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お姉ちゃんとキャンプに入隊してみた。……十分も持たなかった。
隊長、優しい言葉を投げかけつつ、ついてこれない人間をさりげなく切り捨ててますよね?と文句など言わない。………言わないぞ!!ぎりッ。
お姉ちゃんは最後までやり通した。夕飯の後にお父さんとお母さんにもやって貰ったら、お父さん、やってのけた。……お姉ちゃん、お父さん似!
リンにも朝のジョギングがわりにと貸してどうだったか聞かせてと頼んだ。
そして、私、お母さん似だね!
やりきれない理由に障害物をうまく避けれないって、……悲しそうにしないで。
夕飯は美味しかったけど、玉子と干ぴょうと天ぷら一部を独占していたら片倉さんが「干ぴょうもいいけど、旬のサンマとか……」「シソと椎茸の天ぷらも美味しいけど、もっといろんなもの食べようね?」とあれこれと皿に盛ってくれた。……やはり世話好きなのだろう。と納得しようとしたら、リンが「ルカのそれは気を使って食べないとかじゃないですよ」とぼそり。………なんで、藤咲さん、どうしようって顔してるんだろう?
佐伯さんがお母さんとお姉ちゃんにリンの昔話して盛り上がってる。交ぜてー。あ、リンに「余計なこと言うな」とチョップを……己、佐伯さんのせいでリンが私を構ってくれていない気がする。ギリッ。
お父さんが「ルカは安上がりだから」と、家計に優しいんだよ。
夕飯の後に片づけをしていたら手伝ってくれていた藤咲さんが「あの女が来たの?」って聞いてきたので頷いたら、力に当てられてるから精神的に不安定だからよく考えなよと注意された。
……どこがだろう?
リンも「何故カードを持ってなかったんですか?」と……さすがにうちの中では持たないよ。
あーたんから奴の写メが送られてこないが、光原さんのお父さんの写真はないか?とメールしたら“なんで?” と返ってきたところで……冷静になった。
あれ?何考えてたっけ?脳内会議よ。
『光原冬馬のことーっていうか、万葉さん曰く長谷部さんが似てるだけの話し?』
『セラ様のメインの行動の正当性を必死に組み立てようとしてたのー』
『あれ?でも、どこかは引っ掛かるよね?』
そうだどこかは引っ掛かる。
引っ掛かるけどー、もっと違う形でも引っ掛かってるような……。
わかんない。ふむー。
『私』がまたため息を吐いている感覚がする。どうも、距離が近くなった気がするので、できるだけ発言しないようにしている感じだ。
記憶をあまり私に見せたくないのかな?
それとも、雅さんみたいに厳しいタイプなのかな?頼りすぎてる自覚はあるので、ちょっと、改めるべきなのか。
ふむー。
とりあえず、一人で考えるとして、万葉さんにさっそくメールで近況と藤咲さんの好きな場所とお店を聞くメールを認めたところ、“なんで?” と返信が……。
なんでってなんで?
気分転換にお出掛けするのだとメールしたら、また“どうして?”と……。
万葉さん、からかってますか!?
まったく、息子さんの為に役に立たない事が判明したのでメールをココさんをいじめないでくれという内容にし、切り上げる。
あーたんから、メールが着ている。む、マメだ。
光原母は、天久家で預かる事になったらしい。人間外の力が動いているとセラ様が言うので、狐様に預けた方がいいと云う流れになったらしい。
光原さんは、セラ様と自宅にいるらしい。……光原母が光原さんの姿に動揺しているから。……テルは、もっと小さい筈だと。
……『記憶消去』か……。
そういえば、リンはこの能力を知っているんだろうか?
聞いてみるべきか?
『だめ』
……ダメか……ん?なんで、だめなの?
『……』
ノーコメントだと!?
むー、女の人の声に逆らうと精神的に負担な事態に陥るから逆らいたくないけれど……、雅さんに相談すべきか。
悩んでいたら、自室にノック音が響く。
「どうぞー」
お姉ちゃんだった。
「ルカ、万葉さんがね。動物園と水族園はNGで、ご飯は任せてあげてって。なんの事?」
お姉ちゃんの方にメールが着たらしい。……次の日曜の午後にお友だち?……いや、暴君と出掛けると説明したら、お姉ちゃんが心配そうな顔をしたので、素直に藤咲さんだと答えると、今度は首を傾げた。
「皆で?」
「うぅん、二人で」
「……まだ、お付き合いとかダメだよ」
ぷくーっとフグのように頬を膨らませるお姉ちゃんは女神だけど。違うよ!リンのせいだよ!!それに藤咲さんは女嫌いだよ!!
