3 早乙女好子。コスプレやってまーす!
今日は、私にとっての晴れ舞台だ。アニフェスでコスプレを披露する。
運営が用意してくれた簡易フィッティングルームで着替えをした。
手先が器用なのでコスチュームは手作りしている。イラストを描くのも得意だ。自分でデザインするのも楽しい。衣装が完成した時の喜びは格別だ。
鏡に映る下着姿の自分を見つめて、いつものルーティン。手を合わせて額に寄せる。
「変われる。変われる。私は、変われる。
もうあの日の私じゃない。ヘンシーン!」
ふざけている訳ではない。本人は至って真剣だ。
亡くした時間を取り戻す。
その為の「おまじない」
私は変わりたいのだ。
過去の自分と、おさらばしたいのだ。
ピンクのウィッグを被りツインテールに結ぶ。衣装は水着のビキニに色々な装具が付いている。
イメージは異世界の女戦士だ。腰のベルトには、大きな剣を腰に下げる為のフックが付いている。
鏡で全身を確認する。完璧だ。
"ザッ!"とカーテンを勢いよく開ける。心地よい緊張感が全身を包む。
肩に透け感のあるブルーのロングマント。
腰に黄金の剣を刺す。
「さあ!出陣だ!」
非常用の照明がスポットライトの用に私の晴れ舞台を照らした。
私は、ゆっくり歩きだした。
"カッカッカッ!"
ロングブーツのヒールの音がスタッフ用通路に響いた。
続く