月とかぐやと私たち
特に何も考えず書きなぐった本作。
息抜きに書いたものなので更新もかなり遅いと思います。
タイトルに深い意味はありません。
連載中の「汐光町の事件簿」の片手間に読んでいただけると嬉しいです。
「すごい! 本当に地球って青いんだね!」
横で座っているセーラー服でふわふわの黒髪ボブの少女、陽葵がガラスに手を付けてはしゃぐ。地球が青いことなんて当然の事なのに。
「ああ! またそんなムスッとした顔してー! そんなんじゃすぐにおばあちゃんみたいな顔になっちゃうよ!」
別に長生きなんてできないし、おばあちゃんになんてならないと思うけど。
「そうなれたらいいわね。ほんとよくこんな狭い場所でもはしゃげるわね。」
「そんな嫌味聞きませーん! 真澄ちゃんって夢ないよねー。本物の地球を宇宙船から見れてるんだよ? すごいことじゃん!」
陽葵の言う通り、この状況は本当にすごいことだろう。だが、今の私はそんなこと正直どうでもよかった。
「…陽葵、あなたは今どんな気分?」
「え? うーん… 清々しいって感じかな?」
変なところで納得してしまう。私も同じ気分だったからだ。
地球を眺める。所々、オレンジと黒が混ざったようなものが点滅しているのが見えた。
地球を離れてそこそこ時間がたったが、陽葵のこの元気さ加減はずっとこの調子だ。
…本当にあんなことがあったとは思えない。
「目的地に到着します。」
そんな無機質なアナウンスが宇宙船に響く。14歳の少女二人で入って窮屈と思えてしまう宇宙船に響くも何もないが。
こじんまりとした操縦席のモニターを見ると、目的地の欄に「月」と書かれていた。
おかしい。最初に設定されていた目的地はもっと遠い、自然が豊かな星だったはずだ。
「…陽葵。あなた、目的地変えたわね?」
陽葵は「ぎくっ」と音が鳴ったかのような顔をして目を逸らす。
「いや~ね? すぐに目的地行っちゃうのももったいないかな~ってね? ほら、酸素供給用ヘルメットもあるから息は大丈夫だよ!」
まくしたてて言う陽葵はわかりやすく慌てていた。この子は本当にそそっかしいというか。
「…しょうがないわね。私も少し退屈していたのよ。」
「ほんと? やったー! 真澄ちゃん大好き!」
そういいながら抱き着いてくる。この子はあんなことがあっても元気だ。
「ほら、そろそろ着地よ。これよね? 酸素供給ヘルメットって。」
操縦席の下に無造作に置かれたヘルメットを取り渡す。
「わー! ほんとにヘルメットだけだ! これかぶるだけで息できるなんてすごいよね~。」
そこに関しては同感だ。宇宙船と言い、ほんとにこれが地球で作られたものとは思えない。現に地球からこの宇宙船に乗ってきているのだから考えても仕方がないが。
それに、今の私たちがそんなことを考えたとて意味はない。
「ねぇ真澄ちゃん! 見てよ下を! 月面だよ月面!」
どうでもいいことを考えていたらいつの間にか月面に着地しきりそうだった。
私もヘルメットをかぶって準備する。セーラー服にヘルメット一個かぶった陽葵の格好はなんだかおかしくて笑ってしまいそうだ。まあ、自分も全く同じ格好をしているけど。
ヘルメットをかぶりはしゃいでいる陽葵を眺めていると宇宙船が大きく揺れた。どうやら着陸したらしい。
それを感じるや否や、陽葵はすぐにボタンを押してドアを開ける。この時点で宇宙船の中の空気が抜けていかないのも謎だが、今の気分も相まってそんなに気にならない。気にしたってしょうがないし。
「月! 月だ! 月だよ真澄ちゃん! 早くおいでよ!」
「はいはい。今行くわ。」
空いているドアをくぐり、月面に足をつける。特に地球の地面と変わった感じはしない。ヘルメットのおかげか、重力も地球と同じなようだ。
「すごーい! 本当になにもないね!」
満面の笑みでそんなことを言う陽葵。その感想が出てくるくらいなら来なくてよかったんじゃなかろうか。
「なんで来たのよ…。」
呆れながら月面を見渡す。ぴょんぴょんと飛び跳ねている少女以外は特に何もない。
音のない月に息遣いと月面を踏みしめる音だけが鳴り響く。
月面なんてテレビや本で見ていた時よりもよっぽど何も感じなかった。
ため息をついていると陽葵がダッシュでこちらにやってくる。なにやら興奮した表情をして鼻を荒く鳴らしていた。
「ねえ真澄ちゃん! あっちに小っちゃい女の子がいたよ!?」
陽葵が訳の分からないことを言う。いやいや、こんなところに小さい女の子なんているわけないだろ。
そんなことを悠長に考える暇もなく、陽葵は私の手を取り引っ張る。
結構強めに手を握られて少し痛い。
「ほら! あそこ!」
陽葵が指をさす。その方向を見ると確かに小さい子供がいた。6歳くらいだろうか? 白いワンピースに身を包んでる。髪の毛はやや癖のある、真っ白のロングだ。酸素を供給する装置みたいなのも見当たらず、本当にワンピースしか身にまとっていないようだ。
「うそでしょ…?」
まさか宇宙人だろうか? 宇宙人が現れた程度の事じゃ今更驚かないと思っていた。もっと宇宙人っぽいやつかと思ったら、目の前の宇宙人(?)は人間の少女の姿をしている。確かに雰囲気は人間離れしているけども。
でも月に人間なんているわけないし…。
そんなことを考えている私をよそに、陽葵はその少女に近づいていく。私もそれに合わせて駆け寄る。
「ねえねえ。君は誰? もしかして宇宙人さん?」
少女はゆっくりとこちらを向き、無表情のまま答える。
「…にんげん…デスか?」
片言だが、日本語を話す少女。それが余計に現実味をなくしていた。
「そうよ。私たちは人間。あなたは宇宙人?」
少女は考え込む。対照的、陽葵は目を輝かせてる。
「…わからナイ。」
自分でもわからないのか。まあこんなところに一人でいる時点でわからないか。
「…じゃあ、かぐや姫?」
陽葵は突拍子もなくそんなことを聞く。竹から出てきたわけでもないのにかぐや姫なんて。内心、否定していたが少女の回答は私の予想を裏切った。
「! タブンそれ! 私、かぐや! そのナマエ、しってル!」
少女は目を輝かせて何度も大きくうなずく。そんなバカな。
「じゃあ、かぐやちゃんだね! 私は、陽葵! よろしくね!」
「私は真澄よ。よろしくね。」
「二人とモ、ヨロシク!」
これが、私と陽葵が逃避行した先で遭遇した宝物との出会いだった。
読んでいただきありがとうございます。
こちらはかなりの短編になる予定です。
更新はする予定ですが、いつする予定になるかは特にないです。
気長にお待ちください




