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 登校を5人でする事はなかった。


 ランニング後、コンビニ前で朝食を買ってそのまま、藤咲さんも片倉さんも一旦、家へ帰ったらしい。……胃が、胃がちょっと痛かったからありがとう!!


 さてー…、ココさんに連絡を入れて万葉さんに会えないかと訊ねれば、今日は、天久家に着物を見にいく予定があるとの事。呼ばれてた?

 ちょうどいいや。狐様の保護下の方が交渉しやすいよねー。かなり、あくどいことを考えてるので気は重いが、覚悟を決めよう。

 書類は、その時渡せば良いね。小悪党は常に企まなければ生きてけない。うん。

 会長がわざわざ私の教室に来て、今日は、一緒に帰るぞと……日比谷さんの前で言わないで欲しい。

 に、睨まれてる。

 そして、今朝会ったけど、寝ぼけていた藤咲さんは覚えてないらしく気まずい。会長と一緒に居たらこちらは視線を逸らした。じ、地味に落ち込んでやる!

 それにしても親友3人でリンの家で何してたんだろ……?まさか、恋が………生まれないか。

 うん、問題は朝、今日と明日も、夕飯要らないかも……と、言った瞬間のお姉ちゃんはリンの魔王モードを超えていた気がする。

 お姉ちゃんのマングース様についに角が生え、立派な爪も伸びていた。燃え上がる炎は黒々していた……あれはもう別な生き物だと思うよー。


 会長のお家にお邪魔する。うむ。純和風だね。鯉のいるお池にカポーンッて竹……あれ、なんて名前だっけ?この前、あんまり、見れなかったからキョロキョロしちゃう。そして、仏壇は今日はいいなって会長……いや、あの習慣じゃないんです。すみません。


「……あっ」

「どうした」

「狐様に油揚げ買うのわすれてしまいました」


 何故、無言でアイアンクローなんでしょうか。そろそろ、私に慣れてくれても良い頃です。


「……『お狐様』は、狐じゃない。初代が渡した狐の仮面から『お狐様』と安直に誰かが呼び出しただけだ」



 それ、早く言ってください。あーたんめ。わざとか。


「『真名』があるんですか?」

「ない。むしろ、名前がなくとも不便を感じなかったそうだ」


 今日はお風呂にも入らなくて良いようだ。ふう…。狐様には会わないのか。


「赤で良いんだったな」

「?はい」


 客間だと案内された場所に座らされ、待っていろと言われたので、割烹着を着たお婆ちゃんにお茶を淹れてもらって座ってぼーっとしていると、誰かがそそっと近づいてきた。


「あらー、こんにちわ」


 にこっと微笑む、艶やか美人、万葉さんは今日もお着物ですね。 そして、他人の家で自由ですね。うふふって私の前に座ってしまった。しかし、ちょうどいいや。お婆ちゃんがお菓子持ってきますねって。お構いなく。


「ちょうど、良かったです。これ、どうぞ」


 スクールバッグから、書類を取りだし手渡すと、パチクリと目を瞬いた。


「なあに、これは?」

「美味しくはないでしょうが、おいしい話です」

「……ふぅん……」



 興味なさげに目を通しているけど、一応たたみ掛けてみる。



「狐様に恩が売れますよ」



 

