何か部活に属して普通を感じたい!
そうこうして、プリンスとの話は終わった。
そして翌日――。
女は考えた。
部活動。
部活動とは何か。
仲間と力を合わせ、汗を流し、友情を育み、
そして気づけば恋愛が芽生える――恐ろしい制度。
だが逆に言えば。
(部活に入れれば、忙しくなって、
私に付きまとう暇がなくなるのでは?)
よし。
あやつを、どこかの部活に放り込もう。
「〇〇駅〜!」
車内アナウンスと同時に立ち上がる。
「うっす!」
気合だけは十分だ。
駅を降り、学校へ向かう坂道を登る。
校門前では、部活勧誘の嵐。
「新入生歓迎!」
「体験入部どうですか!」
「青春しよう!」
(圧が強い)
ふと立ち止まり、考える。
「……にゃーこは、何が得意で何が不得意なんだ?」
沈黙。
(……まあ、いっか)
考えるのをやめ、
視界に入ったチラシを全部取る。
両腕いっぱいに抱え、教室へ。
「よ!花子!」
赤パンが声をかけてきた。
(おい、昨日は花子ちゃんだったろ)
「おはよ、赤パン」
「で? なんだそれ」
「部活のチラシ」
「へー、何か入るのか?
俺はもうバレー部に入ったぞ!」
(そこはバスケ部だろうが!?)
「……なんだよ?」
「なんでもない」
「やりたいのなかったら、
バレー部のマネージャーやれよ!」
真正面から目を見て言ってくる。
「やらねーよ!」
即答。
そうしていると、横から声。
「おい、なんだよ」
「俺のところ、取らないでくれる?」
「……にゃーこ」
星影が、赤パンを睨んでいた。
「おはよ、なこ」
「……おはよ」
(てか、お前の所有物でもない)
「いいだろ、クラスメイトなんだから仲良く」
「ダメだ。離れろ」
ごちゃごちゃ言い合い始める二人。
「おめーら!仲良くしろ!!」
私の一喝で終了。
席に着き、星影にチラシを見せる。
「何?」
「部活の勧誘。何やりたい?」
「なこのそばにいたい」
(……落ち着け、私。
まだ始まったばかりだ)
「よし!分かった!」
勢いよく言う。
「じゃあ放課後、付き合って!」
「……え、いいけど」
⸻
放課後
「よし!部活見学じゃ!」
運動部、文化部、次から次へと回る。
「次は――」
そのとき。
手を、掴まれた。
「ねえ」
「何?」
「俺、邪魔なの?」
「うん……」
――カァ、カァ。
カラスが鳴いた。
(やべ、本音が)
空気が凍る。
すると背後から、低い声。
「君たち」
振り返ると、
いかにもザ・生徒会長という男が立っていた。
眼鏡、ワックスで固めた髪、がっしり体型。
「……誰?」
「私はこの学校の生徒会長、
石垣 學だ」
「生徒会長さんが、何か?」
「部活を探しているようだね。
生徒会に入る気はないか?」
「は?」
「今は広報だけ募集している。
ゆるい部活だよ。来ても来なくてもいい」
(幽霊部員可……?)
(にゃーこが入るのはいい。
だが、私まで入る必要は――)
「はい、俺たち入ります」
「へ?」
「生徒会、広報担当やります」
「何言って――」
「よかったね、なこ。部活決まったよ」
「じゃあ来て。書類がある」
「はい」
流れるように連行された。
⸻
生徒会室。
地味めな男女が数人。
だが花子は、あることに感動していた。
(……女がいる……)
「どうしたんですか?」
「どうしたの? なこ?」
「アンビリーバボー……」
静かに感激。
星影の後に書類を書く。
(……これで、よかったのだろうか?)
ふと壁のポスターが目に入る。
『君の未来を、私が築く
素晴らしい未来を目指します』
――その瞬間。
目の色が変わった。
ペンを走らせながら、宣言する。
「私、今後生徒会長になって、
この学校を変えてみせます!」
一同、ざわつく。
(女性もガッポガッポ入れて……)
(私の自治生活、スタートじゃ!!)
「……何かあったの?」
生徒会長が困惑気味に聞く。
「たくさん起きすぎて、
何かは絞れません」
花子は未来を思い描く。
「私は皆さんに言いたい」
立ち上がり、高らかに。
「推しは、いる時に推せ!
私はここに――
推し活部を作ります!!」
拍手。
支持。
混乱。
こうして花子は、
恋愛拒否人間のまま、
なぜか生徒会という戦場へ足を踏み入れた。




