第6話-準備と出発-
〈人物紹介〉
・アリオン(Arion)
肌に淡く光る紋様を持つ男。ダークトーンのローブを身にまとい手には杖を持つ。
・アマラとヴァレリオス(Amara&Valerios)
アリオンに拾われた16歳の双子。2人とも素人とは思えない高い戦闘能力と判断力があるがまだまだ半人前。
・レイナード (Reynard)
過去にアリオンと共に旅をした友であり星々の情報に詳しい。
・グリムと〈鋼鉄〉チーム
ゴールドランクエージェントチーム〈鋼鉄〉のリーダーでありミスリルランクエージェントのグリムとそのチームメンバーのゴールドランクのオスク達、全員がドワーフ。
・ステラリアン社のエージェント部門受付嬢のエリナ
うさ耳を持つ獣人であり戦闘力はない。
・ステラリアン社
星渡りを行う企業。エージェント部門も作っており人々に任務を斡旋している。
・リリアナ
ステラリアン社のエージェント部門の部門長。そしてステラリアン社の2大派閥のトップの女性。
星暦220年-テクノポリス星-
いきなりの任務の依頼からエージェント部門の長との出会いなど初回からハプニングに見舞われた3人だがこの星に来た目的は無事に果たされたと言えよう。
しかし、まだアマラとヴォレリオスの装備が整っていないにもかかわらず危険な任務に赴くなどあってはならないと2人を連れて装備を整えるように街に出ようとしていた。
「任務に行く前に2人の装備を見に行こうか」
「やっとか!ずっと楽しみにしてたんだよなー!」
「どんなのがあるのかな!とっても楽しみ!」
先程の任務の緊張など全く感じさせない3人を見て呆れつつ笑いながらエレナが近付いてきた。
「皆さん、装備を買いに行かれるならオススメの店がありますよ!高ランクエージェントの方々が揃って買いに行かれるところなんです!」
このエージェント部門受付嬢がわざわざ教えてくれたので3人はそこに行くことに決めた。
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-装備屋-
その場所はステラリアン社のビルを出て少し入り組んだ路地を入った場所にある。その店はお世辞にも綺麗とは言えない見た目と営業しているのかも分からない暗さで半地下の場所だった。
「ほんとにこんなところにいい店があるの?」
アマラが怖がりながら呟いた途端その店の扉が勢い良く開いて中から大柄の男が吹き飛ばされてきた。
「クソ野郎が!覚えてやがれ!」
その出来事を見られたことがプライドの高さからか次はアリオン達に怒鳴りながら殴りかかってきた。しかしそれは何者かによって制止された。
「お主、邪魔じゃぞ」
「グリムだと!?クソッ!」
グリムに圧倒されたのかその男は走り去って行った。どこに行こうがあのような輩は居るのだなとしみじみしていたアリオンだがアマラとヴァレリオスは初めての経験で驚きと同じくらいの恐怖も感じていた。
「グリムさん!ありがとうぉぉ!」
珍しくアマラが泣きそうになりながらグリムに感謝しているのを見てヴァレリオスも安心した様子だ。
「ありがとうグリムさん。ところで何故ここに?」
「お安い御用じゃよ。なに、ここの主人は気難しくての。さっきのやつも気に入らんから追い出したんじゃろう。」
そう言いながら扉を開け入っていくグリムに続いて3人も中に入るとそこには牛の頭を持つ大男が大きなハンマーを持って作業していた。
「何の用だ?」
振り返りながら唸るような声を出す。その姿と声、そして雰囲気は2人には少しホラーだったかもしれないが、これもいい経験だと思うアリオンだった。
「久しいなタロス!儂を覚えとるか?」
「お前は…グリムか?久しぶりだな我が友よ」
タロスと呼ばれた彼はグリムと仲がいい様だ。しかしその姿はグリムの倍以上ある背丈にグリムよりも大きな腕と頭に生える白い角などかなり見た目は怖い。
「今日はお主に紹介したい人がおる。こちらのアリオン殿と双子のアマラとヴァレリオスだ」
少し見られるだけでかなりの威圧感があるがアリオンは全く動じていない様子。しかし後ろの2人はなかなか目が合わせられずにいる。