 これには、一瞬だが、体が震えた気がする。まあ、すぐに気を取り直したみたいだけれど。


「あら、不敬ね。……こんな所でして良いのかしら?」



 魅惑的に微笑む美人は魅力的だが、今回は狐様がいらっしゃるからご威光を笠に着てみよう。狐の威を借りるウリ坊です。ふふん。


「構いません。むしろ、狐様に万葉さんは味方です(・・・・)。と、アピールする為にも必要かなって」



 あ、私の言葉のチョイスを間違ったのかさすがにイラっとしたらしく、剣呑な光を瞳に宿してし、品定め的な雰囲気にしてしまった。


「……悪魔()を脅してるのかしら?」



 やばい。部屋の温度が一気に下がった気がする。、暴君と同じ脅し方なの?止めて、三下は、内心びくびくしながら、ハッタるんだぜ。


「前に『悪魔』の手口を教えて貰ったので、今度はそれを学んだ人間の手口をお教えしようかと思いまして」



 興味を引いて、交渉しないと。だって、この役割ってアディーじゃ出来ないと思うんだもん。狐様の件が失敗しても成功しても、きっと、本家の天久は分家に色々されるんだろうから、狐様が不敬と感じないぎりぎりの線をわかっている万葉さんが味方になってくれたらなって。

 それに万葉さんが忙しくなれば、当然、ココさんや光原さん、ひばりんの為になるし、セラ様も楽でしょって、私だって企むさ。


赤人さん(元旦那)でかなり学んだつもりよ」

「十人十色と言いますし」


 にっこり、と強面アピールをしたら、ふぅ…と、ため息を吐かれた。書類を今度は慎重に確認している。……会長かあーたんはまだか。お、お腹が痛くなってきた。でも、まだ交渉入り口だった。


「……この人達をどうしろって云うのかしら?」

「さあ、明日の展開次第です。……『鶴』とその家族は狐様に大事にされてるってお分かりですよね?」



 狐様が実際どこまでやる気かわからないが、志鶴さんに渡した書類内容では、狐様より『鶴』である志鶴さん次第かもしれない。……でもなー、志鶴さんと狐様って、意思疎通が出来てない感じで不安。会長とあーたんにちゃんと、今の現状と秘密を話す気があるのかな。……ふむ。


「……それも、『お狐様』のいるこの場だからの確認なのね。嫌だわ。ルーちゃんったら、狡猾ね」



 はて、そんなに狡猾だろうか。自衛の一種だと思っているんだけど。それに万葉さんとしても旨みがないわけでもないだろうし。用意されたお茶を啜る。うーん、美味しい。


「でも、おいしいですよね?」

「ええ、美味しくはないけどねー。……うぅん、展開次第なら美味しいわ」



 大きな事業者って『破滅』させがいがあるって、万葉さんの目が輝いている。い、いや、そこまで望んでませんよ?でも、内心の小者具合は表に出さんぞ。頑張れ、私!


「私的に明日の為の保険です。書類を見る限りかなりのやり手なので、私の知る天久家の人や私の周りに害をなそうって気にならないくらいに気が削がれたらいいなーって思うだけです」

「さらっと外道よ。ルーちゃん」


 自分の手を汚さないなんてひどーいっと楽しげに笑う万葉さん。

 太刀川さんが纏めた書類を楽しげに目を細めて見つめる万葉さんに私は、内心安堵の息を吐く。


「私、てっきり、万葉さんが狐様を『堕とす』予定だと考えたりもしましたが良いんですか?」


 ……あ、すんごいキョトンとしてる。


「ふ………ふふふ……あはははっ」


 やだ、上品な万葉さんが引き付け起こしたように大笑いを!


「だ、ダメよー。この場で肯定なんかしちゃったら、ほんと、私が神罰を受けちゃうわ。でも、ふふ…」


 何がそんなに楽しいんでしょうか。こ、怖い。天久家に来るからって、お守り(カード)持ってないよー。どうしよう。


「神様を堕としたら、『この土地』のルールに従わなくてもよくなるかしら?…ふふ」


 にこにこと、真意が読めない笑顔だ。私が首を傾げたら、万葉さんは、書類に目を向け、クスクス笑い始める。

 うーん、何を企んでるんだろ。自分で言いだしたことだというのに急に不安になる。でも、やっぱり、この機会を失うと協力を仰げそうにないことは確かだ。もし、今度も頼るような事になったら、万葉さんの伴侶である藤咲さんのお父さんに頼ろう。