はっ、私を女認識してない気もしてきた。あれか、リンがよく昔私に言っていた珍獣か!?
動物好き……じゃないな。動物園と水族館がダメなら。
「お世話になったので、ご接待なの」
「どこに?」
「決めてない」
「うーん、葵先輩って運動神経は良いけど、スポーツ好きじゃないしね……」
「それ関係は私が付き合えないよー」
「無料券があるから、植物園とか……ショッピング?」
藤咲さんとショッピングは痛い目に有ってるからダメだな。そういえば、メインヒーロー様、元気かしら?
元気じゃなくても良いから、女主人公様を苛めないでいてくれないかな。……脱線した。
「紅葉が見頃だから、公園とかは?」
お弁当作ってと……やだ、女子力の塊のお姉ちゃんが酷な提案を。
「歩くの気持ちいいと思うよ」
そうか、運動しないといけないもんねー。植物園と公園か……候補にしておこう。とした瞬間ーー、
「あ……っ」
「ルカ、耳を塞いで」
パトカーの音に身体が硬直する。お姉ちゃんが慌てて携帯を操作し、机に置きっぱなしにしていたイヤホンを繋げ、耳に曲が大音量で流れるイヤホンを装着させてくれた。
……一気に気が抜ける。 窓もパトカーの光を見ないようにと下を向かされた。
ぎゅうぎゅうとお姉ちゃんが私を抱き締めてくれる。
そうしていたら、二階にお父さんとお母さんが心配して来てくれた。
それに『私』が微笑んだ気がする。
ーーやはり、夢は悪夢だった。
愛想が良く可愛らしかった『姉さん』と比べられて育った『私』だったが社会人になると立場が逆転した。……行動力があり、可愛らしく、両親に溺愛された『姉さん』は開放的な人間になり、たびたびトラブルを家に持ち帰った。それに困った両親が一人暮らしを始め自立した『私』に頼る羽目になるという……『私』は、世の中の皮肉を詰りつつ、両親を暗い気持ちで援助し、昔は絶対だった『姉さん』に嫌みをいい始める。
そうすると、すぅーっと少しだけ気分が浮上する。後から後悔で倍落ち込むが、それでもその少し浮かぶ気分のために両親が『私』を頼るたびにどんどん言葉がエスカレートしていく。
……こわい。
『私』の中の憎しみがこわい。
どんどんと積もっては、塊が大きくなっていく。
ーー『私』が面倒を起こせばすぐに罵るくせに。
ーー『姉さん』の為なら頭を下げれるのか。
ーーいつか、絶対に見捨ててやる。そうしたら…ー
どんなに虚しかったんだろう。
自分がどんな人間だと理解したうえで、それでも、見捨ててやりたかったと……。
ゆっくりと目を開くと、頬に涙が流れていた……薄暗いけれど、明るい。……時間を見れば、起きても不自然ではない時間帯なので、私は自室から出ることにした。
階段を皆が寝ているだろう前提でゆっくりと、降りようとしたら、お父さんの声が聞こえる。
「ーーには説明しない前提でなのか!」
すぐに私が顔を出したら、ダメな案件だと理解し、階段に座る。
お父さんが誰かと話している……「蓮」と聞こえたので神取だ。
神取と連絡を取っている!
ここでは聞きとりづらい。
お父さんは、リビングにいるのでキッチンに隠れてしまえば見えないと気づいた私は、こそこそと情報を握る為に鍛え上げた忍び足でキッチンに忍び歩く。
ふふ……、リンやお姉ちゃんには邪悪な気配を感じ取られ通じないが学校の部活の弱味を握ったのはこの十八番のおかげだ。
近所の浮気旦那の秘密を握った時も怪しいと勘が告げた瞬間、後ろからストーキングし自宅に戻る前に何かを装着しようとした瞬間に後ろから前にまわり「あ、あれ?居たの?」と焦って指輪を落としたのを見たおかげだ。
奥さんにバラされたくなければ誰かの弱味か問題を握ってこいと、ねずみ講のようにどんどん弱味を……あれ?前世の上司のやり方に似てる気がしてきた。
まあ、それは置いておいて。
よく滑る室内用上履きを履いてるおかげで足音対策はバッチリだ。
お父さんが電話と……探しても見つからなかった書類まである!に集中している隙にキッチンにそそっと身を潜ませる。
「……もうすぐルカの誕生日だけど」
あ、話が変わってしまったようだ。言い争ってた内容が聞きたかったのに。
「うちだと祝ってやれないけど…時間作れないのか?」
お父さん、神取に私を預ける気だ!
