26 あれから三年の3人
[根本 菜美子・ナミの場合]
ヨッシーが美大を辞めてから 三年が過ぎた。今日は彼女の女子プロレス引退試合だ。花束を持って控え室を訪ねた。
ヨッシーは、もうコスチュームに着替えていた。
「ヨッシー引退おめでとう!」
花束を渡した。
「ありがとう。
うん?おめでとうってなんだよ。
まだ、辞めたくなかったよ。エーン!」
ヨッシーが泣き真似をしている。
「全然、可愛くないよ。
それにしても三年は、早過ぎるでしょ!」
「しょうがないよ。首やっちゃったからね。
生きてるのが不思議なくらいだよ。
あんな高さから落としちゃいかんでしょ!
プロレスって言ってもショーなんだから
綺麗に技を決めてなんぼでしょ。
あんな惨劇お客に見せちゃいかんよ!」
「ヨッシーが、受け身が
下手くそだっただけじゃないの?」
「アンタは、かわいい顔して
相変わらず手厳しいねぇ。
しかし、それが引混するモンに対する
花向けの言葉かねぇ」
「ハイハイ!お疲れ様でした。
ところで尚君は?」
「ああ、少し遅れるって
私の試合には間に合いそうだけど…
…ってそれ、アンタが連絡するところだろ!
アンタ、もうちょと尚の事、見てやんなよ。
忙しいのはわかるけど…
今は、もう、尚も、アンタにゾッコンなんだろ!」
「そこまでか、どうかは、わからないけど…
でもねぇ。
私もやっと漫画家デビュ一できたんだから…
今が大事な時なんだよ。
大学も後一年あるしね…
仕事量が増えたら
アシスタントも雇わなきゃいけないし
何かと物入りもあるのよ。
その分頑張ってるところだから…」
「でもさ、私は、あれっきりだったけど
アンタ達は、あれから何回も、やったんだろ?
よっぽど愛称が良かったんだね。
その件に、関しちゃ、私は蚊帳の外だもんね」
「別に仲間外れにした訳じゃないよ。
誘ってもヨッシーが乗って来ないから…
結局、ラブホ行ったり二人で会う機会が
増えたんだよ」
「ナミ。
私はアンタの事が好きなんだよ。
あの時は処女喪失って言う目的があっただろ…
そうさじゃなかったらあんな事しなかったよ。
二度としない!絶対だよ!」
「そうだったね。
でも尚君は…
元々ヨッシーの事が好きだったじゃない。
ヨッシーがいて私がいたんだよ。
ヨッシーの存在が無かったら
尚君は私とは、その気にならなかったよ。」
「ナミ……そんな事ないと思うよ。
たまたま先に私をコミケで見つけただけだよ。
もしアンタの方が先に出会ってたら
アンタの方に行ってたかもしれないよ。
尚がアンタを見る時のあの優しい瞳。
あれは妬けたよ正直…
コイツ…
本当に私の事好きなのかねっ…て思ったもん」
「ほんとぉー?うそだぁー?
友達として見てただけでしょ。
そう言う優しさは根強いものがあるんだよ。
あの男は!」
「男って、言っちゃた?」
「やっぱりね。私の中では、男だよ。
男そのもの。男丸出しだよ」
「そうなんだ。私の中では、やっぱり女の娘だよ。
私は上部しかみてないのかね」
「違うよ!
セックスしてる時は、やっぱりオスなんだよ。
イッた途端、メスに戻るからね。
あの豹変ぶりはヤバイものがあるよ。」
「でも友達として、ナミを見てただけで
その豹変ぶりは、ないでしょう。
好きだからこそじゃないの。
好きは、好きなんだから…
好きと大好きと愛してる。
その狭間が曖味で難しいね。
友達か恋人か…男か女か…
どこで、どう区別したらいいんだろうね。
私みたいに同性が好きになった者もいるしね。
元々恋愛した事なかったからね。
たまたま初めて好きになった人が
ナミだったんだよ。
それが、たまたま女の子だっただけ
もし、尚と先に、出会ってたら
尚の事好きに、なってたかも知れないよ…」
「ヨッシーの恋愛観…私が、変えちゃたのかな?
恋愛対照?」
「それは無いよ。好きになったのは
私だから…私の一方的な思い込みだから…
それにしても、大好きと愛してる。
どう違うのかな。
本人も曖昧過ぎてわからない時があるはずだよ。
心とか感情とか……
自分でもコントロール出来ない事の方が多いだろ。
だったら身をまかせたらいいのかもね。
心と身体のアンバランスに…
逆に身を任せてみるのもいいかもね。
それが本当の答えかも知れない…」
「そっかあ、そうかもね!」
「おっと、そろそろ時間だ。」
「頑張ってね。応援してるから…
尚君も、そろそろ来てるだろうし、じゃ行くね!」
「おーう!」
そう言ってヨッシーは、拳を天に向かって高々と上げた。
勇者の雄叫びだ。
続く




