでどうなるのかがさっぱり読めない。が、元『次代鶴』で一緒に暮らす会長を敵に回して良いことがある訳はない。

 さて、どうしよう。ミユミユに対して札は結構あるけど、文化祭を中止にさせたい訳じゃないし。アディーのせいもあるし。



『ここは会長に任せて我々は賑やかしを!』

『よ!会長!帝王様!!』『が・ん・ばーっ!』



 脳内会議がのりのりで応援を。よし、私も三拍子で対抗を!それっ、

 口を開こうとした瞬間、会長が流れる仕草で私の顔を掴んできた。ふごっ!



「な、なひぇでひゅか!?」

「くだらない事を考えている表情だった」



 なんだと!?

 会長の私の表情を読むスキルが確実に上がっている。恐怖!

 睨んで大人しくしてろと座り直させられた。ぐすん。

 ミユミユが私を見下している。ふ、お口チャック。



「小さな事だろ?紅茶に香り付け程度に酒を垂らすなんて」



 ふん、と小馬鹿にしたような表情をするミユミユに会長は渋い表情をした。

 おお、確かに。それだと嗅いだだけでは、わからないな。くんくん。



「アルコール使用は禁止されている筈だ」

「へえ、他校生のアンタがなんで知ってるんだい?まさか、『俺は天匙の会長だ』って名乗るわけ?……ああ、そういえば噂でよく天久会長の兄が会長のふりをしてうちの学校に通ってるって聞いた事があるけど、それってどうなの?問題じゃない?」



 会長がグッと詰まった。むぅ、ミユミユったら嫌らしい攻撃だ。実に痛くて的確だ。

 仕方ない。



「それが事実って証拠はー?」



 のほほーんと茶々を入れるとミユミユが詰まった。……生徒会のお仕事を手伝っていてわかったのだが、会長、生徒会の人間以外に恐れられている。

 話せば意外と面倒見良いよー。アイアンクローと冷たい目と罵詈雑言に耐性があれば仲良くなれるはずだ。……あれ?そういえば、ひばりん、私が見る限りどれも当てはまっていないのに仲が良い。なんたるコミュ力!



「……三年の藤咲葵の態度が違う事が証拠だろ!」



 藤咲さん!

 会長が舌打ちした。……うーん、確かにあーたんとは仲良く喋っていて、会長とは罵りあっていたから友人の態度の違いでばれるか。

 よし、言いくるめよう。




「そう、それだけなんだー」




 にやりと口角をあげて笑い、くいくい、と会長の袖を引っ張る。

 はっと気づいたらしく会長は立て直しながら、


「ふん…、そんな不確かな状況証拠しかないのか?」



 会長が嘲笑うとミユミユがキッと睨んできた。

 私も椅子に座りながらふんぞり返り、鼻で笑う。市長の真似。性格悪いのを全面に出すぜ。

 どうやら効果が有ったようだ。ミユミユが一気に真っ赤になった。

 んー、市長のように相手の論をきっぱりと切って捨てるには、



「藤咲さんと会長は幼なじみ関係ですよ。学校以外でも付き合いがあって、その付き合いの中で昨日の喧嘩を今日に持ち越したりするんじゃないですか?一概に藤咲さんの態度で判断するとか証拠として弱いですね」



 あ、駄目だ。市長みたいに上手く斬って捨てられなかった。うむ、やはり圧倒的強者の真似は難しい。

 三下なのでつい、うっかり同意を求めて会長を見上げたら「……幼なじみ」って反芻してるーー大変だ。会長が変なところに反応してる。

 くいくいと、会長を引っ張る。場を用意しますから。


 ささ、帝王様、頑張って。



「それに今日はお祭りですから、会長があーたんの真似してても特に咎められる理由なんてありませんよね。お祭りですもん。多少のオイタは許されますよね」



 ちらりと会長を見上げ見せ場を譲る。

 ……会長、頭を撫でないで。日比谷さんが裏から嫉妬のオーラを発しているのが見える。

 ち、違うんだよ。三下は、上がお仕事しやすいように場の整理をするのも仕事なんだよ。



「そうだな。俺が兄の格好をしているという多少の悪ふざけは許されるかもしれないが、お前のやっていることは許されることかーーどうなんだ」



 胸ポケットから黒ぶち眼鏡を出して、かけ直す会長。

 うむ、小悪党と帝王のコラボはいかがかね。私、椅子から立ち上がり会長の後ろにそそっと回って胸を張る。


 ミユミユが睨んでるけど、何も反論出来ないようだ。


「剣道部の催しは中止でいいな」



 会長の無慈悲なお言葉に私は驚いた。が、文化祭を中止にしないためにはそういう処置になるのか。でもなー、うーん……、



 グッと黙ったミユミユに対し、周りから不満の声があがる。

 あ、剣道部の関わってない皆様ですか。こんにちわー。

 私たち以外のお客様が居なくなっている。……日比谷さんに視線を向けたら、ふん、と鼻を鳴らした。

 む、出来る。

 剣道部の一部の暴走というか問題にしろという態度だ。止めない奴が悪いという理論は弱者に対して厳しい。知らなかった人もいるのだろうし……日比谷姉妹の間に亀裂をいれたくない私は、必死に考える。シスコンの同志だ。失いたくない。



