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狐の企み

 太刀川さんから連絡が来ない。無視か。ふ、……良かろう。家に帰ったら、またあの紙袋、もしくは書類を探すぞ!

 ……勉強しろとか、聞こえないーっ。し、してるもん。コツコツはしてるぞー。出された宿題をしない提出しないとかした事ないよー。私は出来ない子だが、やらない子ではない。


「ルカ、今日は早く帰ろうね。リンくん、心配だから」

「うん」


 リンが、熱を出して倒れてしまった。今は、自宅のベッドで療養中だ。なんとなく、私に学校を休め的なジェスチャーしてた気がしたけど、お姉ちゃんが「早く帰ってくるね」と、寝かしつけられて敗北していた。

 お姉ちゃんが最強。

 そして、問題がもう一つ梅のお守りの一部が変色してしまった。どうしてだろう?

 くんくん匂いを嗅いだけど香りがないような…?

 いつも学校外じゃそんなに匂わなかったし……ハッ、まさか、神取に会いに行こうとしたせいかな?

 神取が穢れだと!?……私、血筋だぞーっ!!


「ルカ、どうしたの?」

「お守り」


 しょんぼりと、劣化を気にしていたらお姉ちゃんは、ああっと頷いてくれた。


お守り(カード)、忘れてきちゃったの?……じゃあ、はい。これ」


 お姉ちゃんが、スクールバッグからピンクのシュシュを取り出し私の髪を纏めた。……あれ、これって……?


「お姉ちゃん?」

「うん。リンくんが居ないと寂しいからね。お姉ちゃんは、ハンカチがあるから大丈夫だよ」


 にこっ、て、シュシュと一緒にリンが渡したカキツバタのハンカチを見せて笑うお姉ちゃんにキューンッて鳴った!胸がときめく。リン、おいしい!リン、ちょうおいしいよ!!ーー大好きだ!お姉ちゃん!!………気持ち悪いとか聞こえないぞーっ。


 あれ、でも、梅のお守りと一緒に持ってていいのかな?と冷静になったのは昼休みだった。 その前まで、うへへっとかふほほっとヘラヘラしていた私を担任(ウサちゃん)が、恐怖に感じていたようだ。

 あ、日比谷さん、睨まないでください。同じシスコンな貴女様ならわかるでしょう。この気持ち。

 さて、昼休みだし会長にお守りの件を相談しに行かなきゃ。

 昨日、なんだか様子がおかしかったけれど会長は短気なだけだから大丈夫だよ。……多分。きっと。


 しかし、私の危惧とは別に会長様はお休みだった。

 おい、コラーッ!!

 メールで文句延々と連ねてやるーっ。と性格の悪さを素でやるところだった。危ない危ない。

 まったく、と教室に戻ろうとドアに手を置こうとしたらなんだか廊下が騒がしい。なんだか、相談がーっとか、お願い!とかいう声がしてる。

 ドアが外側から開く。む、片倉さんだ。

 片倉さんが逃げ込んできたようだけど、私の姿に一瞬外に出ようとして外の様子にビビッて止めた。

 また、おいかけっこかー。リンや藤咲さんや強者が側にいない片倉さんはこうやって追いかけ回されてる。……確かリンが『依存レベルで人に頼られてる』って言っていた。確かに。


「ごめん、秋月さん」


 むしろ、顔色悪い片倉さんの方が心配なのだ。だが、むっとなる。うぅん…、なんだよー。もうやだ。

 せめて、お守りが無くなれば、青ざめさせずにすむのかな。

 誰かが入ってこようとしたので、慌ててドアの鍵を閉める。私の対応にホッと一息をつく片倉さん。ソファーに座り、呼吸を整えている。

 疲れてる?

 いや、『お狐様』のお守りのせいかも。私が慌てて部屋から出ようとしたが、まだ外に人の気配がする。しつこい。

携 帯を持っているので、マナルンかひばりんにSOSを出そうとしたら、片倉さんが立ち上がり私に近寄ってきて、携帯を取り上げた。あ、と思ったら、頭を撫で撫でされた。

 ……これは嫌じゃないな。あれ?最近、あんなに誰かに撫でられるのが嫌だったのに不思議。

 ふふん、と頭を撫でられるのを甘受していたら、片倉さんが抱きしめるよとわざわざ許可を取って私を抱き寄せようとしたので、ベシッとその手を叩く。

 なんだか、急にイライラした。


「携帯返してください」

「えーと、秋月さん。ちょっと、話が」

「私にはないです」


 不機嫌に言い放ってしまった。うん、ツンツンがツンドラレベルだ。片倉さんが苦笑する。


「今日、藤咲もリンも居なくて携帯も教室に置いてきて。で、桜田に連絡がつくまで、携帯貸してくれないかな。お願い」


 目の前で手を合わせられた。む、それならば、仕方ない。頭を撫でて貰うのは嫌じゃないのに不思議だなーっ。と思いながら、私の携帯で桜田先輩に連絡を取る片倉さんを見つめる。

 ……こうして、長く一緒にいると、だんだん落ち着いてくる。ただ、油断していると仕草とかで癪に障る。でも、頭を撫でられるのは嫌じゃない。

 なんでー?

