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胡散臭げにあーたんを見てしまった。私は悪くない筈だ。


「えーと、イイ人アピールですか?」

「誰に対してだ。むしろ、チビの中で、どれだけ俺は外道なんだ」


 ボランティアの帰り道、私がジーッと疑いの眼差しを送れば、あーたんが睨み返してきた。だって、おかしい。あーたんだもん。

 ただ、遊び相手をつとめただけでだいぶ感謝されたしまった。……ボランティアって、こういうこともするんだ。掃除とか食事を作ったりとか大変そうなイメージだけで、生前は行事や誘われでもしない限りしなかったから新鮮だった。


「家族が遠くに居て、頻繁に会いに来れない人もいるからな。孫やらと同じ年頃の奴と話をするだけで喜んでくれるって。時々、深託の生徒がボランティア活動をする下見として来ている」


 ……そういえば、生徒会長だった。やだ。仕事してるっ。


「まあ、俺自身長生きしてるじいさん、ばあさんにあやかろうってのもあるけどな」

「………長生きしそうな性格だよ?」



 呟きに思わず反論したら、ふんっと鼻で笑われた。


「性格はな。ただ、『鶴』になると、50まで生きれれば上々になるんだよ。神に献上する『反物』を織るせいか。『お狐様』の近くにいるせいかわかんねえけど。昔はもっと短命だったって親戚の中で笑うジジババも居るんだぜ?将来的に『鶴』になる俺はちっとも笑えないんだけどな」


 さらっと言う重要情報に私が固まる。あーたんは、逆に意外そうな顔をした。


「チビ、あのな。俺の我が儘がある程度許容されてる理由は、これだぞ。一族の為に命を削って『反物』を織って、次が出来て命が尽きたら、はいサヨウナラって。どうだ。とっても心暖まらない話だろ?」


 絶句し、青い顔をした私にさらに意外そうな顔をする。そして、少々バツの悪い顔をする。


「……誰も、言ってなかったのかよ……」



 さらっと流すつもりで言ったというのに驚いた。どこにさらっと流す要素があるんだ。



「だからな。俺と俊平は、いずれ、寿命って明確な形で差がつくんだよ。『お狐様』のおかげで、『鶴』は短命なのに一族としては健康で長寿なんだから」


 鶴なのに短命って笑えないなーって笑うあーたん。


「『反物』の織り方は、今の『鶴』がいなくなれば、次の『鶴』に継承されて。……『お狐様』と最初に『契約』した初代は、ただ、自分の腕を認めて貰える場を求めての『契約』だったらしいが、二代目は『契約』しなくてーー三代目が凡才で初代との縁を頼って、『お狐様』に常に初代と同じくらいの腕と繁栄を求めたとか……『契約』に年に一度、『反物』を献上すると約束事を入れたせいで、俺と『鶴』は大迷惑だけどな。ーー本当は『鶴』候補は、名前に鶴の一文字が入るらしいな、……最後まで我を通して、普通の名前にした母親は、親戚中を敵に回して体調を崩してる……なあ、チビ。俺、俊平から母親との触れ合いを奪ってんだぜ?今さら、どうイイ人ぶればいいんだ?」


 ほら、と棒付き飴を渡された。

 それを受け取りながらーー覚悟していなかった重さ。なんて言ったら良いんだろうか。むしろ、さんざん、悪態をついた身として、どんな慰めの言葉も調子の良い奴になってしまう。藤咲さんが関係ないなら、関わるなと言った意味が今になって身につまされる。


「………『お狐様』って、『反物』好き?」

「いや、全然。むしろ、いらなくなってきてんじゃないか?」

「ふえ?」

「300年くらい前から、『鶴』がせっせと1年に1回『反物』贈ってるんだぜ?俺なら、要らないなー。『お狐様』自体も初代が大好きだったからついて来たって。言うくらいだから、あんまり、興味ないんじゃないか?」


 私がさらに固まるのを見てとったらしく満足そうに頷く。


「『契約』の文言に記してしまっている以上、上書きするか破棄するかでもしない限り、どうしても『反物』は献上するんだ。……何代か前の『鶴』が、破棄して『契約』をやり直そうとしたんだけど、親類縁者に牢に閉じ込められたとかなんとかも聞いたなー。ほら、また『お狐様』が天久と『契約』してくれるかわかんないし」


 家に閉じ籠って退屈だーっと嘆く方だし。と、……。


「退屈なら外に出れば」

「自分が居ない間に『鶴』に逃げられた事があるんだと。まあ、皆で追いかけ回して探しだして『お狐様』の前に差し出すとか常軌を逸脱してるだろ?それでも、天久(うち)だとまかり通るんだぜ」


 立ち止まって、ふーっと息を吐く。


「ともかく、俺は、逃げられないように甘やかして贅沢させて貰って悪いことしても怒られない訳」

「…うん」



 釈然としない。それは、異常な筈なのに。なんだろう。今の話で何よりも恐ろしいのは神である『お狐様』じゃなく、天久の一族な気がする。


「それで、このボランティアも我が儘の一環。俺は、じいさん、ばあさんと話したり世話するのも楽しいからやってるだけだからな」

「いい人アピールじゃないと言いたいの?」

「……チビは随分、喧嘩の売り方が上手いな」


 頭を押さえ付けて、ぐりぐりし始める。やめて、せっかく綺麗に撫でられやすくなった髪が!そして、身長も伸びが悪い気がする。み、皆で私の成長を止める気か!