「初めまして、アリオンと申します。ここには装備を整えたくて来ました」
「…」
アリオンの言葉にタロスは無言だった。少しの間無言が続き緊張感が漂っていた時、グリムがその沈黙を破った。
「そろそろ何か言ったらどうじゃ?まだ人見知りが治っとらんのか?」
「は?人見知り?どういうことなんだグリムさん」
ヴァレリオスからグリムへの言葉でタロスは顔を逸らした。
「こいつは図体がデカいし声もデカいんだがとにかく人見知りでな…」
「人が寄り付かない所に店があるのも腕は確かなのに人と話したくないからだそうじゃ…」
それを聞いたタロスが恥ずかしがっているのか裏の工房に引っ込んでしまった。
「なんか、見た目で誤解しちゃったけど案外可愛いところがあるのねぇ」
そんなアマラの一言がタロスに聞こえていたのか奥の工房の方から何かをひっくり返したような音が聞こえてきて、その音を聞いた全員が確信した。
(あ、照れてるな)
「それにしても…装備を買いに来たのだが、店主が篭ってしまったからな…」
「そういうことなら儂に任せな!ここの装備類は儂も時折製作に力を貸しておる故、説明くらいなら出来るぞぃ」
「それではグリムさんにお願いしようかな。2人とも装備の希望はあるかい?---
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夜-宿屋-
「グリムさん今日はわざわざありがとうございました。また何かあればよろしくお願いします」
「そんな堅苦しくしなくていいんじゃがな!お礼は受け取っておく!」
教えてもらった宿屋の前でグリムと分かれ、各々が明日の任務のために準備をすることになった。今回はアリオンとヴァレリオスで1部屋、アマラで1部屋を取ることになった。
その夜は翌日に備えて早めに寝ることにした3人だが、アリオンはなにか作業をしているようだった。何をしているのか気になったが眠気に勝てなかったヴァレリオスであった。
「寝たな…」
「明日が2人にとっての初任務か…私も用心しなくてはな。次の星も古代文明があったと聞いたが、アレがあればいいのだがな…」
この日もアリオンは夜空を見つめていた。
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翌日-ステラリアン社支部・エージェント部門専用ゲート前-
早朝、任務のためゲート前に来てみると受付嬢が待っていた。
「おはようございます!今日が初任務なのでお持ちのステラバンドにエージェント証をインストールさせてもらいます!」
「これがないとここのゲートは使えませんので、そして絶対に無事に帰ってきてくださいね…」
受付嬢のこの反応が今回の任務の危険度を再認識させられる。しかしこれから始まる3人の旅に比べればこれはまだ第1歩でしかない。
「行ってきます。完璧に任務を遂行して帰ってくると誓いましょう」
「頑張ってくるねエリナさん!私たちなら大丈夫!」
「行ってくるぜ!」
3人の胸にそれぞれの思いを抱え、ゲートに進んでいく。しかしこの任務が思わぬ結果を呼ぶ事はまだ誰も知らない…
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-ステラリアン社支部・部門長室-
「リリアナさん。3人とも出発しましたよ」
「私も確認したわ」
「しかし、やはりなぜ今回こんなにも危険な任務を初めての3人に任せたのですか?これは明らかにゴールドランクの依頼では無いですよね」
「あら、バレていたの?たしかに今回の任務に参加した他の星のゴールドランクチームは全滅したわ」
「え!?それを伝えずにこの任務を依頼したんですか!?」
「でも彼らには私の派閥を代表する存在になってもらわなきゃいけないの。だからこんな程度の任務もこなせない様なら代表にはなれない」
「少なくともオリハルコンランクにならないとね。しかもあのアリオンという人は星の神秘を宿しているのでしょう?こんな逸材を向こうに渡す訳にはいかないじゃない」
「期待してるわよ3人とも…」
【予告】
次回-新たなる星と古代文明の跡-