 桜田先輩が迎えに着てくれるようだ。私に携帯を返してくれた。


「秋月さん、お守りどうしたの?」

「どうしたのって?」

「いや、なんだか、気持ちの悪い匂いがしなくて」

「……梅の香りですよ?」

「……もう二度と梅が食べれなくなりそうだ」


 それは大変だ。

 ポケットから出したお守りは、朝より変色している。……なんだろ。これは私のせいなのか。リンも藤咲さんも会長も休みって……。ん?でも、なんで、片倉さんは休みじゃないんだろ。

 片倉さんも『お狐様』特性のお守りに苦しめられてるのに……ジーッと見つめたら、片倉さんに頭を撫でてくれている。……ふむふむ?本当に何でだろう。幸せな気分!もっと、撫でてーっと頭を差し出しそうになる。


「……うん」


 頭を撫でる手を離す片倉さん。


「聞いた通りだ」

「何がですか?」


 見上げれば、ニコッと微笑む片倉さんに、あれ?なんかもっと甘えたくなった(・・・・・・・)

 ーーなんかこの感じ、知ってる。悪い意味で。

 瞬間的に身を離そうとしたけれど、片倉さんが、私の頭を片手で抱き寄せる。

 胸元!心臓の音が聴こえる。ふぎゃーっ!


「『甘えて良いよ』」


 片倉さんの声が甘く鼓膜に響く。ーーなんだろ。うん、もっと頭を撫でてもらいたいかも。

 片倉さんが私の頭を撫でて……


「つッ」


 小さく声をあげて、片倉さんが私から身を引いた。今、バチってなった?静電気?

 私、痛くないよ?


「そのシュシュって、マルさんの?」


 手を押さえ、顔をしかめる片倉さん。シュシュを確認したら、あ、ずれてる。直そっ。


「えっと、リンがお姉ちゃんに渡した物です」

「……リン、過保護って云うか……うぅん、お陰で冷静になった。この『力』はダメだな。自分の意思も引っ張られる」


 『力』……あ、確かに今、『悪魔の囁き』をされたような感覚が…っ。え、待て。じゃあ、片倉さん……っ。


「『契約』したんですか!?」

「うん。アオのお父さんと」


 あっけらかんと言い放つ片倉さん。うおおいっ!いつ、接点は……あるな。でも、


「あの、能面と!?」

「能面……。うん、3時間一緒に居たけど、喋る事が大半、『ああ』、『そうか』、『わかった』で済んでる人初めて見たけど」


 あのコミュ雑は、なんなんだ。市長って、話上手じゃないとやれないんじゃないの!

 偏見かっ。私の偏見なのかっ。


「まあ、この話は置いておこうか」


 後で、リンと藤咲がいる場所でって。

 なんでー?といったら、危険だからって。少し、申し訳そうな顔をされた。その仕草にまた、むっとなったが、ガチャッと生徒会室のドアが開く。鍵をかけていたのだから生徒会室の鍵を持っている人だけだろうと思ったら、やっぱり桜田先輩で私と片倉さんを一瞥し、頷く。


「不純異性交遊中か。失礼」

「違うから!助けを求めたでしょ!?」


 ドアを閉めようとする先輩を止める片倉さん。

 部屋に入って、うん、と頷き桜田先輩が、


「香り袋が匂わないようだが?」


 香り袋ってなんだろう。って考えたら、お守りしかなかったね。とりあえず、変色した旨を伝えたら、粗悪品を掴まされたなら店に行きなさいと……、


「ええっと…会長からの貰い物で」

「では、会長のお宅に行くべきだ」

「招かれて」

「君は、呉服屋に招かれてから行くのか?」


 ……なんだろ。無表情に屁理屈を言われてる気がする。でも、そっかー。お客さんのふりをして、下見って手も有ったのか。それに会長も休んでるしお見舞いでも…良いのかな?この変色具合は心配だし。


「桜田、秋月さんが輝いた目をしてるよ。変な事促さないでくれないかな?」

「私は、ただ香り袋の匂いが気にいってるだけだ」

「は、じゃあ先輩の分も貰って」

「いや、いらない」


 きっぱり、断られた。ぎゃふん。


 しかし、今日は紙袋探しとリンの看病があるからいかないよーッて悶々していたら、光原さんからメールが。………あーたんの用事だった。光原さん、私のアドレスは教えてなかったんだ。偉い!


