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 私が帰宅すると玄関先でリンが、微妙な顔をして出迎えてくれた。


「そろそろ、頭が限界なんじゃないですか」

「ふえ?」

「ちょっと、来なさい」


 リンの自宅に連れ込まれた。

 はて、なんじゃろ。私の頭はまだ限界を訴えてないぞ。なあ、脳内会議?いいえ、つねに空っぽです。……ありがとう。って、なんでやねん!?

 連れてこられたリンの自宅は、モデルルームかというくらい何もない。知ってた。だって、たまに女の影がないか確認しに来ていたからね。ふふん。

 リビングに座れと云うのかと思えば、地下室があるからと……え、有ったの?そこまで連れて来られて私は身を硬直させた。

 真っ白な一室にピアノと譜面台がある。え、片倉さんもいる。ど、どうして?……親友を呼んだとして藤咲さんはいない。あれ、なんか顔を見た瞬間にイラっとした。

 おかしいぞ。これは完璧におかしい。


「防音室です。ここなら、誰かが入ってこない限り音は漏れません。で、いい加減僕に相談する気にならないんですか」


 ……何を?

 


「今まで、さんざんヒント出してるのにスルーですか。ーーいい度胸だな」


 魔王様がお怒りだ!目が、ーー目が据わっている。


「それで、悪魔やら『欠落者』やらの話に思考を弄ばれて楽しかったですか?」


 リンから私が訊かなければ出て来ないだろうと思っていた単語が出てきた瞬間、私は身を竦ませた。誰かー。この人、なんでも知ってるんでしょうか。助けてください。

 片倉さんに視線を向けたら、反らされた。な、何故。むしろ、どうして、居るのか聞きたい。そして、やっぱり、むかむかする。

 片倉さんを視界に入れないように視線を向けたらリンはただ微笑んでいる。怖い。本気で怒っている。


「ええっと…」

「何から聞きます?ああ、ルカの今日貰ったであろう梅のお守りは、神特性ですよ。天久の家に憑いた『繁栄の神様』が直々に香りをいれた物です。あの方は元々『この土地』のルールに反した方です。どこからともなく天久の初代に取り付いて、そのまま居着いた方ですよ。最近は……と言ってもここ百数十年は暇をもて余して『この土地』のルールで遊んでいらっしゃるみたいですがね。……基本的に『鶴』と呼ばれる当主以外は興味がないそうです」



 滑らかに語るリンに私は困惑する。聞けば答えてくれたの?でも、目は一切笑んでない。


「だから」

「普通、『神』と呼ばれる方の方が優先されて当然でしょ?僕とルカの常識は違うんですか。どうして、他の事に目先が行くんでしょうね。僕は不思議ですよ。ルカ」


 あれ、確かに『お狐様』が神なら優先度が高いって言われてみれば確かにと思うけど、私の中では『お狐様』の優先度は低かった。だって、お姉ちゃんとリンのイベントに双子が関わったことがないんだもん。それにいきなり現れて来いって言われてホイホイ喜んでいくわけないじゃん。

 でもーーなんだろ。リンが怖い。どうして、いきなり、こんなに責めるような口調で言うんだろ。


「梅には邪気を払う効果がある。そして、お守り袋は『鶴』の反物から出来ています。言っておきますが、身を清めて神の前に行くのは当然です(・・・・)。……セラとアディーとの契約を外せと命じられなかっただけ有り難いと思いなさい。むしろ、自分の気持ち優先で物事を推し進めたルカが不敬と罰せられなかった方が信じられないくらいです」



 当然って何だろう。知っている人がいきなり私の知らない人になったようで怖い。リンは私をじっと見ている。な、なにか言わないと。



「『この土地』に反してるって、『鶴』は、『この土地』から出てけないって」

「天久にいる神は退屈だから、『この土地』のルールで遊んでいるだけですよ。悪魔も天使も『この土地』に神はいると言っても神を縛ってるとは言ってないんじゃないですか?」


 そう云えば、聞いたことがないな。


「ところで片倉、『夢』で見た内容を語るなといった意味がわかったか」


 リンが片倉さんを睨み付けた。私が片倉さんを見ると納得したように頷いている。え、っと…。私が知らないところで何か話が進んでいるの?

