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5 盗撮犯とストーカーと警察官

 今朝は早めに大学に来たが、まだ本郷君の姿は見掛けてない。噴水の前のベンチに腰掛けて待つ事にした。

 ここは、講義室に向かう為に必ず通る場所だ。カメラをセットして待つ事にした。彼が来たらスマホを鏡代わりにしている風を装い、愛しい姿をゲットするのだ。

 意気込みは凄いのだが、いざその時になると肝心なところで、いつも失敗してしまう。慎重に挑まなければならない。

 正面入り口の門をずっと見詰めていると、


(来たっ!)


彼が、やって来た。大きな生成りのリュックを背負っている。

 カメラの起動を確認してズームにする。ドキドキが止まらない。どのあたりでシャッターを切ればいいのか?などと迷っている暇はなかった。他の学生をよけなかがらシャッターチャンスを狙う。


(今だっ!)


彼の顔が、アップになった。その瞬間、シャッターを切った。

 はずだった。しかし何が起きたのか一瞬わからなかった。画面がボヤけて何が写っているのか確認できない。

 スマホから目をそらすと早乙女さんの顔が目の前にあった。


「わっ!」


私はビックリしてベンチから転げ落ちそうになった。 盗撮犯の事件が発覚した時はこんな気分なのか?

心臓が破裂しそうになった。今も激しく鼓動している。


「おはよう!今朝もカワイイね!待っててくれたの。うれしい!さあ行こう講義室。」

彼女は、そう言って腕に抱きつくと私を逮捕、連行した。


(待ってー!写真一!撮らせてー!)


虚しく心の中で叫んだ。



 

 今朝、バス停で早乙女さんの姿を見かけた。

そこから付かず離れず尾行の様に後を追った。と言っても行き先は大学と決まっているけど。

 早足で近づき挨拶でもして声を掛ければいいのだが、その勇気が、やっぱりでない。昨夜の意気込みは、どこに行ったのか。自分が自分で情けなくなる。 物思いをしている間に彼女は遥か向こうを歩いている。モデルの様に清々(すがすが)しい歩きっぷりだ。通行人の中には、振り向いて彼女を見ている者もいる。改めて彼女の美しさとカワイさを認識した。

 そして競争率の高さを実感せずには、いられなかった。もうすでに誰か付き合っている人がいるのでは? そんな、あってもおかしくない疑念が浮かんで胸が苦しくなった。

 大学の正門を抜けると彼女は急に足早になった。噴水前のベンチに座る根元さんを見つけて駆け寄った。 何だか凄く嬉しそうだ。彼女の事が本当に、お気に入りなんだな。羨ましいかぎりだ。


 講義室に着いた。昨日は偶然前の席だったが、さすがに今朝は意識してしまい、近くには座れない。適当な席を探していると


「本郷!本郷、こっち、こっち!」


突然、誰かに名前を呼ばれた。

その方向を向くと、彼女だ!早乙女好子。


(何故!?僕の名を呼んでるんだ?)


「こっちだよ。早く!」


こぼれる様な笑顔で手招きしている。訳が、わからず、ドキドキしながら、そこまで行くと、


「お、は、よう!君、お一人様なんでしょ?

ここに座りなさい。」


(ええっ!?まっマジでぇ!)


 色々悩んだ事がバカみたいだ。向こうから、やって来た。

 女神降臨!彼女の天真爛漫さが僕を天国へと、いざなった。

 僕。早乙女好子。根元菜美子。並んで講議を受けた。


でも、僕は何も頭に入らなかった。


ただボーっとして、


彼女の横顔を横目でチラ見する事しか出来なかった。




 今朝は珍しく早起きした。ソワソワして寝坊なんかしてられない。

 身支度を整えると早めに家を出た。バスを降りてから、ドンドン早足になって行く。気持ちが先走る。早く会いたい。菜美子ちゃんに会いたい。

 正門に入るとベンチに座る彼女の姿が直ぐに目に入ってきた。スマホを覗いて前髪を直している。

 学生の間をすり抜け、駆け足で近づき顔を寄せた。スマホに夢中になっていたのか、目が合うと彼女はビックリしていた。


「ドッキリ成功!」


 逃がさないように左腕を完全にホールドすると講義室に向かった。早めに来たので数人しかまだいない。真ん中あたりに座る事にした。

 菜美子ちゃんに話したい事、聞きたい事がいっぱいあった。彼女の事、何にも知らないから。でも好きなんだ。だから、色々知りたい。

 矢継ぎ早に質問責めしていると、奴の姿が目に入った。本郷尚樹ちゃん。

 「カワイイ!」

私には女の子にしか見えない。あの子なら、大丈夫かも、その直感があった。

席を決めかねている様だ。


(こんなに空いてるのに

  悩む必要があるんかーい!)


ツッコんでやりたくなる。私のお節介グセが、頭をもたげた。手招きして呼んでやる。


「本郷、本郷!こっち、こっち!

こっちだよ。早く!」


大きな瞳でビックリしている。やっぱ、カワイイ!

あれ!何か頬っぺ赤くなったぞ。チークみたいで、またまたカワイイ!


「君、お一人様なんでしょ?ここに座りなさい!」


マウント取ってやった。


こう言う事は早めに決めておかないと...。


美少女と美少年を両脇に、はべらせてやった。


美の饗宴だ。



          続く

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