Hold the Heathen Hammer High
「お……おのれ……我が……呪いを……受けるが……」
意識を失なう直前の記憶は……地下道で倒したゴブリンの呪術師の声だった。
その時に見た光景が……そして、奴の断末魔の声が、夢の中で再生されていた。
「お目覚めになりましたか、勇者様?」
おい。
異世界転生なんて、ありがちな事になったと思ったら、何だ、このありがちな台詞……。
そう思いながら……目を開く……ん?
暗い。
そして……段々と闇に目が慣れ……。
闇の中でも、その人の姿を視認出来たのは……白かったからだろう。
白い衣装。
銀色に近いブロンドの髪。
白い肌。
って……。
何で、ここまで、ありがちなんだよッ⁉
なろう系のファンタジーものにありがちな「聖女」そのものの格好の女の子が居た。
ご丁寧に……衣装の外観も、某有名ラノベの「聖女」ポジョンのキャラにそっくりだ。目隠しをしてない以外は。
「我々をお助け下さい。勇者様が、この地下道で戦っている隙に、地上の町はゴブリン達の大軍に占領されてしまいました」
「えっ?」
おい、何か、急にありがちじゃない展開になってきたぞ。
「ですが……幸いにも勇者様は真の勇者への覚醒の第一段階に至られています」
「どういう事?」
「額に『真の勇者』の印の一部が受かんでいます」
だから、何がどうなってんだ?
そう思って……サブウェポンの短剣を抜いて……鏡代りに自分の顔をう……う……う……写……。
額に受かんでいたのは……白く輝いている……えっと……うん、とっても単純な図形。
単純だ。子供でも描けそうだ。
ただ、重大な問題が有る。
おいおいおい、もし、この世界がラノベか何かで、僕が、その主人公なら……どんだけ日本国内で流行っても、絶対に海外展開は無理だ。
アメリカや中国だったら、かろうじてOKかも知れないが……ヨーロッパは無理だ。
特に、ドイツ人に、額にこんな紋章が受かんでる奴が主人公のラノベが存在してるなんてバレたら大炎上だ。世界が炎で焼き尽くされるレベルの大炎上だ、確実に……。
ボクの額に受かんでいた紋章は……まぁ、そう云う代物だった。
「そして、覚醒が次の段階に進むと、紋章はこうなります」
聖女らしき女は、そう説明しながら……持っていた魔法の杖らしいアイテムで床に……おい……待て……更にヤバくなってるじゃねえか、これッ⁉
床に描かれたのは……六芒星とハーケンクロイツの組合せだった。