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 学校に行き、質問したいことが有った身として、生徒会室に来たがその場に何故か髪を切ってわかりやすくなったあーたんが桜田先輩と立ち話をしていたので、とりあえず突進してみた。


「とう!」

「うおっ!?」


 まったくの無防備だったせいか転びそうになったあーたんを桜田先輩が支え、………あーたんに物凄い殺気を込めて睨まれた。


「あーきーつーきーっ」

「ふおっ!会長様!?」


 この馬鹿がっ!と罵倒された。え、だって、髪切ったのあーたんだよ?会長なんで、同じ髪型なの?

 あーたんだって、会長に強制しないって………ん?頬に湿布貼ってる?


「会長、お…」

「秋月、やめてくれ」


 ペンダコの確認をしようと手を出して貰おうと思ったのに桜田先輩にシーッと、口止めされた。

 む、発見者がそういうなら仕方ない。


「……髪切りましたね」

「ああ…、まったく。遵の奴は……合わせる側の都合も考えずに」


 苦々しげに言う会長に首を傾げる。あれ、あーたんは、もう同じじゃなくていい的な決意で髪を切ったんじゃないの?違うの?


「会長、あーたんは」

「待て、あーたんって何だ!?」

「本人に許可を貰いましたよー」

「俺は出してないっ」

「本人じゃないじゃないですかー」


 ……どうして、そこで動きを止めるんだろ。


「……すまない。何を言ってるんだろうな。俺は」

「気にしないでください。私はしょっちゅうですから」


 ポンッと背中を叩いたら、お前にだけは慰められたくないな……って。失礼な。


「遵と仲が良いのか?」

「は?」



 探る様な言葉になんとなく反論したくなる。が、それを許さずに桜田先輩が無表情に私を咎めた。


「秋月、HRが始まる。行きなさい」


 桜田先輩が私を追い出すように背中を押す。……あれ、梅の香りが強くなった気が……?



 追い出されるまま生徒会室を出て、教室に戻ると、ひばりんとマナルンが教室の前で話している。盗撮くんがどうとか言ってるけど、どうしたんだろう。


「おはよー、ひばりん。マナルン」

「あ、るかちゃん!んー?髪切った?かわいいねー」


 ーーやはり、乙女心のわかるマナルン!あ、私が乙女を名乗るなとか、き、聞こえないぞ!!

 ひばりんも私をまじまじ見て、あ、確かにって。マナルンが鋭いのか、ひばりんが普通なのか、どっちだろう。



「どこで切ってるの?」



 凄く可愛いって、これは本気でマナルンを尊敬する。私の褒めてほしいタイミングがわかるんだろうか。



 知り合いの紹介で今回が初めてのお店だというと、マナルンは、じゃあ、試しに行ってみるね。って、うん、……趣味さえ、万人受けならボッチ回避は出来たんじゃ。ひばりんは、どこかわかったらしく、何もされてない?って。完璧に光原さんの信用度が下がってる。

 携帯が鳴った。マナーモードにし忘れたようだ。うん。

 ……光原さんと藤咲さんからだ

 光原さんからは、あーたんが家出してきたから、会長に着替えを受け取りに来たいと言ってくれって。で、放課後来るから出来れば、私に持ってきて。だと!?