雅さんに忠告を受けたばかりなのに、何?強制力とか?
「……僕の親がもともと佳代子を嫌っていたし……、兄達や弟には子供が居ないから、初孫のマルが可愛くて仕方ないんだよ………ああ、誰がバラしたのかはわかってはいるけど……」
誰がバラしたのかわかってたのか。
「……で、時間が空くなら預けても良いか?佳代子は自業自得だと耐える気らしい。マルも預けたい所だけど、マルが居ないと何日も滞在しそうだからな。あの子も納得している……ルカの事を嫌うとマルにも嫌われるっていい加減に理解して欲しいんだけど」
息を吐きながら愚痴るお父さん。……苦労させてる。
「……ルカはうちの子だ。その冗談、もう一度言ったら舌を引っこ抜くぞ」
しょんぼりとしていたら、お父さんが地に這うような声で神取を脅しているけど、話の流れでただのなれ合いだと判断する。
それより、お父さんが誰もいない場所で、元凶である神取に対し、私を『うちの子』と明言してくれた事に涙が出るくらいに歓喜する。
お父さん、大好き!!と言えるこの喜び。
一人で震える。
「ーーともかく、ルカが誕生日に不愉快な思いしなくて良いようにお前の方で何か祝ってやれないのか」
……どうしよう。
お父さんの気持ちは嬉しいけれど、神取に会うな…って、でも、神取は……。
「ああ、頼んだ」
話し合いが終了し、電話を切るお父さん。キッチンに来るなよーっと一応、念で呪っておく。
書類を揃える音がし、キィッと何かが開く音がする。……バタン?閉じた?何かを閉じた?
台からひょこっと頭を出したらお父さんがくあーっと背中を伸ばしていたので慌てて頭を引っ込める。
む、どう脱出するべきか。
あ、ちょうど、キャンプに入隊したところだ。ほふく前進するべきだな。
よし、やろう。
右ひじー、左びじーうんしょ、うんしょ………あれ?あんまり進まない。
「……ルカ、芋虫の真似?」
芋虫とな!?
上を見上げたら呆れたような声を出すお父さんの姿が、いつの間に。
「酷い!お父さん!!」
立ち上がって抗議した。
あ、お父さんがジーッと何かを探ってる。
「いつから居たの」
「神取に私を預けるの?」
「……」
お父さんが少しホッとしたようだ。やはり、言い争っていた内容の方が聞かれたくない内容だったらしい。
書類がない……リビングのどこかか。
「お父さんの親に会いたくないだろ?」
「……」
その質問は答えづらいよー。
「部屋で息を殺しながら過ごすより、神取を困らせて過ごした方がルカも楽しいだろ?」
お父さん、神取に意地悪したいの?
でも、誕生日は……、と渋る私の様子にお父さんが眉を寄せた。
「神取に会いたくないのか?」
それなら仕方ないと、お父さんが納得してくれたようだ。
「僕の気持ちでルカに不愉快な思いをさせていたみたいだね」
ん?何が?
「ルカが会いたくなかったのに引き合わせてしまっていて」
あ、そうか。最近、お父さんが薦めるから神取に会ってたと解釈したのか。
え?じゃあ、このまま話が進んだら、もう神取に会えなくなるの?
今が過ぎたら、長く会えなくなるのに?
………やだ。
神取に会いたい!
そう思った瞬間、透き通るような鐘の音が鳴るー…。
ゲームとは違う、音色……なに?間違いなの?
「ルカ……?」
「……あいたいけど」
「うん」
「こわい」
ぐずぐずとお父さんに抱きついたら、お父さんが強く抱き締め返し、「……本当にそこだけを聞いたの?」と聞いてきた。む、疑われてる。
「言わない前提って言葉は聞いたよ?」
「……」
白状したら、お父さんが頭を撫でてため息を吐いた。
「ルカは好奇心の塊だね」
お父さんが私を抱き上げて、もう少し寝ようねーと睡眠を促してきた。む、誤魔化してる。
でも、鐘の音……神取に会いたいと云うのは間違いなのだろうか?