『狐、呼んでる』


 一文だけのメール……この男こそ、不敬で神罰が下るんじゃないだろうか。いや、光原さんに知られたくないってことかな?

 仕方なく、リンに連絡してどうしたら良いかという助言を頂くと一、二もなく、『お狐様』を優先させろというので、お姉ちゃんにはリンが説明してくれと頼み、私は、放課後、校門前で不機嫌に待っていたあーたんと迎えに来た天久の関係者の車に乗って、天久家……に寄る前にスーパーに寄って貰った。

 運転していた若い男性は首を傾げ、あーたんが何を買ったのか察し、お腹を抱えて笑い始めた。


 大きな屋敷に連れてこられ、手土産は、あーたんに渡し死守したが、お風呂に入れだの。着替えろだのと姦しくお姉ちゃんのシュシュは奪い取られてしまった。無くしたら、暴れてやるッ。


「すみませんね。まだ、着物が用意出来ていなくて不格好な恰好させてしまい……、それから、『お狐様』の前に行き、具合が悪くなったら、すぐに教えてください」


 本当は、支度が万全でなければ身に障るのですがと、謝るのは体育祭で一度会った天久兄弟のお父さんだーー志鶴と呼んでくれと言われた。さすがに呼び捨ては無い。

 私は、巫女装束に似た服装の上に羽織を掛けた格好をさせられ、髪も結われた。


「その着物が用意できないのは、内部(身内)の反対のせいですか?」


 あ、つい、うっかり質問してしまった。天久父ーー志鶴さんは申し訳ないと繰り返す。うん、 上 (カミ) 下 (イチゾク)に挟まれた中間管理職的なポジションかな。……んん?おかしくないか。『鶴』がいないと『お狐様』との『契約』がなくなるんじゃないか?それなのにどうして、こんなに低姿勢何だろう。

 あーたんと会長の父とは思えない。

 そういえば、あーたんがいないなって思ったら、深緑の着物を着て現れた。


「なんでそんな恰好なんだ?『鶴』の『反物』の着物が用意出来たから呼んだんじゃ無いのか?」

「いえ、彼女の着物を用意したのでも場が設けられた訳でもなく、……お守り袋を俊平が穢してしまったからですよ」

「は、チビ、関係ないじゃん」

「『お狐様』が彼女を呼べと…それで無かったことにすると、……分家の阿呆共に言いやがって…チっ、あの馬鹿狐」


 なんか、今、丁寧で優しそうで腰の低い志鶴さんから不穏で不敬な発言が聞こえたような気がするけど?

 私が、思わずそっちを向いたら、ニッコリ人の良さそうな笑顔が。


 気のせいかな?


「あーたんも、『お狐様』に会うの?」

「ん、家だと基本着物なだけだぞ。俊平もな」


 なんだ。紛らわしい。と思ったら、あーたんが私に用意させといたからと例の品を完成品にして持ってきた。な、なんだと。

 私は思わず、ニヤリと笑う。ふふん、この冗談がわかるなんて、あーたん、見直したよ。あーたんもニヤリと笑い返してきた。


「遵、秋月さん。不敬って言葉をさんざん聞いた筈なのによくこれを思いつきましたね。……私も嫌いではありませんが」


 やだ、志鶴さんまで。

 志鶴さんに着いて行き長い廊下を渡り、屋敷の一番端にある部屋の前で膝を着き、礼とする志鶴さんの真似をする。


「『お狐様』、参りました」


 たっぷり、三秒は待ったかな。


「入れ」


 威厳ある声に一瞬委縮した。

 そういえば、あーたんに化けていた時にしかあってないのか。あれ、持ってきたおいなりさんって不敬かな?一回の失敗で消し炭とかあるのかな。と、考えて入った部屋を目にした先で、……うん、そういえば、アディーもセラ様も出来るんだから『お狐様』なんて普通に出来るよね。



「どうした?小娘が好きな姿で待っていたのだが」



 小首を傾げる瞳も髪も水色の子供…『お狐様』。


 とりあえず、うん、私が訳のわからない特殊趣味の持ち主だというイメージを『お狐様』に植え付けた犯人はあーたんでいいだろうか。



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