 そして、どうして、こんなに天使とか悪魔とか神の話とか『この土地』の話を片倉さんの前で?え、知ってたの?


「天使側の話をしましょう。悪魔側からさんざん聞いているだろうけど、天使は、弱ったり罪を犯したりした場合、『この土地』に連れてこられる。弱った天使を連れてくるのは、『この土地』が少ない『感謝』でも、『力』を蓄える事が出来る場所だからです。『能力』での消費も少なくて済む。延命を望むなら適した場所です。傲慢な天使がそれに気づいて、謙虚になるのを待つ場でもある。そもそもが、『罪人の墓場』だと思われてる理由はですね……力が強くなんの咎もない天使は『この土地』に入る為に力を大量に消費しなければならないからです。それだけの穢れがあるのだと考えられています。罪人として連れて来られた天使は、まず傲慢で『自分が他者を救ってやっている』という気持ちから力を乱用し、勝手に自滅していきます。『この土地』は力が強く愛されている天使を拒否しています。弱った天使は……それだけ、疎まれていたり悪意にさらされていたり、……『感謝』の意味も考えない者ですからね。波長が合うんでしょう」


 リンがさらっと毒吐いた。いや、待って。リンも弱ったから連れてこられたんだよね。その言葉って自爆じゃないの?


「あれ?罪人だとしても、どうやって力が強いのに『この土地』にそのまま入って来れるの?」

「……『扉』を使うそうです。これ以上は、教えて貰えませんでした」


 祖父の名前も出したのにって。リンがむーっと考えている。ん、扉?お姉ちゃんの絵のタイトルに『扉』ってついてた気がするけど……。


「まあ、『この土地』で『力』が戻ったからと出ていく必要性はまったくありません。むしろ、ずっと居たければ居ればいいんですよ。そうだというのに悪魔どもが出ていくのが当然という空気を作り出しているんです」


 確かに悪魔寄りの牧師の話だと元気なら出て行けって。

 そういえば、セラ様、元気だよ。私は何と勘違いして元気なら出てかないとって、セラ様に思ったんだ?あ、牧師が『予測』が得意って言ったからか。……やばい、誘導されてた。


「どうして?」

「『この土地』が悪魔を優先している……と思われているからです。そもそも、『欠落者』も悪魔優先だと思いませんか?」

「悪魔を増やして…」

「ーー『欠落者』から話を訊いたのか!?」


 リンの怒気を感じに思わず、ビクリッと肩を震わせる。私の恐怖にを感じ取ってくれたのかリンはいつも通りの雰囲気を醸し出そうとしてくれたが、うん、無理だね。


「あれは、悪魔の助手にされた存在です。『この土地』に寄って、『堕としやすい者』を作り出すんです。『契約』という形を自分優位にする為にあくまで、自分はお前に力を貸してやるんだと云うスタイルを取りたい悪魔も居るから重宝されています。そういうタイプは小物ですがね。自分が『堕ちた』理由に復讐を果たせば『堕落した』と見なされ、死後は、そのまま魔界に連れていかれます」

「ーー『悪魔候補』じゃないの?」


 牧師の笑顔がちらつく、……え、じゃあ。あんなに迷いがないって顔をしていたのは騙されてるから?

 リンが私を心底呆れたように見る。


「どうして、そんな発想になるんですか。悪魔とばかり喋っているせいで、頭が悪魔の方に片寄ったんですか」

「け、『欠落者』をもとに戻す方法は…」

「あります。」


 有るんだ。


「力の強い天使を頼ればいい。どうするのかは、僕も見た事がありませんが、ただ『欠落者』自体が大抵、悪魔と契約してる場合が多いので『この土地』から出れませんけど……僕が、ルカに泉さんに近寄って欲しくないのはこの辺りです。元に戻す方法を知ったら、興味のままに動くでしょ?……セラも、出ていかなくてもいいと言うか。まだ、罪を赦されてないのに出ていかせようとしないでください。話をされた瞬間、ゾッとしました。」


