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優先すべきこと



「いつまで、ギリギリしているんだ」

「お姉ちゃんに近づく男………っ、ココさんと光原さんに協力いただいて速やかな処理を」

「お前の目付きだと恐ろしい意味に聞こえるな……。」

「おのれ……っ、リンにメールも電話もしたのに返事がない。……やっぱり一度引き返して、お姉ちゃんと一緒に帰るべきか」

「愛川と雲雀に連絡した。一緒に帰ってくれるらしい……頼むから、こちらを優先してくれ」


 だから、落ち着け。と会長が私の肩を抑えた。

 やだ、マナルンにひばりん!!とても頼もしい二人に感激する。


「すみません」

「ああ」

「私焦っていました。お姉ちゃんに近づく輩をじっくりねっとり調査してから完封なきまで叩き潰します」

「……好きにしろ」


 会長がため息とともに馬鹿だ…と、呟いた。

 でも、なんかあの人顔を見た瞬間に叩き潰したくなるほどイラーッとしたな。お姉ちゃん、関係なくても潰したい。なんだろ?不思議。

 ……………ん?


「ひばりんも一緒に帰ってくれるんですよね」

「ああ」

「じゃあ、マナルンの事もあの男から守ってって言ってください」

「……お前、どこまで……」


 会長がぐったりし始めた。仕方ないじゃないか。

 市長のお家にお邪魔する前に藤咲さんの携帯に電話してみる。……通じない。パタンと携帯を閉じる。ふう…。


「電源切ってますね」

「では、片倉が来るまで例の雑貨屋に行くか」

「はい」


 リンが天使だと認めている雑貨屋さんの場所に会長を案内する。リン曰く『この土地』に根ざしているらしいので、情報を貰って置こうということになった。


「………入りづらい場所だな」


 窓からかわいい猫のぬいぐるみが看板を首にかけて挨拶している。前はなかったなー。

 それを見た瞬間に戦意が喪失したらしい会長を無視して、お店に入るといらっしゃいませーって。私を見るなりお兄さんの動きが止まって動いた。


「あ、君はリン様の……じゃなかった。リンさんの恋人の」


 ………ん?

 今、聞き捨てならない事を言わなかったか?


 私は、糸目のちょっとチャラそうなお兄さんをギロッと睨み付ける。


「誰が誰の恋人だって…?」

「ひぃ!」

「秋月、目付きが物騒だ。止めろ」


 下から見上げるように睨み付けてやるとカウンターに隠れやがった。


「リンと私が付き合ってるなんて目が腐ってる!」

「いや、姉の存在を知らなければそう見えるぞ」

「私の女神の存在を知らないだと!?ゆ、許さんッ」


 会長が無言で頭に手を置いて絞めてきた。い、痛いが負けんぞ。


「無理難題を言うな」

「どこがですか!」

「全部だ」


 なんだと!?