でも、警鐘というには……、
朝になったらキャンプ入りしたらしきお兄様方がぐったりと朝食を食べている。
「朝から地獄」
悪魔の子が何か言ってる。
「あれ良いですね。ジョギングより効きそうです」
やだ、天使の孫に火が点いてる。
「今から筋肉つけたら身長が…もう少し伸ばしたいんだけど」
頼れるアニキに筋肉と身長は必須ですぜ!
「体力とかいいじゃんー、テキトーでー」
いつか狸になって後悔するが良い。でも、『お兄ちゃん』に似ている人が狸になるのはなんかやだー。
佐伯さんに見送られて学校に登校すると、ひばりんが私を待っていたので私のクラス前で色々話す。うん、昨日も見舞いに行っていて天久家に光原母を連れて行く所に付いていったらしい。光原母は暴れたらしいが、政人さんの「体調管理もまともに出来ない小娘が囀るな」の一言で撃沈したらしい。………多分、政人さん以外の言葉なら光原母は大暴れを続け我を通したと思う。
改めて怖い人に喧嘩売ったんだなーと遠い目をする。
狐様が『雲雀小鳥』を巻き込んだからと破格に甘い対応だったのだろう。
無意識でも狐様を天久から解放しようと、ずっと思っていたんだ。だから私のーー『雲雀小鳥』という存在を見逃してくれたのか。
見捨てられない存在か………。
廊下で話していたら、日比谷さんが取り巻きと一緒に私たちの前を通り過ぎようとしたので、
「おはよー」
と声を掛けたら、
「ん、おはよ」
とそっけなく返された。取り巻きとひばりんが顎が外れそうなくらいに口を大きく開けてびっくりしている。
「新しいのはないの」
「何たる強欲さ!!」
「出来れば髪を切った後の着物写真」
「偽装していい?」
「殴るぞ」
「やめたまえ、暴力は何もうまんぞ」
一通りやり取りを終了して、日比谷さんは取り巻きにさっさと行くよと教室に入って行ってしまった。慌てて追いかけてんなー取り巻きの皆。まったく、
「ひばりん、どう見ても女王の名前は日比谷さんのものだと思わないかい?」
「………秋月は勇者すぎる」
馬鹿な。その異名はもう別な人のものだ。
その勇者な雅さんが本格的に忙しそうにしているので今日は雑務係に徹し、さて帰る前の校門チェックだとバッグを持った所で文化祭実行委員の人に捕まった。
「お願い、困った妹ちゃん。お姉さんに仕事をもう少しゆっくりするように頼んで!!」
どうやら、私と帰るためにお姉ちゃん、かなり実行委員の仕事を前倒しして終わらせているらしい。……皆付いていけてないってどんだけなの?
「細々とチェックもあるし、生徒会との繋ぎもあるからお願い!」
時間的余裕は確保できているらしいが、精神的だったり体力面で切羽詰まってるらしい。
「お姉ちゃんに頼りすぎてるからですよ?」
「わかってる。去年が楽すぎて、ついな……。それを知って、どんどん仕事流してくる会長も鬼だけどな」
さすがです。会長。
仕方ないので、実行委員の人たちがもっとスピードダウンを求めているとメールし、今日ももう少し話が有ることも伝えると、"待ってる?"と返信が。……これで待ってると返信したいが隣で私に助けを求めてきた先輩の手前、"今日は帰るから、リンと帰ってきて"と返す。
苦渋の決断だった。
いや、リビングのどこかに有るはずの書類を探すためだと、切り替え一人で校門前をとぼとぼ歩く。と誰かに突然、手を押さえられた。
「ふぇ?」
「お久しぶりですわね」
はて?どこかで聞いた覚えのる声がする。
「車を待たせておりますの。行きますわよ」
ズンズンと力強く私の手を引っ張る彩さん。何故いる?そして、やはり着物。学校はー?
そして、着物に着替えさせられ、髪型も整えた私は例のレストランで彩さんと対面していた。
「コースでよろしいですわね」
有無を言わせない雰囲気だけど……、私はがっかりしていた。今日は、焼き肉だったのに。
焼き肉だったのに!!
この恨み、忘れんぞ。彩さん!!




