17 尚君がぁ!尚君がぁ‼︎ ナミ乱心!
*未成年が飲酒をする場面がありますが、飲酒を助長する意図はございません。法律法令に違反する行為を容認、推奨するものではありません。
[ ヨッシーの場合]
「何だろねえ。アイツら。無理矢理入ってきて...。
狭いエレベーターだよ。
それにナミの方に行くなんてねえ。見る目が無いねぇ。
何でアタシの方にこねーんだよ!こっちにきたらぶっ飛ばしてやったのに!」
「何よ、それー!ひどーい!私が一番可愛いから私の方に来たんでしょ!」
「良く言うよー!ビビって泣きそうになってたくせにー!」
私は、もう酔っ払っていた。ナミも今日は気分上々だ。この間より気持ちが高揚している。尚は、それをニヤニヤしながら、眺めている。
「何だ?尚!ニヤニヤして気持ちワリーなぁ!」
尚は、グラスに残ったジンジャエールを飲み干すと
しみじみとした口調で言った。
「本当、二人は仲いいなぁって思ったんだよ。」
「何だ妬いてるのか?寂しいのか?しょうがねぇなあ。よしっ!」
そう言うと背後から尚の腕を掴むとナミに抱き付いてやった。私は酔いが回っていたのでバランスを崩してしまい全体重を掛けてしまった。
ナミ、尚、私の順番で重なった。ナミは一番下でジタバタしている。
「イヤー!重いよー!」
「ごっ、ごめん!ヨッシー!ナミちゃんが潰れるよ!」
「君!失敬なヤツだな!私、そんなに太ってないよ。ホレホレッ!」
そう言いながら、腰を振ってやった。三人一緒に揺れた。時期にナミが真っ赤な顔をして苦しそうにし始めたので解放してやった。ナミはコホコホ咳をしている。
「ごめん。ごめん。」
両手を合わせ謝った。
「悪ふざけしすぎだよ。」
尚は、そう言いながらナミの背中をさすって上げている。いつのまにか普通に二人が接している。
私も、そうだがナミも男性アレルギーは相当なものだ。それが何の躊躇もなく受け入れている。
ごく自然に。
この二人の空気感は良く似通っている。姉妹と言っても通用するかも知れない。私は、ふと思いついた。
「尚!ナミにお化粧してあげて、いつも尚が自分にしてるみたいな感じでいいから」
「ええ!?今から?面倒くさいよ〜!」
「ソーダヨォ!何で、今それ、いるぅ?」
「いいから、いいから、ブータレないの!
お風呂、お湯入れてるからいつでも入っていいから。その時、落とせばいいだろ。」
二人とも不満顔で化粧を始めた。乙女座りで向かい合っている。
ナミは眼を閉じて尚のメイクに身を任せている。尚は手際よく仕上げていく。ファンデーションを塗る優しい指触りがマッサージの様で気持ちイイらしい。
ナミはウットリしている。アイメイクが終わり、最後に薄紅のリップが塗られた。途端に華やかになった。
私は尚の背後からナミの顔を覗き込んだ。
幼顔が綺麗な大人の女性に変身していた。
尚がナミの方に鏡を向けた。それを見たナミは、想像以上の驚きの表情をして見せた。
「私じゃないみたい。誰か他の人みたい。」
私はナミの肩に手を添え語りかけた。
「私の思った通りだね。間違いない。ほら良く見なよ。」
私は鏡を尚の横に並べて持ち、ナミの顔を映した。二人の顔が並んだ。その直後ナミが驚きの声を上げだ。
「あっ、尚君が二人いるっ!」
「そんな訳ないだろ!アンタだよ。君達そっくりなんだよ。前から雰囲気は似てるって思ってたんだ。でもメイクしたら瓜二つだよ。
こっちの方がビックリしたよ。」
二人は洗面所の大きな鏡の方に移動した。瞳を閉じたり開いたり頬っぺを膨らましたり、さすったり表情を変えて、無邪気にふざけている。
本当に姉妹がじゃれてるみたいだ。眺めている側のこちらは、なんとも不思議な感覚になった。
ちょっと飲み過ぎたかなと、酔い覚ましに尚の飲み掛けのジンジャーエールを飲んでスカッとしようとしたが一口飲んで
「ハッ!」となった。
これっ!ジンジャエールじゃないよ!スパークリングワインだよ!
ナミのグラスも確認した。やられた。
度数低めと言っても未経験の筈のワインだ。どんな弊害が起きるかわからない。そもそも未成年だ。法律違反なのだ!
「こらーっ!アンタらーっ!何してくれてんのーっ!」
わざとか、間違えたのか、わからんが…。
私とした事が、うかつだった。監督不行届けだ!
好奇心旺盛の未成年の目の前で飲酒して興味を惹いた 私の全責任だ。
しかし遅かった。
二人が衣服を脱いで、キャハキャハ笑っている。
全裸になって何も隠さずフラフラしながら、ドアを開け浴室に入って行った。
「えっえーっ!どう言う事一!そんなに酔ってたのかーっ!」
気が動転した。
(どうしよう?私らしくない。落ち着け!止めなきゃ...
えっ! 何を? お風呂に入ってるだけだよ!
…って、しっかりしろ!尚は男だっ!)
「駄目だ。ダメーッ!まだ、だめーっ!」
とにか引っ張りだそう。浴室に駆け寄ると、中から叫び声が聞こえてきた。
「きゃーあ!」
「ほらぁ。そう言う事だる。処女の少女が軽はずみなんだから。」
ナミが両手で胸を覆い、泣きながら飛び出して来た。
「ナイスキャッチ!」
私はバスタオルを広げて待っていた。ナミはタオルに、くるまれると床に座り込んで泣きじゃくった。
「尚君がぁ.…尚君がぁ〜っ!」
「ガァガァ、うるさいよ。アンタはガチョウかっ!」
「全然おもしろくないよ〜!エーン!」
「うるさいよ! …でもねぇ。アンタから誘ってたよ。「お風呂で、お化粧、落として~。」とかさあ、甘えた声出して。
尚の方がかわいそうだよ。犯罪者扱いじゃないか。
尚!大丈夫か?」
ドアの隙間からバスタオルを渡した。尚がタオルを胸まで巻いて出てきた。顔が火照って頬っぺがピンクに輝いているが急速に酔いが冷めた様だ。思わず苦笑いをした。
そしてナミに微笑みながら優しく言った。
「ナミちゃん!今見た事は私の記憶から全て抹消するから心配しないで...。」
しかし、ナミの返事は意外なものだった。
「やだぁ!忘れたらヤダァ!
一分一秒でも記憶から消し去ったら許さない!
この時間は他のどんな時間とも掛け替えのないものなんだよ。
だから絶対に忘れないで一っ!」
そう言い終わると、コトンと眠りについてしまった。
「何だったんだろうね。動画撮っとけば良かったね。それ見たら卒倒するよ、この娘。ハハハッ!」
尚に冷えた水を渡した。尚は一息で飲み干した。
「尚!」
彼の眼を真剣な眼で見つめた。
「ナミの事、頼むよ。」
尚はニッコリと笑顔でうなずいた。
続く