第7話-新たなる星と古代文明の跡-
〈人物紹介〉
・アリオン(Arion)
肌に淡く光る紋様を持つ男。ダークトーンのローブを身にまとい手には杖を持つ。
・アマラとヴァレリオス(Amara&Valerios)
アリオンに拾われた16歳の双子。2人とも素人とは思えない高い戦闘能力と判断力があるがまだまだ半人前。
・レイナード
過去にアリオンと共に旅をした友であり星々の情報に詳しい。
・グリムと〈鋼鉄〉チーム
ゴールドランクエージェントチーム〈鋼鉄〉のリーダーでありミスリルランクエージェントのグリムとそのチームメンバーのゴールドランクのオスク達、全員がドワーフ。
・ステラリアン社のエージェント部門受付嬢のエリナ
うさ耳を持つ獣人であり戦闘力はない。
・ステラリアン社
星渡りを行う企業。エージェント部門も作っており人々に任務を斡旋している。
・リリアナ
ステラリアン社のエージェント部門の部門長。
そしてステラリアン社の2大派閥のトップの女性。
・タロス
テクノポリス星の路地裏にある半地下の装備屋の店主。
見た目は牛の頭で大きな角を持つのでとても怖いが内面は人見知りだったり照れ屋だったりと可愛い一面も持っている。
星暦220年-レリックスター・仮設キャンプ-
ゲートを出ると前回ここに来たであろうエージェント達の建てた仮設キャンプが目に入る。原型は留めているもののかなりの破損が見て取れることから前回からかなり時間が空いたことを予想させる。
キャンプの周りは開けているが少し外に目を向けると青色の植物が生え、幹は赤色と目がチカチカするような色で長い間見ていると頭が痛くなりそうな場所だった。
「さて、元いた星とかなり近いが色が全然違うな」
アリオンは辺りを冷静に判断している。周りを見渡してみると木の幹に引っかかれたような痕がある。2人は初任務ということでかなり緊張しているようだが、そんな緊張もすぐに対応せざるを得ない状況がやってくる。
「アリオン!音が聞こえる!かなり大きい動物が近付いてきてるよ!」
アマラの一言でヴァレリオスも少し遅れて戦闘態勢に入った。アマラは新調した弓を、ヴァレリオスも新調した片手盾と背中に担いでいる片手剣に手を伸ばす。2人の武具は共にグリムとタロスが初心者用として安いものを渡していた。しかし安いからといって悪いものでは無かった。
アリオンも2人を見守るようにして構える。
「なにあいつ!?あんなのみたことないんだけど!?」
木々の間から飛び出して来たのは3mはあろうかというモグラだった。しかしそのモグラはとてつもなく長い爪で迫って来た。
「オラァ!パリィだ!」
すぐにヴァレリオスが前に出て爪を盾で弾く。しかしもう片方の腕でもヴァレリオスを狙っていたがモグラの目に矢が飛んできた。矢が深々と刺さったことで逃げ出しそうになったがその気を見逃さずすかさずヴァレリオスが上に飛び乗り脳天に剣を突き刺した。
「ナイス狙撃だぜ!おかげで何とか倒せたな!」
「初討伐だね!ヴァンもナイス!」
2人がグータッチしているとアリオンも後ろからやってきた。
「これくらいなら余裕そうだね!成長したよほんとに…」
「よし、それじゃあ依頼された遺物を探そうか」
「ねぇアリオン、依頼された遺物ってどんなものなの?」
「今回の任務は古代文明にあるとされる黄金で出来た聖杯らしい」
「へぇ、それ以外のものは俺らが貰ってもいいのか?」
「こらヴァン!そんな盗賊みたいな事しない!」
「ちぇっ」
その様子にアリオンは微笑んでいたが心の片隅にはなにか引っかかるものがあるようだ。
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「だいぶ進んできたが古代文明の後なんか何も無くないかー?」
