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【SSらぶBL】28話『部屋探し(成田目線)』

掲載日:2026/08/12

ご覧いただきありがとうございます!


【うちカプ紹介】 2026.8現在


攻め→ 成田桜生(おうせい)(28)

受け→ 結城竜介(りょうすけ)(32)

・社会人カップル。サラリーマン。

・交際2年と8ヶ月。

・同じ会社の営業一課で共に営業マンをしている。

・結城は係長で成田の上司。

・成田は平の会社員(中途採用)。

・2人の関係は誰にも内緒。


・成田→料理が得意で結城の腹を掴んでいる。感情を表に出すのが苦手、表情があまり変わらない。ゲイ。バリタチ。


・結城→料理が一切できない。会社では長年営業成績毎月トップをキープする秀才。元ノンケ(元カノ8人とかいる。仕事人間でフラれるの早かった、が女子ウケが良くモテる)。

 

 




一次創作BL小説です。

攻め→成田桜生(桜生)(28)

受け→結城竜介(りょうすけ)(32)


彼らの「今」はこれを見ているあなたと共に過ぎてゆきます。

(一緒に老いていく設定です)






 【SSらぶBL】 (28話)




 『部屋探し (成田目線)』



 不動産屋の担当から希望の条件の物件を紹介され、成田は恋人の結城と共にマンションの前までやってくる。


後部座席のドアを、運転席から降りた担当の年配男性が外側から開けてくれた。


「ありがとうございます」


 明るい声でお礼を述べた結城が先に車を降り、成田もそれに続いた。


「五階建てのマンションかあ。物件は三階だっけ?」


「はい、三階の302号室です」


 マンションの出入り口に立ち、成田は黙って建物を見上げる。


外装はレトロで赤レンガ造りというわけではないがそれを連想させる、好感の持てる見た目をしていた。


「入りましょうか、出入り口はご希望のオートロック付きです」


 担当が柔らかい物腰で歩き出したので、成田たちも中へ入る。

外装のイメージと違い、内装は白を基調とした清潔感の溢れる空間だ。


「はあー」


 ロック解除された出入り口の自動ドアをくぐりながら、年上の結城がため息をつく。

成田はクスッと笑ってみせた。


「まだオートロックは要らないと思ってる、って顔ですね」


「いらないだろ、男のふたり暮らしだぞ」


「何かあってからでは遅いでしょう」


「何があっても大抵のことは対処できるし」


「そういう問題では無いので」


「はあ……」


 このやり取りをするのは何度目だろうか。


元々、オートロックの付いた物件がいいと言い出したのは成田だった。

結城はいらないと言うが、歳の割に華奢でかわいらしい顔つきの恋人に悪い虫が付いてからでは遅いのだ。


成田の意思は固かった。


「どうぞ、302号室です」


 玄関のドアの鍵を開け、担当がスリッパを二足、並べてくれる。


しかし結城は土足のまま玄関に立ち、奥を見つめ驚いた表情をしていた。


「竜介りょうすけさん?」


 先にスリッパへ履き替えた成田は後ろを振り返り彼を呼ぶ。


すると頬を歪めて微笑み、彼がこちらを見た。


「いいな、ここ。玄関からキッチンの中が見えるんだ」


 玄関からキッチンへは、短い廊下とリビングダイニングへ続く一枚のドアがあるだけで、そのドアが最初から開いていた。

このドアを閉めない限り、玄関を入るとそのままキッチンの中が見える間取りだ。


「どうしてキッチンが見えると嬉しいんですか?」


「桜生おうせいくんのアパートと同じで、仕事から帰ってきて直ぐに姿を見つけられるだろ」


「ああ、そういう……」


 言われてなんだか恥ずかしくなった。

心の内でむず痒さを感じながらも、成田はそれを隠して結城へ手を差し出す。


ここに住むんだろうな。


