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3.黒竜消えし後

意識を失ったリヒティアを救ったのはバーンと共に戦っていた少女だった。しかし……

 黒い竜が消え去った直後、リヒティアは意識を失い倒れ込んでしまう。トワイライトは焦ってリヒティアのもとへ駆け寄った。

「リヒティア!大丈夫?」

 トワイライトの呼びかけに、リヒティアはピクリともしなかった。

「黒い竜の毒気に当てられたようです、下がって!」

 バーンと共に戦っていた少女が星の飾りのついた杖をリヒティアの額にかざすとリヒティアの顔色が徐々に回復していった。そしてリヒティアが ゆっくりと目を開ける。

「トワイライト様…、ご心配をおかけしました…」

 意識を取り戻したリヒティアを見てトワイライトは安堵した。

「助かったよ。君は?」

 バーンが少女に問いかけると、少女は答えた。

「私は、この森を守るエルフィナ・シルヴァ。この世界の人間と召喚された妖精の間に生まれたハーフエルフです。こちらこそ助かりました。ところで不思議な能力ちからをお持ちのようですね?」

 この質問にリヒティアが警戒する素振りを見せた。

「……ハーフエルフを見るのは初めてですか?」

 エルフィナが穏やかに問いかけるとリヒティアが答えた。

「私は転移者なのでね。元の世界には居なかったし、こちらの世界に来てからも見ていない!」

 リヒティアの言葉に、エルフィナも少しだけ納得したように見えた。尚も警戒を解かないリヒティアにトワイライトが声を掛けた。

「リヒティア、命の恩人ですよ!」

「しかし……」

 リヒティアとしては敵か味方か判別出来ないうちはトワイライトを護る騎士団長として隙を見せる訳にはいかなかった。

「そうなんですね。私は、この世界で生まれたハーフエルフです。隠者のような生活を送っているので見たことがないのは、その所為でしょう。」

「不思議な能力ちからってのは、さっきの黒い竜を消した時の力のことか?あれは…。」

 バーンは言葉を詰まらせた。

「正直、自分でもよく分かんねぇんだ。ただ、転移者を元の世界に送り返してるらしい。」

「それはとても素晴らしい力ですね。もしかしたら、バーンさんは、この世界を救うために選ばれた人なのかもしれません。」

 エルフィナの言葉に、バーンは戸惑いを隠せない。

「そんな…。」

「私はそう思います。バーンさんは、きっとこれから大きな役割を担うことになるでしょう。私にもできることがあれば、力になりたいです。」

 エルフィナの言葉に、バーンは複雑な表情を浮かべた。彼は、突然現れたこの少女の言葉に困惑していた。エルフィナは、バーンの持つ力の秘密に興味を持っていた。そして、この世界に何か大きなことが起こる予感を感じていた。

「エルフィナ、これからどうするつもりだ?」バーンが尋ねる。

 エルフィナは、自分の心の奥底を見つめるようにして、ゆっくりと口を開いた。

「まだ分かりません。でも、このまま何もせずにいるわけにはいかない気がします。」

「そっか。」

 バーンは頷いた。

「なら、一緒にこの世界を守らないか?」

 バーンの言葉にエルフィナは、リヒティアとトワイライト、そしてバーンを見つめ、力強く頷いた。

「そうですね。私も転移者を片親にもつ身として現状は放っておけない気がします。私の力が少しでもお役に立てるのでしたらお連れください。」

「あらためて宜しく、エルフィナ!」

 バーンが手を差し出すとエルフィナが握り返しトワイライトが手を添えた。バーンとトワイライトの様子を見ていたリヒティアも渋々手を重ねた。

「エルフィナ……私はまだ、貴女を完全に信用したわけではないからな。」

「リヒティア!」

 トワイライトがリヒティアを嗜めようとしたが、エルフィナがそれを止めた。

「リヒティアさんがトワイライト様とお呼びしていた……という事は、エヴァンス王家の第三王女トワイライト・エヴァンス様ですよね?とするならばリヒティアさんはトワイライト様に仕える身。見知らぬ私に警戒心を抱かれるのも無理の無い事です。…が、バーンさんは、トワイライト様をトワとお呼びでしたね?」

「ああ。俺とトワは幼馴染だからな。」

 バーンの答えにエルフィナは小さく頷いた。

「なるほど。気の置けない御関係と云うことですね。御三人の関係性はわかりました。それで、これからどうなさるのですか?まさか、この人数でお城に攻め込まれるおつもりではありますまい?」

 召喚師たちが召喚した転移者の数がどの程度なのか把握が出来ていない事と、クーデターを起こすだけの戦力となると転移者以外にも加担している者が一定数は居るであろう事を考えると、確かに心許ない。

「トワ、ルナの所に行ってみないか?」

 バーンの突然の提案にトワイライトとリヒティアは顔を見合わせた。ルナとは、ここからそう遠くはない出城に居るトワイライトの従姉妹にあたるルナスタシアの事だ。城主を務めていたエヴァンス王の弟が病死してからは代わって城主を務めている筈だった。

「そう……」

「そうですね。転移者……反乱軍と事を構えるのであれば拠点は欲しい処ですね」

 バーンに答えようとした処を食い気味にエルフィナに割って入られて不服そうなトワイライトだった。

バーンの提案に一同は出城の主ルナスタシアの元を訪れる事にしたのだった。

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