「それにしても、ひどい一族ねー」



 楽しそうに書類を確認する万葉さん。



「その件に関しては言い訳のしようがございませんね」

「あらー、志鶴さん。……その赤の振袖は『鶴』特製?」



 苦笑しながら現れた志鶴さんと紺の着物に着替えなおしてきたらしい会長が難しい顔をしている。後ろから従業員さんが2人がかりで綺麗な着物を運んできた。……なにこれ?高そう。



「『お狐様』の神気を緩和してくれるものですよ。本当は『お狐様』がお話をと申された時に出来上がっているべきものでしたが……お披露目で扱わせていただきますね」

「元からあるものを」

「色々籠め直さないといけないからだ」



 羽織ってみろと会長に言われたが、……いくらだろ。怖い。



「れ、」

「れ?」

「レンタル料は」



 あ、会長。イラっとしたんですか。頭の鷲掴みは止めてください。



「羽織れ!帯と飾りのイメージを決めるためにも」

「少し、きつめの美人さんになって欲しいので、お願いします」



 なんでー。しぶしぶ、着物を羽織ってみると、あ、やっぱり怖い。よ、汚したらどうしよう。



「ピアス穴はないんですね」

「真珠のイヤリングとか似合いそうねー」

「紅は、薄付きでも十分か?」

「強欲そうにしたいなら、私の知り合いに今どきのメイクさせた方がいいわ。ルーちゃん、凄く映えそうだわ」

「偽名も決めないといけませんね」

「あー、ラメとか派手なんじゃ」

「この真紅の振袖に?ーー冗談じゃないです!」

「でも、遵君の好みに合わせるなら」



 あーでもないこーでもないと、私を見ながら、従業員さんとお婆ちゃんまで混ざってなんか言ってる。こういうの嫌いそうな会長まで混ざってる。……ちょっと、気になる単語は何?

 強欲?偽名?あーたんの好み?



 わ、私、入っていけないんだけど、どうしよう。そういえば、こういうの好きそうなあーたんがいない。



 一通り、満足のいく結論に達したのか明日は、光原さんのお母さんが化粧と着付けをしてくれるからって安心して身を任せてね。って。何を安心しろと?

 万葉さんがノリノリだ。



「じゃあ、俊平。私は秋月さんと万葉さんに用が有るから、あとは頼んだよ」

「はい」



 あれ、てっきり会長に全部話すのかと思ったら違うんだ。



 会長も従業員さんも出て行って、何故かお婆ちゃんと万葉さんと志鶴さんと私の4人が残った室内で突然、志鶴さんが畳みに両手をついて私に頭を下げた。え、……と固まる私に志鶴さんがお願いが有りますと、さらに頭を下げてくる。



「ど、どどどどどっどうしましょう!?」

「ルーちゃん、落ち着いて。『顔を上げてください』って言えばいいのよ」

「はい!表をあげい。ですね!!」

「ルーちゃん、時代劇が好きなの?」



 だって、男性が土下座するところなんて、えーと……は、生前の上司の前だと結構みんなやってた気がする!『妻にそれをばらすのは止めてくれ!!』とか『会社から横領した金はちゃんと返すから!!』って結構悲痛な感じで!!



 ……私の生前の上司はいったい何だったんだ?

 思い出そうとすると、頭痛くなるのに変な事は良く思い出すな。……ちょっと、冷静になった。



「ええと、お願いは目を合わせながらしてくれないと困ります」

「……聞いてくれますか?」

「いいえ、聞いてから考えます」



 パッと頭を上げてくれた志鶴さんにニコッと、返したらなんでかショックを受けた顔をされた。そして、万葉さんが笑いすぎて、ついにひきつけ起こしたけど、え、だって、上司を思い出すと、つい、うっかりが大惨事だって。万葉さんと志鶴さん、ちょっと落ち着きましょうよ。



あ、お婆ちゃん、みんなの分の緑茶ありがとございます。



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