そんな直感が内見をする前だというのに胸に浮かんでいた。


 ひと通りこの2LDKの部屋を見て回り、最後にふたりでベランダへ出る。

三階だけあって割と高い。


 さほど広くもない普通のベランダだが、結城がそよ風を受け短い髪を揺らしながら手すりへ身を預けて遠くの空を見上げた。


「決めようか、ここ」


 穏やかな声に、成田も頷く。


この物件ならばスーパーも近いしコンビニも側にある、会社への通勤も苦にならない距離だし、ふたりで暮らすのに丁度いいと思えた。


「……俺、少し心配してました」


「何を?」


 空から視線を外した結城のきょとんとした瞳が成田を捉える。

その黒い瞳が愛おしい。


「あんなに同棲を渋っていたので。本当はあまり乗り気じゃなかったら、と。だけど今の顔を見たら、なんと言うか……安心しました」


 感情を表情に乗せるのは苦手な成田だが、愛する結城の前でだけは違う。

自然と口角が上がり目尻が下がった。


「なんだよ今更。俺、楽しみで仕方ないんだからな」


「ふ……俺もです」


 竜介さんに触れたい。


そんな衝動を何とか堪え、成田は笑顔を送るに留める。

すぐ側に不動産屋の担当が控えているからだ。


「あの、つかぬことをお伺いしますが、おふたりは、その……カップルでいらっしゃるのでしょうか?」


 控えめな声で、ベランダの引き戸の前で担当が問うてくる。

内心ではドキリとしたが、成田も結城も態度には出さなかった。


 少しの沈黙の後、先に動いたのは結城だ。


「え、ええ、まあ」


 答え方は曖昧だが、成田は素直に驚いた。


人前で結城が成田を恋人だと認めたのは初めてのことだ。

よく見れば若干、視線を下ろす結城の耳が赤い。


照れているのだと知れた。


 嬉しさを噛み締めながらも成田が黙っていると、担当が微笑む。


「やはり、そうでしたか。とてもお似合いです」


 契約をするのに何か言われるのではと危惧したが、年配の担当はただ肯定をしただけだった。

それ以上は何も言わずに、ただにこやかに頷いてくれた。


「それでは、こちらの物件はいかがなさいましょうか。今日のうちにお決めになりますか?」


 ハッとしてふたり目を合わせる。

一度だけ頷き合った。


「はい、決めます」


 はっきりとした声で結城が答える。


 ここから、ふたりの新たな暮らしが始まろうとしていた。




 契約書を持ち帰り、ふたりで家路に着く。

行き先はひとまず成田のアパートだ。


 電車の出入り口付近にふたりで立っていると、ふと壁側から結城の指が成田の手にそっと触れる。


ドキ、と成田の鼓動が反応した。


 いい歳をした男同士だ、付き合い始めて二年と半年ほど経つが外で触れ合うことはこれまであまりしていない。


成田は視線だけで隣の結城の顔を覗き込んだ。


 彼はわざとこちらを見ないようにしながら、しかし身体で隠した壁側の手に力を込めて成田の手へ指を絡める。


ああ、触れたいのか。


家まで我慢できない恋人へ触れたい気持ちを互いに持っていた、そんな些細なことが成田の胸の内をくすぐる。


なんて愛おしい存在だろうか。


そう思えば今度は成田の胸の内が締め付けられるように痛んだ。


だがこれは心地のいい締め付けだ、そんな想いを抱えながら成田もそっと自身の指に力を込めて誰にも内緒で結城の指と絡め合う。


 ああ俺、浮かれてるな。


そんな気持ちが顔に出ていたのか、視線の合った結城に笑われてしまった。




〈28話 おしまい〉





 






 



ここまでお読みいただきありがとうございます。

こちらの続きで、28.5話を掲載しています。

R18ですが、問題ないよという方、

どうそそちらも併せてお楽しみくださいませ〜( ˘͈ ᵕ ˘͈ )



 


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