第8話-聖杯と守護するもの-
〈人物紹介〉
・アリオン(Arion)
肌に淡く光る紋様を持つ男。ダークトーンのローブを身にまとい手には杖を持つ。
・アマラとヴァレリオス(Amara&Valerios)
アリオンに拾われた16歳の双子。2人とも素人とは思えない高い戦闘能力と判断力があるがまだまだ半人前。
・レイナード (Reynard)
過去にアリオンと共に旅をした友であり星々の情報に詳しい。
・グリムと〈鋼鉄〉チーム
ゴールドランクエージェントチーム〈鋼鉄〉のリーダーでありミスリルランクエージェントのグリムとそのチームメンバーのゴールドランクのオスク達、全員がドワーフ。
・ステラリアン社のエージェント部門受付嬢のエリナ
うさ耳を持つ獣人であり戦闘力はない。
・ステラリアン社
星渡りを行う企業。エージェント部門も作っており人々に任務を斡旋している。
・リリアナ
ステラリアン社のエージェント部門の部門長。
そしてステラリアン社の2大派閥のトップの女性。
・タロス
テクノポリス星の路地裏にある半地下の装備屋の店主。
見た目は牛の頭に大きい角があるのでかなり怖いが内面は人見知りで照れ屋と可愛い一面も持っている。
星暦220年-レリックスター・遺跡最奥部-
「お、おい…あれって…」
ヴァレリオスの指が指す方向には金属で作られたドラゴンの像が目に入る。しかしそれは像では無いのは3人ともすぐに感じとっていた。
「ここに来た時の違和感はこれが原因だったか…」
「あんなのどう戦えばいいんだ…」
「まだ動いてないんだし、逃げよう?」
「いや、逃げる選択肢は無い。というかこの部屋に入ってしまったら扉はもう開かないよ」
「ここを出るには勝つしかないみたいだ」
「クソッ、折角帰れると思ったのに…!」
焦るヴァレリウスと怖がるアマラだったが次第に覚悟を決めどう戦うかの戦略を練り始めた。
「俺が正面から行くからアマラは援護頼む!」
「死なないでねヴァン!」
絶望的な状況だが、それでも諦めない強い心に成長した今回の任務はアマラとヴァレリオス双方に素晴らしい経験になったのは確かであるが、この状況を切り抜けない限り成長も意味をなさない。
「とりあえず2人でやってみる?それとも私も手を貸そうか?」
「ダメだアリオン!ここは俺たちの本気を見せなきゃな!」
「でも危なくなったら助けてね?」
「わかった!そうなれば全力で助けよう!」
「精一杯やってみなさい!」
そしてヴァレリオスが1歩前に出ると動かなかったドラゴンがいきなり動き出した。一定範囲以内に入ると活動を開始する防衛機構のようだ。
アリオンは2人が戦う間情報収集に徹しようとし、冷静に観察していた。
ドラゴンが動き出すと同時にヴァレリオスは全速力で近付いていった。その速度はアリオンが今までに見たよりも早く駆け抜けて行った。
「とりあえず最初は大振り1発ッ!」
ものすごい衝撃音が部屋に響いた。しかしその攻撃はドラゴンの翼に阻まれてヒビを入れることには成功したが破壊には至らなかった。
「なんて硬さだよ!これじゃあ破壊するより先に剣が折れちまう!」
「次はこっちだよ!」
続いてアマラは弓をめいっぱい振り絞り矢を射った。これもまたアリオンが今まで見ていたものよりも数段レベルを上げていた。
しかしこの1発も腕に刺さっただけで破壊とまでは行かなかった。
「知らない間にとても強くなったな!でもこれでもあのドラゴンは倒せなさそうだ」
「かったいなぁ…今のは木を何個か貫通するくらい威力があると思うんだけどなぁ」
2人の攻撃を受けて危険だと判断したのかかなり激しく動き始めた。その瞬間翼を広げこちらに飛んでくる。
すかさずヴァレリオスは盾で弾こうとするが力で押し負けてしまい飛ばされる。それを見たドラゴンはこちらを威嚇する為大きく吠えてきた。
「ヴァン!!大丈夫!?」
数m吹っ飛んだがすぐに立ち上がり戻ってきた。
「チクショウあの野郎…なんて力だよ…」
「こりゃあ相当厳しいな…」
「まだやれそう?」
アマラがヴァレリオスに駆け寄るのを見逃さずドラゴンはまた飛んで来たが次はヴァレリオスは受けず回避に徹した。するとドラゴンは着地したが急な方向転換に着いて行けずバランスを崩した。
「こりゃあいい!弱点が知れたな!」
そう言ってドラゴンに突進し先程アマラが放った矢傷の部分に剣を突き刺した。その攻撃はかなり深くまで剣が刺さり腕はヒビ割れ砕けた。
「ナイスヴァン!この戦法で行くよ!」
そうしてアマラは2本の矢を手に取り同時に射ったのだ。アリオンはその姿に驚愕したが、ドラゴンはその2本を今度は受けるのではなく避けてしまった。
「なんだと!?このドラゴン、学習してるのか?」
「ならさっきの戦法はもう効かねぇな…」
アマラは先程の動きを見て驚いてはいたが、次の攻撃の準備に入っていた。前線ではヴァレリオスがドラゴンの攻撃から避け続け標的になってくれている。
「次はこんなのはどうかしら?」
そう言ってもう一度ドラゴンに向かって矢を放つがこれまた避けられてしまった。しかしドラゴンが避ける先に少し遅れて矢が飛んで来ていた。それが次は背中に刺さった。なんとアマラはドラゴンが避ける方向を予想して一瞬の間を置いて2本目を予想地点に射っていたのだ。
「ナイスアマラ!余所見厳禁だぞクソドラゴン!」
そして背中に刺さった部分にまたもや大振りの一撃を食らわせた。それによりヒビがかなり大きく拡がった。
「やっぱり硬いなぁ、けどあと一撃で背中は壊せそうだ!」
しかし現実はそう甘いものでは無い。ドラゴンは一旦後ろに下がると、なんと傷に液体状の金属が流れ始め傷を埋め、何事も無かったかのように再生させたのだ。
「おいおい、そりゃないぜ…」
「それは無いでしょお!」
そして次は翼で飛ばず地面を勢いよく蹴りアマラ目指して突進してきた。さすがにこれには2人とも反応出来なかった。
「アマラ避けろ!!」
アマラは避けようとしたが間に合わずドラゴンの鋭利な金属爪が触れそうになった時、ドラゴンの爪がなにかに弾かれた。
「あれ?なんで無事なの?」
アマラの目の前には床がアマラを守るように壁になっていた。2人ともが理解出来なかったがそのおかげで助かった。そして2人がが再度戦闘態勢に入ろうとしたとき。
「そろそろ選手交代だな。2人ともよくやった。あとは見ていなさい」
そう言ってアリオンがゆっくりとドラゴンに向かって進み出した。アマラを守った壁もアリオンの力なのかと今理解した。
アリオンのことを警戒してかドラゴンもその場を動かない。両者とも動かなかったが先に動いたのはアリオンだった。それに反応して少し遅れて動き出そうとしたドラゴンは自身の状況を理解出来なかった。
今回は予告を無しにしました。
前回は18時に投稿しましたが今回から22時から24時の間に投稿するようにします。
毎日投稿出来るかは分からないですのでご了承ください。