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優しく出来る人と出来ない相手


「アディー、セラ様、ごめんなさい!」


 まずは、謝罪だ!とばかりに頭を下げたら、セラ様がしばらく私を紫の眼光で見つめたが、途中で諦めたのかため息を吐いた。


「病人にいつまでも頭を下げさせる趣味はない。上げろ」


 やだ、セラ様男前。美少女姿だけど。


「アディーは?」

「るか、おれの契約者。よくない」


 ……ぶーっと頬を膨らませている。たぶん、怒ってる理由がズレてるな。

 アディーに関しては、うん…話の展開次第だ。ちょうど、仕置き用のストックも貯まっている事だし、どれから使おうかな。

 怪我人の為ベッドに腰掛け、セラ様とアディーには座布団に座って貰う。


「今日、病院に行ってきました」

「そうか」

「びょーいん?」


 あれ、アディー、知らないの?

 セラ様が簡単に説明している。ーー延命治療を行う場所って、セラ様!?


「な、なんだ。人間は傷ひとつで、生きるか死ぬかと騒ぐではないか」

「人間、かよわい」


 ……万葉さん(悪魔)の言葉を実感してしまった。悪魔と天使を人間の常識に当てはめちゃダメなのか……あれ?『欠落者』からなる悪魔は元々人間だ……なんだろ。この辺をもう少し、掘り下げれば、材料(・・)になりそうだ。……その前に、


「アディー、片倉さんに何かした?」


 ビクリッと肩を震わせたアディー。用意した炭酸水よりも、冷凍ピザに興味があるのか。……なんで、私の手作り?って聞いてきたんだろ。

| お店で買ったもの(冷凍食品)って言ったら、不満そうだった。アディーの常識がわからない。と思いながらもした質問にアディーが恐怖に満ちた目で私を見つめる。

 この反応って。


「な、なんのこと?」


 トボケ方が下手くそすぎる。私の悪巧みに気づいたのかビクリッて。……フッフッフッ、お仕置きは免れないぜ。と、言いたいところだけど、


「アディー、『能力』を暴走させたとかってない?」


 ニコリって、言い訳しやすい方に誘導してるのに何故か、アディーが何も言わず、私から視線を逸らしている。な、何故だ。ほら、私のせいだって言えば謝るんだよー。どうしたの?

 私がアディーの思わぬ反応にワタワタしていると、セラ様が、ゴホンッて、咳払いをする。な、なに…?


「お前は、アディーをどうしたいんだ。責めたいのか?どうして、そんなに殺気に満ちた目で睨み付けているんだ」


 セラ様の言葉に私は、コテンッて首を傾げた。私の目が殺気に満ちている?ハッハッハッ。自他共に認めるキツメの猫目だよ。そんな、ちょっと目付きが悪いくらいでなにさ。


「ちょっと、アディーが私に『真名』を呼ばれた初期の状態で、『能力』が使えたかどうかを教えろって言ってるだけですが?」

「脅しーーるか、おれを脅す。よくない」


 セラ様の後ろに隠れてプルプルしているアディー。貴様、天使の後ろに隠れるって悪魔としての誇りはないのか!?そして、セラ様まで私からアディーを庇ってる。


「セラ様、これは必要な尋問です!」

「わかった。落ち着け、……アディー、すまないが、力を暴走させた自覚はあるか。」


 優しく問いかけるセラ様。……深託に通いだして確実に保育士さんとしてのスキルが上がっている。

 そういえば、悪魔って、企みがバレた時に否定しないような。……これも人間の常識に当てはめちゃ駄目なことなのかな?


「わ、わかんない。……で、でも、なんとなく自分の力、の残り、わかる」


 あれー、素直に肯定したー。


「ただ、不幸なのの、側に居ても、力入らない。過程大事」


 うん、それはわかってる。そうじゃなきゃあんな所で一人寂しく、ぶつぶつ言ってないよね。アディー。


「るか、常識通じない。だめ」


 …………これは人として駄目なのか、悪魔が企む相手として駄目なのかが気になる。どっちもー、って聞こえなーい。やめて、誰が私を責めてるの!?

 アディーが、片倉さんの件について黙ったので、他の問題を提起する。


「今日、神光高校に行って」

「待て。お前は病人だろう。……反省はどこへ行った。」

「え?……た、たくさん情報が貰えましたよ?」


 やだ。セラ様こそ、私を嫌悪感たっぷりに見下さないでください。て、天使がそんな目付きしちゃだめですよ。


「か、かずはさんがルールを破ってましたよ。私、セラ様とアディーと契約してたのにちょっかい出されてました!」


 必死に言い訳を絞り出す私にセラ様が、ほうって…だからなんだって。そうですね。だから、なんでしょう?え、大問題じゃないの?


「え、光原、にちょっかいかけたの、バレた?」


 コテンッー…って、首をかしげ……おい。アディー。私とセラ様のそれぞれの意味を持った視線を受けたアディーが慌てて口を塞ぐ。……うん、光原さんも私を『ルカ』って言ってたな。

 私の声は自分でもびっくりするくらい低かった。


「アディー、いつから?」

「わ、わか……。る、るかに会って、から?……し、知らないうちに、力、使ってる。で、でも、るかからしか、供給できなかった」


 ーー推測が当たった。セラ様、目を丸くしないで。弱ってるくせに力を使用するとか、まず発想としてないから。

 やだ、似た者同士だね。アディー。……天使って、悪魔が力を使用してるのわかんないのかな?あ、でも、あの時、手を繋いでたの私だったからか?