 い、意味がわかんない。

 藤咲さんからは、昼休みに話があるからって。

 こっちも意味がわからない。えー、しばらく会わないんじゃないの。まったく、みんな勝手だ。ふふん。


「?秋月、そわそわしてどうしたの」

「そわそわ?」


 ひばりんに指摘されて首を傾げる。え、そんなにそわそわしてるかな。私が自分の態度を必死に訂正しようとした様子にひばりんが、徐々に不機嫌になってきた。


「……メール誰か」

「メール相手チェックはきらわれるよー」


 ニコッと、マナルンが上目遣いでひばりんに釘を刺した。

 何度か私とマナルンを交互に見て……はい。って、しょんぼりしながら、頷くひばりん。躾られてる。



 泉さんは休みで、お調子者は、多少具合が悪そうだけれど出席している。

 それ以外は、いつも通りでお昼休みまで何の問題もなく進み、藤咲さんに指定された保健室に行くと、殿は居なくて藤咲さんが座っていた。



「座って」


 椅子に座るように促されたが、その前に


「いいんですか?」

「……あの女から、昨日に聞いてない?『お狐様』とあの女は、友達同士らしい。天久の初代が亡くなったときに一時的に『契約』が宙に浮いて暇をもて余していた『お狐様』に話し掛けて仲良くなったんだと。『お狐様』はあの女を穢れの除外対象にするからと血を求められたみたい。…父さんが『真名』に懸けさせたらしいから、これは本当。俺も血筋だから、当てはまらないだろうって。珍しく電話してきて、『ご挨拶しちゃったー!』って浮かれ気味に……意味わかる?」


 挨拶って光原さんのお父さんの位牌くらいしか思い付かないけど………しかし、また騙された。何が食事の時に害を成そうとする人間がいるの?だ。

 ……確かに藤咲さん相手に梅の香りが強まったりなんかしないなー。


「じゃあ、体育祭の後に『お狐様』と藤咲さんの能力が解除されたのって」

「『お狐様』の力に圧されて、俺の力が弱っていたのと、父がある程度の力の負荷が掛かったら解除されるようにしてたみたい。あの女は『お狐様』に許可を貰ってたみたい。抜け目がない」


 藤咲さん、なんとなく焦燥しているようだ。疲れてる?


「片倉に『契約』を断られるし、集めた情報が役に立たないものがあるとか……常識が覆されて正直参ってる」


 ここにも、リンに論破された仲間がいた。やだ。同士!


「リンがなんとなく、闘争心溢れてるって知ってたけれど、出会った頃のあの薄幸さと弱々しさはどこ行ったんだ。……俺様だ。完璧に俺様になってる。しかも毒舌すぎて引く」


 あれー。リンの毒舌ぶりをご存じなかったのかな?


「あ、リンの事バラした悪魔はシメるそうです」

「……リンなら出来そうで恐怖を感じる。リンって、親しくなった相手の方にきつくなるってなんだろ。ツンデレならわかるのに完璧に反対だ」


 ツンデレの反対?デレツン?……デレツンツン?あ、天邪鬼ってちゃんとした用語が有った。


 藤咲さんが今日は別な意味でお疲れのようです。


「リンに聞いてこいって言われた内容を聞くために父さんに話し掛けすぎて精神的にも疲れるし…不気味がられるし」


 あ、今日はただの愚痴なんだー。なんか必要とされたのかなって期待したのに。最近、疎外感が半端ないよ。リンが行動力があって優秀すぎる。くそ、いつか手痛い目に……合わせてどうする気だ。冷静な自分ツッコみが入ったー。


「秋月の事笑えない…悪魔って、どうやって産まれるのか聞いたら、父に目を丸くされたよ……ふふ」


 うわー、痛い目見てる。プライド高いから、これは精神的にヘコむだろうな。暴君を心からへこませるリンは、魔王だ。


「『伴侶』がなるんだって…人間としての生を全うさせて、一緒に魔界だかに行って……そこで生まれ変わるんだ。これも『真名』に懸けさせたから」

「……万葉さん、『真名』を握られてるわりに自由ですね」

「父さんにとって、子供さえ出来れば用済みだったみたいだから…」


 愛し合った結果じゃないって、遠くを見ながらいう藤咲さんに………は、これはチャンスではないだろうか。

 私は椅子から立ち上がり、腕捲りをする。ふふふ…生前プラスαとして、精神年齢の年下の美少年を可愛がるチャンス!


