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 そう推測がたつと思わずひばりんの容姿を凝視してしまう。

 たしかにひばりんは、中学生のわりに大人びた顔をしているが、ヒロインのこの異常とも取れる好意を受け流せる歳ではないし、家族関係まで入れば、逃げられないだろう。こんな時間に一緒に居たのだから、ヒロインかひばりんのどちらかが保護者に信頼されてるのかもしれない。……年上だから、ヒロイン様かな?見た目清楚だし、ひばりん、言動少し子供っぽいし……私に言われたくないだと。ふ、おかしなことを言う。生前プラスαだぞ。まあ、それは置いておこう。

 うん、四面楚歌か。ひばりん。

 ………そうなると、ちょっと考える。

 出来れば、あのルートからセラ様と被害者を救済したい。えーと、悪魔。どうした。虚ろなふりくらいしろ。何故、ヘラヘラしている。

 まあ、面倒事ではあるよね。私がヒロイン様の憎悪を受け入れる覚悟をもっての行動ではないが、ひばりんもセラ様も嫌いな性格じゃないからおせっかいしたくなる。


「ひばりん、親御さん、待ってるの?」


 私の言葉にビクーッと体を震わせたのは、ヒロイン様だ。


「え?ああ。あと少しで来るっていうから、外で待とうって心美が」

「どっちの親が来るの?」


 矢継ぎ早に質問する。私もあまりとりたくない手段だが、この二人は早めに引き離したい。


「………心美の」


 たっぷり、時間をかけてのお返事ありがとうございます。ひばりんにとっても、あまり歓迎できない事態だよね。


「ふぅん…、塾とかの帰り?」

「……うん」


 私のやろうとしている事がなんとなくだろうと察しているのか気まずげだ。

 う~ん。ひばりんの気持ちがわからない。私的には距離を取ったほうがいいと思う。だって、どうせ葛西心美を彼は好きにならない。

 誰か、他の子を好きになり距離を取る想い人を恨み、憎み、主人公に殺してくれ。と願うヒロイン。ーーそれを真に受ける主人公もだが、主人公の好意を利用するほうもどうかと思う。

 最終的にはくっつくが、……いや、もういいや。思い出したくない。


 ともかくヒロイン様、私、貴女が嫌いです。


「じゃあ、殴られたって報告して良い?後々、うちの親との話し合いになるかもだけど、私、こういう事する人許せないよ」


 はい。自分を棚上げしましたが、何か?

 あ、悪魔よ。何故、私を軽蔑した目で見ている。バカな。人の弱味をつっつくのは正しい戦略だ。

 は?人間関係?……うん、制服見るかぎり、他校生だ。問題ない。

 何より、うちの学校に知り合いが居ようとも、私には最終兵器リン様がいる。

 くふ、私をぼっちに出来ると思うなよ。なにせ、愛され過ぎて困るっ!的なお姉ちゃんとリンがいるのだ。

 ……きっと、大丈夫の筈!ふ、不安とかないんだからね。


「ごめん!」


 私が怒ったふりをした瞬間、何故かひばりんが謝ってきた。な、なんで??


「心美にはちゃんと俺とテル兄で言って聞かせるから。親にだけは言わないでやってくれないか」


 ……あ、やばい。一番ダメなパターン来ました。それ絶対、反省しないよ。ヒロイン様は絶対反省しないし、私を恨むし、庇ったひばりんにさらに依存するよ。

 私は顔をしかめる。渋面ってやつだ。



「ひばりんに謝ってもらう理由がわかりません。彼女と私の問題です。ああ、親を持ち出したのが気にくわないなら、お互いだけで決着をつけましょうか。ーーさあ、そこの人、謝ってください」

「なんでよ!貴女が先に月夜を誘惑したんじゃない!!」


 誰かー、翻訳機。……じゃなかった。これって悪魔のせいか?

 セラ様に視線を向けたら、首を横に振られた。あ、あれ…悪魔、関係なかったの。マジか。

 きゃんきゃん、私に罵声を浴びせるヒロイン様に耳が痛くなってきた。……うん、たしかにもとから残念な人だと記憶しております。

 ひばりん、引き取って。とお願いしようかと真剣に悩みます。ほら、店員さんと次々にくるお客様に迷惑です。あ、うちの学校の制服も。……明日、何を言われるかわかったもんじゃ…。

 ん?ヒロイン様の系列に似た制服が…、やばい。不幸が近寄ってくる。


「心美、何してるの?」


 あ、忘れてた。葛西心美がここにいるなら、最凶の幼馴染み、大型ワンコ男主人公様がご登場してもおかしくないよねー。大好きなご主人様がヒステリーですよ。『ヒカッテル様』。


「どうしたの。心美、泣いてるの?」


 心配そうにヒロイン様に近寄る男主人公。十八禁にありがちな前髪で目が隠れている全体的に整ってはいるし、色気もあるがまだ成長途中の黒髪のお兄さん。

 うわっ、だからなんで全体的にヒロイン様が被害者みたいなところから始まる。違うだろ。


「テル~!あの女が、月夜に色目使うの!ひどいでしょ。月夜はあたしのモノなのに!!」


 ………今の台詞にイラッとした人。いまだけ仲良くなりましょう。あとから、私が裏切るかもしれませんが、いまだけ心の友。


「かわいそうに」


 頭が!?

 頭がかわいそうなんだよね!?

 私は思わず、ひばりんに視線を向けた。は?テル兄と説教する?無理だろ。あれは。

 恥ずかしそうに俯くひばりんに同情はするが、それだけだ。

 今は、こっちだよ。この二人だよ。……どうしてくれよう。

 私が戦闘態勢を整えようとした瞬間、ひやっと平手打ちされた頬に何かが当たる。ーー缶ジュース?


「ひゃっ」

「その子が、かわいそうなのは、頭だよ。テルりん」


 冷たさに変な悲鳴をあげたら、聞き覚えのある声。

 …えーと?後ろからなので振り向けば、茶目が茶目っ気たっぷりに……みんなー、今のギャグわかったかな?高度すぎてスルーしただと!?……ごめんなさい。私の頭が一番かわいそうなんだよ。片倉達也さん!


「やっほー。ちみっこ。小さいうちに修羅場とか凄いね。お兄さんも交ぜてほしいな」


 交ぜてほしいだと。貴様は…えーと、えーと…、攻略本によれば『天使ルート』で普通に主人公と同じ大学に行ってラブラブしてたよね。……だめだ。興味なかったせいで脳が働かない。が、頑張って思い出すから!

 お姉ちゃんの恋人のーーリンのルートで、主人公との恋を絶対応援しなかったから好感度は高いよ!


「?どうしたの。ほら、ほっぺた冷やしなよ。ぷにぷにぃー」

「ひゃあ!」


 ひゃっこいよー。缶ジュースを押し当ててくるな!クスクス笑って、私を後ろから抱き締める形を取る片倉さんにだいぶ、困る。

 な、なんだ。

 この人、なんなんだ!?




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