「ところでミユミユ」

「誰がミユミユだ!?」



 ヘコんでいるかと思えば怒鳴られた!



「会長に反論できなかった先輩は罪を認めたと判断していいんですよね?」

「……」



 苦々しい表情は止めてください。

 会長も、「おい」って…だけど、会長とあーたんの入れ替わりについて、本格的に調べられたら痛いのはこちらなので、ーー泉さんがミユミユと繋がっている以上ないとは言えないーー私は、にこやかに彩さんのように悪気がないといわんばかりの笑みを浮かべる。

 この件をこれ以上ほじくるならば、蛇のように執拗に追い詰めるぞという意味でミユミユの手をそっと握る。……さすがに爪を食い込ませる鬼女の真似は出来なかったので手を擦ってみる。

 ……指の先まで冷たい。

 もしかして、会長に噛みついたのは、怖かったのだろうか。鋼のメンタルと指摘された私でも会長は怒らせるべきでないと判断している。

 うん。かわいそうにと何度か擦りつつ、提案する。



「先輩、生徒会の掲示板に見張られる覚悟はありますか?」



 にーっこりと、満面の笑顔を浮かべる私にミユミユが、意味を秤かねているようだ。

 会長、顔を覆わないでください。


 ーー悪さが出来るくらい暇なのが悪いのだ。悪さが出来ないくらいに暇なのも駄目だが。



「幸い、被害者も一人だけみたいですし……個人的に奴にも少し痛い目に有っていただきたく思っていたので。ーー温情、欲しいですよね?」



 弱みを握られ、弱っている相手に悪魔の取引を持ちかける。



「どうせ、停学だろ」

「そんな自暴自棄はいけませんよ。……停学明けに同情されるかされないかではまったく別なお話ですよ」



 ひそひそと、悪人面で提案していたら会長が無言で私の頭に手を置いて、ぎりぎり絞めてきている。ま、負けんぞ!



「……」



 ミユミユが葛藤している。さて、悪魔の手順というのも習っているところだ。トドメを刺すか。ーー体育祭の時といい、ミユミユの弱点は妹である日比谷さんだよねー。



「ーー先輩」



 こそっと耳元に甘く囁く。



「日比谷さんーー妹様と不仲でお悩みでしたら、仲を改善する物を雅さんから頂けるように根回ししますが?」



 小悪党のとてもよく効く鼻薬に心が揺れているようだ。さて、今の日比谷美憂にとって魅惑的なことはなんだろうね。泉さん。ーーゲーム開始前ならミユミユが優先する人物は日比谷美晴だけなので交渉材料にはもってこいだ。



「ねえ、妹様の為にも、ね?これ以上の面倒は止めましょうよ」




 にこやかに、余裕があるように、前に私は言ったはずだ。ーー『底辺同士』だと。

 甘い小悪党の悪魔のささやきにミユミユは心が揺れているようだ。



「証拠は生徒会に預けて後は掲示板に見張られて、文化祭を何事もなく過ごしてくれますよね?ああ、もちろん、断罪の先延ばしですよ。他の部員達が楽しく文化祭を過ごすための救済処置ですから」



 手が白くなるくらい握っている。……とりあえず、擦って血行を良くしてあげないと。……日比谷さんが近寄ってきて姉のーー私が擦っている手とは反対の手を握って、冷たさに驚いたのか撫で始めた。



「……美晴……」




 あ、ミユミユの目じりに涙が溜まって……、私、ハンカチがない!

 私が会長に助けを求めて視線を向けたら、一つ頷き、ハンカチを取り出し、ミユミユに……、なんで自らミユミユの涙を拭うんだ!?

 余計なことしないでと会長を睨んだら「遵はそうしてただろ?」と驚いたような表情をーーそれは、幼子に対する態度……あれ?私もあーたんに涙拭かれてるぞ!?

 やめて、ミユミユ、ぽーっとしないで。姉妹の仲に亀裂が!


 『悪魔ルート』の開拓か!?