「秋月、そのてぐすねは何」

「頭を撫でようかと」

「……なんで?」

「復讐の機会が巡ってきたような気がしたので!」

「たぶん、気のせいだよ」


 近づいたら、デコピンされた。……ぐすん。まだ、元気だったようだ。

 いいじゃんかー。ちょっと精神的年上の矜持を保とうと思ってもいいじゃないかー。

 私が不満げにブツブツ言ったら、藤咲さんがはーあって、ため息を吐いた。


「別に頭を撫でさせるくらい良いよ」


 む、なんか違う気がするけど、撫でてもいいという許可が。わーい。

 藤咲さんに椅子に座って貰ったまま、頭を撫でるために横に仁王立ち。うむ……微妙な緊張感。

 か、可愛い可愛いってハードルが高かったんだ!

 と、とりあえずひと撫でしてみる。……サラッと殺意がわくさらさら感。枝毛もない……っ。思わず欲求のまま撫でくり回したい気持ちになったが、相手は冗談が通じない暴君。

 私は、慎重に丁寧に頭を撫で続ける。……憎い。柔らかすぎず硬すぎず癖っ毛すらないこの色素の薄い髪の男が憎い。なんだか、目を細めてるけど、何を考えてるのか読めない。うーん…。

 それにしても、さぞかし女に……あれ、そういえば、


「藤咲さんって女嫌いって本当ですか?」

「……嫌いだけど、何」


 肯定された。え、なんで?


「俺を捨てた『あの女』と家にいる人形と……身長が伸びて、ちょっと見た目が変わっただけで群がってきた女のどこを好きになればいいの?意味わかんない」


 それは……と、私がなんとも言えずに困惑していると、藤咲さんは苦笑した。


「冗談だよ」


 どの辺が冗談なのかさっぱり、わからないよ?

 そういえば、パーティの時女の人に囲まれてて、具合悪そうだったな。でも、下着買ってくれたとき手慣れてたよ?


「…秋月がよく頭撫でられて、幸せそうな顔してる理由がわかった気がする。癖になりそうだ」


 ……どうやら、本当にお疲れらしい。にこっと笑ってから藤咲さんは、沈んだ表情をした。


「片倉に『契約』断られると思わなかったな。俺って、そんなに頼りないかな」

「何か常に企んでる様な」

「こういう時に企むほど、薄情じゃないよ。……ああ、違う。本題から逸れた。遵が家出したんだけど。着替えとか俺が用意するから。秋月、光原と仲が良いんだよね。彼、多分、俊平が苦手だから。会わせないようにしてあげて」


 私があまりの驚きに動きを止めたら、何って怪訝な顔をされた。だって、藤咲さんが人様を気遣って……いや、別に不思議じゃなかった。

 やはり、みんなに親切にされる何かがあるんだろうか。光原さんには。


「何、勘違いしてるかわからないけれど。俺が俊平と仲悪くなったのは、この辺りだから。多分、遵と同じ学校に通っていたらもっとひどい事になってたかもしれないし」

「そんな曖昧な事を言われても」

「俊平は遵と仲が良い奴と自分も仲良くしようとするんだよ」


 それは、別段問題ないような気がする。私が首を傾げたら、藤咲さんが感覚的な事だけど、と繋げる。


「明らかに自分を馬鹿にしている相手と仲良くなりたいか?」

「いつの間にかアドレスを貰えるほど親しくなってました」

「……秋月にはわかんないか」


 がっくりしてる。あ、アドレスはマナルンが教えてくれたんだった。否、勉強を教えて貰ってたな。最近、また問題が綴ってあるメールが再開したんだった。


「光原は、俺以上に遵と親しいんだと思うんだけど」


 親しいっていうか、いい様に扱われてるような気がする。


「遵の性格と俊平の性格は全然違うだろ?辺り障りのない関係なら、別に構わないんだけれど、遵が相手と親しければ親しいほど、俊平が同じ扱いを相手に求め始めるんだよ。」


 私が、首をさらに傾げた。え、無理じゃない?


