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2.新たな絆

疲労困憊のトワイライト、警戒を怠らないリヒティア、そして彼らの身を案じるバーン。それぞれの想いが交錯する中、突如として現れた黒い竜。

 3人は一旦、バーンの小屋へと身を寄せた。トワイライトたちが居ると転移者たちに知られている以上、長居は無用。とはいえ、慣れぬ逃避行にトワイライトに疲労の色が見えるのも事実だった。転移者たちも自分たちをBAN出来るバーンが居るとなれば迂闊には手を出して来ないだろう。

「今夜は俺が見張ってるから、飯喰ったら、ちゃんと休息を取るんだぞ?」

 そう言ってバーンは外へ出ていった。よほど疲れていたのかトワイライトは食事もそこそこに寝入ってしまった。逆にリヒティアはバーンが見張っているとはいえ、敵がいつ襲ってくるかもしれない状況では寝付けなかった。

「アダムス殿、隣……宜しいか?」

 やってきたリヒティアの言葉に、バーンは少し戸惑った。だが、彼女の不安そうな表情を見て、静かに頷く。二人は焚き火のそばに並んで座ると話し始めた。

「…アダムス殿は、この世界に来る前に、何をされていましたか?」

 リヒティアが、静けさを破って問いかける。

「そのアダムス殿ってのは、やめてもらえないかな?バーンでいい。それに敬語とか禁止な?」

「しかしトワイライト様のお知り合いとなれば……いや、話し難いか。ではバーン、聞かせてもらえないか?」

 バーンは遠い目をして、ゆっくりと話し始めた。

「……俺か。平凡なサラリーマンさ。毎日同じことの繰り返しで、特にやりたいこともなかった。でも、この世界に生まれ変わって、初めて生きるってことがこんなに面白いものだって気づいたんだ」

 リヒティアは、バーンの話をじっと聞いていた。彼の言葉には、どこか寂しげなものが感じられた。

「気づいていると思うが……国王陛下にもトワイライト様にも秘密にしているが、わたしは転移者だ。私も、バーンと似たような毎日を送ってた。でも、この世界で、トワイライト様たちと出会えて、本当に良かったと思っている。それで……やはり、わたしもBANされるのか?もしBANされるのであれば、わたしに代わってトワイライト様を守って……」

「待った待った!」

 バーンは慌ててリヒティアの言葉を遮った。

「リヒティアをBANなんてしたらトワに何、言われるか、わかったもんじゃない。さっき見ていてトワがリヒティアを信頼してるのも、リヒティアがトワを大切に思ってるのも伝わってきたからさ。」

 バーンの言葉にリヒティアは少し不思議そうな顔をしていた。

「てっきりバーンは転移者をBANするのが使命なのかと……」

「あぁ〜違う違う!」

 またもバーンは慌ててリヒティアの言葉を遮った。

「俺は偶々、この能力ちからを持って転生しただけで使命とか七面倒臭いもんは無いよ。ただ、前世の記憶が有っても今の俺が生まれ育ったのは、この世界だからな。余所者に滅茶苦茶にされるのは面白くない。だからリヒティアみたいに、いい人までBANするつもりは無いよ。もし、リヒティアが帰りたいってなら別……」

「いや、いい!帰りたくない!帰らない!返さないで!」

 突然、ものすごい勢いで元の世界に帰る事を否定する姿は何か事情があるのだろうなと思えた。が、バーンは詮索するでもなく頷いた。二人の間には、静かな時間が流れた。リヒティアは、バーンの優しさに触れ、安堵の表情を浮かべていた。

「バーン……ありがとう」

 リヒティアの言葉に、バーンは少し照れながら答えた。

「礼を言われるような事はしてないぜ?とりあえずリヒティアは、これからどうしたい?」

 バーンの問いかけに、リヒティアは複雑な表情を見せた。

「……それは……ただ、この世界で生きていきたい。トワイライト様やバーンと一緒に」

 リヒティアの言葉に、バーンは深く頷いた。

「わかった。でも、何かあったら頼ってくれよな」

「うん。ありがとう、バーン」

 二人の会話が途切れた後も、焚き火の明かりが二人の影を揺らしていた。


 翌朝

 朝日が差し込む中、リヒティアは目を覚ました。隣には、穏やかな表情で眠るトワイライトの姿があった。

「おはようございます」

 リヒティアの声に、トワイライトはゆっくりと目を覚ました。

「おはよう、リヒティア」

 トワイライトは少し考えてから口を開いた。

「昨夜はバーンと何を話していたの?」

「えっ!?あ、それは……その……」

 特に聞かれて困るような事は無かったのだが本当の事を言っても嘘を言っても勘繰られそうな気しか、しなかった。その時である、外で大きな物音がしたのは。

「バーンっ!?」

 トワイライトとリヒティアは、ほぼ同時に叫んで小屋の外へ飛び出した。

「リヒティアっ!トワを頼む!」

 そこでは見慣れぬ黒い竜とバーン、それに見知らぬ少女が戦っていた。

「バーン、この竜はいったい……」

「話は後だっ!」

 トワイライトの質問にバーンが叫んだ。冷静に考えれば会話どころではない。

「トワイライト様、ここに居てくださいっ!」

 言うが早いかリヒティアは駆け出すと竜に一撃を加え意識を逸らした。

「いまだ、バーンっ!」

 リヒティアの叫びに呼応するようにバーンの白銀の銃から光の弾が放たれ黒い竜は姿を消していった。

黒い竜の出現に、3人の安息の時間は終わりを告げる。黒い竜は何処から現れたのか?バーンと共に戦っていた少女は何者なのか?

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