ヴァレリオスが嘆く通り数時間探索したが古代文明の跡など全く感じられないほど生い茂るジャングルを回っていることしか出来ていない。
「2人とも!この先は崖になっているみたいだよ!」
アリオンの言葉に警戒しながら進む2人だったが森を抜けるとそこには
「うぉぉぉ!!なんだこれぇ!!」
「すっごくキレイだよアリオン!!」
周りを崖で囲まれたとても広い窪みの中心に文明を感じさせる建造物があった。
その建物は草木に囲まれていたがその草木の色は3人がよく知る緑色の植物たちだった。まるでここだけが別世界であるかのように。
「なんであそこの周りだけが緑なの!?」
「これは…初めて見る現象だ…」
この光景にはアリオンですらも驚きを隠せず動揺している。警戒を緩めてしまったがために後ろの森から複数の狼位のサイズの蟻が大量に飛び出てきた。
「やばいぞ!後ろからデカい蟻どもが来てる!」
この一言でアリオンも我に返った。
「飛び降りるぞ2人とも!」
「「はぁ!?」」
「私を信じるんだ!飛び降りても痛くない!勇気を出して飛び降りろ!」
アマラもヴァレリオスかなり怖がっていたがすぐ後ろまで大量の蟻が迫って来ている状況では飛び降りるしかないと覚悟を決めた。
「アマラ!俺が先に行く!下で待ってるぞ!」
ヴァレリオスはすぐさま飛び降りたがアマラは中々飛び降りれずにいた。
「アリオン…怖いよ…」
「わかった。私と一緒に飛ぼう。手を握っていてね」
アリオンはそう言うと背中から落ちていった。
「アリオン!?引っ張らないで!!」
アリオンの手に引かれアマラも崖から落ちてしまった。しかしつい先程までアマラがいた場所には蟻の巨大な顎が出てきていて、アリオンが引っ張って落としてなければアマラの体は蟻の顎によって真っ二つになっていただろう。
「きゃぁぁぁあ!!」
アマラの叫び声が聞こえるとアリオンはアマラを抱き寄せた途端もう片方の手で握っていた杖が光出した。
すると3人の落下予定地に大きな水の塊が出現した。
「なんだ!?いきなり水が出てき」
ヴァレリオスが言葉を発するよりも早く水に着水して落下の衝撃を緩和してくれた。
「ほらアマラ大丈夫だっただろう?」
「それでも怖いぃぃぃい!」
アマラとアリオンも水に着水した。そして水はゆっくりと地面に近付き地面に触れると塊だったのが嘘のように破裂し雨のように辺りに降り注いだ。
「アリオンがなんかしたのか?」
「そうだ。登録の時に言われていた星の神秘ってやつだよ」
「し、死ぬかと思った…」
「詳しくはまだ教えられないけどいつか2人にも教えるよ」
そうして崖の底に着いたがかなり疲労しているし服も濡れてしまったので少し休憩してから進むことにした。
-数時間後-
「よし、行こうか!」
疲労もある程度取れ、服も乾いたので出発する。
そして上から見るよりも下から見ることでかなりの規模と迫力に圧倒される。
「これは…中々デカイな…前に本で読んだ城ってやつよりもデカいんじゃないか?」
「確かにそうかも…あの会社のビル程高くは無いけどこっちは下側がとっても広いみたいだね」
それから入口を見つけるのに手間取りながらも建物の頂上に登り崩落した穴から3人は内部に侵入した。
「1番上からなんて下に任務の遺物があったら最悪だよねー」
「おいおい、そんなフラグ立てんなよな?」
アリオンはこの遺跡に入ってからずっと何かを考え込んでいる様子で今まで見た事のないアリオンに戸惑っていた。
「ねぇ、どうしたのアリオン?」
「なにかあるの?」
「すまない2人とも。もう大丈夫だ。」
「ここからは気を引き締めていくことだ。いつどこから襲われるか分からないからな」
途中何にも襲われることなく生物の気配も無いまま下へ下へと降りていき、途中迷路のような部屋にも迷い込んだがアリオンの指示で全て突破していた。