 よし、冷静になろう。…………どう冷静になれば良いんだろう。あ、そっか。


「会長、私、冷静です!」

「……わかった。口を開くな」


 諦められた!ぐすん。


「すみません。藤堂鈴の友人なのですが、少しお訊きしたい事が有りまして、お時間宜しいでしょうか」


 カウンターの裏でガタガタ震えているお兄さん。む、脅しすぎたか。


「り、リンさんみたいで怖い…っ、さ、最近のちゅうがくせーこわい」


 リンにも何かされたらしい。


「ー…」


 会長が困っている。仕方ない。カウンターに座り込んで隠れているので頭に話しかけてみる。


「神様と人が長時間居る方法ってなんですかー」

「え?は?……ああ、『お狐様』の所の……」


 ちらちらと上を見上げ、会長の顔を見るなり納得したようだ。


「かの方なら『真名』が必要です。もしくは対等あるいは格上の上な関係のお方のお力がー…」

「でも、『真名』の名づけを拒否なさるんですよ」

「その神に存在に有った『真名』を名付ける事です。あとはー…、名付ける相手が違うとかでは?」

「なるほど、ありがとうございます。それとー…」


 『るぅ』と『ふじさき』に何か能力ありますかー?と聞こうとした瞬間、糸目のお兄さんは急に立ち上がり、私に焦ったように訊いてきた。


「あ、あの本当にお嬢さんは、リンさんの恋人ではないのですか」




 ーーブチッ。




 とどこかで血管が切れた。うん、私だ。

 果敢にも攻めてきたが、ほう……まだ言うか。


「ひいぃっ!!」


 私の後ろで怒りのうり坊が炎を背負った。ヤル気だ。


「秋月、止めろ。ほら、片倉から連絡が入ったから行くぞ」

「泣かす!泣かしたるっ!!滾々とリンと私の関係語ってやる。次来たときは覚えてろーっ!!」


 軽々と私を担ぎ上げる会長。何故だ。私はちょっと肥え………うむ。ご飯が美味しいね!


「秋月、お前見た目より重いな」


 ぎゃふん。……せ、戦闘意欲が落ちてしまった。しょんぼり。む、もしかして狙ったのか。



 お店から出ると片倉さんが走ってきた。


「なんだ。顔色が悪いな」

「あー……久々に桜田の無言の圧力をもっちゃんが受けてるの見たせいかな?」

「もっちゃん?」

「室内楽部の担当の先生」


 リンの担当の先生だった。そっかー、実質三年が四人もいないって大変だね。文化祭も近いし。三人速く帰ると言われて渋い顔をした先生に桜田先輩が無表情で「用がありますので」と見続けたらしい。先生、ごめん……それにしても部活に入ってる人は大変だねー。私、写真部に入りたかったのに……新聞部でもよかったのに拒否されたから。ぐすん。

 なんでダメだったんだろう。カメラを合法的に持てて学校内でお姉ちゃんとリンを撮りまくろうと思ったのに…。


「秋月さん」


 あれー、片倉さんの側が平気だ。努力してるんだ。なんて精神までイケメンなんだ。…………憎いっ。


「それにしても俊平、秋月さんを抱き上げてどうしたんだ」

「珍獣過ぎて扱いに困る。……市長に会えそうか?」


 とりあえず会長に下ろしてもらった。


「うん。でも、自宅じゃなく指定してきた場所があるんだけど……」


 困り顔の片倉さん。……なんでだろ。


「オレは、アオのお見舞いに行きたいんだけど」

「行くな、と?」

「話を聞きたいなら、それが条件だって」


 これは、冗談じゃないくらいに弱ってるようだ。前に自分の子が人前で弱ってる姿を見せるのが問題だと言っていた。……どうするべきだろう?



『『『素晴らしい復讐の機会です!!』』』



 脳内会議が呼んでもいないのに出てきただと!?

 じ、自由すぎる上にレベルアップしている。やばい。



『くっくっくっ、ついにあの野郎に復讐の機会が』

『相手が弱っているッ。素晴らしい状況だ』

『よし、相手を自分のフィールドに上げる。まさに今がチャンス!』



 ………脳内会議まで小悪党になっている。いや、最初からか。藤咲さんがそんなに嫌いか。



『『『だって、我々を封じたもん』』』



 体育祭の恨みは大きかったようだ。ん?そういえばあの時、


「片倉さん」

「あ、秋月さん、能力漏れてたり…」

「お、おにい………」


 あれー?『お兄ちゃん』って、あっさり言えない。何度かおにい…まで出たが、言えない。


「なんの遊びだ。秋月」

「秋月さん?」

「むー…」


 謎だ。首を傾げていると、ビクッ!と身体が硬直する。


「あ……」


 私の血の気が引いていく様子に気づいた片倉さんが視線の先に何があるのかを確認し、私の視界を手で塞いだ。


「…しばらくこのままだね」

「耳を塞げ」


 カタカタ震えだした私の様子に焦った二人がパトカーから私を守るように……あれ……なんで、こんなに音も鳴ってないのに。


「だ、…だいじょうぶ…」

「タクシーを捕まえて行った方がいいかもしれないな」

「そうしよう」


 手先まで冷たくなったようだ。……片倉さんが労るように手を繋いでくれている。

 イケメンで憎い。

 ……あれ?能力制御出来てない?