 下手をしたら消されますって。その言葉に私は、衝撃のあまりにへなへなとその場に座り込む。

 そんな私を片倉さんが立ち上がらせようとして、止めた。あれ、梅の香りが強まったような。片倉さんはリンに何か聞きたいようだ。


「オレの『夢』は…?」

「たぶん、『命題』です」



 『破滅型』の悪魔の特技じゃなく、『命題』?あれ、だって。


「え、だって、藤咲さんは」


 私の言葉に頭を振るリン。


「僕は『命題』と呼ばれるものは産まれた時からではなく、『堕ちやすい』と感じた瞬間に『この土地』に判断されて出されるものだと思います。多分、能力が高く悪魔に好かれやすい性格を狙ってるんだと思います。日々、状況が変わる中で産まれた時から付け狙われるとは思えません。藤咲だって、悪魔側の言い分しか知らないはずです。彼等の特徴としてわかったような顔をするんです。自分に価値があると思わせるために」


 でも、だって…と、おろおろする私にリンが、ため息を落とした。片倉さんに視線を向ける。


「片倉、最近、僕達に疎外感を感じていたでしょう」

「……」


 視線を逸らす片倉さん。何が有ったんだろう。私が聞いていい事なのかな。

 それにしても梅の匂いが香しい。そして、匂いが強まると片倉さんから離れたくて仕方なくなる。どうして?


「今の話をマトモな人間に言った所で、どうせ僕の気が狂ったと言われるだけです。だから、説明できなかった。ルカはルカで僕から説明されたくない振る舞いをする。バカなんですか?」


 なんだろ。耳と心が痛い。リンの話がしっくりくる。でも、こんなに全部知ってたら私は何のために。


「ーー矛盾だらけの話を聞いて、どう纏める気だったんですか」

「な、何か纏まりそうな気が!」

「…言ってみてください」


 冷たい目が怖い。リンの説明を聞いた後では無理だ。生前の記憶が状況証拠もないとか理由をねつ造する気構えがなきゃ駄目って。……わかった。無視しよう。


「それから、ここまで聞けばわかっているでしょうが一昨日のアディーの話はルカが気に入りそうな答えを本能的に返していただけです。契約者の『堕落』を望む悪魔の本文に則っています。ルカの知識欲を満たしてそれが間違ってようがどうでも良いんですよ。気分が良かったでしょ?」

 

 あ、アディー、努力家だ。後で頭を撫でてあげないと。

 そして、リンはどこからこんなにって……セラ様しかいないか。それにしても『夢』が『命題』なら、万葉さんを疑ってしまって悪い事をした。……牧師の話が全体的に役に立ってない。『手順』の話も疑った方がいいのか?


「それから『手順』あるいは『手法』については間違いでは有りませんよ。藤咲と話しているとたまにチクチクと心が痛むでしょ?その後に優しくされたりすると人間は簡単に堕ちます」


 詐欺とかそんなもんでしょう。って、リンは容赦がない。藤咲さんの手法を詐欺と一緒って、本当に親友!?



 もう、情報処理が追いつかないのにリンが攻撃を緩めてくれる気配はない。穴だらけの推理が全部駄目だしされてる。



「ルカ。いい加減、自分だけで答えを出そうとするのを止めなさい。むしろ、どこからその自信が出てくるんですか」

「むしろ、出したくない答えをリンに出されたよ」

「そうですか。それはルカが聞きたくない話を遠ざけた結果だと思いませんか。ついでに一昨日はセラにあまり叱られなかったと思いませんか?僕が言って、もう自分が叱っても仕方ない段階だと思ったら全部僕に話してくれと頼みました。ルカの情報と僕に協力してくれる人に頼んだ結果こういう結論に至りました。ええ、両方の情報は必要でしょ?何か反論は?」


 ぐうの音も出ない。そして、セラ様とリンがいつの間にか仲良くて怖い。


「片倉さんにモヤモヤするんだけど、なんで?」


 リンの不満を何故か片倉さんにぶつけてしまう。

 片倉さんにリンが同情の視線を向けた。うん、確かに理不尽だけど。何故かイライラとムカムカとモヤモヤと、何かわからないけど色んな感情が。そして、梅が良い匂い。

 片倉さんが匂いがするたびに私から離れていく。


「ルカ。僕が『命題』についてある程度自信が有るのは、片倉のせいです」


 リンの視線にポリポリと頬を掻いている片倉さん。う~ん、おかしい。この妙にイラっとする気持ち。ムカムカはなんだろ?