そして遺跡に入って10時間が経とうとしていた頃。
「そろそろ休むかい?ずっと気を貼りっぱなしだととても疲れるだろう」
アリオンがそう言うと次は少し開けた場所に出たのでここで眠ることにした。3人で手分けして装備の手入れや食事を取るなどしてから1人が寝ている時は2人が見張りはするようにし休んだ。
まず最初にアマラが休むことになったのでアリオンとヴァレリオスが見張り役をした。
「初めての任務はどうだ?今回はかなりハードな任務だが君たちなら乗り越えられるさ」
「いや、2人だけだったらここは絶対無理だったな…」
「崖の上で蟻の大群に襲われた時点で死んでるよ」
「確かにあれはびっくりしたねぇ…けどヴァレリオスならあの危機も1人で乗り越えられるようになる実力は付くと思う」
2人で今日の振り返りをしつつ少しの間談笑していた。そして次はヴァレリオスが眠る番になった時はアマラとも振り返りをしていた。
「初任務はどうだい?何を感じた?」
アマラは少し考え込むとこう言った。
「今日だけでも私たちの無力さが身に染みて、ほんとに情けないよ」
そう言いながら悔しそうに手を握りしめているアマラだったがアリオンから励まされるとすぐにこの星のいい部分に目を輝かせて話していた。
「この星はほんとに綺麗だよね!デッカイモグラとか蟻がいなければだけど!」
「けど、やっぱり宇宙は広いんだね…こんな星があるなんて思ってもみなかったよ」
「そうだね…この宇宙は広く、色んな星があってそれを冒険するのはとても楽しいし感動出来るけどそんなにいい面だけでもないんだよ」
そう言っているアリオンの目はどこかに哀しみが隠れているような気がした。
-翌日-
「よく寝れたかい?それじゃあ出発しようか」
「はい!」「おう!」
この日も3人はかなり進んで行ったがなかなか見つけられず最奥に向かって進んで行った。
「なぁ、アリオン。もしかして俺らが向かってるのってこっちじゃないんじゃないか?」
「それは行ってみないとわからない。精神的にキツくなってきたかい?」
「ヴァンの言う通りだよぉ…こっちで合ってるのかなぁ」
こういう探索において1番の敵は自分の心であるとエージェントの中ではよく言われているのだが、登録から一日でこんな任務につくものなどいなかったため誰も口を出せなかった。その結果2人は心が折れそうになっていくがそれを止めることはアリオンでも出来ない。
心に打ち勝つのは自分自身なのだから。
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遺跡に入って数日が経った。
少しづつ遺物のある場所に近付いてきたのか岩で出来たゴーレムのようなものや地上にはいなかった生物とは思えないようなもの達も増えてきた。
しかしこれらの出現でアマラとヴァレリオスは目指すべき場所が近づいているのを感じ、救われていた。
「おっしゃ!今回は俺が倒せたぜ!」
「あー!悔しい!あと少しでヴァンより先に倒せたのに!」
こうして進んで行くと遂に今までとは異質の場所を発見した。その場所には5mは越すであろう大きな金属製の扉でそれにはかなりの装飾が施されていた。
「おい、これってアタリだよな?」
「やっとなんだね!アリオン!見つけたよ!」
2人ともはしゃいでいて子供のような面を見せてはいるがこの探索でかなりの成長を遂げていた。
「2人ともよくここまで耐えられたね。さぁ!あと少し頑張って帰ろうか!」
しかしアリオンはこの異質な空間に違和感を感じざるを得なかった。
錆びているのかかなり重たかったが何とか扉を開けて中に入った瞬間、3人の見たものはとても信じられないものだった。
「お、おい…あれって----」
【予告】
次回-聖杯と守護するもの-