「悪化してないか?」

「………一時的に平気でした。藤咲さんが制限をかけたときで…」


 脳内会議が呼び掛けても出てこなかったし。あれ?あの時、怖いもの知らずだったような……今もかー。


「不思議です」

「このままだと日常生活にも弊害が出ちゃいそうだね」


 会長がタクシーを探して辺りを見回すと見覚えのあるベンツ……あ、運転手、太刀川さんだ。

 あれ?

 私が居るのにスルーして行っちゃった。どうしたんだ……と思ったら戻ってきて、難しい顔で出てきた。なんだ?

 後部座席のドアを開けたかと思うと、


「ゲッ、」

「何故、彩が…」


 思わず呻き声をあげたら、綺麗に昨日とは違う着物で着飾った彩さんが降りてきた。片倉さんは首を傾げて、誰?って。

 彩さんは笑顔で会長に話しかてきた。


「あら、家が今大変な時にお友だちとお出掛けですか。俊平さん」

「……情報収集の最中だ」

「小鳥さん、無責任に逃げたのかしら。まあ、所詮は他人事ですから。そうでしょうけど」


 ここに居るよーッ。と、のほほんとしてみた。会長と太刀川さんが凄くびくびくしている。片倉さんが物珍しそうにそんな様子を眺めている。


「俊平」

「わかってる。彩、太刀川さんに送って貰っている最中ならさっさと行け」

「ーーあの子のせいで、お姉様達に叱られたのよ」


 頬を膨らませて、何か愚痴り始めた。お姉様?


「『あの子は神取さんの大切な子だから、なんて口を利いたの。』と、どうしてもっとちゃんと言ってくれなかったのかしら。太刀川さんも俊平さんもわたくしに『花』であるお姉様がたに叱られるように仕向けたかったの」


 片倉さんが私を疑わしげに見つめている。え、片倉さん、『花』について聞いちゃったの?でも、私が『花』じゃないってわかってるよね?


「お前の愚痴に興味はないんだが」

「ーー謝ってきなさいと言われたわ」

「もう、あちらは会いたくない筈だ」

「あら、遵くんの婚約者でしょ。これからも会う事になる筈よ」


 片倉さん、何かを察して私をそんなに見つめないで。熱視線で溶けちゃうよ。


「今日は天久家の為に動いている。無理だ」

「わたくしにも、お手伝い出来る事があるかもしれませんでしょ」

「ない。ーーいや、むしろ、太刀川さんを置いてタクシーでお前が帰ってくれた方が助かる」


 なんて辛辣なんだ会長。彩さんは、つまらなそうに会長の後ろに居た私と片倉さんに目を向ける。やあ。


「………何か知ってる子に思えるのですけど」

「気のせいだ」


 くるくると彩さんをジーッと見つめてみる。うむ。やはり和風美人だ。


「昨日、『お狐様』のお面を被って行方不明になった子に似ているわ」


 そういえば、お面、どこ行ったんだろう?


「ねえ、貴女、お名前は?」


 にっこり、脅しが入ってる笑顔だ。そっと片倉さんが私を背中に隠してくれた。


「すみません。……人見知りな子なので」


 片倉さんの後ろからジーッと彩さんを見つめると、ふう…っと、ため息を吐かれた。


「別にいいのですよ。後から自分で調べても」


 なんですと!?


「彩、しつこいぞ」

「別に小鳥さんに害を与えたい訳でもありませんのに。そう警戒されては面白くありませんわ」


 彩さんは、大変ご立腹なご様子だ。『花』のお姉様方、謝んなくてもいいって言ってくれないだろうか。

 しかし、化粧慣れしている人には光原母の作品は通じなかったんだろうか。でも、見たところ彩さんも疑わしいからとりあえず話しかけてるだけっぽい。


「猫目で俊平さんと一緒にいるって怪しいわね」


 む、これは、タイミングか。


「彩さん、そろそろ…」

「ええ、そうですわね。久しぶりに神取さんがお食事に誘ってくださったのですもの。うふふ、楽しみですわ」


 なんだと!神取め。彩さんと食事なんて……むー、なんか面白くないぞ!