 一通り私を痛めつけて満足したのか、話を再開する。


「『お狐様』があーたんが『鶴』になりたくないからから弟になりたがってるって」

「はあ?……たまに的を外すなあの方も。……俺は『鶴』をなりたくないんじゃなくて、母さんに認識されてる俊平()になりたいんだよ」

「マザコン?」


 頭に拳が落ちた。ストレートに痛い。

 な、なんで、マザコンは恥ずかしくないよー。私もシスコンから始まり、ファザコン・マザコンだよー。大丈夫、同士!ほら、大声でお母さん大好きって叫んであげるよー。



「一族皆で責めたせいで、精神的にも患ったみたいでたまに家に帰ってきても俺の事、『俊平』って呼ぶんだよ」

「…『俊平』」


 考えている事がかちりと合った気がする。うーん。でも、どうしよう。あーたんが相談相手として正しいのかな?…藤咲さんと仲が良いし。逆に会長は悪すぎる。

 『鶴』が『この土地』から出れないのは『お狐様』のせいだってことから始まって…。誰に言えばいいんだ?『この土地』には縛られてないって、藤咲さんとあーたんって同類としての仲の良さもあるんだと思う。そのバランスを崩したらどうなるんだろう。



 ーーそういえば、藤咲さんに『欠落者』になるかもな人の判別方法聞かなかった。

 リンが聞いておくって答えは、まだか。それにしてもなんで、『お狐様』は、私と話したいんだ?



 いや、威圧はされたけど、良く喋り過ぎだったんじゃないかな。『鶴』が『欠落者』なんかにならないって。これは、話過ぎだと思う。何か思惑があるんだろうか。


「何、考えてんだよ」

「……ちょっと……」


 受け身だよ。梅のお守りのお陰かすっかり、受け身に回ってしまった。

 この歩くトラブルホイホイが!ーーえ、気にいってないよー?別に気にいってないってば。脳内会議も最近暇なのか、脳の隅っこで茶を楽しんで……、こら、働け!情報をまとめておけ!!宿題!!ーーイエス、軍曹殿!!って誰がだ。まったく。


「ところで、チビは『ひばり』について、何か知らないのか?」

「んー、知らない」


 とりあえず、即答。

 ちょっと、私かな?とは思った時期も有ったが、こんなに他の皆が私じゃないのか?と指摘してるのに私じゃないとあーたんに完全に否定されてるんだ。あ、泉さんって手もあるけど?


「あー…どこにいんだよ。」

「縁がないんじゃないかな?」

「……チビ」


 睨まれているが、別に構わん。だって、1回遊ぶだけの相手とか宣言してるから、きっと逃げ回られてるんだよ。


「年相応の恋愛をすれば見つかるって言われたけどなー…、どうせ、俺は、恋愛結婚した所で、相手を置いて逝くわ、子供は『鶴』になるんだぜ。それくらいなら、最低な人間で良いだろ。楽しく遊んで出来た子供を引き取って」

「……」

「なんだよ。その目は」


 じーっと話を考えながら聞いていたら、睨まれてると判断されたのかギロッと見下されたが、別に怖くはない。……こ、怖くないぞ。睨み返すぞ。……視線を逸らしてなんかいないぞ。

 それにしても歪んでるな。歪みたくもなるな。親戚性格悪いな。思春期の子の前でなんて会話してんだ。



「そういえばあーたんも、『夢』とか見てたの?」

「ああ、『欠落者』候補が見るってやつか?前は見たけど、最近は無いな。俺は、俊平になって高校に通う『夢』だった。藤咲と仲が悪くなったけれど、『鶴』の重圧から解放されて、俊平と俺を誰も見分けられないって『夢』。今思うとおかしいよな。性格の違う相手の真似をずっとし続けて、違和感なく過ごすとか。なのに縋ってた気がする。まあ、今はチビの鼻水のおかげで、子供みたいな夢をいつまでも追いかけても仕方ないなって思うようにはなったな」



 まだ、そのネタを引っぱるのか。



「あーぁ、『小鳥』はどこに居るんだか」



 愚痴り始めた。いや、知らないから。は、もしかして、私の『祝福』が届いているのか。



「何、にやにやしてんだ」

「いえ、祝福が効いてるなって」

「参考までになんだ」



 にこーっと私は、あーたんに笑いかけた。



「これから、先、恋愛で苦労しろって」



 なぜ、無言で頭に肘を置くの。ぐりぐりしないで。い、痛い。頭に肘を置きながらぶつぶつ言ってる。



「『ひばり』に繋がってる神取のおっさんは、『花』を育てるの止めたみたいだからな」

「ん?」

「ん、ああ、チビに言っても仕方ないな」



 え、その話が気になる。神取が『花』を育ててないってどういう事?海外に行くから?

