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「心美がかわいそうってどういう意味」


 あ、修羅場ってましたね。片倉さんのせいで、一瞬忘れかけたよ。テルテルめ。ほじくり返さなくてもいいのに。

 片倉さんは、うーん?と私の頭に顎を乗せて私ごと主人公とヒロイン様に向き直る。どちらも、敵意むき出し。

 裁判なら絶対、私が勝てるのになんで、こんなに悪いことしてないって態度をとれるのか。

 お店の方々、邪魔してすみませんと、一度視線を向けたが--ん?片倉さんがひらひらと店員さんに手を振ると仕方ないなとばかりの苦笑。

 まさか、手回ししてたの!?


「ちょっと前から見てたから」


 はいぃいっ!?


「ココちゃんが、ちみっこを殴った辺りは見てたよ。男が出るとあんまり良くないかなって見学してたけど。テルりんが出るなら別かなって」


 悪気なく言い捨てましたが、最初から居ましたか。素晴らしい。ここまで黙って見学とかどんな暇人だ。

 私が尊敬の念をこめて、見上げようとしたが乗せられた顎が邪魔で頭を動かせない。うむ。残念だ。


「んー、でもさ。ココちゃんも謝る気がないようだし、さっきから携帯鳴ってるだろ。雲雀。今日は店の迷惑なってるから帰れば?」


 ……なあなあにしようとしてますね。面倒なんですね。


「心美が人を殴るわけないだろ!」


 はい。私の頬を見てください。熱を持ってるので、赤いのでしょう。セラ様、殺気立つのはやめてください。

 睨んでも駄目だと思うよ。

 ひばりん、俯かなくていいよ。コイツらのおばかさん度は君より知ってるかもしんない。


「うん、じゃあ何にもなかった事にしようか」


 ……は?

 何を勝手にほざいてんだ。私は、許さんぞ。声音は軽い。態度まで軽いとはこれいかに。見上げられないから、どんな表情を……ん?なんで片倉さんの方を見て、ヒロイン様は顔色を変えてるんだ。真っ青だ。


「あ、あたしがわるかったわ…」


 ……ん?今、彼女は何を言ったんだ。あたしが悪かった?ーーヒロイン様が?

いやいや、まっさか。

状況の把握が上手くできない。なにがあったの?

大型わんこ主人公、ヒロイン様を慰めてないで、説明を。


「謝ったよ?」


 顎を頭から外して今度は肩に乗せてくる。いやいやいや!この距離はダメでしょ!?

 乗せられた肩のほうに必死に顔を向けないように反対方向に首を向ける。勢いがつきすぎて、ぐぎって聞こえた。痛い。けど気にしてられない!


「ねえ、ちみっこ。ココちゃん、許してくれないの?」


 顔をのせてる方の耳元で(しかも殴られた方)、甘く悲しげな声を出し許さないの?とまた訊いてくる片倉さん。

 ひぃーっ!この人、自分の扱い方を心得てらっしゃる。軽い脅しだ。私、屈しない……うん、無理!


「ゆ、許しまふっ!」


 だから顔を退けてーっ、身を引いてーっ。セラ様。私、いま超不幸だよ!運をちょっと下げただけだよね!?

 なんで、こんなに羞恥心を煽られなければならないのか。


「ん、ありがとう。ご褒美にキスしてあげようか?」


なんてこというの!?


「全力でお断りします!」


 やめてやめて。私、前世でも恋愛に縁のない生活してたんだから、色気をちょろっと向けられたら、コロッと騙される自信がある。ーーつーか、何、この中学生。最近の子ってこうなの!?

 しかし、まだ私の肩に顔を乗せてるのはいただけない。セラ様、渋い顔じゃなく助けて!ひばりんは動かないで、ヒロイン様が煩いから!!


「……ねえ、達也。その子、赤くなったり青くなったりかわいそうだから離れてあげたら?」


 私のきょどりっぷりに同情したのか主人公様が空気読んでくれた!?

 ま、まさか、貴様に救われる日が来るのか。感謝してやらなくもないぞ!


「んー、保護者に確保しておけってメール来てるから無理。テルりんたちは帰っていいよ。ああ、雲雀はオレの方で迎えにくるから一緒に帰ろう」

「なんでよ!」


 ヒロイン様、空気読め。

 そして、保護者って誰?

 お母さんとお父さんと知り合いなのか。片倉さん。まさか、リンじゃないよね?……リンじゃないよね……。

ここでリンが来たら、ややこしくなるよ!?