「お前……家の大事に……」


 会長が呆れている。なんたるブーメラン。


「あら。『お狐様』が天久にこれからも居続けるとなれば、大変になるのは、怠けていた者達だけですわ。まあ、人の良い人間も苦労なさるかもしれませんが、大抵が事情を理解いたしているので大してお手伝いはなさらないでしょ。それにわたくし、もうおじい様の養女ですの。馬鹿な親も兄弟もとっくに見限っておりますのよ」


 もの凄い手のひら返し。昨日まであれだけ、分家の為に戦っていた人とは思えない言い分だ。


「いつの間に……」


 会長がちょっと呆れ気味だ。



「『お狐様』とお会いする前にですの。禊という意味も込めまして。ふふ、おじい様も親と呼ぶのもおこがましい彼らとは当の昔に絶縁宣言致しておりますし。彼らも口うるさいおじい様と縁を切ったと口にしておりましたから。支援など致しませんわ……うふふ、わたくしもおじい様も『分家の為に』あれだけしたのですから。誰にも文句は言わせません」


 艶やかに笑う彩さん。本当に清々しているようだ。

 確かに昨日の彩さんを見る限り、彩さんは手放すのが惜しいだろうし、太刀川さんの報告書でも政人さんは彩さん以外の他の人はとっくに見限っているようだった。しかし、絶縁宣言ってどこまで有効なんだろう。あ、『契約書』に書き加えれば良いのか。


「ですから、小鳥さんに害を成そうとは思っておりません」


 ……害がなくてもお付き合いは辞退したい。私がさらに片倉さんの後ろに隠れたのを確認した会長がため息を吐いてから、


「……『お狐様』に聞いてみてからだ」


 投げたねー。


「わかりましたわ。是非、わたくしの円満な友好関係の為にも口添えをお願い致しますわ」


 そう言って優雅に一礼したあとに太刀川さんと共に去っていく彩さん。


「凄い強かな人ですね」

「だから、彩は無いと俺と遵は言っただろ」


 確かに。


「彩の事は良いな。藤咲の父親との待ち合わせ場所に行くぞ」

「え、何でですか?」


 会長と片倉さんが二人で首を傾げた。


「その二者択一で藤咲さんが弱っているというなら、藤咲さんのお宅に行くべきですよ。寂しがり屋なんですから」


 あ、片倉さんが嬉しそうに頭を撫でてくれた。でも、会長が難しい表情をしている。


「俺が行っても喜ばないだろう」


 複雑そうな表情で会長。実は一番お見舞いに行きたいのはこの人なんだろう。


「じゃあ、会長は市長の所に行って、私と片倉さんは藤咲さんのお宅で」

「条件無視!?」

「だって、ちゃんと答えを知っていてその条件にしたのかも怪しいじゃないですか。悪魔側、怪しい。何企んでるかさっぱり」


 私の言葉に絶句している二人に対し、脳内会議は煩い。



『いいぞー。藤咲の弱った所見に行くぞ』

『ファイトーッ本体!!』



 ………コイツ等ひどい。ーー私だった。


『でも、実際リンを慕っている様子の雑貨屋が嘘言うわけないから、情報として強化以上の理由もないし。かったるい言い回しされて混乱するだけかも。で、特に問題ないよね。市長外しても』

『でも、天使、たまに的はずれ……』

『あれー、でも、ゲームだと狐様があーたん………『天久遵』を演じていたんでしょ?』


 そうだ。あーたんの……『天久遵』の代わりを狐様が行えた理由。……繋がりそうだけど、先輩の情報を待ってからの方が……うん、私の勘はやっぱり、市長より藤咲さんを優先しろと……したいって言ってる。



『『『やっぱり本体も弱ってるところを』』』



 脳内会議、今日はもう休みなさい!!


「まったく、ひどい連中だぜ」


 ふう、やれやれと、頭を振って脳内会議との会話を断ち切っているのに片倉さんと会長が呆れ顔だ。


「たまに秋月さんが何と話してるのかわからないんだけど」

「上がった株を一気に最低値に出来る馬鹿も珍しいな」


 何故ですか。

 でも、やっぱり、藤咲さんの所に行きましょうって説得したのに会長はダメ元で市長の方へ行き、私と片倉さんは藤咲さんのお宅の門の前で門前払いを食らってしまったが、片倉さんがにこっとこっちと私の手を引いた。………不法侵入ルートですか?



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