 うぅん、ちょっと、私、神取の話を鵜呑みにしすぎてないか?太刀川さんが、鵜呑みにしない方が良い的なこと言ってた筈なのに。



 お父さんが、神取に協力的すぎるし、少し、疑った方がいいのかな?ん?お父さんが協力的なら問題ないんじゃないかな。今日、会いに行ってみようかな。



「おい、急に顔色が真っ青だぞ」

「あ、うん。今日はこの辺で」

「いや、さすがに送る」

「寄る所出来たからいい」

「どこだよ」

「こ、これから連絡」

「帰れ」



 否は聞かないとばかりにどこかに連絡を入れるあーたん。タクシーか。己、金持ちめ。



「すみません。天匙まで」



 そして、どうして家じゃないんだ。家だったら、帰ったふりして出駆けるのに。あーたんがニヤリと笑う。



「悪だくみで俺に勝てると思うなよ」



 タクシーの中でどっかに連絡を入れられた。相手はリンだ。どうして、リンの連絡先を。ーー光原さんから横流しって。光原さん、さすがに本人の許可なくしちゃ駄目だよ。リンが電話越しに凄い黒いオーラを垂れ流している。怖い。きっと、光原さんも怒られる。



 首根っこを掴まれ、まだ部活中だったリンが迎えに来るまで待たされた。



「会長に会いたくないんじゃ」

「ん?俺の家出の理由は俊平じゃないぞ。父さんだ。俊平に強制させてる俺の真似やめてさせていいよって、皆に言ったら殴るんだぜ。意味分かんねぇ」



 すげぇ痛かったって。……あれ?じゃあ、会長を殴ったのは誰?

 頭を押さえこまれたまま、校門前でぼーっと神取について考える。そういえば、太刀川さんから貰った紙袋の中身を見ればある程度、わかるかも。うん、うちに帰っても出来ることはあるな。

 私がなんとか自分と折り合いをつけていると、会長がこっちに向かって歩いてくる。



「遵にーー、秋月」

「お、俊平……って、なんで髪切ってんだよ。止めていいって言っただろ」



 あーぁ、って呆れているあーたんに対し目を私に向ける会長。



「仲が良いのか」

「は?チビと?……」



 会長の言葉に思わず、あーたんと目を合わせてしまった。うん。



「「ないわー」」



 なぜ、異口同音になったんだ!?



 これが噂の仲良しアピール!?はっはっは、まさか。

 なんで、会長、黙ったの?あれ、梅の香りが………あ、リンが私に気付いて、こっちに来る。藤咲さんと……む、片倉さんも。



「チビ、そのうち『お狐様』に頼んで片倉の件は収めて貰ってみる」



 私が、むーっと片倉さんを睨み付けたら、片倉さんは苦笑し、何故かあーたんが、慰めるようなことを言ってよしよしって頭を撫でようとしてきた。それにムカッとしたので距離を取ろうとしたら、襟首を掴まれる。



「なんで、逃げんだよ」

「ムカッとしたからです」



 しばらくあーたんと睨みあったら、リンが私を回収をしてくれた。



「マルと喫茶店で待ち合わせしています。帰りますよ」


 リンが、長を睨み付けるのをやめず、梅の香りがひどい。

 片倉さんが大丈夫だろうかと視線を送ってしまった。むっとなったけど、藤咲さんが介抱していたのにホッとした。藤咲さんも顔色が悪いけど。会長とあーたんは平気な顔をしているから、やっぱり、片倉さんが近づいたせいかな?

 でも、リンも少し顔色が悪い。


 慌てて、手を引くリンに自分で歩けるといい、さようならと挨拶し足早にこの場を去る。

 お姉ちゃんを迎えに行き、自宅に帰った後は夕飯を作るお姉ちゃんを手伝わずに私は、太刀川さんから貰った紙袋を探したが見つからなかった。

 む、紙袋じゃ駄目かと、書類として探そうとしたが、お父さんとお母さんが帰って来てしまった。不審に思われてはいけないと思い、仕方なく太刀川さんに電話したが通じず、仕方なく明日、神取と会えないかというメールを打ったのだが返信がないまま、陽が明けてしまった。


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