「あの時、るか、きらい。めいわくなれって、思ってたから、使ってた?」


 アディーもわかんないんだね。


「でも、るか、このせい、大変」

「ん?」

「おれ、知らないうちに、万葉の光原(獲物)横取った。るか、同罪。ごめん」


 あ、セラ様止めてください。いくらアディーでも首を絞めるのはヤバイです。そんな時はこれです。


「アディー。体育祭でのケガどうしたの?治った?」

「セラにいきなり、治るの不自然言われた。まだ、治してない」


 ふふんって、誇らしげだ。そうかー、治ってないんだ良かった。私は用意していたストックを取り出し、コットンも用意する。


「アディー。怪我の治療してあげるー」

「?うん」

「……」


 セラ様が、何か言いたそうにしているが言うのを止めた。そうだねー。今から、カチカチ山の本を読んでしょう。アディーよ。因果応報、自業自得!そして、この状況って、アディーにちょっかいを出した私の自業自得だった!!

 絆創膏を取って貰い、治りかけの傷口に思いっきり調合した物をコットンに浸しアディーの怪我に塗りたくる。


「ーーーーッ!!!?」


 あ、声にならない悲鳴をあげて、パニックになった。一通り、ジタバタと暴れて……怪我をした場所を抱えて動かなくなった。………アディー?


「……アディー、生きてるか?」


 セラ様がぽんぽんと、アディーの背中を叩いている。ふるふる震えてる。


「……何を塗った。劇物か?」

「人の口に入る物だけですよ?えーと、醤油に一味に粗塩とわさびと胡椒に……ミント?」


 何を入れたのかのリストを書いたメモを読み上げる。セラ様の目が冷たい。


「ミントは優しさか?」

「わかりません。しかし、カチカチ山に習ってみました」

「そうか……アディー、傷口を洗いに行こうな」

「るか、……きらい」


 幼児姿になって、セラ様に抱き上げられるアディー。外で洗ってくるらしい。ふむ、やり過ぎたか。

 ……結局、アディーが拗ねて話合いが終了してしまった。うん、やり過ぎだったようだ。そう言えば、セラ様にもうすぐ『この土地』から出れるかもしれませんよって言ったら、セラ様よりアディーが過剰反応していた。セラ様はうさんくさそうにそうかって言ったくらいだった。やだ、信用がない。



 次の日も大事をとってお休みさせられたので、その次の日に私は、周りが唖然とする様な隠密行動に走っていた。……いや、歩きだけど。

 片倉さんには整理がつくまで会いたくないし、誰か相談できないか考えた結果、生徒会室に入り浸ると云う結論に達した。会長なら『この土地』のこと詳しい筈だと思ってのことだったが、何故か書類の手伝いをさせられた。


「打ち込み上手いな」

「任せてください。パソゲーと2次作の卑猥な画像の為に磨いたこのスキルを私、今発揮します!!」


 会長から褒められた!!

 なんだかやる気になって、用意して貰った席でポチポチと、文章打ち込みをしていたら、突然目の前が暗くなる。

 ん?どうしたの。会長。私が疑問に感じたらガシッって顔を抑えられた.


「お・ま・え・は!!中学生が堂々とそんな事をしてると吐くな!!」


 は、しまった!!生前の事です。今は、ネットは健全に調べごとやお姉ちゃんの手伝いでしか使ったことないよ。真面目だよ!?ど、どうしよう。


「まったく少し褒めるとこれだからな」


 せっかく、褒められたのに…。会長が自分の席に戻ってPCを打っている。早いな。生徒役員が入ってきたり出て行ったりを繰り返している中、あんまり、がっつり質問できないと判断し、あ、そう云えばと質問してみた。


「一昨日病院に行ってきたんですけど」

「ああ」

「帰りに神光の牧師様に会ってきたんです」

「……はあ?」

「そしたら、『お狐様』の方を優先すると思っていたからびっくりって」


 あれ、会長のPCを打つ手が止まってますよ?どうして、唖然としてるんですか?そして、頭を抱えながらスマホ片手にどこにメール打ってるんですか?


「……放課後、一緒に帰るぞ」

「え、『お狐様』にもう?」

「違う。……今、禊の段階だろうが……説明しなかった俺が悪いのか」


 何だろうか。ぶつぶつ言ってる。


 放課後、会長を迎えに来た車に乗り、車の中で梅の香りのするお守りを貰った。『お狐様』に会うまでは、持って歩けと言われてしまった。


「あと、身なりも整えろ。それから着つけはできるか?」

「はい」


 ーーお姉ちゃんとお母さんが。


「……不安だな。当日着替えやすい格好で来い。あと、できる限り悪魔にも天使にも会うのは構わないが企みをどうにかしようとは思うなよ」


 私の心の声は届かなかったらしい。相談しようって思ったのに小言で終わってしまった。それにしても髪を切りに行って来ないと駄目か。


 光原さんにお礼も言わないと駄目だからいつ行っていいか聞かないと。うん、そうしよう。


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