「テルりん、ココちゃんの親がもう来てるようだからホント、その子連れて帰って」


にこっと仕切る片倉さんだが、ちらりとひばりんに視線を向け、そして、私を見た瞬間、困ったように頭を掻く。


「……あ゛~、やっぱ車まで送るだけで戻ってきて。たまには友情大事にして」


 面倒くさげに指示を出す片倉さん。

 私は、慌ててセラ様に視線を向ける。誰か迎えが来るなら、去ってください。説明がややこしい。私の視線の意味を正しく読み取ってくれたのかセラ様が頷いて、私から悪魔を引き離し、その襟を掴み店外へ出ようとしてくれた。……迎えにくるなら、一緒に帰る理由はない。

 契約はしたのだから、落ち着いたら喚ぼう。


「あれ?帰るんですか」


 片倉さんがセラ様を呼び止める。

 セラ様は、片倉さんに振り返り頷いて、


「婦女子を一人で帰すわけにはいかなかっただけだ。迎えが来るなら、私は必要ない」


 わあ、男前。

 片倉さんも次は引き留めず、お気を付けて。とだけで背中を見送る。悪魔がなんか暴れてるけど良いか。あれ?暴れるくらい元気?

 ヒロイン様がぶつぶつなんか言ってるのに視線を戻した片倉さんがため息。


「テルりん、ちみっこが逃げないように見張ってて。ほら、雲雀とココちゃん、行くよ」


 片倉さんがお店にいる人たちに謝罪をしてから、私たちを外に連れ出す。すっかりと暗くなっていて、正直、一人で帰れとか言われたくない。


 コンビニの駐車場で待っていたヒロイン様のお迎えに片倉さんとひばりんが着いていった。ひばりんと一緒じゃなきゃやだと大騒ぎするヒロイン様のせいだ。

 殴られた私を連れて行くわけにもいかず、私を近い距離でも一人にも出来ず、ヒロイン様に逆らえない人たちに状況説明出来るわけもなく、この分け方にしたと、片倉さん気遣いがこまやか!……でも、主人公と残された私の気持ちをどう表現しようかしら?

 やっぱり、最悪か?

 なんか、ヒロイン様のきゃんきゃん声が聞こえる。やっぱり、ひばりんと帰りたいとか?……えー。あと、主人公様は良いの?


「頬、大丈夫?」


 は?

 話しかけられるとは思わず、主人公様を二度見。

 え?私を心配してるの?


「片倉さんがくれたジュースが冷やしてくれてるので」

「痛かった?」


 あなた、さっきヒロイン様は人を殴らないと主張しましたよね。しかも、他人事みたいに気遣うくらいなら気遣い、いらないよ。

私の立場で言えば、主人公様は、絶対にリンとお姉ちゃんに近づけたくないので、敵意丸出し。

しかし、その理由を先ほどの事のせいだと思ってだろう。キュッと唇を噛み締め、もう一度口を開く。


「…ごめんね」

「ひばりんにも言いましたが、謝られる理由が」

「酷いこと言ったから。最初から君を疑ってみたいな言い方は酷いと思う」


 しょんぼりした主人公様からクゥーンという子犬の効果音が聞こえた気がした。まさか、これが主人公マジック!?

 やだ。母性本能が、有ったのか。なんかがキューンって鳴ったよ。

頭をさげて誠意を見せる主人公様に私は口をパクパクと、何を言うべきか悩みに悩んで。


「ふ、次があると思うなよ!」


 ビシッと指を指しながら、はい、残念!

 なんで慰めるとか出来ないかな。私!

 思わず上から目線の台詞にちょっと恥ずかしい気分になった。私、ツンドラ!

 ち、違うんだから。ツンデレ属性なんてないんだからねっ!


「……変わってるって言われない?」


さすがにキョトンだよね。私も予想外のダメージだよ。自分の行動に常に私が裏切られてるよっ!


「バカな。私は至ってまともだ」


 君たちより精神年齢だって上の筈だ。……たぶん。いや、絶対……そうだといいな。

 私の百面相が面白かったのか、クスクス笑う主人公様。うーん、穏やかだ。変になるのは、高校入学時だからな。

 ヒロイン様に『アンタ、気持ち悪いのよ!』って、フラれてからだよな。今は敵がい心もたなくて良いのかな?

 あんな、他の男が好きで自信過剰なヒロイン様のどこが良いのだろう。『天使ルート』はアレだし『悪魔ルート』してないからわかんないや。

 本当にわからなかったから、好奇心が口から漏れる。


「彼女が好きなの?」

「うん、好きだよ」


 はにかんで、何の打算もなく彼が頷いた。それが、私が否定してもいいものじゃないと感じとったが、打算的な『私』は、そう……とだけ、その場を濁した。




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