「片倉も『加護』から外されました。『欠落者』です。ーールカのせいで」

「ふえ?」


 頭が一瞬真っ白になった。


「大事な事なので、もう一回。ルカのせいで片倉が『欠落者』になりました。さあ、片倉、今の気持ちは?」

「……リン、趣味が悪いと思うぞ」

「これで二人目か。バカなんじゃないですか。ルカ。悪魔の手先か。何を言った。ルカに対して如何わしい気持ちになるとか」

「リン!!ちょっ、黙ってくれないか!?」

「嫌です。イライラします。そんなに不満が有ったなら口で言えバカ。あーぁ、ルカ。誰かに対して頼りたい欲求が働いてませんか?」


 リンの言葉に私は一瞬で顔に熱が集中するのがわかった。藤咲さんにすごく相談したいと思っていた。だって、こんなに情報持ってるから、整理もしたいから。

 でも、なんだか会うのを躊躇っていた。どうしてだろうって思っていた所だ。リンが理由を教えてくれるなら助かる。


「ど、どうしてわかったの!?」

「それから、片倉にイライラしたりムカムカしたり」

「うん」

「片倉……落ち込まない。そして、ルカが正直すぎる」


 あ、本人の前で肯定することじゃなかった。そして、わかってて聞いたリンは鬼だ。ーー魔王だった。


「本来なら頼りたいって気持ちは、片倉に向くはずでしたが、……セラと『契約』していたせいか……なんでしょう。ルカ、誰に頼りたいかはっきりしてますか?」

「藤咲さん」

「……なぜです?」


 本気で疑問なのか首を傾げるリン。

 私もわからないから聞いてるのに。いや、情報の共有をしたいからだきっと。でも、なんでか会うのを躊躇っている。モヤモヤする。あっちが駄目だからこっちみたいな感じ?……あ、それっぽい。そういうのよくないと思うからね。

 それにしても、リンの中でも私は、藤咲さんが苦手認識らしい。だよねー。


「会いに行きましたか?」

「ううん、片倉さんにもやっとした気分で藤咲さんに会うのが失礼なんじゃないかと思って」


 私なりの結論にリンが、チョップしてきた。い、痛い。何故?


「まあ、『欠落者』がとある分野に特化するって聞いてますよね。片倉は他人に頼られるっていう分野で特化しました。依存レベルで」


 片倉さんを思わず見上げてしまった。気まずげだ。しかし、私の中の感情は良くない方向だよ。どうしたの。これ。


「お陰様でたくさんの悪魔が『契約』を持ち込んできましたが、メインであるルカが無反応なので、片倉は冷静に『契約』を断っていました。……ねえ、ルカ。僕がこの話を片倉の前でしている理由わかりますか?」

「……ばれちゃったから?」

「ええ、悪魔(どいつ)かの口から僕が『天使の孫』なんてファンシーな存在だってばれたんですよ。どうしてくれるんですか?……ふふ」


 笑い方が怖い。止めてください。私が悪いんですか。そして、ついにお認めになるんですね。


「本当なら、依存させたい筈のルカが一番、影響を受けるんでしょうが、推測から出ませんが、セラとの『契約』のおかげで逆に作用してるのかもしれませんね。それから、片倉に敵意が増してるのはその梅のお守りのせいです。『欠落者』を不浄だと祓っているんでしょう。……片倉、きつかったら外出ていいですよ。話はあらまし終わったので、僕と同じ部屋もきついでしょう」

「……ごめん」


 口元を押さえて出ていく片倉さんの後をついて行こうとしたら、リンに腕を掴まれた。


「今の片倉にルカは毒です。片倉を『堕とす』言葉を言ったんでしょ。」

「わ、わかんな」

「それは良いんですよ。」


 良いんだ!?ざっくりしてる。


「どうせ、何もなくても時間切れを起こすんですから。対策もわかりましたし。それで、力の強くて傲慢じゃない天使に心当たりは?」


 傲慢じゃないって。別に性格に難が有っても問題ないんじゃ。


「悪魔の知り合いなら」

「……情報が偏って当然なのによくそんな平気な顔で考え事して結論を出そうとしてましたね」


 皆、楽しそうに話しててくれたよ?