「……秋月の案は飲みづらいな」




 それはそうですよねー。みんながっかりしている。私も掲示板から逃げれて両得なのに……それに会長が苦笑し、




「生徒会長としてだ。俺個人としては、賛成だ。顧問を連れてくるから、そこで温情を貰えるか話し合うぞ。それまでは中止だ」




 小悪党の案は採用するにはいろいろ問題があるようだ。うん、主に倫理的に。ちっ。

 あーたんなら、採用したかもしれないと顧問が来るまで中止の剣道部の催しをしていた教室に入ってきた学ランのあーたんと藤咲さんに私の生徒たちに掲示板で剣道部を見張らせよう案を説明したら沈黙された。あれー?



「何もしらない生徒にそんなことさせようとか、秋月、もしかして、見張られてる状況にイライラしてる?」

「……自分から興味をそらしたいんだろ。お前は」




 二人の呆れ顔に私は、そっと視線をそらした。



「ルー」



 生徒会の顧問とともにこちらに来てくれた雅さんが無表情にこちらに歩いてきた。

 あれ?なんか困ってる?



「君のクラスの太田哲也には狂言癖があるか?」

「はい?」




 私が首を傾げたら、代わりに日比谷さんが「話を誇張する癖があります」と答えてくれた。ああ、確かに。と、私も頷く。




「彼のいう財布の中身と合わない」

「幾らくらいですか?」

「……」




 雅さんが眉を顰めている。




「彼は万札を持ってきたと言っている」

「「「は?」」」




 文化祭に不必要な額に室内に居た全員が絶句した。




「金券が足りなくなったら困るからと家から持ち出してきたというのだが、どうなのか、誰か答えれるか」




 雅さんの全体に問う言葉に剣道部の皆さまが必死に頭を振っている。




「財布には、手をつけてない!……です…………まだっていう状況だったけど」



 素直にミユミユが雅さんの顔色を窺うようにいうと、雅さんも頷く。




「狂言だとは確信しているが、温情を与えたところで剣道部がこのまま文化祭に参加するのは難しい事態なのはわかって欲しい……と、うちの顧問が日和った」




 雅さんの言葉に私は確かにと頷いて、会長に助けを求めて視線を向けたら日比谷姉妹に囲まれ、不安を訴えられーー好意を示されている状況だが、好意の方は華麗にスルーしている。




「ルー」




 雅さんが呼んでるので近づくと、ひそひそ耳打ちされた。「薬は有ったか?」と……ん?薬?


「はっきり証言しないので詰問したところ太田は一口飲んだら一瞬で眠気が襲ってきたと証言した。一口酒を飲んだところで体質でもない限り一瞬で眠気は襲ってはこないだろ。これは私の考えだが……太田が泉と組んでいる可能性がある。あれも狐様のお守りにやられたのだろ?」


 そういえば、そうだった。ので考えてみる。


「……お酒しか有りませんでした」

「……」

「雅、なんの話だ」

「ああ、あーたん。狐様が学校に来てくれたのは助かった。あと、連絡と写真もどうもありがとう。それで、」


 ん?雅さんから聞き捨てならないことが。


「ルーと一緒に太田の尋問をしようと思うのだが、誰かついてくるか?」


 埒が明かないと感じたのか雅さんの後ろからごごごっと聞こえる。な、何か燃えてる?


 天久双子と藤咲さんは青ざめつつ首を横に振った。……私は強制らしいよー。


 しかし、剣道部の件は比較的に和やかに済んだなーっと呑気にして呟いたら、隣りを歩いていた雅さんが、



「ああ、あーたんから事情を聞いた後に見張り役をしているというリンに電話して、電話口からアディーに『真名』を囁いて置いたからな。力が削がれたのだろう。正気を失ったからとセラがどこかに連行するらしいとリンが呆れながら教えてくれた」



 ……雅さんに手加減という言葉はないようだ。そういえば、転生者なのだからセラ様とアディーの『真名』を知っていてもおかしくないのか。藤咲さんがアディーの力が途切れたと指摘された理由を悟った私に雅さんは複雑そうな表情をし、


「すまないが、企みが大事な場合は『真名』で制限してくれないだろうか。君は、あまりにアディーを放置し過ぎている」

「そうですね」



 雅さんの言葉にしっかり頷いて、だが、きちんと悪魔としての本分に則っての行動は褒めてあげようと決意する。

 褒めると嬉しそうだし。



 私がにこやかにアディーとの関係をこれからも継続する術を考えていたら、雅さんがそれを察したかのように眉間に皺を寄せた。む、何か問題なのか。


 でも、わざわざ、口にして問題にしないぞ。と口をつぐむと雅さんが呆れた表情をした。「媚の売り方を心得過ぎてる」ってどういう意味?





 

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