「困った事に俊平に自覚がない。多分、天久の当主は気づいているから、学校を別々にしたんだろう。俺も最初は俊平の方と親しかったから、気づかなかったけれど…、例の件以降遵の方と親しくなって気づいた事なんだよ」


 何かを思い出したのか気持ち悪かったな。って。呟く。会長のイメージと全然繋がらない。


「秋月は、まだ俊平と仲が良いから。普通に見えるだろうけれど、遵とも親しくなってるなら、気をつけた方がいい」

「じゃあ、あーたんの着替えの事は、会長には言わない方が良いんですね。光原さんの為にも」

「そうそう、あーたん………」


 あれ、藤咲さんが固まって、私を見ている。どうしたの?

 そして、どうして、突然立ち上がって頬引っ張るんですか。痛いじゃないか。


「どうして、そんなアホ全開のあだ名をつけたんだ」

「ほ、本人に許可は頂きました」

「どうして、遵も断らないんだ!?意外と似た者同士なのか」


 そんな大変不名誉な!

 あーたんだよ。あんな破廉恥な存在と一緒にされたくない。


「『お狐様』の件もあるのに家出とか遵には、『鶴』として自覚が足りない」

「あ、そのけん……」


 考えてる事が有るんですけどという言葉を慌てて飲み込む。駄目だ。この話は藤咲さんだけにはしちゃいけない事だった。つい、うっかりが大惨事になりそうだ。どうせ、『お狐様』と話すんだからその時に聞いてみよう。


「何?」


 問い返してきた藤咲さんに私が慌てて話題を変える。


「あの、『お狐様』といつ話すことになるんでしょう。泉さんが学校に来れてないみたいで」

「さあ?……ちょっと、親戚が煩いみたいだからね。外の人間に合わせて、『お狐様』が出て行かれると困るとか、そっちに寵愛が行くと困るって。そういうのが不敬だって思わないのかな……そうだ。秋月、神取とまだ会ってるの?」

「?はい」


 神取がどうしたんだろ。そう云えば、食事も誘ってこないな。は、まさか、神取まで梅のお守りのせいで?


「最近、神取が良くないって意味じゃないけれど、きな臭い噂は聞いてるから。巻き込まれないようにしなよ」


 きな臭い噂は教えてくれないのかと見上げたのに教えてくれないらしい。ちっ。


「海外に行くそうです。だから、しばらく会えないって」

「……ふぅん」


 何かを考えているみたいだ。しかし、光原さんに連絡しなきゃな。と、私が携帯を出してメールを打っていると、暇なのか指に私の髪を絡ませる。


「片倉だったら頭を撫でてあげるんだろうね」


 私があからさまに不機嫌な顔をしたら、藤咲さんがさらに何かを考えている。


「『命じて』、その不快感をどうにか」

「出来るんですか?」


 私に手をかざす藤咲さん。

 ん?梅のお守りの匂いがいきなり強くなった。藤咲さんが顔をしかめて、手を引っ込めた。


「…不敬だったのか…?」

「あ、万葉さんも『囁き』は不敬になるからって」


 たまーに本当の事を言ってるから始末に負えない万葉さん。

 沈黙が落ちた後にこれ以上妙案も思いつかないまま着替えは、藤咲さんのお父さんの秘書が持っていくと云うことで解決し、そのまま放課後になった。



 ーーそれで話が解決した筈なのにどうして校門前にいるんだ。あーたん。


「よう、チビ。ちょっと、面貸せ」

「それ、完璧に三下のセリフだよ」


 唇が切れたのか絆創膏が貼ってある。会長の殴り合いの相手はやっぱり、あーたんなのか。


 良いから来いって、連れていかれた先は老人ホームだった。目を丸くした私にあーたんは、ああ、と思い出したように。


「ボランティアに興味あるか」

「それ、連れてくる前に聞くことだと思うよ」


 お爺ちゃん、お婆ちゃん、職員の方々の笑顔の前に連れてこられて否定するって、どんな強心臓でしょうか。


 もし興味がなかったとしてもこの場でノーと答えれる人居るんだろうか。


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