 でも、騙されてたり、情報として使えないものが多いのか。道理で繋がらないわけだ。それを必死に組み立ててた私って………。


「雑貨屋さんは休みだね」

「ジジイはこの前無理して、来ていたらしいのでぎっくり腰を起こしたんですよねー」


 ふう、使えないって。リンが身内に厳しすぎる。そして、さりげなく雑貨屋の店員さんも天使だって肯定したね。


「しばらく、片倉には一人で近寄らないように。『夢』と同じようにしようって動くかもしれないので」

「リン、親友だよね?」

「ええ、盲目的に信じるって、ある意味、相手に失礼だと思いませんか?」


 ニッコリ良い笑顔。この人、天使の孫じゃなく、魔王そのものじゃ。


「私も『夢』を見るんだけど」

「幸せな『夢』ですか?それとも何かをどうしても請うような」

「ううん、怖い夢」

「……ただの夢の可能性も」

「変な声もするし」

「僕は、天使としての能力がそんなにあるわけじゃないので……、精々物を通して、力を貸す位ですよ」


 かなり守って貰った気がするんですけど。やだ、謙遜?それとも、お爺さんとか周りがそんなに凄いとか?……そういえば、力のある天使にセラ様の名前が出ないな。


「セラ様に頼るのは?」

「あんな大物(悪魔)と渉っているセラにこれ以上頼るんですか?……ん、ああ、駄目だ。ルカは、しばらく『お狐様』の為に身綺麗にしていなさい。」


 身綺麗の定義がわからないので、なるべく、身なりを整えろとか出来れば、アディーとセラ様にしばらく会うなとか。厳しい。……セラ様はともかく、アディーは同じ学校だから厳しい。

 そういえば、


「『欠落者』候補ってわかるの?」

「……僕は、わかりませんけど。…何故?」

「泉さんの時、藤咲さんたちが」

「……ああ、聞いておきますから。大人しくしなさい。髪も切った方が良いですね。爪も整えて、……天久の方で支度も用意されるでしょうが」


 仰々しい。そっかー、本来そこまで気を使わないといけない相手なのか。なんだか意外とノリが良さそうなタイプに見えたのは気のせいだったのかな?

 それにしても、


「片倉さん、大丈夫?」

「まともに見えたでしょう。……普通なら、『加護』を失った瞬間は気が狂って、自分が『堕ちた』理由に固執し始めるらしいのですが、……不思議な事に何にもしないんですよ。ーーねえ、ルカ。ルカのせいだと責めましたが、本当は僕と藤咲のせいだと思うんです」

「何が?」

「片倉が、『欠落者』なった理由が」


 私が首を傾げたら、リンが私を抱きしめてくれた。ーーうん?どうしたんだ。私的おいしくないぞ。お姉ちゃんに抱き着いてくれたら満点だ。


「今、マルに抱きつけって思ったでしょう」

「当然じゃないかな?」

「ええ、当然です」


 それなのになんで私に抱き着くんだろう。おかしいなって考えていたら、リンが私から離れた。


「僕は、マルが好きです。でも、マルに『天使』とかいいたくないです。……身構えてほしくないんです」


 リンの言葉に私に対してそんな言い訳めいた事言わなくてもと、ニッコリ肯定する。


「気にするだけ無駄だよー。リンが嫌われるとしたら別問題だから」


 ところで、アイアンクローって普通に浸透しているんだろうか。私は会長とリンにされているがうん、

 私、間違ってない。性格悪いのはリンだし。さすがに無言で私の顔を握力の限り頑張って握り潰そうとするのはいかがなものかな。

 

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